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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.10
27
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12:00
Category : ミリタリー
 「沖縄近海に中国軍機4機、空自が緊急発進」で、沖縄本島と宮古島の間をY-8のレーダ搭載型とH-6が通過したことがニュースになっている。

 別段騒ぐ内容でもない。中国が太平洋に出るには、琉球列島を通過するのが当たり前の話に過ぎない。日本側も充分対応できている。も探知し、緊急発進で公海上での行動であることを確認した。

 中国脅威論に関連させる話が出てくるのも、いつものことである。中国海軍や海上航空戦力が強化されることは、ゲーム相手の日本にとって厄介である。だが、列島線を通過したからといって侵略主義傾向云々と文句を付けるのは、おかしな話である。中国にも外洋に出る権利はある。しかも、日本に何の影響も与えず、公海上を通過している。そういう意見の御仁は、よほど中国が嫌いなのだろう。

 むしろ、注目すべきは戦闘機を随伴していない点である。航続距離からして当たり前の話であるが、中国機には戦闘機が随伴していない。

 中国が戦時に外洋哨戒をしようとしても、護衛なしでの列島線通過は相当に厳しい。列島線までなら、航続距離が長いSu-27系は護衛できるかもしれない。だが、防空システムと連動し、燃料と搭載量に余裕のある日本側迎撃機との戦いは不利である。それ以前に、哨戒機のホップ数に併せて送るほどの戦闘機もない。

 戦時に中国は太平洋に哨戒機を送り込むことは相当難しい。台湾北部を占領するか、さらに足の長い飛行機でも作り、南シナ海から迂回侵入でもしなければ、実用上はできない話である。



※ 「沖縄近海に中国軍機4機、空自が緊急発進」『YOMIURI ONLINE』(読売,2013.10.27)http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131026-OYT1T01255.htm
2013.10
26
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12:00
Category : ミリタリー
 1術校での校長講話のメモが出てきた。今から10年近く前の、9月5日午後1-2時に行われた1時間の校長講話。昔から講話の時には、マメにメモを取っていたが、話の中身は余り書いていない。どちらかというと、なにか面白いことがないかと言うものを探して書いていた。この時のメモは、中級学生で聞いた講話で、日本海軍時代に作った映写講堂の二階席から眺めていたが、まずは観客の態度とかバタバタ寝るのが面白くてそればかりを見ていた。

 まずは、校長のお面について書いてあるが、個人が特定できるので省略する。いつも人相書のように「四角い顔で全体的に膨らむ」とか「頭髪やや薄く白髪多」といったものを書いて、その状況を思い出せるようにしていたが、大抵は失礼なことを書いていた。ちなみに、当時の課程主任(統率科の駄目艦艇3佐)についてメモには「不景気な面」、「残飯をあさる犬のよう」とか書いてある。奴と大声で口喧嘩した時に「貧乏神みたいな面しやがって」と口をついたのは、メモのせいだろう。

 話の内容は、偉い人の紋切り話だった。日本は前の戦争であんま悪くないみたいな、お店の都合のいいはなしだったことを思い出した。メモには「塩野七生のハナシは、PO[海曹]以下にはお歯にあわない」と書いてある。

 当然、聴衆は寝る。だが海曹士は寝ると班長クラスに怒られるので、必死になって耐えている。しかし、己達の幹部学生や、職員はお構いなく寝る。

 そもそも1佐級は最初から脚を組んでいる。同期相当ならわかるが、統率科長の若手1佐風情(艦艇装備)が脚を組んでいるのには、普段の言動と違う適当な野郎と思ったよ。で、その統率科長は1310には居眠りを開始。科長クラス(1-2佐)は、その時に10%は居眠りをしていた。

 主任といった3佐級も、1320にはボードで内職を始めている。まあ仕事が多いので、こういった時に内職するしかない。

 そのころ、前2列目の1佐が首を後ろに倒した形で昏倒するように寝た。飯食ったあとと、講話やるにはどうよの時間というのもあるが、どうにかすべきまわりの1佐も居眠りなので結果放置。校長もそいつが気になってしょうがない。とはいえ「こういう話だしな」とか「悪いのは俺か」と思ったのだろうし、冗談口での注意も学生の前だと言えない。

 そのころ「大東亜戦争」という言葉がでる。部内戦史的には「大東亜戦争」なのだが、まずは世間とのズレ。「パール判事の話もいいとこ取り」とメモにある。

 1325には、隣が眠りだす。2階の最前列なのだが、いつも真面目で忙しい奴なのでそのままにしておいた。海曹士の通路側が、通路に脚を投げ出し始めている。もともと椅子も戦前の小さい人サイズなので、巨漢タイプは椅子からはみ出す狭さなのでしょうがない。「科長級は服の中をボリボリ、POはヒゲを抜く、各学生の記録係は仕事があるので寝ないで済んでいる」とある。

 1337には「[校長が]尊皇家かつ敬神家なのは尊敬」と己も偉そうに書いている。ただし「昭和帝の憲法順守の素晴らしさを賞賛しているが、東条の憲法違反に触れていないのは片手落ち」とも書いてある。

 1345には、「POで脚を組み、海士[セーラー服]にも背中ボリボリがでる」とある。携帯をいじるのがいないのは、持ち込みを禁止しているためとかいてある。まあ饐だ。

 1350あたりからは、話の内容について己の評価があるが、1尉風情の書くものでもない内容。ただ、ズーッと艦艇勤務で、陸に上がって理系的な技術教育ならともかく、文系的な教育をやるというのは難しいのだろうなと当時から考えていた。中級のあとには、教官課程の教官をやったのだが、その時に講話のあり方について1佐将補クラスと話をしても、そんな感じだった。メモには塩野七生、桜井よしこ、八木秀次あたりは出すと品下るからやめておいたほうがいいとも書いてある。

 蘐園学派(桂園と誤記していた)に近いことを言っているのだから、徂徠の『政談』や『答問書』を読めばいいのにとも書いてあった。あとで別課程だか別教務班だかの記録係が話を聞きに来たので「『政談』や『答問書』」とか書いとけと書いたら、そのまま書きやがった。あとで感心したある科長級からそいつ褒められて呼び出しを受けたが、しどろもどろだったので結局己も呼ばれた。「もっと中身も教えてやれ」と怒られたよ。ただし、その日(だったと思う)にはふたりとも外で科長からタダ飯タダ酒にありつけた。

 他にも副校長や、掃海機雷科長、港務科長の講話メモが残っている。

 そういえば副校長の時には、己が記録係だった。講話を聞きながら記録草稿を作り、昼飯食わないで20分手書き(ロットリングで書いていた)で上げて第2(だったと思う)学生隊長に提出した。連絡官やったあとだから、議事録作るのはお手の物だったが、「速すぎる、前の話を流用したのでは」と疑われた。仕方がないので、メモを見せたら、副校長の人相書と似顔絵、口癖、手癖やら、席が前のやつの後ろ頭の絵、しかも「首の後ろうなじ部分にアトピーの痕か、右手で掻ける範囲だけ禿げて瘢痕化」とか書いてあったので「オマエ面白半分で聞いているのだろう」と怒られたよ。でもまあ「記録本紙をご覧になっていただけば」と言ったら「まあよく書けている、やることやっていればいいか」と印鑑ついてくれたのも思い出。
2013.10
24
CM:7
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12:00
Category : ミリタリー
 第1空挺団は、無駄を減らして空挺大隊にすればよい。

 第1空挺団には、減らせる冗費が3つある。まず第1に、空挺団は正味が強化空挺大隊であり、団としての組織は過剰で無駄である。第2に、普通科大隊は実質中隊規模であり、大隊の格を維持している点は無駄である。第3は、空挺特科大隊は、本当に必要性があるかどうか怪しく、規模としても間違いなく過大である無駄である。

■ 規模に合わせれば空挺大隊ではないか
 空挺団は、正味は1900名の空挺大隊にすぎない。空挺大隊に、団としての格式や、団本部といった組織は不要である。空挺大隊に格式を改めた上で、団本部他を廃止したほうが良い。空挺団は、昔から正味大隊だといわれていた。かつて1200人、今でも1900人では、強化大隊程度の規模に過ぎない。しかし、それを旅団に準じた組織とし、将補級指揮官と司令部機能をもたせているのは、無駄な出費である。冗費は省くべきである。

 将補指揮官の能力や、司令部としての団本部の機能も、中央即応集団司令部に肩代わりさせればがあれば、問題も生じない。かつては空挺団は略独立していたので、それなりの指揮官と司令部機能をもたせる発想も現実的であった。だが、上に中央即応集団があるとなれば、将補指揮官と司令部機能は要らない。2佐指揮官と大隊本部で事は足りる。

 そして、空挺団を空挺大隊に格下すれば、人員・予算・ポストを節約できる。1900人に団本部は要らない。大隊本部とすれば、人員もポストも安く上がる。団本部とする体裁を保つための人員は、無駄である。また団長を大隊長にすれば、指揮官ポストは将補から2佐になる。指揮官を2佐にできれば、先任幕僚以下も2佐以下とでき、人件費を浮かすこともできる。

■ 中隊編制で充分ではないか
 空挺団にある普通科大隊も、フカした編制であり、実質は普通科中隊に過ぎない。今の空挺団は、普通科3ヶ大隊編制とされている。しかし、この大隊は人員数400名弱の徒歩歩兵に過ぎない。増強中隊と称しても構わないレベルである。

 ここで、大隊を中隊に改称すれば、冗費を削ることができる。普通科大隊の名前を中隊とすれば、ここでも人件費浮かすことができる。大隊本部とするための人員の無駄や、高止まりになっているポストといった冗費を節約できる。

 400人弱が中隊として大きすぎるというなら、250人の中隊にすればよい。400人弱×3ヶ中隊がいやなら、人数を付け替えて250名強の普通科4ヶ中隊にすればよい。別に大隊は3ヶ中隊でも4ヶ中隊でも構わない。

■ 空挺特科大隊は必要なのか
 空挺特科大隊も、本当に必要性があるのか怪しい。もちろん、空挺団が全力で空挺降下したあとには欲しい部隊だろう。だが、空挺団といっても、本当に空挺降下をやるかというと、あまり考え難い。日本が空挺作戦しなければならない状況も考え難い。通用する戦闘も考えがたい、実際に、戦後に行えた大規模空挺作戦の例は、第三世界への侵攻や介入程度しかない。

 仮に、本当に空挺作戦をやる情勢では、空挺特科は活かせるかどうか怪訝である。仮にアフリカやアジアの奥地に行くとしよう。その時には、特科が必要か、あるいは特科を運ぶ余裕があるか怪しい。歩兵がいれば充分であり、特科は必要ない状況か、あるいは歩兵しか運ぶ余裕がなく特科は持っていけないかどっちかである。

 そもそも、空挺特科大隊は使いきれるのか。今の日本にとって、戦時空挺作戦は困難である。航空戦力や準備期間、器材を投入できるほどの余裕はない。戦時の空挺団運用でも、手軽にできる陸上輸送やヘリボーンがメインとなる。このように空挺ではなく、ヘリボーンや陸上輸送での空挺団投入なら、空投前提の空挺特科大隊である必要はない。普通の特科部隊で構わない。また逆に、空挺をやるとした時でも、空挺特科大隊やその弾薬を継続して運ぶ余力があるか疑わしい。

 仮に特科火力を持つにしても、使えるかどうか怪しい大隊の規模は要らない。とりあえずの空投用器材として、重迫4門、あるいはM777のような軽量砲4門、あるいは2重装備として両者あわせて計8門程度の中隊編制でも充分だろう。空挺部隊への特科については、不足は補える見込みはある。仮にいざ本番で火力が足りないということになっても、砲と砲弾は別の部隊から引き剥がしてくっつけても良い。

■ 中央即応集団の中で整理したほうが良い
 空挺団は、中央即応集団の隷下に置かれた。これは、中央即応集団の細々とした支援を得られるようになったことでもある。司令部機能ほかは集団に投げてもいいし、支援についても必要に応じて集団から貰う形にしてもいい。また、他の空挺団の機能や役割についても、集団に渡す工夫があってもよい。今の状況では、空挺団を団として維持する必要性は低い。中央即応集団のなかの空挺大隊として整理し、冗費を削るべきである。

逆に、空挺団を活かすにも、空挺団を強化してもしかたもない。空挺団を特徴付ける性格は、機動力である。だが、その強化には、輸送機やヘリといった航空輸送能力や、それを支援する機能に力をいれなければならない。仮に空挺や空輸による戦闘能力強化にしても、空挺特科大隊といったオモチャよりも、UAV等も活用したような、空中からの対地攻撃能力や輸送能力を強化したほうがよいだろう。極端な話、大重量・大容積物資を一気に運べるような大型気球や大型グライダーに重装備を載せて送るような仕組みのほうが、いろいろと便利になる。



※ 空挺団を空挺大隊としても、基幹となる普通科部隊1000名程度の人数は減らさなければ、戦力の低下はおきない。
2013.10
23
CM:2
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12:00
Category : ミリタリー
 演習で88式SSMを先島に持っていくという話がある。「自衛隊統合演習に射程100km超の地対艦ミサイルを石垣島に展開へ」では、中国に対する牽制を狙っているという。それはそれでよい。

 しかし、88式や後継の12式は、離島展開に向いていない。いずれも、内陸で防護された陣地に置く発想で作られており、結局は本土に敵が押し寄せてくる発想の名残に過ぎない。自走できるものの、海上輸送での荷揚げや航空輸送では不便な大きさになっている。システムも無駄に高度であり、人員多数を従事させる兵器になっている。

 むしろ、離島防衛なら、ミサイルをバラで持って行ったほうが良い。ミサイル単体は、500-700kg程度しかない。大きさも、中身は直径30cm、コンテナも直径50cm程度である。ヘリに積めるし、コミューター機にも積める。漁船でも扱える重さ・大きさであり、容易に運べる。発射用トラック本体や、大掛かりな通信システムや、予備ミサイルを積むトラックやクレーンといった、ミサイルよりも何倍も重い物を持っていく必要はない。

 また、隠すことも容易である。極端な話、地面に幅・深さ直径50cm、長さ6mの穴を掘って仕舞っておけば、容易に発見できない。埋め戻しておけば多少の砲爆撃にも耐える。建物や横穴式の陣地にも簡単に入れることもできるし、方位が良ければそこから発射もできる。

 対艦ミサイル発射台もそれほど大したものは要らない。廃材で組んでもいい、廃車トラックのトリイ、仮設足場にでも立てかければよい。搭載も、ヤグラ組んでチェンブロックをぶら下げてもいい。700kg位なら、別にロープがあれば人力でも乗せられる。

 発射システムも大したものはいらない。対艦ミサイルはもともと高度なシステムではない。発射モードを幾つかもっているが、なんだかんだで通常使うのはLOS発射である。その向きにぶっ放せば、経路上にある艦船に突っ込む、燃料消費も少ないので最大射程となる。また、その方位で飛んで行けという方位発射や、この距離で捜索を開始しろというミサイル開眼距離の指定といったものも難しくない。人手での入力も、パラメータも少なく、時間的余裕もある。TOTにしても、大したロジックではない。コネクタを工夫すれば、今ならiPHONEとアプリで設定できる。

 これらの利点は、実は内地での運用でも変わらない。結局は、対艦ミサイルはバラでも構わない。バラで使う利点や、大掛かりな発射システムの不効率は、内地防衛でも同じことである。別に88式や12式の高度な発射システムが必要なわけではない。中身のミサイルをバラにして使えばよかった。また、海自の余剰ハープーンをそのままつかっても良かったということだ。

 特に12式は無駄の極みである。ミサイルとしての性能は88式と大差ない。それなら、在庫している88式の誘導部まわりだけを改修してもよかった。ミサイル全体を変えるにしても、88式発射機を使えるようにすればよかった。それをゼロから一式作ったのは、10式戦車と同じ防衛予算の無駄遣いである。
2013.10
20
CM:15
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12:00
Category : ミリタリー
 74式戦車の部品再生産は、容易に実現可能である。

 前に「74式戦車の部品の再生産はできない、予算は単歳だけど再生産は1年では終わらない」という半端な知識をひけらかす人がいた。普通に国債で契約できると教えたのだが、調べてみると実際に国債でやっている。

 ちなみに国債とは国庫債務負担行為のことで、国が1つの契約の履行期限を2-5年とするもの。普通は2-3年で、それぞれ2国、3国と呼ぶ。ミサイル艇は3国、掃海艇は4国。護衛艦と潜水艦は5年だが、これは国債ではなく特例の艦艇継続費でやっている。艦艇建造は年度ごとの支払いがバラつくが、国債だと年度支払いの標準があるが、

 平成25年度の一般会計予算をみると、武器車両等整備費用は最長の5年国債になっている。25年予算では、戦車や装甲車を購入する武器購入費も5国である。例の水陸両用車、AAVP-7、昔のLVTP-7を買う話があるので、輸入につきものの納期トラブルを防ぐために、このあたりは5年にしているのだろう。やる気になれば、明許繰越と事故繰越を使えば、この予算は7年まで引き延ばすこともできる。明許と事故繰は昔やったことがあるが、面倒だが難しいというほどでもない。

 武器車両整備費が5年国債なら、その枠内に74式の部品再生産を入れれば5年、伸ばして7年でできるということだ。もちろん、全ての整備費が5国というわけでもなく、中には単歳や2国・3国も含まれている。だが、枠の最長が5国なら、74式の部品再生産でも、理由を立てれば5国にするのは難しくない。

 車両については、輸入でなくとも国債にしている例もある。国産大型トラックは納期の関係で2国とされている。大型トラックで理由が立っているなら、戦車用部品調達でも理由は立つ。

 「74式は寿命だ、足回りやらエンジンやら」も、結局はやるべき整備をやっていないだけの話だ。確かに、油気圧式のサスペンションも面倒だろうし、エンジンは12ZC系列で素性は悪い。

 だが、エンジンと足回りに高度整備を施せば、74式はまだまだ使える。砲は機動戦闘車と同じである。FCSにしても、L-7は中距離までなら直接照準でも命中率に大差はない。装甲も、機動戦闘車よりも丈夫である。

 もちろん、戦車は余っている。90式戦車が350両、10式が50両もあれば、74式はなくても良い。ただ、74式の過半は製造から30年も経っていない。その足回りとエンジンに高段階整備を施せば、別に10式も機動戦闘車も新しく作る必要はなくなる。本土防衛やら警備所要は大したものではない。また、その優先度も低い。74式でも性能は充分であるし、無駄に高い新車両を買うよりも既存品を活用したほうが経済的である。
2013.10
19
CM:3
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12:00
Category : ミリタリー
 海自は物持ちが良い。退役艦艇から引き剥がした大砲の類は後生大事にとってある。昔の艦艇に積んでいた人力装填の3インチ砲が、大湊の弾薬補給処で相当後まで保管しているのを見たことがある。武器関係では対潜爆弾もそうだった。今ならOTOの3インチ速射砲※ やCIWS、機関砲の類も後生大事にとっておいてあるのだろう。

 その3インチ速射砲も、CIWSも予備品が相当に余っている。搭載艦艇がドンドン退役しており、除籍前には金目のものと使えそうなものは全部引き剥がす。物持ちの良い海自はそれを「何かに使えるだろう」と、とっておいてある。おそらくは、戦時に特設艦艇を作るとか、輸送艦や補給艦への追加装備として使う頭なのだろう。

 しかし、大概は取っておいてそのままになる。有事がないのはそれはそれでいいのだが、あの砲とCIWSをもっと積極的に活用できないものか。例えば、昨日挙げた、インド洋に置きっぱなしにしていいような安価な軍艦あたりは、それでこさえられるのではないか。

 はるな、たちかぜから取り外し、後生大事にとっておいてある5インチ砲Mk42 を、飾り程度の主砲にしてダブルエンダーで2門つける。対空と実用に使うOTOの3インチ砲も、背負部分に前後にダブルエンダーで積む。FCSもどうせあまる2型21だか22だか積んでおけば良い。砲の据え付けさえ良ければ、3000m先の風船に吊った1mのレフレクターに直撃する。対空防御が気になるなら、CIWSを追加してもいい。CIWSはFCSはいらない。両舷の高いところに自爆艇その他よけで掃海艇の20mmを1門づつ積んで置けば充分だろう。

 ミサイルも、中古で簡単なものなら積める。ハープーンなら置くだけで終わる。TOTのような高度なことをしなければ、ケーブル1本にスイッチ付けるだけで終わる。さすがに対空ミサイルは面倒だが、スティンガーやら携SAMを、ミストラルのSIMBAD発射機みたいなランチャーに積んどけばないよりはマシだろう。

 それで一隻をでっち上げれば、結構安く上がるのではないかね。



※  ちょっと前までは、3インチ速射砲の保管には意味があった。OTOの3インチ速射砲は、、Mk45なんかとは違って、要はデカイ機関銃で定期整備に時間が掛かる。このため、護衛艦本来の定期整備基幹に間に合わないので、Aに積んでいた砲をBに、Bに積んでいた砲をCに積むようなことをやっていた。たしか会計検査関係資料でみたことがある。
2013.10
18
CM:7
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13:00
Category : ミリタリー
 海賊対処のためのインド洋派遣は、もう5年目に入っている。いまのところ、水上艦2隻とP-3Cを順繰りに派遣しているが、その往復も厄介である。飛行機はともかく、護衛艦は置きっぱなしにしてもいいのではないか。

 インド洋に護衛艦を置きっぱなしにすれば、艦艇を往復させる無駄が省ける。ソマリア沖までは、1万2000kmある。片道15ノット強でざっと2週間はかかる。派遣期間5ヶ月のうち、往復に1ヶ月を費やしている計算になる。護衛艦を置きっぱなしにして、乗員だけを飛行機で入れ替える方式にすれば、その1ヶ月分が節約できる。水上艦2隻で、30日分とみれば、60隻・日の戦力を有効に使うことができ、艦艇燃料や乗員の給与・休養も安くあげられる。

 実際に、昔から遠洋漁業では置きっぱなし方式を採用している。漁船を現地の港にとどめ、乗員を飛行機で入れ替え、漁獲物を冷凍船で日本に送る方法である。漁船はそれで問題なく動いている。

 ただし、問題は3つある。1つ目は人員上の問題、2つ目は艦艇整備の問題、3つ目は艦載ヘリの整備問題である。

 まずは、人員上に問題がある。乗員を交代させる仕組みがないことである。今の仕組みでできるのは、できるのはスワップだけである。予備クルーがないので、交代用乗員の準備や、交代後の乗員を休養させることができない。また、細かいことだが、護衛艦にも厳密な互換性がない。同じクラスの護衛艦でも、全く同じには作っていない。同型艦の乗員を連れて行っても、ごく短期間は乗員完熟のための訓練は必要になる

 艦艇整備の問題もある。護衛艦の装備品には、頻繁な整備が必要なものがある。艦艇基地では、毎日整備が行われている。電測やシステム関係では、ほぼ毎日どこがしかの業者が入っている。艦艇をインド洋に長期間置きっぱなしにした場合、日本国内のようなメンテナンスは難しく、稼働率はそれなりに低下していくことになる。

 艦載ヘリの整備も面倒くさい。ヘリコプターの整備感覚は相当短い。SH-60の場合、飛行30時間ごとにSi-30の整備が必要になる。以降も、飛行時間が伸びるごとにより高段階の整備が求められる。インド洋派遣でもすでに相当のムリをしている。たとえば「きり」型では本来はできないはずのエンジン交換を行っている。

 結局のところ、これらの問題があるので、水上艦を行ったり来たりさせている。

 しかし、上で挙げた問題は、割り切りと工夫である程度解決するのではないか? インド洋派遣は、あくまでも海賊対処である。それほど高度な運用は求められない。対潜戦や対空戦闘の必要もない。監視と臨検、けが人の輸送といった戦闘とはつながらない仕事がメインであり、あっても機関銃をメインとする砲戦程度である。

 人員上の問題は、同型艦グループから、必要を絞った人数を抽出して予備クルーを作っておけば良い。それを、置きっぱなし水上艦に一番似た同型艦に乗せて国内で3日程度訓練して現地に送り込む。団結的な連携プレーは、派遣後に行動しながらできるようにすればよい。

 艦艇整備の問題も、使わない装備はしばらく放置しても良いと割り切れば良い。別に対潜戦や対空戦をやるわけではない。ソーナー、対潜砲台、SAMまわりは、日日で点検する程度でよいと割り切れば、整備はそれほど負担ではなくなる。もちろん、機関や大砲まわりが壊れたときには、今までやっているように、国内から部品を送る体制でやってみて、駄目なら技術者を派遣すればよい。

 艦載ヘリは、ヘリごと丸替えすればよい。艦内や現地でできる整備の限界を超えたときには、ヘリごと丸替えするしかない。ただし、ジプチに基地があるので、そこを拠点として予備機でも置いておけば、計画的、あるいは突然の機体入れ替えもそれほど難しくない。ヘリ自体は他国の大型輸送機でも、船舶でも送ることはできる。

 ただし、一番いいのは、置きっぱなし専用の護衛艦を作っておくことだ。高度な3次元レーダ装備やVLS、ソーナーもいらない。5インチ砲とヘリだけあればいい。護衛艦に乗ったことがあれば直感的にわかるような、ただっ広いレイアウトにして壁に説明書だらけの水上艦を、完全互換で3-4隻作っておけばいい。2隻は国内で、2隻は国外に置きっぱにしておいて、艦艇を2年1回でローテーションでもすれば、相当に便利だろう。バルブの位置や機械の配置も、広いところに系統立てて配置しておけば、余り悩まない。他の型から転勤しても直ぐに対応できる。

 海外派遣が終わっても、大砲とヘリが使えれば、いまの「あぶくま」よりもよほど使える水上艦が残る。平時の水上監視や、艦砲射撃での水陸両用戦の支援、ヘリに全てを依存する形の対潜戦といった任務に投入することはできる。
2013.10
15
CM:1
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19:40
Category : ミリタリー
 JSFさんが、例によって誤った知識で他人を攻撃している。「戦時国際法では発電施設への攻撃は禁止されています」と明言したのがそれだ。だが、戦時国際法には発電施設への攻撃を禁止する条項はない。

■ いつもの戦車への執着
 ことの始まりは、戦車の必要性への疑問に対する、いつもの拒絶反応である。戦車整備に疑問を持つ意見に対しては、JSFさんとその一党は、カミツキガメのように怒り狂う。イトヨとサイン刺激のようなものなのだろう。そこに戦車不要論とやらを見つけて、闘争を仕掛けている。その理屈も奇妙なものなのは前から変わらない。島嶼国家である日本で戦車は重要性を持たないという主張に対して、大陸国での戦車の重要性を述べるというチグハグなものだ。

 一党の中でも特に間抜けな意見としては、次が挙げられる。
松田未来@macchiMC72
だから戦車と装甲車では防御力の桁が違うと何度言えば。
http://kuon-amata.cocolog-nifty.com/blog/2013/10/post-ffd8.html …
105ミリ砲で装甲戦力の中核を担えると考えてるのかな。
https://twitter.com/macchiMC72/status/389750332571406336
dragoner‏@dragoner_JP
戦車が電撃戦等の機動戦理論の中核・主役足り得たのは、地上の全ての敵を自車で破壊できる攻撃力と、敵の反撃を受けても機動を持続する防護力を備えていたからであって、そのいずれも微妙な装甲車両がそれを代替できると考えているのならば、ああそうですかとしか言い様がない
https://twitter.com/dragoner_JP/status/389753316923539456
前者は、兵器の強い弱いでしか考えられない貧困な発言である。日本本土での防衛力の所要といった大きな視点は持てないことを示している。後者も理屈に酔っているだけの話である。戦車が戦いの主役となるような環境ではそうかもしれないが、日本がその環境に当てはまるのかについては、思慮が及んでいない。

 そして、「それは大陸国の話ではないか」と冷静な疑問を投げかける別人に、JSFさんは論難を仕掛けている。そこでは、いつもの時代錯誤も振り回している。「日本の本土防衛方針って『アメリカ軍の救援が来るまで粘る』」がそれだ。結局は、JSFさんの現状認識が昭和50年代で止まった「侵略される弱い日本」に留まっていることを露呈している。

■ JSFルール:電力網攻撃禁止
 この流れで出てくるのが、JSFルール、電力網攻撃禁止である。中途半端な国際法知識で
JSF‏@obiekt_JP
@kimomenistan だからそれがどうしたんですか? 絶たれたら復旧すればいいし、戦時国際法では発電施設への攻撃は禁止されています。戦時国際法を全く守らないような相手ならアメリカのみならず全世界を敵に回してしまうわけで、そいつ負けますよ。
https://twitter.com/obiekt_JP/status/389807425458405376
と述べてしまっている。

 これは、JSFさんの戦時国際法に対する理解が、複数の段階で誤っていることを示している。

 まずは、単純な条文理解の誤りである。国際法では、電力網への攻撃は明示的に禁止されていない。生半可にジュネーブ条約を読んだのだろうが、明示的に禁止されているのは、原子力発電所への攻撃である。その原子力発電所への攻撃も絶対的禁止ではない。攻撃が明許される条件も記載されている。

 また、JSFさんは攻撃禁止となる理由が全くわかっていない。攻撃禁止目標は、文明的価値の尊重、人命保護の必要性で決められている。原子力発電所が攻撃禁止とされたのは、攻撃に伴う副次的な被害、放射能が撒き散らされる事態が、人命保護という概念に反するためである。これは、ダムが攻撃禁止目標とされていることと共通している。ダム攻撃禁止は、人命の安全に必要な安全設備を攻撃することは、人命保護という概念に反するためである。

 そして、JSFさんは戦時国際法の根幹を為している、軍事的合理性という概念も理解していない。戦時国際法は、軍事的必要があり、付随する民間被害を受容の範囲とできる限りにおいては、軍隊やその施設以外への攻撃を認めている。たとえば、軍隊の利用や戦争遂行努力に組み込まれたインフラへの攻撃である。このため交通網や通信網は、攻撃目標であることは自明となっている。電力網も、交通網や通信網に準じた攻撃目標として、認知されている。実際にも、コソボ紛争でも攻撃目標となった前例がある。前例は国際法を構成する要素となりえるため、電力網攻撃そのものを持って国際法違反とは言いがたくなっている。

 また、JSFさんの発言には、国際法への無知以外の矛盾点もある。「戦時国際法では発電施設への攻撃は禁止されています。戦時国際法を全く守らないような相手ならアメリカのみならず全世界を敵に回してしまうわけで、そいつ負けますよ。」について、ある軍事研究家がその矛盾を突いている。迷惑を考えて名を明かさないが
http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-3308615,00.html 思いきりイスラエルがやってる気もしますが、米軍がこれに対して人道的介入したんでしょうか
と、普段からJSFさんが擁護しているそのイスラエルが、発電所を攻撃している実例をあげている。

 JSFさんは攻撃的衝動に身を任せたとき、無知を晒すことが多い。前の電気防蝕もそうだが、今回の国際法も酷い。一党も、戦時国際法についてご存じないので、その辺り無知であることを承知していないのだろう。

 そもそもの電力網等攻撃の危険性の指摘についても、JSFさんは電力網に限った反論しかしていない。JSFさんの反論もあまり説得力を持たないものであるが、それは置いておく。だが、電力網が攻撃されるときは、交通網も通信網も攻撃されている。それ以前に、制空権も失われており、自衛隊も悉く攻撃されている。制空権を喪った挙句、自衛隊も好きに叩かれ、その上電力網、交通網、通信網に攻撃を受ける段階で、果たして戦争継続できるものだろうか。

 また、日本上空での制空権を喪った段階では、日本周辺での制海権も怪しくなる。日米海軍による制海が失われれば、日本の生存に必須な海上輸送も止まる。また、JSFさんが心待ちにしている米軍の海上輸送もできない状態である。その状態で戦争を続けることを選ぶとするJSFさんは、かつての本土決戦論者と変わるところはない。

 そのとき、JSFさんは「自衛隊には無傷の戦車400両がある。敵を本土に引き釣りこめさえすれば勝てる」とでもいうのだろう。迷惑至極な話である。
2013.10
14
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 英国に艦艇用ガスタービン・エンジンを売るらしい。「エンジン部品英艦提供を政府容認 川崎重工製、禁輸三原則抵触せず」※によると、民間でも使えるエンジンだから構わないという話である。

 日本護衛艦の、ガスタービン・エンジンの半分以上は英国系エンジンである。ロールスロイスのオリンパス、タイン、スペイ※※ が、汎用護衛艦に使われている。スペイは今でも使われている。これらの製造・サポートは川崎である。§

 これらのガスタービンは、汎用といえば汎用である。航空機用エンジンを転用したもので、発電設備や大規模揚排水設備でも使われている。民間船にも例はないわけでもない。軍艦専用というわけでもない。だから輸出可能としたのだろう。

 しかし、「民生にも使える」ことと「民生品だから」は違う。中古の英国製艦艇を使っている国は多い。オリンパス、タイン、スペイの類を「民生用であり武器ではない」とすると、その手の国、しかも戦争中の国にも売れることになってしまう。

 相手が英国だから安心というのもわかる。それほど無茶はしないだろう。仮に転売するにしても、日本製であることをわからないようにごまかしてくれといえば、誤魔化してくれるだろう。

 本来なら「英国ならOK」といった国ごとの切り分けを前に出すべきではないのか。今でも、米国には防衛技術は売れることになっている。その仕組を、まずは安心の英国に適用する形を取るべきだった。

 これは、必要に応じて「売れそうで、売って構わない国」に拡大しても構わない。例えば、アジアなら豪とNZ、マレーシア§§ あたり、中南米ならアルゼンチン、ブラジル、チリあたりが、売れそうであり、かつ安心できる国だろう。逆に、インドやベトナムは相当に怪しい。今の政権の価値観外交とやらの横車があっても売らないに越したことはない相手である。¶



※ 「エンジン部品英艦提供を政府容認 川崎重工製、禁輸三原則抵触せず」『47News』(全国新聞ネット,2013.10.14)http://www.47news.jp/CN/201310/CN2013101301001673.html

※※ 他にも、護衛艦の非常発電機が小さいガスタービンだったような気がする。ただし、RRではなく、米国製LM500かもしれない。

§「日本におけるロールス・ロイス」(ロールス-ロイス)http://www.rolls-royce.com/japan/jp/about/rolls-royce_japan.jsp

§§ 今回のロールスロイス設計の艦艇用ガスタービンに関しては、これらの国は英連邦で英国製艦艇を使っているようだが、使っていない。実際には独製MEKO系がメインである。豪、NZのガスタービンは米国製、マレーシアではガスタービンは使っていない。

¶ まあ、中国もスペイの元になった英国系ファントム用エンジンの製造設備も持っているけどね。
2013.10
12
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Category : ミリタリー
 仮に対日戦で中国が全力で航空戦をやるとした場合、中国側の勝ち目は薄いのではないか。アラアラの計算ではあるが、開戦初日で実質パリティ、4日目でソーティ数で並び、8日目以降は日中戦力は逆転する。

 日中の航空戦力は、質で超越する空自と、数で超越する解放軍空軍といった態勢にある。

 空自側は質で優れる。戦闘機や兵装での性能、パイロットの技量や、整備能力、AWACSや空中給油機といった優位がある。対中戦での防空を考慮すると、洋上救難体制や、JADGEや陸海空対空ミサイルによる支援も優位にある。ただし、中国に対しては数で劣る。F-15は200、F-2(F-16改良型)は100と、約半分である。

 中国空軍は、数で優れる。概ねF-15に対抗できると見られているSu-27系をざっと400、F-16系に対抗できると考えられているJ-10を250保有している。ただし、質的には日本に劣る。Su-27系統はF-15に勝るものではなく、J-10はF-16に優位に立つ機体ではない。中国空軍パイロットの飛行時間は相当短いといわれている。整備能力は特に高いという話はない。実用AWACSは持たず、空中給油機も少ない。また、対日戦での攻勢的航空戦を考慮すると、J-10は航続距離の限界に近く、余裕ある戦闘ができない。日本側とは違い、航空救難や防空システム、対空ミサイルによる支援は期待できない。

 一概にどちらが優れているというわけでもない。仮に、日本が中国本土に空襲を掛けても、巧くはいかないだろう。Su-27やJ-10といった新鋭機だけでなく、J-7以降の旧式機も立ち向かってくるし、地対空ミサイルによる攻撃も考慮しなければならない。

 ただし、日本での防空戦であれば、日本側が有利な態勢を確保できる。日中両空軍が日本周辺で戦闘するなら、日本側が優位は確実である。使用できる基地数や、そこから戦場までの距離、JADGE、SAM、空中給油、航空救難その他の支援で、日本側は優位にある。中国側としては、航空撃滅戦で戦闘機を地上撃破したいだろうが、日本側の航空基地や、転用可能な民間空港の数から、それらを覆滅するのは難しい。仮に、琉球列島や九州にある航空基地を叩いても、足の長い日本側航空機が本州ほかから防空戦参加を阻止できない。本州西部にある基地や、本州、四国や大東諸島の空港を転用した特設航空基地から、悠々と防空戦に参加する。

 対日航空戦では、中国空軍は早期に戦力を損耗し、日本への航空戦が不可能になるのではないか。中国空軍は多数の作戦機を持っているが、態勢上の不利から日本周辺での消耗戦では分が悪い。仮に、日中の損耗比を1:3、日本機が1撃破される間に、中国機が3撃破される。航空戦1日あたり日本の損耗が5%、中国15%とすると、8日目で日中戦闘機数は209:208と同数となってしまう。

 航空戦での数的優位も、中国側はなかなかとれない。中国側が数的優位が取れるのは、開戦第一撃だけである。

 機体回転率を加味すると、航空戦では日本側が有利になる。日本側は防空戦で進出距離が短く、非常着陸も容易で疲労も少なく整備等後方支援に優れる。中国側はそれがない。日本側が1日3ソーティ、中国側が1日2ソーティとすると、初日の段階で中国はそれほど優位を取れない。中国が優位を取れるのは650機を集中運用できる第一撃だけになる。

 ソーティ数でみれば、日本側は開戦第一日でもパリティを確保できる。機体の稼働率を無視した計算だが、日本は初日900ソーティを出せるが、中国は1300ソーティに留まる。空中での戦力比は1:1.4であるが、中国側の圧倒的優位ではない。日本側はJADGEにより優位な対勢を作れるし、SAMによる支援も得られる。中国側は基地攻撃やレーダサイト攻撃にも戦力を吸引される不利がある。日本側防空任務と中国側制空任務の機体数は、1:1に近いものになるだろう。

 そして、4日目になると、日中の在空戦力比率は完全にパリティになる。日本側残存機257、771ソーティに対して、中国側残存機399、798ソーティと、ほぼ1:1になってしまう。これでは質的に優位にない中国側は、レーダサイトや航空基地を初め、軍港や交通結節点への対地攻撃の余裕は全くなくなる。対日航空戦をやる意味は相当に失われる。

 8日目、日本側209機、627ソーティに対して、中国側208機、416ソーティと、日中比は1:0.66となる。航空機性能や、JADGEほか支援、稼働率を考慮すると、中国側には勝ち目がない。そもそも、ここまで消耗する前に中国側は対米戦や、日本側空襲、それ以外との戦闘に供えて戦力温存を図るだろう。

日中航空戦

 これに機体稼働率を加味すると、中国側はさらに悲惨になる。日本側稼働率を0.8、中国側を甘めに見て0.7とすると、一日早い3日目にソーティ数が648対656とパリティになる。東側航空機の耐久性や、その運用、整備思想から、稼働率が維持できるのは、実際は3日が限度となる。3日目以降の稼働率が、日本側0.7、中国側0.5に低下すると、8日目のソーティ数での戦力比率は450:200になってしまう。

 また、日本側には、航空戦に使える予備戦力がある。50機のF-4も、防空任務に随時投入可能である。在日米軍の米空軍90機、海兵隊40機も、防空ほか航空撃滅戦や含む航空戦に投入可能である。空母に搭載される米海軍戦闘機約50機も、防空にもその他航空作戦にも参加できる。他にも、米国からの戦時増援は、少なくとも空軍戦闘機で50-100、空母1-2隻はある。

 これらから、中国には全面対日戦は相当に困難である。仮に日中の損耗比や一日の損耗率、ソーティ数や稼働率が多少変動しても、中国空軍には対日航空戦での勝ち目はない。中国は対日戦で制空権を、言い方を変えれば絶対的航空優勢をとることはできない。※ それからすれば、中国軍による日本本土侵攻は初手で躓くということだ。中国脅威論で、日本本土防衛を云々してもこんなものである。

 日本軍事力は強力であり、周辺国による本土上陸は無理な相談だということだ。本土防衛にしか使えない戦力を更に積み増しても無駄な話である。日本の安全保障上の問題はグローバル化している。陸自の戦車みたいな本土防衛にしか使えない戦力を作るよりも、その資源を外洋やその向こうで使える戦力に投入したほうが良い。



※ 尖閣諸島や先島諸島でも中国は制空権を打ち立てられない。仮に尖閣諸島での航空優勢が中国ベースになっても、日本側は任意の時期に航空戦力を集中運用することにより、航空優勢を奪うことができる。一時的な航空優勢で上陸戦なんかできやしないが、通り魔的な攻撃で上陸戦を頓挫させることはできる。
2013.10
11
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 江畑謙介さんが訳した『世界史を動かすスパイ衛星』(もう20年前の本ですね)に、スパイ衛星KH-9の解像度について書かれている部分がある。KH-9は冷戦時代に使われたフィルム回収式の偵察衛星である。今から思えば、こいつに燃料やフィルムを補給することも、スペースシャトルの重要な仕事ではなかったかと思うのだが、それはさておき、KH-9の解像度についてである。

 冷戦時代、偵察衛星の解像度についてはいろいろ言われていた。公開写真があったため、飛行機が類識別できることは判明していた。地上でジェットエンジンをアイドリングしたあとの排熱がエプロンの路面に残っているのも、赤外線で分かることも知られていた。しかし、それからはだんだん怪しくなってくる。たとえば、昼間の人影から部隊の人数が分かるとか、上から見てもソックリのソ連系戦車の類識別ができるとかドンドン怪しくなっていった。最後に、これは間違いなくガセだろうと言われていたのが、車のナンバーが読めると言ったものだ。

 その偵察衛星の解像度について、江畑さんは「これらの写真はあまりに詳細、かつ鮮明に写っていたため、一三六キロの高度からではなく、あたかも二六メートルくらいの高さから撮影したかのようであった。」(p.159)と書いているのに出くわした。鮮明であることを説明する表現なのだが、136kmと26mを対比するのはあまりにも突拍子もない。

 もちろん、ヤードポンド法をメートル法に置き換えたことは容易にわかる。マイル、ヤード、ファゾム、チェーン、フィート、インチのどれかをそのままメートル法に置き換えたのだろうと勘案して計算すると、85マイルと85フィートであった。

 しかし、なんで「85マイルの高さではなく、85フィートの高さから撮影したようだった」と訳さなかったのかが不思議でならない。136kmと26mなんて組み合わせの方が突拍子もないし、実感もわかない。「85マイル(136km)と85フィート(26m)」とか、せめて「150kmと15m」のように丸めればよかったのではないか。26mなんて別に根拠のある数字
でもない。

 割りと数字が厳密な割には、タイトルはザックリと改題しているも不思議だった。訳題は既述のとおり『世界史を動かすスパイ衛星』であるが、原題はは『America's secret eyes in space』である。タイトルはオリジナルにまったく拘泥されていない。それなのに、マイルとフィートをわざわざ換算しているのは、なんともヘンな印象をもったよ。

 もちろん、江畑さんの訳なので内容的にも間違いもなく、面白い本なのでオススメですけども。
2013.10
08
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 台湾が新型艦、あるいは新造艦を買う方法はあるのだろうか。

■ 台湾は軍艦が手に入らない

 台湾は、軍艦調達に苦慮している。台湾には、大型艦を建造できる造船業がない。海外から軍艦を買うにしても、中国が機嫌を悪くするので売る国もない。アメリカだけが、現在でも台湾に艦艇を輸出しているが、やはり対中配慮もあるので旧式艦がメインとなっている。

 台湾には造船業がない。台湾は高度な艦艇整備が可能であるが、造船能力がない。台湾には、旧大戦型駆逐艦にFRAM相当を施せるような、高度な整備設備・技術はある。だが、船体を作り、主機を据え付けるような造船業はない。これは、台湾に大規模な製鋼業がないためである。造船業には背後に製鋼業が必要である。それがなければ、船体を作るための種々の鋼板や、プロペラシャフトを柔軟に供給することができない。その製鋼業が台湾にはない。

 台湾には、新型新造艦を売ってくれる国がない。世界中でどこの国をみても、台湾よりも中国が大事である。台湾問題ごときで、重要な対中関係に影響をあたえることは許されない。このため、どこの国も台湾には艦艇を売らない。フランスがフリゲートを、オランダが潜水艦を、ドイツが掃討艇を売ったことがある。だが、中国の抗議と、対中関係の重要性から、全てはスポット的な取引で終わっている。

 唯一売ってくれる米国も、最新艦艇は供与しない。唯一、台湾への武器売却を行っている米国も、米国も対中関係を重視する。中国の意向も汲んで供与武器は選んでいる。米中ともに「防衛用武器」に限るというルールを尊重している。そこに、最新鋭の大型水上艦は含めることができない。できるのは、ノックス級、ペリー級の売却であり、最新でも退役したキッド級でなければ売ることはできない。

 このため、台湾は海軍力強化に困っている。台湾にしても、海軍力を強化したい。

 台湾にしても「新中国が攻めてくる」と、すべてを対上陸戦に備える時代は終わっている。もちろん、中国による侵攻対処は日本よりも重視はしているが、かつてほどではない。政治的・経済的にデタントの段階に入っており、両岸関係の安定は長続きする見込みにある。金門・馬祖などを見ればわかるように、対上陸戦にはかつて程の比重は置かれない。

 台湾は、むしろ海軍力を強化したい。その志向も、外洋に向かっている。台湾の繁栄は自由貿易に依存しており、自由貿易は航海の自由に依存している。また、領土問題や海上領域問題もある。台湾は、南沙諸島分割でのプレイヤーであり、重要な島嶼を実効支配している。また、尖閣も自国領土と主張している。その南沙や尖閣ほかで、漁業での対立問題も抱えており、フィリピンとは険悪な関係にある。これらの問題は、陸戦力では解決不能で、海軍力を建設しなければならない。

 ただし、既述したとおり、台湾には新型軍艦を売ってくれる国はない。そのため、台湾の海軍力増強はブレーキが掛けられている状態である。


■ 中国から買えばいいのではないか

 しかし、艦艇問題は、中国から軍艦を購入することで解決するのではないか。

 中国は、台湾への武器売却でフリーハンドを持っている。中国が台湾に武器を売却すると言って、文句をつける国はない。

 政治的にも、台湾への武器売却は全く不可能という話でもない。台湾は、すでに大陸反攻を放棄している。台湾は武器を欲しがっているが、その武器は台湾の現体制を維持するためだけに使われる。台湾軍は、中国本土への直接的な脅威にはならない。また、中国も、現状では強いて台湾を武力回収するつもりもないので、台湾軍が多少強くなっても、当座の問題はない。

 艦艇の取引は、新中国と台湾にとって悪いものではない。

 台湾は、念願の新型艦艇を手に入れることができる。新中国から購入には、サイズや、新造であるかどうか、数量的な制限はない。台湾が台湾の事情に合致した艦艇を購入することができる。今までのように、台湾の都合に必ずしも一致しない大型艦や、逆に小さく古過ぎる小型艦があてがわれることもない。

 新中国は、台湾への西欧武器輸出を邪魔することができる。欧米が台湾に武器を売却するということは、政治的にはその欧米の国が台湾に肩入れすることである。政治的な後盾という錯覚は、新中国が最も危惧する台湾独立を勢いづける要素になる。だが、新中国が台湾に武器を売却することにより、武器購入で気を大きくした台湾人が、独立論をぶつことを妨害できるのである。

 また、両国ともに、武器取引によって、両国の関係安定を宣伝できる効果が得られる。すでに両岸関係は安定しているが、その安定が一層進んだ印象を、それぞれの地域内や国際社会に与えることができる。そして、両岸は平和裏な併存が保てるといった印象は、両国軍事費の削減や、海外からの投資そのほかで有利な要素にもなる。

 実際には、新中国には米国製に慣れた台湾海軍のメガネに適う艦艇はない。台湾海軍は、フランス製のラファイエット級は使えないとまで評するほど贅沢な海軍である。新中国製は、フランス製以下と評されるだろう。

 しかし、船体だけを作らせて、あとは台湾で艤装すれば問題は解決する。新中国に計画段階から噛ませることで、外国製武器システムの輸入に伴う問題は解決する。新中国も関与した計画段階から、アメリカ製の戦闘システム、ガスタービン・エンジンを搭載するとしておけば、後の購入で文句を言われることもない。両岸合意の上となれば、やる気になれば、日本製の補機や舵機、給排水系統や、計装すら購入できるだろう。潜水艦であれば、今の新中国製、元級も似たようなものだ。船殻だけ国産で、エンジンやソナー、多分システムもは独仏製を使っている。台湾向けに売ったところで大差はない。

 中国による、船体だけの輸出例もある。1990年代、タイ王国海軍に輸出したフリゲートがそれであった。中国製の船殻とエンジンに、欧米系の武器システムを装備したものである。船体はそれほど悪くないらしい。1980年代に輸出された中国艦、チャオプラーヤ級については、タイ海軍は酷評しているが、90年代に建造されたナレースアンにはその悪評がない。
2013.10
07
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12:00
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 香港誌『鏡報』に高新7号が記事にされている。要は、米国のEC-130のお仲間らしい。梁天仞さんによると「運-8に中波からテレビ放送までの器材を積んで、空中から宣伝放送をするための器材である」とのこと。

 だが、米国と同じように心理戦機を使えるかというと、怪しい部分がある。心理戦機は、それで勝利するための機体ではない。戦闘で勝てば有効利用できるかもしれないが、心理戦機だけでは戦闘に勝つことは難しい。そもそも、心理戦機を使うためには、ベースとなる心理戦のノウハウが必要である。中国は国内向け心理戦のノウハウはあるかもしれないが、対外戦向けのノウハウが充実しているとは思えない。

 梁さんの「神機心戦機『高新7号』」では、概ねEC-130と同等であると説明されている。梁さんによると、高新7号は運-8(An-12)を改修した機体で、19人乗り、AM,FM,HF(短波:SWのこと)、テレビ放送設備を持ち、同時にEA、EPほかの電子戦が可能とされている。8時間以上の飛行が可能であり、すでに飛行時間6000時間を越えているともされている。

 しかし、心理戦機の具体的な利用については言及されていない。あるのは、米国のEC-130の説明であり、同じように使えるという示唆である。

 心理戦についても、まともに言及していない。例としては『史記』での四面楚歌と、日中戦争でも宣伝戦だけである。後者は、日本軍隊無法、の蛮行を世界に伝えたという意味で、心理戦とはややずれている。

 実際に、高新7号は対外戦には、あまり使えないだろう。もともと中国の対外宣伝が上手にいった話は聞かない。かつての、あるいは今の北京放送を聞いても、宣伝効果よりも国内都合を先に出している。対外戦での心理戦も見るべきはない。唯一、国内で日本軍を包囲した上で「投降しろ」がいいところである。朝鮮戦争でも上手く行っていないし、上手く行った国共戦は内戦である。

 心理戦機は、信念が揺らいだ相手には有効かもしれない。だが、それも対外戦であれば、相手国の文化、国情、人心に通じて始めて可能になる。信念を持つ相手となると更に難しい。米国であれば、ソフトパワーで多少は信念を揺るがせられるが、中国にはそういったものはない。

 基本的に、アメリカが作っているから作ったものだ。機体は難しくない。機内の偽装も難しくない。対して高くもない周波数に、AM/FM/SSB、あるいはデジタルで送り込むだけの話であり、民生用器材を組み合わせればできてしまう。

 中国も、実用としてはあまり期待していないだろう。梁さんもどう役に立つのか困った様子で、国内での災害時で活用できるとしているが、その程度ではないか。あるいは、VOAほかの外からの宣伝放送にジャミングを掛け、あるいは強力な通信で完全に上書きするような使い方がいいところあろう。



※ 梁天仞「神機心戦機『高新7号』」『鏡報』435号(鏡報文化公司,2013.10)pp.50-53.
2013.10
06
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 「はまゆき」が標的として処分されるニュースがあった。「旧護衛艦『はまゆき』最後の出港…『標的艦』」では、砲爆撃の目標とされるとある。

 標的処分は楽に見えるが、実際には解体処分したほうが安い。退役した護衛艦は使えるものを全部ひっぺがしてから標的/解体される。だが、標的となると海洋汚染防止のためにもう一手間掛けられる。油や油の混じったビルジを徹底して抜き出して、タンク内を清掃する必要がある。対して、解体処分はそこまで厳密ではなく、金属回収により業者の利益が見込めるため、逆に国にお金が入る。

 ただ、「ゆき」型を廃用するのは勿体ないものである。「ゆき」型は、後継艦の「きり」型よりも評判は良かった。

 「きり」には問題点がある。有名な後部マスト冷却問題のほかに、上甲板の亀裂問題もある。致命的な問題ではないが、却って悪くなったと常々言われていた問題である。

 逆に、「きり」が「ゆき」よりも優れている点あまりない。ヘリ搭載能力がやや優れること程度であるが、結局は狭いので、常時2機搭載するのは難しい。時期的に建造時から静粛性が考慮されている点も長所であるが、「ゆき」も後に静粛性確保をやったようで、今となっては差もない。そもそも、対潜戦もまずはヘリ運用から始まる時代には、あまり個艦の静粛性は問題とはならない。

 さすがに、「ゆき」よりも「きり」を先に廃用しろということにはならない。運用上は、「ゆき」と「きり」は同じようなものである。老齢艦から処分するのは当然である。「きり」よりさきに「ゆき」を処分するのは、妥当である。

 しかし、「ゆき」よりも使えない護衛艦を残して、「ゆき」を処分するのは妥当ではない。具体的には、使えないのは「あぶくま」型である。「あぶくま」型は「ゆき」型に比べ、ヘリ搭載ができず、航続距離・行動日数が少なく、荒天に弱く、対空兵装も弱い。

 「ゆき」を処分して「あぶくま」型を残すのは、あまり効果的ではない。特に、ヘリ運用能力がない「あぶくま」型は、護衛艦としてはあまり意味は無い。ヘリ運用能力を再整備した「ゆき」を残したほうが、水上艦戦力としては、効果的な戦力を残せるのである。

 「ゆき」をケチケチ退役させるよりは、「あぶくま」級6隻をまとめて退役させたほうが良い。処分するのが勿体無いというなら、江田内か霞ヶ浦あたりで、6隻メザシでつなげておけばいいのではないか。「ゆき」があれば、「あぶくま」は使うこともない。



※ 「旧護衛艦『はまゆき』最後の出港…『標的艦』」『Yomiuri Online』(読売新聞,2013.10.5)http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20131005-OYT1T00393.htm
2013.09
30
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23:05
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 JSFさんは、電気防食について調べてから喧嘩を売ったほうがよいのではないか。

Jの字の電蝕頭

 JSFさんが、いつものように他人に噛み付いているのだが、その内容が悉く誤っている。今回、論難のために振り回しているのは電気防食と船舶への知識なのだが、すべて誤っている。まず、電気防食が電磁気的な効果であるという発言であり、一般的に使われている犠牲陽極を知らない点である。船舶についても、スクリューの材質について小型船舶の例を一般的なものと誤っている。

 電気防食はイオン化傾向を利用しており、JSFさんの言う「電磁気式の防錆技術」ではない。電気防食は、イオン化を利用した方法であり、論難を仕掛けられた、らいとさんの「電気化学的に防いでいる」ほうが正しい理解である。もちろん、イオン化を防止するために微小な電流は流れるが、磁気は効果を及ぼさない。ボイラには清缶のため、磁石を使ってスラッジをコントロールする実用新案があるが、JSFさんはそれと勘違いしているのだろう。

 また、電気防食に外部電源を使うと思い込んでいるのも誤りである。JSFさんは
JSF@obiekt_JP
@BlueRightning 羽田空港の拡張部分の海に浸かる金属部分の脚にも電気を流して防錆してますが・・・
https://twitter.com/obiekt_JP/status/384655323199332352
と述べているが、例外を除いて外部電源から電流を流すことはないし、羽田空港も外部電源方式を採用していない。電気防食の基本は、亜鉛のプラグを挿す犠牲陽極で行われる。鋼に、それよりもイオン化傾向が大きな亜鉛の栓を挿す(正確に言えば、絶縁されているらしい)と、防食電流が流れて亜鉛だけが腐食し、鋼が生き残るというものである。羽田空港ほかの民間土木構造物も同じである。また、犠牲電極は船体全体に適用できるものである。「[犠牲陽極は]船体全体には適用できませんよね。」と自分の無知を知らずに言いがかりをつけるのは、あまりにもみっともない。

 さらに、船舶についての知識も怪しい。スクリューの材質をアルミ合金というのは、常識を離れたものだ。
JSF@obiekt_JP
@BlueRightning 私は船体の話をしてるんですが・・・プロペラはアルミ合金ですよね、それ船体全体には適用できませんよね。
https://twitter.com/obiekt_JP/status/384656717193048064
と述べているが、一般的にスクリューは耐食性に優れる黄銅を使用している。確かに、小型の船舶の中にはアルミ合金を使うものもあるようだが、ある程度以上の船舶では、民船、軍艦を含めてすべて黄銅である。中にはアルミ青銅のスクリューもあるが、あれは銅ベースでアルミは添加剤程度であり、アルミ合金とは言いがたい。

 このような誤った知識で、出会ったばかりの他人に論難を仕掛けているのは滑稽に過ぎる。JSFさんは、犠牲陽極を採用した船舶についてその名を上げろと勝ち誇ったように迫っている。
JSF@obiekt_JP
@BlueRightning では適用した船舶名を出して下さい、実用船で。
https://twitter.com/obiekt_JP/status/384657415653711872
おそらく、個別確認が難しいので、慎重に具体的な船名を上げなかった相手に「私は現在までの船舶の話をしてるのに、それでは話は噛み合いませんよ。」と勝ち誇っている。だが、犠牲陽極を多用した船舶なら幾らでも挙げられる。海自艦船はすべて犠牲電極を利用している。民間船舶も使っているのは犠牲電極である。他にも、自衛隊の桟橋にも使っている。ミリタリーに詳しい、正しい軍事知識の普及などと言って論難を仕掛けているのに、そのミリタリー、軍事について物を知らないのは戯画的ですらある。



※ 関連のツイートを見ると「磁気機雷などに敏感に反応するような方式の防錆法を護衛艦に使うはずがありません。」という別の人の発言があるが、電気防食程度の電流では磁気機雷は感応しない。それに感応するUEP機雷というものもあるが、実用例はロシアのみで、しかも氷海で潜水艦を相手にする特殊用途であり、原理的に安定した発火が得られるかどうかもあやしく、実戦使用例もない。

※※ 長いの書いて今晩はメンドイから、明日は適当に短いのをアップしてお茶を濁しますね。




----------------------------寝る前に追記------------------------------

 んー、JSFさんのツイートが追加されているけど、恥の上塗りなんじゃないのかな。

恥の上塗り

「[犠牲陽極式の]貴方が挙げたプロペラの防錆法はプロペラにしか適用できず船体には適用できない、少なくとも現在の船舶には採用されていない」といっているけど、船体に適用されているし、海水で冷却する船用機関にも適用されている。現在の、少なくとも日本艦船ではメジャーな方法なのを「採用されていない」と言い切るのもね。

 電気防食なんて、世間の一般常識レベルの話なんだが、フォロワーだかのオトモダチが、誰も教えて上げないのは、「俺に恥をかかせるのか」逆恨みされるからだろうね。はだかの王様になっているわけだねえ。
2013.09
30
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12:00
Category : ミリタリー
 統合部隊にいた時に、部隊の上曹会から出勤時の服装を云々する文書が回ってきた。「ジャージ、短パンにランニングのような、手入れされていない服装で本省に通うのはふさわしくない」という内容。そのなかの「各隊の上曹は服装容儀を指導するように」という文言にカチンと来たことがある。

 そもそも、仕事の時は制服か作業服に着替えるから、実害はない。外で着る私服なんていうのは、あくまでも社会的なドレスコードの話に過ぎない。それに反しているといういっても、社会的な圧力ないし社会としての軽蔑で圧すればいい。命令や指導でどうこうしようというのは誤りである。

 「『ふさわしい服装』ってなんだ」となると、余計におかしな方向に行く。スーツのたぐいは、世間での仕事着であって、通勤服装ではない。通勤服装については、社会的な規範はない。さらに、規定しづらい。襟のついたシャツと折り目のついたズボンと決めると、アロハシャツも認められるし、作業服ズボンもOKになる。しかし、トックリのセーターにジャケットのような服装はダメになる。その辺りは、どうやっても規定しづらく、適当な裁量になってしまう。

 発端は、隊でラッパー志望な感じで通勤するオトッツァンが出たため。スキンヘッドにダボッとした服に帽子をかぶっているのはアレだが、それはそれで様式的には統一されている。みっともないというようには見えないし、手入れは十分されている。

 服装ではなく、ラッパー風なのが気に喰わないのだろう。逆に、宇多丸のように黒スーツにサングラス掛けてきても、適当な理由をつけて文句をつけたのだろう。

 しかも、そのオトッツァンは40を超えた1曹。服装にしても、本人なりの信念あってやっている、あるいは非常識にも筋金が入っている。だから、何を言っても無駄。そんなことを言って人間関係ギクシャクさせるよりも、腕は確かなんだから、気持ちよく仕事をしてもらったほうがいいのではないかと思ったよ。

 隊員にしても過半は1曹以上、当の上曹か、それよりも上の幹部だから、上曹会だって指導も何もできない。幹部でもチャチな迷彩のビニール製ジャンバーとか、Tシャツジーパンがいた。そういった奴には、下士官の集まりの上曹会は何も言えないし、むしろ追従する。逆に気骨のある先任クラスなら、部下はもちろん、自分の上司にも意見する。意見が通らないからといって上曹会に上げて吊し上げしたりはしない。

 防衛省/自衛隊には、隊員の市民権的自由を制限しようというモメンタムがある。上部組織や上位階級からの文句もあるが、それよりも、自分達から望んで、自分達を縛ろうとする動きが気持ち悪い。切実な必要もないのに自由や権利を制限しようとする。その言い出したヤツは、大抵は忠犬面して偉そうにしているのには虫唾が走るものだ。
2013.09
23
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11:59
Category : ミリタリー
 水兵帽の、前盾の部分に巻くリボンの事をペンネントと呼ぶ。帽子の上に巻く鉢巻だと思えばよい。(画像)

 基本的に、自分の所属する艦艇・部隊の名称が入る。ただし、転勤時には「大日本帝国海軍」とか「海上自衛隊」というものに差し替える。 戦時にも、所属がわからないように漠然とした「大日本帝国海軍」とか「海上自衛隊」に変えるらしい。

 もちろん、英海軍仕込みの習慣である。英海軍系以外の海軍にもペンネントがある。フランス海軍も、赤いボンボンのついた水兵帽にペンネントをつけているし、ロシア海軍もつけていた。ないのは、米海軍くらいか。米海軍水兵は白帽になにもつけていない。

 そしてペンネントが、日本でも海軍以外でも使われていた例がある。戦前の官報をみていたら関東都督府海務局が「舵取、油指、水夫、火夫」に「関東都督府」というペンネントをつけさせていた。

 明治41年11月1日の、関東都督府告示101号であり、そこにペンネントが図示されている。ちなみに、関東都督府とは、中国東北部、遼東半島先端にある関東州を支配する役所である。南洋庁や樺太庁の親戚みたいなものだ。

 今は下士官以上しかいないが、海上保安庁に水兵がいれば「海上保安庁」。水産庁に水兵相当がいれば「水産庁」というペンネントをつけることになる。

 各県の漁業取締りや水上警察も似たようなものだ。警察に水兵相当がいれば「長野県水産部」や「埼玉県水上警察」とかいうペンネントをつけるのが本来の姿ということになる。
2013.09
20
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 以前に買っていた『先端科技』を発掘。表紙写真と記事に対空兵器があった。

 台湾の対空機関砲、漠然とVADSかと思ったら、連装型(T82)があった。T-82とはいっても、一応手を入れていて、蜘蛛の巣タイプの照準器ではなく、ドットサイト風になっている。測距用のレーダもなさそう。レーダで測距して、単純に後落量の修正だけすればよさそうにも思えるけれども、安いという利点が死ぬのでシンプルにしている様子。

 あとはチャパレル。これは民生用のトラックに搭載されている。基地防空や後方での使用なら民生トラックで充分なわけで、合理的に見える。逆に見れば、陸式の短SAM(海で短SAMというとシー・スパローを指す)の類は過剰性能の側面もあるかなと。短SAMのミサイル部分もそう、発射機もそう、さらにシステムでも相当凝ったつくりにしている。ミサイルがIRなんだから、光学照準だけでも充分に見える。

 数を揃えるためには、過剰性能は切り落とさなければならないということか。

 20mm機関砲で、大きな航空機を狙うのであれば、あまり高度な照準機構は要らない。例えば、空自のVADS(昔は海自も持っていたというか、所属した部隊にあった)は、レーダと画像認識追尾を持っている。※高性能であることは明らかであるが、肝心の機関砲がそれほど長射程ではない。所詮は2000m程度の短射程である。それなら、台湾式にドット・サイトでも充分に狙える余地はある。利点として、そのぶん安くできて数も揃う。高度なVADSを1基の値段でT-82は4-5基は買えそうだ。

 IR誘導の地対空ミサイルも同じようなものだ。わざわざ高度な捜索レーダ他のシステムを付けたところで、ミサイル・シーカが捉えられない目標は攻撃できない。陸空の短SAM(これも居た部隊にあった)は、結構高度なレーダを持っているが、結局は攻撃できる目標は目視で見える目標である。台湾式に光学照準器でも充分に交戦可能である。レーダを足すにしても、雑な2次元レーダと、簡易な測距用レーダ(レーザでもいい)を加えれば良い。そもそも、ミサイル本体を開発することもなく、空対空ミサイルをそのままぶっ放せば済む話である。昔、西ドイツはサイドワインダーを地対空使用した。台湾のチャパレルもサイドワインダーから翼のジャイロを外したものに過ぎない。日本も不良在庫の空対空ミサイルをそのまま使えばよかった話だ。

 なお『先端科技』には日本の総火演の記事があった。面白いのは見学席の写真についていたキャプション。「松葉杖ついた隊員が見学させている。(休ませてやらないなんて)徴兵制の軍隊では考えられない。(スパルタンだね)」って感じのキャプションが付いていること。「わが民国軍では考えられない」のだろう。日式軍隊(韓国・北朝鮮もそうだね)と民国軍・解放軍との間にはカルチャー・ギャップがあるのだろう。



※ ファランクスCIWSよりも高性能になっている。ファランクスは全自動であるが、従来型は、中身は単純なレーダで構成された、何だという程度の簡単なシステムだった。
2013.09
19
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 北朝鮮との戦いがあるだろうと言って、だからいわゆる「反日」をやめろと言っても、韓国人を怒らせるだけではないか?

 日本戦略研究フォーラムに樋口譲次さんの「韓国防衛は、日本なしには成り立たない -それでも反日政策を続けるのか?」が掲載されている。

 樋口さんは、韓国の対日姿勢が厳しいことを問題視している。いわゆる反日では北朝鮮との戦争で大変と述べている。「韓国の安全保障或いは防衛上、日本の協力が不可欠」とする前提で、反日は損であるとしている。

 しかし、韓国の防衛で日本の協力は不可欠ではない。

 朝鮮戦争や70年代までと比較して韓国は、相当に強くなった。政治的にも安定し、軍事力も充実し、経済力も発展した。対して、北朝鮮は政治的に不安定になり、軍事的には旧式化し、経済的には衰退している。この状況で、日本の協力はあるに越したことはないが、不可欠ではない。

 韓国は、政治的に安定している。今の韓国は、面白い部分はあるものの、民主主義政体である。李承晩体制のように、アメリカの傀儡に操縦されるバナナ共和国でもなく、傀儡が転じた独善的な独裁者による統治体制ではない。国内で反対者に果断な刑罰を振るう軍事政権でもない。北朝鮮が侵攻してきても、韓国政治体制は動揺しない。韓国国民には一致団結して戦う体制が確保されている。

 また、軍事力も充実している。朝鮮戦争当時とは違い、韓国には教育された職業軍人と、彼らに訓練された膨大な国民兵がいる。装備もほぼ最新装備であり、強力な航空戦力まで揃えている。しかも、米国のバックアップもある。

 経済的にも相当に進歩した。経済面について、樋口さんは古い見方をしている。70-80年代の、アメリカが咳をすると日本が風邪を引く、日本が風邪を引けば韓国は肺炎になるといった認識にある。しかし、90年代以降、韓国は経済での対日従属から離れている。既に韓国は日本の下請けではない。自前で北米や欧州、中国と貿易し、その規模を拡大している。もちろん、日本との貿易や投資は、韓国経済で大きな地位を占めているが、日本の協力がなくとも、北の侵攻には十分対抗し、その後には北進もできる経済力は持っている。

 逆に、北朝鮮の著しい体力低下を注目すべきである。

 北朝鮮の政治体制は戦争に対して脆弱である。国民支持のあやしい権威体制であり、軍隊や警察機構による締付で維持されている。戦争により、その締付が弱まれば、政治体制も弱まる。戦場で大敗北を喫すれば、現体制も相当に揺らぐことになる。

 北朝鮮の軍事力も相当に低下している。ミサイルといったものを除き、主要装備は80年代水準のままであり、韓国軍を打倒する力はない。ソウルに嫌がらせ的な攻撃を掛けるのが手一杯である。

 北朝鮮の経済は、そもそも対韓国侵攻を許さない。食糧事情や液体燃料、輸送能力もカツカツであって、対韓戦は可能な状態ではない。

 この状況で、北との対立があるからと、韓国がいわゆる「反日」を引っ込める必要はない。もちろん、韓国政府や首脳は、日本と仲良くしなければ損が多いことは承知している。しかし、歴史的経緯から、国民感情が反日である。政府や首脳は、国民感情を無視した政策を取れない。民主主義なら尚更である。

 植民地支配された側は、支配した側を許すことはない。日本人は昔のことは水で流せ、70年も前の事で「恨」を持ち出すなという。だが、韓国でも中国でも「恨」というのは、元々「100年たっても200年たっても消えないほどの怨み」意味である。そして、国民国家としての韓国建国神話にもいわゆる「反日」含まれている。今の韓国は「日本に抵抗し、勝利して生まれた国家」であり、日本に好き勝手されないことが存在理由なので、対日感情が悪いのも当たり前の話である。

 韓国は本質的には、北朝鮮への警戒や憎しみよりも、日本への警戒や憎しみの方が強い。北朝鮮は同じ国の一領域に過ぎない。同じ民族が住んでいるどころか、親類縁者も居る。いずれは一緒になる仲間と考えている。対して、日本は半島を征服した悪の国家であり、不倶戴天の敵である。

 韓国は対北戦では日本の協力は必ずしも必要ではなく、本質的には北朝鮮よりも日本のほうが憎い。その国に対して「韓国防衛には日本の手助けが必要だろう、だから俺たちを赦せ」といってもせんない話である。前者で「後進国だと思って馬鹿にするな」と反発を受け、後者で「何様のつもりか」と怒るだろう。

 いずれにせよ、樋口さんの主張が成立するのは、韓国が脆弱であった70年代までの話である。確かに60年代の軍事政権では、北朝鮮の脅威から、国民感情に逆らっても「反日」を力で封じ日本との国交を樹立した。70年代80年代でも、経済的な離陸のため、満足に食べるため「反日」はやめろと説得して日本の投資を受け入れた。しかし、今の韓国にはそれほどの切実な必要性はない。そのような主張をしても、韓国国民を怒らせるだけの結果に終わるだろう。



※ 樋口譲次「韓国防衛は、日本なしには成り立たない -それでも反日政策を続けるのか?」『日本戦略研究フォーラム』(2013.7)http://www.jfss.gr.jp/kiho%20ok/kiho57/6%20page.htm

※※ 実際にできることは、国民や資本の安全確保や、貿易や投資、交流での理不尽な障害排除といった実務的利益を順々に確保し、堅固にするような働きかけではないか。韓国政府や指導層にも過激な「反日」は良くないと考えている層は居る。
2013.09
18
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12:00
Category : ミリタリー
 「これは新型爆弾に違いない」と思ったね。某学生で頭上演習やってたときの話。当時のメモ見たら思い出したのだけど「至近の根拠地滑走路がゲリラに爆破された、48時間使えない」って想定が付与された話。

 まあ、想定は天気みたいなもので、文句を行ってもしょうがない。だが、ゲリラに飛行場を爆破する能力があるのかと笑ったよ。

 想定が伝えられたとき、同じグループでの話は大概だった。ハッキリ言えば、みんなでバカにしていた。己は「噂の原子爆弾じゃないの? マッチ箱一つで瀬戸内海が蒸発するらしい」と言い、航空管制は「原子爆弾なんか使うと、地球の窒素が核融合して火の玉になる」と戦時中の話をした。掃海は「トラック一杯のC4を爆発させたんじゃないか、どうやってトラック持ち込んだかは知らないけど」と言う。潜水艦に至っては「予め地下に穴掘って、木製杭で支持しといて、そこに火をつけたんだよ」と言った。

 なんにしてもゲリラ程度の攻撃では、滑走路を破壊はまずできない。ゲリラが携行できる爆薬量で厚さ◯◯センチ近くある滑走路を破壊できるものではない。エプロンは更に厚い。携行できる爆薬も、滑走路面に密着させても置く程度では何の効果も見込めない。アスコンのオーバレイやコンクリート舗装面を浅く削るだけで終わる。ヘビ穴掘って、そこに填埋すれば威力は上がるが、コンクリート舗装面に深く孔を開ける方法もないし、悠長にやる時間もない。HEATで穴開けたってキレイに開かないし、孔を清掃した上で、横穴掘る時間はない。

 己は補修は3時間だろうと見た。2時間は混乱しているのでなにもできない。しかし、その後1時間チョットあれば直ぐに修復できる。浅く開いたすり鉢状の孔には、アスファルト常温合材でも積めとけばいい。懐かしの3Rマットを使うまでもない。縁の盛り上がりはできないだろうが、出来てもコンクリならブレーカで直ぐ削れる。仮に鉄筋が暴れて外に出ても、グラインダーで切断するのは難しくない。

 爆発の威力を大甘に見て、想定作った奴がイメージした、多分500lb程度の地中爆発でも48時間使えない話はない。実爆例では、空自は作業時間で3時間もあればDFMマットを展開して修理していた。混乱2時間を足しても6時間がいいところだった。6時間は、芦屋5術校に行った航空管制と略同意見だった。

 それなら、ゲリラは基地内に隠れては攻撃してを繰り返して邪魔をした方がいい。だが、結構警備も厳重であるので直ぐに防遏される可能性が高い。逆に、防遏できない状態であれば、飛行可能状態にある航空機は一八で飛んで逃げてしまう。日本側航空機の脚は長い。遠くの航空基地からでも戦場には容易に到達できる。

 皆でひとしきり馬鹿にしたのは、想定作ったのが艦艇砲術科のナレの果ての、不人気教官だったため。その時の想定は、別件含めてみんなそんな感じ。リアリティに必要なデティールがないので馬鹿にしていた。

 とにかくご本尊は頭が悪かった。CS(陸のCGS相当)行ったことだけが自慢なんだが、海自だとCSは何の価値もない。なまじCS行ってミソつけて2佐どまりする奴も多いので、あんまり有難くない。そのオミソ組なのでアレだった。課程でも、勝手に最終試験を実施した挙句に「オマエ達の内、平均点に達したのは半分しかいない」という、平均の意味が分かっていない怒り方をしていた。その後の、経歴管理上のお情け艦長でも問題児だったらしい。

 なお、統裁部にも「なんでそんなに威力があるんだ」と世間話的に尋ねられたらしい。だが、そこにいた別の教官、パイロットは、アラをどうにか言いくるめるのがめんどくさかったのか『ダイナマイトを使った』と言ったらしい。まあ、爆薬に縁のない職域だと、爆発物はみんなダイナマイトになるなと。
2013.09
16
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Category : ミリタリー
 「崇高な国防のため愛国心に燃える防衛産業は赤字請けをしている」というのなら、同じように愛国心に燃えている防衛ライターの桜林さんも赤字請けをするべきではないのか?

 桜林美佐さんは、防衛産業は決して儲からない慈善事業であると主張している。

 桜林さん「『自衛隊関連企業6割黒字』誤解を与える分析データ」では、防衛産業で利潤が出るという調査結果に対して、誤っていると主張している。

 自衛隊と取引のある企業約4600社について、6割が黒字であるという調査結果に対し、桜林さんは不満である。その不満のあまりか、防衛事業では利潤が出るはずはないと主張している。
これだけを見ると、まさに「防衛産業はもうかっている」という印象だが、『ニッポンの防衛産業』を読んでくださっている読者の皆さんには、それが誤解であることを十分ご理解いただけると思う。

 では、なぜこのような結果に? おそらく答えは簡単ではないかと思う。要するに防衛以外の部門で黒字を続けているような企業でなければ防衛省・自衛隊の仕事などできないということではないだろうか。
桜林美佐「『自衛隊関連企業6割黒字』誤解を与える分析データ」(ZACZAC,2013.9)http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130910/plt1309100730000-n1.htm


 桜林さんは、防衛関連企業は民業でボロ儲けして、防衛受注では赤字受注をしなければならないらしい。

 しかし、事実としては赤字受注するといったバカな話はない。企業は利潤を追求する組織である。赤字で受注する組織は、企業ではない。NPOですら事業継続のために赤字にはしない。防衛産業はNPO以上に利益を嫌っているのだろうか。

 そもそも、防衛関連契約では、赤字受注は発生しない。競争入札で原価割れはダンピングを疑われる。防衛関係での入札の歳、官側原価計算の額より安い時には、応札者は価格について利潤が出ることを説明しなければならない。そもそも、桜林さんが増やすべきだと主張する随意契約は、経費に利益率を乗じたものになっている。どう頑張っても赤字にはできない。

 そこにあるのは、奇怪な理想の投影である。桜林さんの記事では、防衛省と防衛産業はお金に頓着すべきでないとする、勝手な理想が投影されている。いずれの記事を見ても「儲からない」「事業として割に合わない」とする、防衛省や防衛産業にとっての自己弁護をそのまま記事にしている。おそらく迎合ではなく、本気でそう信じているのだろう。

 それならば、桜林さんも防衛や防衛産業で儲けるべきではない。

 桜林さんの言論は「防衛も防衛産業も、愛国心から皆んな赤字持ち出してやっている、だから感謝しろ」と説教するものだ。ならば、同じように愛国心に篤い桜林さんご自身も、赤字持ち出しとすべきだ。

 桜林さんは、防衛関係で著作が多い。『日本に自衛隊がいてよかった』や『誰も語らなかった防衛産業』を表しているという。それならば、その著作について印税分を放棄して安価とし、防衛が如何に素晴らしいか、防衛産業が如何に清貧であるかの実態を世に知らせるべきである。

 また、自衛隊や保守系の団体での講演も多い。交通費その他で赤字受注となっても、その謝金を依頼元の団体に寄付すればよい。

 生活は、防衛以外の部門の話で儲ければよい。桜林さんは「防衛以外の部門で黒字を続けているような企業でなければ防衛省・自衛隊の仕事などできない」と言っている。同じように「防衛省・自衛隊の仕事」をしているのだから、そこで汚く儲けることなく、赤字請けして、生活は他業で儲けるのが筋というものだろう。



※ 桜林美佐「『自衛隊関連企業6割黒字』誤解を与える分析データ」(ZACZAC,2013.9)http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130910/plt1309100730000-n1.htm
2013.09
12
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Category : ミリタリー
 自衛隊でやらされるのは、バレーボールとハンドボールだが、どちらもロクなことにならない。誰がしがアキレス腱を切る骨を折る。商売になったものではない。

 バレーボールはそもそも娯楽的な安全な競技であった。冬の間、体育館で体を動かして、順繰りにラリーをするのが目的の遊びだった。身体接触もないのであんまり怪我をするはずがない。

 しかし、それに勝ち負けに繋がるようになると白熱する。金も賭けていないのにハッスルする奴が出てくる。

 それを軍隊にやらせると、敢闘精神とか訳の分からない理屈が出てきて、部隊同士で本気で競う。アレな指揮官やら副長クラスがコドモ同然になる。勝つことが指導されるようなって、課業時間内に練習させられる。ボール遊びなんて、戦争や普段の行政には何の役にも立たないのに。

 若い連中は体が上部で柔らかいたためか、あんまり怪我は起きない。しかし、「オマエら生ぬるい」と、昔取った杵柄のオトッつぁんが出てくるとヤバイ。体はナマりきっているくせに、感覚だけは昔のまま。しかも普段の仕事がつまらないとストレスを持っていて、それを競技で発散するタイプはダメ。まずアキレス腱を切る事故が起きる。己が直接見ただけでも、50代総務課長2佐とか40代後半副学生長3佐がブツンとやっている。他所の部隊の話ともなると、いくらでも話がある。

 もっと危ないのはハンドボール。アレは身体接触を伴う。骨ポッキンが起きる。だいたい、全体重かけて投げるので、その勢いで床で滑っただけで軽く火傷する。ブツかったら骨も歯も折れるし鼻も曲がる。

 ハンドボールは真面目にやらないに越したことはない。体重を掛けて投げられないと装っておくに限る。そうであれば、列外に出られる。己は実際投げられないが、列外で大変に助かった。練習員や若手海曹士ならシゴかれるが、幹部なら体験レベルで済む。

 しかし、血の気の多い体育バカは危険を顧みずにハンドボールをする。アレで勝っても賞状もらって終わりなのだが、特に海曹士中の体育会系自慢は必死になる。たしかに、競技で勝つのは海曹士内でのステータス、男らしさの証明みたいなものなので、必死になるのもわかる。しかし、一般命令を切ってでやっても、なんだかんだで怪我は自分持ちなのに、そこまで頭がまわないので骨ポッキンをやる。

 かつては、さらに危険なラグビーがあった。アレは体に悪い。体力があって、体が柔らかい高校生あたりでやれば怪我もなかなかしない。しかし、大人になってから本気にやるのは思慮が足りない。海自でも昔は毎年死者を出していたらしい。

 しかし、90年代以降には、タグを使ったタッチ・ラグビーに格下げしたので、死者の話はあまり聞かなくなった。己等が幹候でやったラグビーは、このタッチ・ラグビーだった。腰にマジックテープのタグをつけて、それを剥ぎ取ればタックル成功とみなすラグビー。高校の時分に無理やり授業でやらされたのに比べても、安全なことこの上ない。

 だが、タッチラグビーでも、次年度に幹部予定者の曹長さんクラスが心臓麻痺を起こして亡くなったらしい。ボール追いかけ系のスポーツだと、ハッスルし過ぎてそうなる可能性があるということだろう。

 そういえば、幹候の武道選択で己は剣道をやった。何のことはない、首が良くないので、柔道を真面目にやると、頚椎をおかしくしたら敵わないという頭だ。柔道と違い、剣道はやったこと無いけど叩かれて痛いだけで済むだろうと考えた。だが、高校だか大学だかで剣道やっていた阿呆が、素人の喉元に突きを入れて頚椎捻挫かなにかを起こしているのを見て、これもヤバイと思った。普段はおとなしいのだが、竹の棒をもつと、なんというか普段のストレスからか、本気になっていた。

 己は安全第一だったので、同じ志を持つもの何人かと手を抜いていた。ヤバいヤツとは合わないように気をつけて、仲間内で「行きますわよー」とか「やったなー」レベルで剣道の時間を誤魔化したよ。下手くその基礎練習ということで、サボりさえしなければ注視されていない。だから、乱取?の時には隠れてフェンシングのサーブルのルールでやっていた。たまたま己を含めた二人が、大学の体育という情けない単位でやったことのあっただけだが、4人で攻撃権の入れ替わりだのバッテフレッシュだのとかくだらないことをやっていたよ。

 まあなんだ、 オトッツァンが球技をやるなら、グローブの要らない柔っこボールとプラバットの子供野球か、ペタンクの類がちょうどいいのではないかね。まあ、パチンコも球技といえば球技だが、あれは借金の元で、別の意味で身を滅ぼすからやらないにこしたことはない。
2013.09
07
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Category : ミリタリー
 「与那国島への沿岸監視部隊の配置等 (155億円)」は相当にフカしているんじゃないのか。

 陸自は与那国島に監視部隊を配置する計画がある。用地20haを借り上げ、造成して100-200人程度の部隊を配置するという。その金額は、26年度概算要求では155億円としている。※

 しかし、これは相当に高すぎるのではないか。

 基地自体は〆て40億でできる。道路を含めた造成には10億程度、庁舎と隊舎も高く見積もって20億程度、上下水道・ボイラ・光ファイバ程度の民間用通信ほか設備も高く見積もって10億程度に過ぎない。今までの基地整備での実績や、建設物価等の現地価格を見てもその程度に収まる。

 そうなると、残り100億をどう使うのかがわからない。与那国島の沿岸監視部隊の主任務は、海洋監視である。陸自が見える範囲程度を海洋監視するなら、装備工事はそれほどの規模にはならない。1億もしないフルノの民生用レーダでも構わない。護衛艦に積むような、長距離用の対水上レーダとしても、10億もしない。対空用レーダは、必要に応じて空自が展開するという話になっているので、当座は必要ない。水上監視であれば、海自警備所のような1500mmや2000mmのような望遠カメラ他、光学監視器材も必要だが、EO/IRを入れても多寡が知れる金額である。通信やシステム連接含めても、30億も行かない。

 当該事業について、概算要求は相当に水増しをしているのではないか。特に新規事業としての概算要求では、可能性に掛けて相当に水増しをする。やらされたことがあるのだが、必要ないものでも関連していれば計上した。逆に、総額でとれそうな見込みから概算額を出すようなヘンテコな積算もやったことがある。

 与那国島監視部隊でも、同じようなことをしているのだろう。例えば、予算を引き出すために例えば、ELINT/SIGINTや、あるいはEW関連の装備※※をつけているのではないか。これらは、関係あるといえば関係あるが、効果的かと言われればあまり効果的ではない装備である。

 「与那国島への沿岸監視部隊の配置等 (155億円)」は、高く見積もっても70億の事業ではないのか。基地建設費用として40億、レーダやシステム、通信その他の機能として30億が常識的な範囲である。

 もちろん、更に減額する余地もある。造成も、隊舎・庁舎ほか必要な所に限定して削平し、あとはフェンスで囲うだけにすれば、5億も掛からない。庁舎も、200人以下で隊舎兼用にすれば10億未満で作れる。レーダやEOも民生用等で安価に済ませれば5億もいらない。

 もともと、先島への配置自体は、自衛隊配置の空白地帯を作らない政治的な効果を狙ったものだ。小銃と機関銃をもった1個中隊を置けばそれで済む。庁舎は廃止された学校なり、廃業した泡盛の製造所でも借り上げればよい。隊舎も、民間借上や既存建物の購入で構わない。監視機能も、日露戦争で陸海軍が作った海岸望楼や監視所程度に民生用レーダで役割は足りる。

 与那国への部隊配置そのものは、施策として効果がある。中国とのゲームに役立つし、台湾の尖閣諸島関与を防止する価値も持つ。しかし、その部隊として高度な沿岸監視機能は特に必要なく、そのために155億は多すぎる。先島に貼るのは歩で充分であり、桂馬や香車を貼っておく必要もないということだ。



※ ※ 『我が国の防衛と予算 -Defense Programs and Budget of Japan』(防衛省,2013.8)http://www.mod.go.jp/j/yosan/2014/gaisan.pdf、p.7

※※ 高性能な逆探知機にしても、実はそれほど高くない。旧式のSH-60Jでも、艦艇や航空機・ミサイルからの電波を繰り返し周波数その他で識別し、脅威であるかないか、電界強度から距離を探知する機能はついていた。-Jの調達価格50億円のうちガラが20億で、搭載装備が30億として、そのうち1割程度でも3億しかしない。
2013.09
04
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12:00
Category : ミリタリー
 艦船用ボイラでの断熱性確保は大した問題ではない。しかし、へぼ担当さんはいつもの習性で、自分を大きく見せるために重篤な問題であるように語っている。艦船用ボイラについて「基本的にある程度の断熱の上で冷却しないと、ボイラー外部が悲惨なことに。」という発言がそれだ。

 へぼ担当さんは、石綿をロストテクノロジーとして、なければ蒸気艦で高速発揮は難しくなると述べている。へぼ担当さん自身がまとめたTOGETHER「ボイラー断熱材あれこれ」でそのように述べている。「アスベストは本当に理想的だったのですが、ノンアスは本当に大変です。」がそれであたる。

 ちなみに、話の発端も、アスベストを使わないから速度が上がらないというもの。インドが空母に断熱材としてアスベストを使わせなかったので、速度要求を満たすことが難しく、納期が伸びたというものである。これも、アスベストを使わないと高速艦艇はできないというロシア側言い分をそのまま鵜呑みにしたツイートが発端であるが、へぼ担当さんの発言でないので置いておく。

 しかし、アスベストを使わなければ高速発揮できないとするのは、明確な誤りである。海自の「しらね」や「くらま」は高速発揮できないというのだろうか。海自は、アスベストを使わずとも蒸気艦で高速を発揮している。

 へぼ担当さんは、アスベスト不使用である海自DDHの例を全く知らないのだろう。自賛のために纏めたTOGETHER「ボイラー断熱材あれこれ」「ロストテクノロジーは本体だけではなく、むしろ周辺技術の方に有ることが少なくありません。それに気づくことが出来るか、現場第一線の真価が問われるかと。」と頭括している。蒸気艦による高速発揮という「ロストテクノロジー」を復活させるためには、アスベストが必要だとへぼ担当さんは示唆している。

 そもそも、艦艇用ボイラで断熱材は致命的な問題ではない。「基本的にある程度の断熱の上で冷却しないと、ボイラー外部が悲惨なことに。」と述べているが、別に悲惨なことにもならない。高温部を無理に高断熱を確保しなくとも、ガスタービンのように空隙に外気を導入して空冷すればよい。そもそも、機関室自体が不断に送風機で外気を入れており、熱気を外に捨て冷やしている。

 たしかに高温部に断熱材は巻くものの、それで熱気を遮断するつもりはあまりない。缶や配管については、目的は保温であり、圧力低下を防止して経済性を上げること、あるいは高熱による火傷や火災防止が目的である。機関室は60度ちかくなったものの、実際の冷却は通風で済んでおり、極端な断熱性は必要とされない。また、仮に、外気導入・排出で冷やしきしれなくとも、艦船の周囲には冷却材となる海水はいくらでもある。実際に、艦艇で高温を嫌う器材は海水や海に熱を捨てるクーラーで冷やしている。

 また、断熱材に熱がかかっても大して危険ではない。へぼ担当さんその点で誤っている。「その保温性能が故に保温材内面と外面との温度差がものすごいことになり、それだけで極めて強烈な応力がかかることになる。」と述べているが、これは誤りである。圧力は保温材で保持しているわけではない。圧力を保持する圧力容器は断熱材に包まれており一様な温度となる。「保温材内面と外面との温度差がものすごいことにな」って「極めて強烈な応力が」かかっても、保温材が動くか、変形するだけの話にすぎない。もちろん、それで何か重篤な問題が起きるわけでもない。

 しかも、艦艇用ボイラは基本低圧であり、それほどの温度・圧力には達しない。へぼ担当さんがどれくらいの高温高圧缶を想定しているかは分からない。だが、実際には600psi程度、500度・60kg/cm^2がいいところで、これは陸上では低圧ボイラ相当である。失敗とされるガルシア級の高温高圧缶でも550度・85kg/cmであり、それでも缶には問題はなかった。ガルシア級の失敗は、配管や補機が高圧に耐えられないことにあった。

 まず、へぼ担当さんは蒸気艦で起きる機関トラブルについてよく分かっていない。蒸気艦で起きる機関トラブルでは、ボイラが壊れよりも先に配管や補機でトラブルが起きる。また、その際に起きる蒸気火災のリスクが問題となる。缶とタービンはあまり壊れない。それを知らずに、缶が吹き飛ぶことだけをリスクと考えている。また、その原因に断熱性の欠如を挙げているが、断熱性は缶の破裂には影響しない。問題は、缶にどこまで圧力を掛けるかの話であって、断熱の良否ではない。

 そもそも、へぼ担当さんは艦船用ボイラについても全く分かっていない様子である。「それだけ難しいboilerですが、波浪で揺れ動く船舶に載せたら、どのような配慮が必要か?!」と述べている。だが、艦船用の蒸気系統には、大した自由液面はなく、昔から燃料も空気も水も無理やり圧送している。揺れはほとんど関係しない。もちろん、逆さまになれば動かないだろうが、その程度である。へぼ担当さんのいうように、今となって「商業秘密」といったものはない。周知技術にすぎない。

 いずれにせよ、へぼ担当さんがいつもやる、自分を大きく見せるための発言である。
それらの面を総合的に勘案すると、熱伝導率が低く、その内部での熱応力の発生を弾力性他でカバーできる魔法の素材だったアスベストと耐火レンガの差異は極めて大きく、アスベスト代替材でも似たような問題が生じることがある。(詳細はノンアス関係各社ノウハウのため控えます。)
へぼ担当 2013年7月31日6:41 https://twitter.com/hebotanto/status/362568660344254465
と、いつものように事情通を気取っている。しかし、本当に「ノンアス[ベスト]関係各社ノウハウ」を知っているかは怪しいものだ。へぼ担当さんには、CIFの意味を知らずに、「へぼ担当さんの考えたCIF」を語ったことがある

 今回の発言も、それを自画自賛するために纏めたTOGETHERも、珍奇なCIF説明と同じ伝であるよ見えるのである。
2013.09
03
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12:00
Category : ミリタリー
 カナダの駆逐艦と補給艦が衝突したニュースがある。たとえば"Canadian warships collide during manoeuvres in Pacific"と報じられている。シアトル対岸にある加領ビクトリア、エスクィモルト(ピュージェット・サウンドから100kmも離れていない)から、ハワイにいく中途、訓練中にぶつかったという。
※がそれである。

 訓練は、曳き船・曳かれ船というもの。互いが互いを曳航する作業で、片方が曳航船となり、残りが被曳航船となる。自動車で言えば、エンスト車牽引のお稽古のようなもの。

 曳航は相当に難しい。海自でも、艦艇の技量を見るには、曳き船・曳かれ船をやらせるのが一番良いという話もある。

 まず、曳き出す過程が難しい。曳航側、引っ張るほうが曳航索を準備するのだが、最初から全部を繰り出すものではない。いきなり張り合わせると、索に溜まる張力が悪さをする。曳航索はゴム紐のようなもので、曳かれる方の船を近づけてブツけるとか、索が切れて暴れだし両艦艇作業甲板上にいる人間を殺傷する可能性がある。平時訓練で時間があれば、相当に準備する。後甲板に板を敷き、曳航索を蛇行させ、そこに一種パワーヒューズとして、索に10センチ間隔で細紐をつけて板と結束する。曳航を始めてテンションが掛かりだすとき、細紐を斧で傷つけて張力を少しずつ逃す。航洋曳船や海保の巡視船には、張力を調整する曳航装置があるが、軍艦にはない。


 曳っぱりだしたあとも面倒くさい。自動車ならば、牽引される方にハンドルもブレーキもある。しかし、艦船にはそんな便利なものはない。ハンドルに相当する舵は、効き出すまで時間がかかる上に、曲がれる範囲も相当に制限される。ブレーキに相当するのは、機械が生きていれば、有効なのはスクリュー逆転程度で、あとは気休め程度にスクリューの遊転/固定設定と、可変ピッチプロペラのピッチ変換があるだけである。同じ速度で真っ直ぐ進むにしても、外力や固有振動周期で多少は暴れる。変速や変針でどういう挙動をするのか分かったものではない。

 なにより止めるのが難しい。機関や舵が生きている艦艇なら、後進や舵を活用すればどうにかなる。しかし、本来はどちらもダメになった艦船を想定しての訓練になっている。常に安全側には振れるものではない。

 だから、軍艦による曳航訓練で事故がでるのは、仕方がない部分もある。特に実戦的な曳航訓練、準備を省略しての曳航開始や、比較的高速での曳航をすれば、事故は起きやすい。しかし、実戦的な曳航訓練をしていないと、戦闘状況ほかで上手に曳航できない可能性が高く、艦船を喪うことになる。

 便宜上海軍と呼ぶが、カナダ海軍は正当な英連邦海軍である。英連邦海軍は実戦経験を重視する。厳密に安全性を確保するより、実戦や実遭難での対応力確保を重視していたのかもしれない。事故を起こしたことは不手際であるが、事故を恐れるあまりに実戦的な訓練ができないとか、そもそも曳き船・曳かれ船ができない海軍よりはよほど立派で、頼もしい。

 そのカナダ海軍に、中国とのゲームに多少であれ参加したほうがよくないかという話※※ もある。キチンとした海軍力が日米側に積み上がれば、中国によるキャッチアップは相当困難なものとなるだろう。



※ "Canadian warships collide during manoeuvres in Pacific""The Star.com CANADA"(Toronto Star Newspapers,2013.9.2)http://www.thestar.com/news/canada/2013/08/31/two_canadian_warships_collide_during_exercise_manoeuvres_en_route_to_hawaii.html

※※ O’Neil,Peter"Navy should shift warships to West Coast in response to China’s aggressive military buildup, defence analysts say""National POST"(National Post,2013.8.11)http://news.nationalpost.com/2013/08/11/navy-should-shift-warships-to-west-coast-in-response-to-chinas-aggressive-military-buildup-defence-analysts-say/
2013.09
01
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12:00
Category : ミリタリー
 横須賀不祥事で副長官が叱りに来たときに、号令官と司会めいたことをやらされたことがある。総監部には、甲板士官に相当する若手A幹部はあまりいない。そこでたまたま居た己がやらされた。

 己はお面が宜しくなく、体型もアレなので、めでたい席の号令官や儀仗隊はやったことがない。しかし、声がデカイので、不祥事の時や顔の見えない儀仗隊指揮官はよくやっていた。飛行場地区でやると、己の号令は1km程度は届くらしい。その伝で、総監部でも不祥事や声だけ聞こえれば充分の時には、号令官や儀仗隊はやった。

 そこで、浜田靖一副長官、ハマコーJrが横須賀に喝いれに来るときには、総監部総務課長に頼まれて、裏方の号令官ほかをやらされた。たしか、通信隊おクスリ事件や、うみぎり放火事件が不祥事だったと憶えている。総監部にある体育館に、総監部やその隷下部隊だけでなく、自衛艦隊や地区所在機関、在泊艦艇乗員が集められる。ヘリで副長官が来る30分(くらい前だったか)には、とりあえず己が号令掛けて整列完了。

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 しかし、それから30分が長い。海自なので、並べるには2分は掛からない。総務課長から「ラクに休ませ」を指示されて令する。とはいえ、ラクに休めは余りラクでもない。だから課長は「相当、時間があるのでヘダラに休んでいいよ」と直接令する。適当に私語をしても構わない雰囲気なので、小さい声で駄話が始まる。

 それでも時間は更に余る。なんといっても変化がないことが耐え難いもの。ヘリが防衛庁を出たとか、今総監公室に入ったとか、そういう状況があれば伝えられればいいのだけれども、情報から放置されると参集した連中も飽きてくる。

 そこで、マイクテストをやれと言われる。もちろん、マイクテストなんか集まる前にとっくに終わっている。なにもやることがないから、やっておけというもの。その際には、所属部の部長や課長が、なんか適当なギャグを入れろという顔をしている。少なくとも己にはそう見えた。

 しょうがないから「テストのマイクを行う」「ただいまテストのマイク中、ただいまテストのマイク中」「テストのマイク終わり」とやった。気づく奴は気づいて笑ったが、気づかないのも半分くらいいた。二佐以上の高級幹部には「不祥事で集まっているのに余計な事言いやがって」と不機嫌な顔をしているのもいたよ。

 ただ、しばらく経って「副長官(が総監部庁舎から)でられました」の電話が入る。そうなると、私語は一斉に止まる。そこは海自で勝手に整列しなおし始める。

 その時には、フネあたりから出てきた正規の号令官に交代したか、そのまま己がやったか覚えていないが、確認のために「きをつけ」と「右にならえ」を号令して、「直れ」と「安め」を令しただろう。ちなみに己がやったとすれば「つけぃ」と「ぎえ、らえ」「ぉれ」「すめ」としか発音しない。

 あとは「副長官はいります」で「つけ」と「頭の敬礼」を令すれば仕事は半分終わり。話を始める前に副長官「休ませて下さい」で総務課長「休ませ」で「整列休め」を令する。その後に、政治家は「もっとラクに」というのが通例で、総務課長「ラクに休ませ」を令し「休め」を掛ける。何があっても「ラクに休め」は掛けない。

 政治家だけあって、ハマコーJrの話は、結構飽きさせないものだった。叱責は最初の2-3分で、あとは「ボクは盲導犬を寄付しているんですよ」みたいな支持者向け風の話だった。親爺がアレだと、息子は清く生きようとするのだろうかね。あまりキレイなお金でもないが、そのお金はきっちりキレイに使っている印象だったよ。

 あとは「以上です」をもらって、間髪入れずに「気をつけ」と、一呼吸置いて「頭の敬礼」。余計な話だが、海自の頭の敬礼は、下士官兵しかやらない。准尉以上はそれに合わせて挙手の敬礼をする。あとはJrが出て行くのを待つだけ。出て行ったら「別れ」を令する。あの体育館は出入り口が狭いので「詰まるから海曹士はしばらく待って」位は言うはず。この時には、人によっては命令口調であり、あるいは懇願口調、これは階級高低はあんまり関係しない。一佐クラスでもパッと管制して、「海曹士はチョットまってね」という人もいる。

 それで総監部庁舎に戻るのだが、ハマコーJrの話が良かったせいか、己の「テストのマイク中」は別段怒られなかった。いつもは小煩い防衛部N-4x(数字が入る)、同職域のの三佐も何も言わない。まあ、やったあとでも部長はニヨニヨしていたから何ということもないのだけれどもね。
2013.08
31
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Category : ミリタリー
 防衛省平成26年予算要求に、ちよだ後継艦として508億円の「新型潜水艦救難艦」が挙げられている※ が、果たして必要なものだろうか。

 防衛省は「ちよだ」後継艦を要求している。会計上、艦艇建造費は5年払いなので、認められれば2014年発注の2019年に就役となる。特に、大規模災害対応を前に出すことにより「ちよだ」よりも2000t大型化しようとしている。

 しかし、「ちよだ」代艦は、特に必要性があるようにも見えない。まず「ちよだ」は、まだ老朽化しておらず、新型艦に代える必要はない。また、後に「ちよだ」が老朽し代艦が必要としても、同じような潜水艦救難艦を建造する必要もない。

 今、運用されている救難艦「ちよだ」は、代艦が必要なほど老朽化していない。「ちよだ」は1985年就役なので、艦齢28年であり、代艦完成時でもまだ艦齢33年である。ディーゼルを搭載した中低速の支援艦であり、同じような中速商船同様に寿命は40年かそれ以上はある。護衛艦以下の寿命延長の流れからすれば、まだまだ使えるのに新型艦を建造する必要はない。また、潜水艦救難について新技術への対応についての必要もない。潜水艦救難技術は、「ちよだ」建造当時から特に技術的な進歩もないためである。

 後に老朽化したとしても、潜水艦救難艦を建造しなければならない必要性もない。最近の潜水艦への救難は、まずはDSRVという小型の救難潜水艇で実施される。そして、このDSRVは運用上、必ずしも救難艦を必要とはしない。たとえば米海軍は、DSRVを至近の港まで空軍輸送機で運び、そこから潜水艦に乗せて救難する体制にあり、救難艦は運用していない。DSRVがあれば、特に救難艦は必要というものでもなく、適当な水上艦船/潜水艦で運用できる。ある意味で、救難艦は、DSRV以前のレスキューチェンバーほかの時代の名残に過ぎない。

 潜水艦への救難で必要なのはDSRVであり、救難艦ではない。DSRVが運用できれば、別に新しい救難艦を買う必要はない。

 「ちよだ」更新については、救難艦を建造せず、搭載艦船を選ばないDSRVを作ったほうが安く付く。護衛艦でも、掃海艇でも、民間曳船でも運用でき、航空輸送が可能なDSRVと支援ユニットを作る。その補助装備として、ROV、乗員/潜水員用加減圧チェンバー、潜水用ハードスーツを用意すればよい。DSRV以下は高価であるが、508億円の救難艦を買うよりは安い。

 救難地点までの展開時間云々をいうのなら、複数を準備して、横須賀と呉以外、例えば稚内や沖縄、佐渡、父島あたりに保管しておいてもよい。今の横須賀と呉にだけ救難艦を置く体制よりも、短時間での展開が可能になるだろう。

 なんにせよ、新型潜水艦救難艦の必要性はない。交代する「ちよだ」は老朽状態にはなく、更新の必要はない。また、将来的にも新型潜水艦救難艦は必須ではない。潜水艦救難ではDSRV運用がメインである。救難艦を必要としない新型のDSRVと、その周辺機材を整備すれば済んでしまう話である。金がない折に、500億も掛けてどうでもいいような支援艦を作るべきではない。




※ 『我が国の防衛と予算 -Defense Programs and Budget of Japan』(防衛省,2013.8)http://www.mod.go.jp/j/yosan/2014/gaisan.pdf、P.5

※※ 別にDSRVを甲板上に搭載/泛水できなくとも、曳航すれば済む。通信指揮と充電機構は甲板上に乗せなければならないが、コンテナ程度に収まる。加減圧チェンバーも今は組立/折畳式があるので、これら艦船への搭載も難しくない。
2013.08
28
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 10式戦車がなくて困ることがあるか?

 90式戦車があれば、別に10式は必要ない。今、日本には10式と同世代に属する90式が350両もある。性能で見ても、90式は10式とほぼ同等の攻撃力と機動力を持ち、防御力ではむしろやや勝る性能を持つ。防御力についての公式発表ではあくまで90式同等といっており、90式以上と説明していない。外征やそれに似た国際貢献があっても、90式を持っていけば問題はない。

 別に90式がなくとも問題もない。本土防衛の用は74式戦車で特に困ることもない。防御力や機動力では力不足になりつつあるが、攻撃力は十分にある。74式が持つ105mm砲とAPFSDSは、大抵の戦車に有効である。特に仮想敵とされていた東側系戦車を十分に撃破できるものと考えられていた。

 海空戦で勝っている場合には、戦車が74式でも戦争に負けることはない。日本における本土防衛は海空戦力がメインであり、陸上戦力はそこをすり抜けた残敵を掃討すること、あるいは配備の空白を作らないことで事は足りる。さらに、その陸上戦力の一要素、一部分である戦車が74式であっても、極端な困難はない。

 逆に海空戦に敗北した場合には、どんな戦車を持っていても敗北は不可避である。74式で勝てないほど、強力かつ多数の敵が揚がってくる場合には、10式でもダメである。10式がひとり気を吐いたところで、どうなるものでもない。ドイツ敗北の過程で「タイガー戦車が活躍しました」と変わるものではない。

 そもそも海空で敗北すれば、日本戦争経済も成り立たなくなる。いずれは燃料も弾薬もなくなり、経済は衰退し、食料生産やそれを運ぶ物流も逼迫する。いくつかの戦闘で勝ったところで、戦局はどうなるものでもない。

 そのときに10式があったとして、何ができるのだろうか? 上空を制圧されれば、戦車は自由に行動できない。目標に向かって前進するどころか、後方での終結や補給にも窮する。高度に分散し、偽装し或いは掩体にこもれば被害は局限できるかもしれないが、行動できずに隠れた戦車には何の価値もない遊兵に過ぎない。夜間や悪天候をついてコソコソ行動するのが関の山である。たいした活躍は期待できないし、活躍しても海空戦の敗北を取り返すこともできない。

 そもそも、今の日本本土に攻め込める国はない。極東ロシアは陸海空とも敵ではない。中国も日本本土に攻め込む力はない。政治的には四面皆敵であり、南沙、尖閣やインド・西方国境や国内辺境で問題を抱えている。最優先で海軍を強化しているものの、対米戦と南沙防衛、台湾回収に特化しており、日本に攻め込める戦力ではない。そもそも、日本の陸海空自衛隊はあまりにも強力であり、その上で日米安保がある。中国に攻め込む力はない。

 極端な話、戦車はシャーマンでもどうにかなる。実際のドンパチを考慮しても、シャーマンの75mm砲でも軽戦車以下は撃破できるし、人員やソフトスキンに対しては充分に強力である。対ゲリコマや治安維持ほかでの使用では、可能行動で10式と変わるところはない。部内での教育ほかでも、とりあえず戦車であるので、機甲科の教育にも、そのほか職域に対する戦車というものは何かという体験学習でも充分である。

 実際には、日本には90式と74式がある。90式は世界最新世代の戦車であり、74式も充分に実用に足る戦車である。日本はそれぞれを350両づつ、計700両を保有している。これは、フランスの戦車保有量(ルクレール×200、AMX-30×200)の倍に近い。

 日本に於ける戦車の必要性と、現在保有している90式、74式戦車とその数を勘案すれば、10式を整備する必要はない。今日の10式整備は、過剰品質であり、無駄金を捨てていることとなんらの変わりもない。

 10式が高性能であることは否定しないが、それは必要性には繋がらない。10式戦車への盲愛あるものは、10式の世界最新という文言に浮かれ、その高性能に目が眩んでも、10式が必要ということにはならない。
2013.08
24
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Category : ミリタリー
 重量1トンもないアルミ屑12機分が、2000万円で売れることが不思議ではないのか?

 陸自が使っていた中古OH-6が輸出された。読売オンライン「陸自ヘリ12機分の部品、解体せず海外に売却」※ によると、廃用機がオーストラリアやニュージーランドに輸出されたという。

 自衛隊は機体を早期に退役させる。もともと大して傷んでいない上、耐用年数も昔の機体を参考に短めめにされている。使用目的次第だが、海外に売れば売れるものだろう。

 しかし、解体業者が2000万円で購入すると言い出したことに、陸自は不審に思わなかったのだろうか。OH-6は小型機である。それが金屑処分を強制する売り払いで計12機、〆て2000万円で売れることは怪訝である。取れる金屑は100万いくかどうかである。

 12機のOH-6を金屑にしても、金屑価格は100万円いくかどうかだ。OH-6は空虚重量で900kg位であり、エンジンは取っ払っている(はず)。廃用機から取れる金属は500kg程度にすぎない。基本はアルミであり、添加物があるので1kg150円がいいところだから、金屑価格は1機7.5万円、12機分で90万円程度に過ぎない。業者側が行う引取や解体コストもある。むしろ金をもらわないと引き合うものではない。

 なんにせよ、この値段で売却できたこと自体が、奇跡的である。昔、横監で国有財産についての仕事をしていたことがあった。当時、鉄屑価格が低迷していた時期であったこともあり、輸送艦1隻が10万で売れれば御の字だった。回復してトン1万円を越えても、回航コストや解体コストがあるので、結局は100万200万の世界だった。今、トン2万円を超えているが、やはり1000万円いくかどうかだろう。

 また、海自では、解体は必ずチェックしていた。シビルの管財係長が出張して、本当に解体しているかどうかを確認している。話を聞いても、見て見ぬふりをするのも、色を塗り替えた内火艇や、艦内自販機の自家利用程度である。

 注視すべきは、契約についてのチェックが甘いことである。報道では、海外に輸出されたことに焦点が置かれている。しかし、そんな不自然な契約を、業務系統や監査ほかで見抜けなかった点も、重篤な問題である。

 担当者は、うすうす気づいていたのだろう。しかし、目前の業務処理に目が眩み、やるべきことをしなかったということだ。だが、機体再利用や輸出は問題になる。業務をしていれば、いろいろ手を抜いたり見逃したり、あるいは共存共栄の関係になることもあるが、警戒しなければならない一線はある。その一線を超えた点は、責められるべきだろう。



※ 「陸自ヘリ12機分の部品、解体せず海外に売却」『Yomiuri Online』(読売新聞,2013.8.23)http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130823-OYT1T00922.htm?from=blist
2013.08
23
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12:00
Category : ミリタリー
 山下輝男さんの「終戦の日に中国の日本侵攻について考える」※ という記事がある。

 日中ともに相手の国に攻め込む気もない。その前提をムリクリに覆して、日本に攻めてくるときにはどうするのかを熱弁されている。内容的には納得できない部分が多いのだが、それには言及しない。

 たが、正義の日本vs不正義の中国というフォーマットになっているのは、残念なものである。山下さんは軍事問題の専門家である。防衛という技術を扱うプロフェッショナルが中国との軍事問題を論ずる上で、わざわざ不正義の中国と述べる必用があるのだろうか。日中の軍事対立と、その上で日本の防衛に必要な技術的な事項について淡々と述べればいいのではないだろうか。

 例えば、山下さんの「対外武力行使」という言葉がそれである。外征的なイメージを持ち、場合によれば対象への侵略を想起させる対外武力行使という言葉を使っている。それにより、不正義の中国という価値観をわざわざ持
ちだそうとしている。その上、内容も怪しい。

 山下さんは、「2 中国の対外武力行使について」で「(1)中国の対外武力紛争の概要」を挙げている。その項目建だけを抜き取ると次のとおりになる。
1. 朝鮮戦争(1950/6/25~1953/7/27)
2. 第1次台湾海峡危機(1954~55)
3. 第2次台湾海峡危機(1958)
4. 中印国境紛争(1959~62)
5. 中ソ国境紛争(1969)
6. 西沙群島海戦(1974)
7. 中越戦争(1979)
8. 南沙群島軍事衝突(1988)
このうち、2と3は明らかに対外武力行使ではない。

 特に「中国の対外武力行使」に、国民政府との戦いを含んでいるのは、全く妥当ではない。最近の中台両岸関係で攻めこむなら、侵略的なイメージを伴う「対外武力行使」になるかもしれない。しかし、60年代までの国府との戦いは紛れもない内戦である。まずは国内戦であって、対外武力行使で挙げるのは妥当ではない。

 そもそも、最初の朝鮮戦争にしても、侵略的なイメージを持つ対外武力行使と呼べるか怪しい。内戦中であった朝鮮半島において、北朝鮮が南進するときには、中国による本格介入は行われていない。米軍・国連軍が参戦し、韓国軍ほかが38度線を越えた北進を始めたあとになって、中国は現地政権である北朝鮮が了解した上で、ようやく本格介入している。

 中印、中ソ国境紛争にしても、どっちがどっちに攻め込んだというものでもない。これらを対外武力行使と言うのであれば、ノモンハン事変も日ソ両国による対外武力行使となってしまう。

 外征的なイメージを持つ、対外武力行使に含めてよいのは、最後の6-8程度だけだ。ただし、西沙、南沙での島の取り合いも、多少は中印、中ソ国境紛争に似た、どっちもどっちの部分はある。もちろん、南北ベトナムが平穏無事に占拠していた島を、海洋新秩序に出遅れた中国が襲ったことに違いはないのだけれども。

 また、山下さんは「5 終わりに」で「本稿は中国の脅威を煽るものではな」い旨を表明しているが、エクスキューズにしか見えない。山下さんは
[中国政府は] 自らが育てた悪魔が自らを蝕むということがないのだろうか?
 育ち過ぎた民族主義を抑えられなくなった時、それに押されて対外暴挙に出ないという保証はない。習近平が掲げる「中国の夢」とは何か? 中華主義、太平洋二分割論なのだろうか?
 その見果てぬ夢を具現・達成への欲求が彼を圧迫する。
[改行は省略]
と、中国には対外侵略をする傾向があること強調している。※※ この「終戦の日に中国の日本侵攻について考える」でも、中国の侵略性強調が通奏低音となっている。

 これらは、意識的か無意識的かはともかく、中国に対外侵略をする傾向があること強調しようとするものにしかみえない。

 この傾向は、元自、特に陸自の人に多い。日中軍事問題について、正義の日本vs不正義の中国といったフォーマットで示したがる。このJB PRESSでも、篠田芳明さん(これ)や、用田和仁さん(これ)、森清勇さん(これ)と、見事に正義vs不正義で語っている。

 その上で、中国が如何に不正義であるかを強調する内容になっている。論ずるべきが日本の防衛であり、そのための技術的な行政的手段であるにもかかわらず、おしなべてそのような内容になっている。

 プロである/あったなら、その価値観から離れて、日中を大差ないものとして並べて見たほうがいいのではないのか。彼らの強みは、戦争や戦闘での知識技能である。政治批評ではない。

 日中軍事衝突について論ずるにせよ、日中の立ち位置を正vs正の文脈で書ける。また、日中を正vs正で書いても、彼らの主張の本筋には影響はない。現在の軍事バランスや想定する戦争、それぞれの考える戦闘の様相や日中にある有利不利について、それぞれの主張が持つパワーが弱体化するものではない。

 ある意味、中国を悪くいいたい人への迎合もであるが、それはやめたほうがよい。日中軍事対立についても、中国への悪口なしで主張できる。また「日本で国防政策は大事、ホントに超大事」とする根幹の主張についても、日中を正vs正で捉えるフォーマットで充分である。※※※



※   「終戦の日に中国の日本侵攻について考える-中国の対外武力紛争史が教える執拗でしたたかな戦略」『JB Press』(日本ビジネスプレス、2013.8.15)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38442


※※  「3 対日武力侵攻について」中「(1)対日武力発動の条件に関する検討」の下にある「ア 国内要因」は、概ね、中国侵略主義を指摘するものになっている。

※※※ まあ、日中軍事対立と衝突の可能性にしても、海空主流、陸はオマケになってしまう。その点困って「中国は領土的野望があるので、日本本土に上陸してくるのだ」と言い出すしかない戦車ファンの御仁もいるけどね。