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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2017.07
29
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17:41
Category : 未分類
 アレ宰相の瀆職追求に対し「推定無罪の原則を知らない無知」を言い立てるのは却って法律知識の整理が足りないのではないか。

 「騒いでいる野党に推定無罪を教えてやれ」といったしたり顔の発言がある。例えば、ぶQさんのこのような発言がそれだ。
弾劾と刑事訴訟をわけられない
ぶQ@minawa_t
最近思うのだけど、日本は義務教育でもっと基礎的な法律の知識を教えた方がいいのではないか。推定無罪の原則とか法の遡及適用の原則禁止とか。騒いでいる野党の人には特に必要かと
https://twitter.com/minawa_t/status/891119878349795329


 だが、推定無罪は刑事法に限定される概念である。刑罰により人身の自由を奪うことには重大性がある。また被告と原告(検察:国家)の力関係は対等ではないため保護が必要となる。その結果、導入されたものだ。

 当然ながら、議会での追求に推定無罪は適用されない。弾劾と刑事訴訟とは異なるからだ。

 弾劾は身分に関する争いである。大臣ほかの政治任用の公職や裁判官について、その職位にふさわしくない者を職から追放するものだ。身体や財産に刑罰を課すわけではない。そのため推定無罪は関係しない。弾劾の理由も「ふさわしくない振舞い」だけでもよい。罪刑法定主義や事後法の禁止とも関係しない。これは裁判官の弾劾裁判や弁護士の自治的懲戒制度も同じである。

 そして宰相には弾劾されるに足りる合理的な根拠がある。規制緩和でオトモダチの加計孝太郎だけが利益を得る構図そのものが疑惑である。さらにいえば「腹心」と述べた以上はアレ宰相の部下であり身内である。その点でもつまりは自己利益を図ったものとも言える。

 ちなみに法は推定を認めている。法諺でも「推定は法律上有効である」* とあるように蓋然性を持つ証拠にもとづく推察を認めている。当然ながら日本の民事法でも推定は有効である。当然だが、より政治性を持つ議会での弾劾には充分な足がかりとなる。

 つまりはトンチンカンでしかない。今回の疑惑追求が気に食わないからといって推定無罪や事後法禁止を持ち出すのはそういうことだ。法律やその中での概念を知っていても、その法が及ぶ範囲を知らない。これはかえって「基礎的な法律の知識」(ぶQ)の整理が足りないことを告白するものである。



* 記憶が怪しいので英語ほかでググったら"Prsesnmptiones sunt conjectures ex signo verisimili ad probandum assnmptte."がでてきた。単語ごとにググるとそれっぽい意味なので昔聞いたオリジンはこれだろう。
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Comment

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No title

>被告と原告(検察:国家)の力関係は対等ではない
あえて刑事っぽく考えるなら、与党と野党の力関係は前者が大きい、
よって与党の推定有罪が成り立ってしまうのではないかと思いましたよ。
当然、権限が大きい方がより責任を負うわけですから、
野党が有罪を証明するのではなく、与党が無罪を証明しなければならない。

それに、国会は刑事で考えるなら裁判も取り調べもごっちゃにしているわけだから、
怪文書程度で国会で追求するなって言われても、警察だって任意の取り調べくらいするだろうって話です。

自分の理解の範疇で、無理矢理刑事に合わせるから変な理解になるんでしょうね。

Re: No title

政治の文脈なら無過失でも不信任を上げて問題ないですからね
解散に理由が必要とされないように

その点で議会での責任追求やそれによる辞任要求は弾劾裁判よりも更に緩いもので
「推定無罪の原則」がとか、まあ何言ってるのかなと思いますね

> >被告と原告(検察:国家)の力関係は対等ではない
> あえて刑事っぽく考えるなら、与党と野党の力関係は前者が大きい、
> よって与党の推定有罪が成り立ってしまうのではないかと思いましたよ。
> 当然、権限が大きい方がより責任を負うわけですから、
> 野党が有罪を証明するのではなく、与党が無罪を証明しなければならない。
>
> それに、国会は刑事で考えるなら裁判も取り調べもごっちゃにしているわけだから、
> 怪文書程度で国会で追求するなって言われても、警察だって任意の取り調べくらいするだろうって話です。
>
> 自分の理解の範疇で、無理矢理刑事に合わせるから変な理解になるんでしょうね。

No title

推定無罪を法領域を超越して主張する人は
行政処分の公定力や不可争力も批判してくれるんだろうなあ(棒)
公害罪法第5条の事実上の推定有罪条項なんかも批判対象かなあ

それはともかく、要は立証責任(挙証責任)の在り処の話でもあるんですよね
推定無罪というのは結局被告人でなく検察に挙証責任があると帰結しますが、
行政訴訟において被告である国に立証責任がないなどという議論はなかなか無い
引用先の方の意見に添えば行政法の専門家は義務教育レベルにないらしいですな

Re: No title

「法の不遡及」や「罪刑法定主義」も弾劾とは関係しないのですよね
首相の弾劾は犯罪を前提としませんから
実際に宇野宗佑は蓄妾で辞任している

その上でいえば、政治の過程ではそもそも理由もいりませんよ
首相の解散権と同じで内閣不信任案も理由を必須としてませんから
衆議院で議決されれば総辞職か解散

大義名分はつけるけど、政治のプロセスだから納得すればそれで良し
極端な話、姓名判断が悪いでも血液型が向いていないでも納得すれば有効ですからね
そこで罪刑法定主義とかいい出してもアサッテ野郎で終わりですよ


> 推定無罪を法領域を超越して主張する人は
> 行政処分の公定力や不可争力も批判してくれるんだろうなあ(棒)
> 公害罪法第5条の事実上の推定有罪条項なんかも批判対象かなあ
>
> それはともかく、要は立証責任(挙証責任)の在り処の話でもあるんですよね
> 推定無罪というのは結局被告人でなく検察に挙証責任があると帰結しますが、
> 行政訴訟において被告である国に立証責任がないなどという議論はなかなか無い
> 引用先の方の意見に添えば行政法の専門家は義務教育レベルにないらしいですな

森友学園の問題の頃から証拠がないから批判するなみたいな痛い子はチラホラいましたねぇ
あれでぼくはマスコミに騙されてる世間の人々より賢いんだと気取れるのだから恐れいる

国会で疑惑を追及された宰相が、いよいよとなった時、
「私がやったという証拠でもあるのか!」
とか叫んだら、その時点で政治家としては終わりだと思います。
支持者の皆さんは「そうだそうだ!証拠が無ければ無罪だぞ!」と、なんの疑問も無く応援?するんでしょうけどね。
それで有権者に対する必要充分な説明になると信じているところが恐ろしい。

No title

こういう手合いって割と蓮舫さんの二重国籍論争で逆のこと言ってそう、というのは偏見でしょうか。

No title

>宰相には弾劾されるに足りる合理的な根拠がある。規制緩和でオトモダチの加計孝太郎だけが利益を得る構図そのものが疑惑である。

確かに疑惑は否定できないでしょう。
しかし、ロッキード事件に於ける黒いピーナッツの様な決定的な確証がない限り、故田中元宰相と同じ様には…。

また、疑惑を追及された政治家が、決定的な瞬間で、居座り、居直り、恫喝等々を多用すれば、最早、第六天魔王とでも言うべきかも知れません。何故なら、暗黒面に堕ち、黒い力の極北と化してますから。

しかし、今の日本に黒い力だろうが、なんだろうが、使えるモノは何でも遮二無二に使い、内外を駆け巡る。この様な恐るべき剛腕、焔の意思を持った政治家はと言えば…。流石の現宰相も此処までは…。

寒い時代を生き抜かなければならない現状で、この方が寧ろ…。

そもそも日本の議院に「弾劾」の法律的規程はなく、発端のツイートから当エントリに至るまで、無意味ではないですか?

Re: タイトルなし

「法律に書いてないから無意味」というのもユニークな質問ではないでしょうか?
内閣総理大臣の解散権を規定した法律ってないですよね。あるのは憲法の国事行為の規定だけ。

さらに弾劾は議会が持つ普遍的機能ですよね。
首相以下の国務大臣に「その任にふさわしくない、だから辞めろ」というやり取りは弾劾そのものですよ
どこの国でも、自治体の議会でも、さらには会社の取締会でも株主会にも厳然として存在している機能ですね

> そもそも日本の議院に「弾劾」の法律的規程はなく、発端のツイートから当エントリに至るまで、無意味ではないですか?