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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2010.09
29
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17:44
Category : ミリタリー
 当たり前の話だけれども。イタリアでもフランスでも石油と石炭は不足していたという話。
 外務省調査局『伊太利の戦時工業力』。その大意は「問題点は石油と石炭が足りない事。それらを海外から運ぶ船腹量が足りない。」とある。日本とと似たり寄ったり。
 石油節約のために自動車を制限したのも同じ。既存自動車の木炭動力化を実施している。イタリアでは、それを称してガソジェン(Gassogeno)といったらしい。
 イタリアは石炭不足を解消するため、鉄道の電化を推進している。「戦前統計でもイタリアの電化率は50%に達していた」とのこと。

 隣のフランスも石油・石炭事情は似たようなもの。戦前の発行になるが、同じく外務省調査局『世界重要資源調査 第一号 石油』でも、フランスの石油と石炭の見通しは暗いものと看做されている。
 フランスは人造油を作ろうとしたが原料の石炭不足で果たせなかった。航空燃料に必要なイソオクタン生産もできなかったとある。
 自動車の木炭化に関しても、フランスは効率化のため専用木炭「カーボナイト」を開発している。これは木炭を圧縮し、木炭車の動力とするもの。カーボナイトは同重量の木炭の2.5倍のガスを発生し、3倍の熱量を持つ。木炭車の出力上昇というよりは、燃料庫の小型化や木炭搭載量の増加を狙ったものだろう。
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2010.09
26
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23:04
Category : 旧ソ連
 70年代、ソ連は代理戦争であるベトナム戦争に勝利した。また、ソ連は極東方面の海軍力を強化した
 対して、米国はベトナム戦争で疲弊しきっていた。日本も、オイルショックにより経済成長は停滞していた。
 ソ連が強くなり、米国は弱くなり、日本の成長も止まる。そう見えたのだろう。だから日本ではソ連脅威論が台頭した

 しかし、その実態はどうか。文革により弱体化していた新中国もあわせて、日米中は相互に接近し、新しい対ソ封じ込め体制を作ってしまった。東アジアが日米・新中国・ソ連の3すくみ構造であれば、ソ連は対日米、対中で強く出ることができたかもしれない。それが、日米中が対ソ連ブロックとして連携してしまったため、ソ連は比較劣勢になってしまった。

 70年代は、ソ連は極東部では比較劣位の立場に転落してしまったとも言えるだろう。
 たしかに70年代、ソ連はスーパー・パワーとしての存在を演出しようとしていた。その宣伝、例えばオケアン演習やインド洋プレゼンスも一定の効果を上げていた。
 だが、その「成長の印象」が日米中の同盟関係を招いてしまったとも言えるだろう。実態からすれば、当時であってもソ連極東部は経済の限界を超えていた。軍事力にしても張子の虎に過ぎず、それを宣伝でカバーしていたわけだ。
 一種の騙しで凌いでいたのが、日米中が弱くなったため、薬が効きすぎて日米中を接近させ、対ソ連ブロックを作り出させてしまったのだろう。

 実際のところ、70年代ソ連の極東対米戦の目標は
・ オホーツク海に米海軍の進入を許さない
 だっただろう。

 しかし、実際に可能な行動としては
・ ウラジオ以東は守りきれない。
 ・ ペトロ以下の重要港湾は、敵中で孤立するのは仕方がない
 ・ ウラジオ付近で抵抗する
 あたりじゃなかったのだろうか。もちろん、日本人が北進するのもパッケージなんだろうけれどもね。(北方領土や樺太のソ連軍は、日本の北進対処用だろう)

 それに、70年後半からの米中接近を加味すると。対米戦と同時に、中国との戦争を考慮するとなると、さらに収集はつかなくなってしまうだろう。
 最悪で
・ イルクーツクまで踏み込まれないようにする
 あたりまで悪化したんじゃないだろうかね。

 まあ、70年代の日中、米中の接近はソ連にとってはエライことだったというわけだ。
2010.09
24
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02:27
Category : 有職故実
 実写版ヤマトの予告編を見たのだが。どこぞの動力炉の破壊なのか、真田さん風が破壊の準備をしているだろうなとか、空間騎兵隊風の斉藤風が立ち往生するだろうなというカットが入っている。実写版ヤマトはガミラス戦と彗星帝国戦をミックスしたような内容なのかね。

 で、多分映画の中で出てくるだろう動力炉破壊と立ち往生のモチーフについて。アニメ版だと『愛の戦士たち』(『ヤマト2』でも同じ)のアレなんだけれども。そのオリジナルは、『海底軍艦』(映画)と『遊撃戦』(TVドラマ)じゃないのかなと。

 『海底軍艦』では、敵であるムゥ帝国(城砦都市帝国)は都市内部の動力炉が破壊され、滅ぼされた。ムゥ帝国は「都市帝国」という形態で、すでにガトランティス帝国(白色彗星)の祖型なのだろうけれども。「帝国の弱点」も同じ動力炉であって、その破壊で滅びるというモチーフは極めてよく似ている。動力炉破壊は、おそらく『海底軍艦』からの拝借なのだろう。

 そして、敵の内部に侵入した攻撃隊のうち、破壊要員が自爆をする。護衛要員が立ち往生する。退路確保の要員も最後には倒れる。これらの犠牲により、敵が滅ぼされるというモチーフは『遊撃戦』由来なのではないか。
 『遊撃戦』の桂林飛行場の燃料庫爆破と、彗星帝国の動力炉破壊の構図もよく似ている。
 キャラクターで示せば爆破担当の中西一等兵=真田技師長、立ち往生の三浦上等兵=斉藤隊長(空間騎兵隊)、撤退援護の上野兵長=加藤隊長(コスモタイガー隊)が同じ役割となる。黒田兵曹長は古代にあたるのだろう。
2010.09
22
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00:13
Category : ミリタリー
 よく、「酸素魚雷は圧倒的な高速・超射程を達成し」みたいな文章を見る。
 しかし、実戦で「高速長射程」が威力を達成したか?。それがコストに見合ったものか? というと疑問だろう。
 大戦果をあげた水上戦闘を見ても、酸素魚雷だから勝てたということはない。仮に、通常の空気魚雷でも電池式魚雷であったとしても、対勢が有利なら、それなりに同等の戦果はあげただろう。酸素魚雷はペイしたものとは思えない。

 これは、今日の超音速SSMも同じではないかとね。
 従来の対艦ミサイル防御を突破できる。超音速SSMについては、この一点で評価されがちである。
 しかし、そのコストは全く語られない。値段もそうだし、個艦の搭載数減少もしくは重心上昇、爆発物や可燃物の量も増加もある。被弾時の被害拡大もある。
 その利益にしても、余程の相手を沈める欲求があったとしても、実際のところ、従来型多数攻撃と超音速少数攻撃にそれほどの差があるのかどうかだ。少なくとも、近距離で小型艦艇を相手にするには、推進機構も弾頭威力も過剰性能だ。
 これらを考慮したとき、果たしてペイするものなのか。

 実際のところ、酸素魚雷も超音速SSMも、推進機構が劇的に進歩しただけの話ではないのか。それに合わせて、速力も射程も弾頭重量も増えたけれども、誘導機構が進歩したわけではない。結局は在来型まで近づかないと当たらないのではないか。

 超音速SSMについても、そもそも大遠距離の目標を捜索する手段がなければ、その長射程も宝の持ち腐れではないのか。結局、実用上で発射できる距離は在来型と同様であるとか、そういうオチがつくのではなかろうか。
 酸素魚雷同様に、大遠距離からの一方的な攻撃を狙って整備してみても、高くつく割には割が合わなくなる可能性もある。技術に眼がくらんでしまったかもしれないが、実際には高くつく買い物になってしまうのかもしれない。
2010.09
17
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21:02
Category : ミリタリー
 日本と米国、あとは周辺国の代表として極東ロシアと中国の外洋作戦戦力を比較してみた。質的要素も加味すれば、日米同盟はロシア・中国のの10~20倍の外洋戦力を持っているということだ。
 繰り返すけれども、日本とロシア・中国は友好関係。辺境の離島の領土問題でもめてはいるものの、基本的には外交を通じ友好関係を保っている。まず日本に攻めて来る理由もない。
 その上で頭の体操として考えてみるのだけれども、これだけの戦力差があれば攻めようとも思わないだろう。意志もなければ能力もない。
 参考資料は"Military Balance 2010"(便利な本です)と、"Jane's Fighting Ships 2010-2011"を基本に少々。

● 駆逐艦以上の艦艇数(米国は空母11を含む)
 日 本   48(※1)
 米 国   91(※2)
 ロシア    8(※3)
 中 国   13(※4)
 日米:ロ:中の比率は、数量だけで35:2:3。その質を考慮すれば、100:1:5といったところだろうか。対日米同盟でロシアは1%、中国は5%といったところ。
(※1)練習艦×3を含む
(※2)空母11を含む
(※3)太平洋艦隊のみ(ロシア海軍は世界規模のスイングはできないだろう)
(※4)旧式化した旅大級(14隻)を除く



● 固定翼哨戒機の数。日米のP-1、P-8は数量に含めず。
 日 本   80
 米 国  147
 ロシア   29
(※5)
 中 国    4
 日米:ロ:中の比率は、数量だけで50:8:1。なお日米は新型哨戒機への更新を始めるところ。能力を考慮すれば…(以下略)
(※5)ロシア中からIl-38(メイ)とTu-95(ベア)をかき集めれば、58機


● 哨戒ヘリの数。哨戒ヘリは水上艦の能力を大きく向上させることができる。
 日 本   91
 米 国  220
 ロシア   31
(※5)
 中 国   38
 日米:ロ:中の比率は、10:1:1。性能差を考慮するとさらに比率は離れる。
(※5) ロシアは乗せるべき水上艦が少ない。


● 早期警戒機(AWACS/AEW)航空戦力の効率的な運用が可能になる。(戦闘機等の数が増えたのと同じ効果をもたらす)
 日 本   14
 米 国   99
 ロシア   20
(※6)
 中 国    8
 性能は無視しても12:2:1。ロシアや中国のAWACSが洋上に出てくるかは不明。さらに中国のAWACSが実用上の能力を持っているかどうかも不明。
(※6)ロシア全土に配備された数

● 空中給油機。外洋作戦、渡洋侵攻ではあったほうが良い。
 日 本    4
 米 国  241
 ロシア   20
 中 国   10

 24:2:1。ロシアはもう少し持っているかもしれないが、洋上に出てくるかは不明。
 
 全般を通じて。中国については、穏やかながらも対峙している台湾の問題がある。台湾は駆逐艦4、固定翼哨戒機32、哨戒ヘリ20、早期警戒機6を保有している。中国にとってこれは無視できないだろう。

 いずれにせよ、周辺国は日本に渡洋侵攻はできない。これだけ外洋戦力の差を前に、日本に着上陸を実施できる国はない。本土防衛を考慮した場合、日本の陸上戦力、さらにその一要素に過ぎない戦車については、あればよいのである。質は問われないということだ。
2010.09
17
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03:47
Category : ミリタリー
 昭和20年8月6日の広島被害について。民防空を所管する内務省と軍部は即時意見収集をはじめた。
 結果、『特殊爆弾』ということで発表することになったのだが、それは『原爆でない』と言い切る識者の意見が反映していたようだ。

 例えば、京大の荒勝教授は『自分達が今考えている原子爆弾は、瀬戸内海の水が全部ひっくり返るのが最小規模』と陳述したという。(『大霞』の三好重夫:当時京都府知事 の回顧談)
 当時、原爆については、大気中の窒素が連鎖的に核融合するのではないか。そうなると地球がプチ太陽と化すのではないかとする考えもあった。こういった背景があって、広島に投下されたのが原爆であるとは肯定しきれなかったのだろう。

 その後、広島での資料採取と調査で放射能が検出され
http://www.riken.go.jp/r-world/info/release/news/2000/nov/index.html#kin_01
http://www.chugoku-np.co.jp/abom/05abom/news/An05072403.html
ということになった。原子爆弾と判断されたのは、8月15日、終戦のその日であった。

 しかし、原子爆弾と判断される前でも、その威力については短期間のうちに周知させられたらしい。
 3日後、9日の長崎原爆投下。被爆直後、防空壕から出た長崎県関係者が爆圧でペシャンコになった町並を見た。
 そこで
『新型爆弾かネェ』(大意)
『それにしては、威力が小さい、火事も起きない』(大意)
 という会話(これも『大霞』より)をしている。ただ、しばらくして原爆の輻射熱でポツリポツリと火がつき始め、それから市街が業火に包まれる様を見て、その威力を実感したという。
 原子爆弾であるかどうかはともかくとして。特殊爆弾の大威力は、9日には周知されていたということだ。

 なお、ベルンの加瀬公使も、終戦工作の傍ら、広島への攻撃が「原子爆弾である」という報告をしている。(これはUSSBSの史料に残っている)他の中立国外交官も、おそらく似たような報告をしているのだろう。
2010.09
14
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18:49
 戦車愛のあまり、海空自衛隊無能論まで発展したJSF氏への反論です。
 一番信じられないのは、ノウハウは必要ないと言い切っているところですね。

> ノウハウなんて要らないですよ。何も難しくありません。

 無知は怖いですね。船舶運用一つとっても、上陸戦そのものを理解していないことがよく示されています。唖然とするしかありません。日米英の上陸戦への試行錯誤を知らないのでしょう。

 JSF氏の議論は、結局は10式戦車が必要というところから逆引きしています。だから、話がドンドンおかしくなるのです。結局、今回の『隅田金属ぼるじひ社さん揚陸RORO編』にしても、理由をこさえて上陸する部隊を増やしただけの話です。揚がったところで補給も受けられない全滅予定部隊に過ぎません。
 その上陸船団が日本まで無傷で辿りつけるのかについては、従来の無根拠な2割ルールを「2~3割」と割増して繰り返しているだけです。この2~3割という数字ですが、これだけ海没すれば上陸は相当難しい。無人島でも上陸するのでなければ、上陸断念も検討される数字でしょう。

 さらに、例によってどれだけの規模の船団が、どこに向かうのかも示せていません。
 具体性に欠けるのがJSF氏の空論の特徴です。具体的な話をすれば、上陸ができないことが明らかになってしまうから、したくてもできないのです。

 JSF氏は商船を上陸戦に使えると言って(氏は、最初のうちは港湾に商船を突っ込ませるつもりだったのです)上陸戦力を水増していますが、護衛艦艇は増えません。
 周辺国は日本近海でのエアカバーを確保できません。日本側がJADGEシステムの支援を受けられるのに対して、周辺国にはまともなAWACSもない。しかも本土から遠く離れて残燃料を考慮しながらの戦いになるわけです。周辺国は日本の近くでは圧倒的な航空優勢を保つことはできません。
 その状況下で、上陸船団の損害が2~3割というのは妙な話です。10隻の上陸船団が来たとして2~3隻の損害で済むとも思えない。氏は陸上目標への航空攻撃の効果を出してすり替えようとしていますが、地物に隠れ、陣地にこもれる陸戦と、遮るもののない海上では全然条件は異なります。オルモック輸送では輸送船が全滅した例もあります。そういった見たくない事実には全く眼を向けないのが、「ゆとり」の証拠でしょう。
 逆に周辺国の能力から言って100隻単位の船団は組めない。船舶は、上陸戦の役には立たない商船や漁船を水増しして増やせたとしても、護衛艦艇が全然足りません。懐かしの上海型の類やFAC(M)にすぎない紅稗も投入するのか、あるいは商船に携SAMでも持たせた船舶砲兵風でも乗せるのでしょう。まず効果は期待できない。

 また、上陸海岸近くに辿りつけたとしても、絶対的な航空優勢を確立しないと上陸戦は不可能です。JSF氏は上陸戦の戦例を(バックグランドについては何も考慮せず)云々するのが好きなようですから、ウェーク島攻略での上陸失敗の例を挙げればよいでしょう。たとえ少数機であっても、航空攻撃があった場合、上陸作業には移れません。
 それほど甘甘な上陸作戦を行うこともありえませんが、さらにその直後に港湾奪取して、そのまま利用できると考えているのは、脱構築された意味での「ゆとり」です。

 閉塞船で封鎖された対処策を思いつかなかったのでしょう。『福岡港、北九州港なんて閉塞するのに何十隻必要なのか・・・』とうそぶいていますが、中国(まず戦争になる可能性もないですけど)大陸本土からのエアカバーが届かない玄界灘方面に上陸を行うことはありません。そもそも上陸適地は限られる。防備しなければならない港湾は殆どありません。
 逆に、串木野港に老朽船(鉄鋼価格だけ、タダ同然です)を沈めた(爆薬も要りませんね)としたら、どうやって排除するのでしょうね。戦闘状態の中、2週間以上かけてサルベージをしたとしても、その頃には補給を受けられない上陸部隊は駆逐されているでしょう。


 そもそも港に入れない前提は覆せないのに、その先は色々考えたようですね。
>「タグボートで押し続けて固定」
>「取り合えず杭を打って簡易ピットを作る」
>「簡易ピットで繋いでいる間に頑丈なピットを作る」
>「スパッド付きのプッシャーバージ船を連れて来て簡易埠頭とする」

 本当に思いつきでしょう
(1)タグボートの数と輸送所要は? まさか自航させるのですか?
(2)杭打ち機と杭はどこから運ぶのでしょう?
(3)しがらみのない簡易ピッドに把駐力は期待できませんよ?
(4)スパッズ台船を何Ktで押していくのですか? 船団についてこれませんよ


 さらに、JSF氏は内水用・沿岸用・外洋用の船の区別もついていません。そもそも波浪やウネリの影響を無視しています。
 例示したプッシャー・パージですが、ぜんぶ内水・沿岸用です。好天を選ばないと熊野灘を越えられないような船です。東京湾フェリーと同じで風が吹けばすぐに止まります。東京湾フェリーで上陸作戦をやろうとする。しかもそのまま外洋に出すというところが無知の証明でしょう。
 また、人民解放軍海軍陸戦隊の水陸両用車両のへん水にしても、JSF氏は「沖合です」といいながらも、動画には波もウネリも風もないことに気づいていない。そこにあるものに気づいても、そこにないものには気づいていないのです。ここが氏の限界です。

 いずれにせよ、この程度の上陸戦力で周辺国が対日戦を挑むこともありません。JSF氏の戦車賛美のための空論なのです。

 大きい部分から言えば、ロシアも中国も、日本本土侵攻の意志も能力もないわけです。日本とロシア・中国では、離島の所属を争ってはいるものの、それ以外の領土については互いに尊重しあう関係です。さらにその能力を見れば、日本本土を侵攻できるものではありません。なるほど、陸軍力は強力かもしれませんが、その海空軍力は日本に対して劣勢です。日本の沿岸で制空権も制海権も握れません。上陸戦には圧倒的な海空戦力のカバーが必要ですが、中露両国にはその能力もありません。

 その上、日米安保条約もあります。なぜかJSF氏は日本が単独で中国、ロシアと対決する構図を作っていますが、日本国内には在日米軍が存在しています。日米安保が発動しないというのは、あまりにも都合のよすぎる設定です。

 加えて、強力な海上自衛隊と、本土防衛に特化した航空自衛隊の存在を無視しています。周辺国は日本に攻め込むことはできないのです。万が一もないにせよ、上陸に成功しても補給が続かない、そして陸続と増援を受ける日本の陸上戦力との絶望的な戦いでいずれは消えてしまう。全滅予定部隊でしかないのです。

 日本の強力な海空戦力と米海空軍戦力を敵に回すのです、上陸は成功することは考えられません。よしんば万が一に成功しても、それは全滅予定部隊にすぎません。先は見えているのです。それを知りつつ日本本土侵攻を行うことはありえません。
 それを考えれば、日本側の戦車は質を問われないのです。上陸適地の海岸の背後にいればなんでも良いのです。
2010.09
12
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TB:0
12:16
Category : ミリタリー
 『仮想敵国ソ連』栗栖弘臣(講談社 1980年)は、対ソ戦を意識した上で、主として陸上自衛隊の問題点を提起した本である。出版の背後には80年代危機説があるためか、具体的にソ連の対日戦アプローチを5個提示し、それぞれに付随する形で防衛力整備の問題点を論じている。

 しかし、今から見返すと、当時の見積であってもソ連の脅威を過大視した内容となっている。そもそも当時のソ連は、極東部では中国との対立、米国との直接対決の可能性、ソ連SSBNの聖地(当時)オホーツク海の防衛を抱えており、限定された極東向け輸送力(日本との貿易で凌いでいる状態であった)もあり、攻勢にでる余裕はなかった。対日戦の余裕はなかったのである。

 それを無視して5つのアプローチを見ても、そのうち4つはまったくもって実現不可能、唯一可能性の残された道北アプローチにしても、上陸の成功も確実なものではなく、その後の維持については絶望的である。樺太までの輸送力の限界、樺太からの海上補給力の限界で補給は早晩行き詰まるためだ。

 『仮想敵国ソ連』での、対日戦アプローチは次のとおりである。それぞれが実現不能、あるいは難しいだろうと判断する主な点を添えて挙げよう。

(1) 道東アプローチ    × (北方4島は根拠地となりえない)
(2) 道北アプローチ    △ (樺太への輸送力の限界)
(3) 津軽・宗谷海峡占領  × (ソ連作戦機の航続距離不足)
(4) 津軽海峡・八戸占領  × (ソ連作戦機の航続距離不足)
(5) 日本海沿岸侵攻    × (ソ連作戦機の航続距離不足)

 栗栖弘臣氏も、いずれの点についても実現性は低いと考えていたフシもある。例えば日米安保の存在についてネグっている。また、わずかであるがソ連の海上輸送力が少ない点、航空機の航続距離が短い点も示している。
 日米安保の存在をネグっている点については、日本における80年代危機説の文脈では「日米経済摩擦の中、日米安保が発動されない可能性」についても論議されていた背景がある。このため日本独力での対ソ戦にも、当時それなりの説得力はあったかもしれない。
 ただ、ソ連の海上輸送力の不足(渡洋補給の限界)。加えてソ連作戦機の航続距離の問題(逆に言えば、近距離から発進し、BADGE(当時)やSAM等の支援を受ける日本側が航空優勢を取りやすいということ)について言及していることからすれば、実際にはソ連軍が日本に上陸する可能性について、それほど高く見積もってはいなかっただろう。
 5つのアプローチについて(1)、(2)が不可能である/難しいとする判断については、以前コミケで出した本※の要点だけを示す形で一つづつ説明したい。また(3)(4)(5)の問題については、まとめて一つにして説明するつもりである。

 時期的には、来週あたりに(1)、再来週に(2)、それ以降に(3)(4)(5)を示したい。(あとは、"Soviet Military Power 1984"※※の『7ヶ師団海上輸送』のいかがわしさもかな)

※ 『対日戦不能 ソ連極東部の限界』・『南クリルの全滅予定部隊 -ソ連極東部の限界-』
※※ 1981、1983、1984については、プロパガンダ的な内容(当時はレーガン政権)が多い。
2010.09
11
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TB:1
01:26
Category : ミリタリー
 『ゆとり上陸作戦』で言及したRORO船の喫水について少々。

 ちょっと古いが、"Jane's Merchant Ships 1993"で調べてみた。
RORO船の喫水なんだが、だいたい5000tの(総トン)以上となると喫水6mは超えてしまうようだ。

 あんまり喫水の浅い船もないのだが、そのあたりを中心に控えてきた分を次に示す。
"Nordqueen" 170×23×7.6m 19kt 17900gt/11400dwt
"Auto Premier" 126×19×6.2m 20kt 11600gt/4400dwt
"Delos Cariier" 100×18×5.7m 18kt 4900gt/3040dwt
"Cap Afrique" 108×16×5.0m 17kt 1590gt/2400dwt
"Nusa Mulia" 115×17.6×5.7m 17kt 1600gt/2900dwt

 Nordqueen以外は沿岸用であって、あんまり外洋に出るような船ではない。それでも喫水は深く-5m岸壁では対応できない。(最低で喫水-0.5~1.0mは必要)

 RORO船の喫水は浅い、と主張する人がいる。それは国内用、内水や沿岸用の瀬渡しやフェリーを合算した統計を見誤ったのだろう。
 「喫水が浅い」とする根拠に、日本財団の『国際海事情報シリーズ76 タイ国におけるフェリー網整備に関する調査』の『世界のRO-RO船の設計喫水値の分布』を挙げている。だが、この統計は「喫水 0m~2.99m」を含んでいることから分かるように、明らかに瀬渡しを含んだものだ。

 外洋に出られる船という前提なら、さらに兵站に使えるようなRORO船という見地に立てば、「RORO船の喫水は浅い」とは言えない。無理して浅い船を持ってきても、好天時しか航海できないとか、搭載量が少ないのでねずみ便やアリ輸送ほどではないにせよ、効率が上がらない。

 もともとは米事前集積船の類をイメージして、RORO船を上陸船団に含めようというイメージだったのだろう。しかしT-AKRの類はRORO船の中でも別格に大きく、別出しで"Vihcle Carrier"と呼ばれる。喫水も9m以上あって、-11.5mとか-13m埠頭でないと接岸できない。このサイズの港は普通にあるものではない。また、そのような港であっても、港内全部が-11.5mでも-13mでもない。外界から埠頭まで、浚渫された狭い進入航路を通らなければならない。そこに座礁した船でもあれば接岸どころではなくなってしまう。
2010.09
09
CM:0
TB:0
02:41
Category : ミリタリー
 アメリカ戦略爆撃団調査報告、日本人の戦意に関する件の関連資料(マイクロフィルムだけど)を閲覧。中の治安関係情報に、東京、芝区のペンキ職人の◯◯さん(名前を伏せる)が昭和十九年に書類送致された件の概略が載っていましたが、なかなか興味深い。◯◯さんの容疑は「流言蜚語」(海軍刑法、言論出版統制法、臨時取締法、刑法)ですが、興味深いのはその内容です。
「米国の産業能力は、日本を数倍する、勝てない」
「アメリカの戦略爆撃が始まる、日本の産業基盤は崩壊する」
大本営発表は、ウソだらけ
「働いて給料貰っても、戦時債権なんか買わされたんじゃ適わない」
「日本の軍事力ではアメリカを打倒できない、講和しよう」
アメリカの科学力を前に、日本の飛行機や軍艦は太刀打ちできない、
 しかもアメリカの方が数が多い

「レーダーを持っているアメリカ海軍と日本海軍の戦いは
 相手が戦車、こっちが鉄砲で戦うようなものだ」
徴用工も一生懸命だけど、ロクロク飯も食えない状況では
 飛行機の4割が不合格品になるのも当然

多分、このペンキ屋さんは真実をつかんでいる。流言蜚語じゃなくて、秘密情報漏洩罪でしょう。

 この手の噂って「ここだけの話だけど・・・」って、市井に蔓延していたみたいです。なんせ言論統制化で、知りたい情報については信用できない官製宣伝しかされていない。そうなると「噂の法則」のとおり、噂が出まわり易くなる。
 この◯◯さんが逮捕された昭和19年は、公式報道の信用性が失われ、従来流布していた噂が国民の間で真実味を帯びてきた(真実だけれども)時期なのでしょう。だから官憲も噂を「噂だから」と放置できなくなってきたのではないかと。
 ちなみに、渡辺鉄蔵の「一茶寮事件」(大本営発表での撃沈数/損害数の統計を取っただけで、戦争に負けつつあることが明らかにしてしまったので海軍刑法違反)もこの時期です。昭和19年の時期には、すでに日本人はやる気をなくしているのです。

 昭和19年って、勤労意欲もかなり低下しているのです。政府の方針により、土日も働け、と職場に引っ張られるのですけど。
 工場には原材料や機械がない、でも徴用工等も投入され、人手は一杯あまっている。高賃金好待遇で要領の良い工員と引っ張られた徴用工の軋轢があるだけで実は仕事が全然ない。ズル休みも増えている
 それをコントロールする事務職もやることがない。資材は統制によって自動的に割り当てられる、労働力は国が丸かかえで徴用工を出してくれる、資金繰りも国がバックアップしてくれる、生産量最優先だから製品はロクな検査もなく納入されてお金が入ってくる。経営の必要性が全くなくなっている。石橋湛山は当時の段階で「モウ資本主義じゃない」「科学的経営はどこに行ったか」と嘆いています。
 そして余った時間は精神教育、バケツリレー、竹槍訓練…アメリカ戦略爆撃団調査報告でも、工員・経営者の戦意喪失が、割と早い段階になるのも当然です 。

 工員層の戦意低下の現れが、芝の◯◯さんの発言なんでしょう。そして戦略爆撃が始まる昭和20年になると、このような政府・軍部に対する不満が公然となります。国民が離背するのです。
2010.09
06
CM:0
TB:0
11:01
Category : 未分類
 JSF氏の上陸作戦観は「ゆとり上陸作戦」とでもいうべきものでしょう。
 氏は「対上陸戦が戦車の質で決まる」という結論を出すために、上陸戦の成功条件をひたすら甘やかしています。結局は、日本の海空自衛隊戦力も、日米安保の存在も無視している。ただひたすら相手国に異様に甘くしています。氏は従来の上陸戦の歴史を顧みていないのです。
 この点から、JSFの上陸見積は「ゆとり上陸作戦」でしょう。

 ただ、今回の批判で注目すべき点が一つあります。JSF氏は『中国海軍の揚陸戦力』で、揚陸艦の最大搭載能力を単純に合算していましたが、今回はビーチングでの輸送量制限率について言及しています。
 ただし、肝心の輸送船の喫水について誤認しており、制限率を甘めにしている点も、やはり「ゆとり上陸作戦」です。
 結局のところ、私の見積に対して批判するだけで、上陸正面も、上陸戦力も示していません。具体的な話となると、それほどのバリエーションもなければ戦力差もないことが明らかになってしまう。そうすると「対上陸戦が戦車の質で決まる」という従来の主張が崩れてしまうからです。

 『隅田金属ぼるじひ社の間違った揚陸戦見積もり』についての反論は、以下のとおりです。

> LSM

 速力・耐航性から上陸第一波に参加しがたいものがあります。中国LSMの速力は最大で14kt。シー・ステートが悪化すれば速力も定針性も一気に悪化します。よほどの「ゆとり」的好天でなければ、船団速力は10kt以下に低下してしまうでしょう。その分、日本海空戦力の脅威にさらされる時間は増えてしまいます。
 また、私は『中国の揚陸戦力(台湾海峡限定)』の中で、中国LSM参加の可能性を考慮しています。LSTのビーチング搭載量制限を1/2と高めに見積もったのは、一部LSMが参加した場合の輸送量を上乗せしたものです。


> Yutin級は基準排水量(3400トン)と満載排水量(4800トン)の差が少なく、喫水が3mと浅くなっています。

 JSF氏の挙げた大戦型LSTの「喫水4.3m」は、ツリム時の数値です。ビーチングのために艦首を上げ、艦尾を下げた、「ウイリー」の状態でのスクリューの深さです。大戦型LSTの平均喫水は2m程度に過ぎません。
 むしろ、Yutingの方が重く、喫水も+1m深い。それに気づかなければならないでしょう。Yutingは外洋での耐候性を追求し、大型かつ丈夫に作られたためです。Yutingの方が船体サイズに比して喫水が深い。その分、大戦型LSTよりもビーチング搭載量は限定されるとも考えられるでしょう。


> 水陸両用戦車やホバークラフトなら沖合で洋上発進出来るので、ビーチングしなくても揚陸作戦は可能です。

 ドック型揚陸艦とは異なり、LSTではバウ・ランプを海面下までもっていけない。その場合にはヒーブツーもできない。下手に海水を入れると、自由液面効果の危険が発生する。LSTタイプでは、相当に平穏な海域でなければ水陸両用車両はへん水できません。
 参考として上げた写真の海面も波もウネリもありません。おそらく揚陸艦も着底しているのではないでしょうか。おそらく洋上発進と言えるほど沖合ではないでしょう。また水陸両用車両を用いるということは、海岸に上陸する兵力は兵員輸送型の数に限定される。兵員搭載量×上陸成功数に限定されることになる。従来予想よりも減少するでしょう。
 あと、これは主力戦車は来ないということですね。こちらの戦車が旧式でも問題はないことになります。


> 例えば(隅田金属削除)演習(隅田金属削除)の想定では福岡に着上陸されています

 相手は中国付近に存在する国ではないということなのでしょう。おそらく違う国かもしれません。そもそも日本と中国は友好関係にありますが、日本と韓国はさらに親密な関係にあります。日韓ともに米国との軍事同盟を結んでいるわけです。その間にある対馬海峡を、上陸船団がノコノコ通れると思っているのですか?


> Ro-Ro船というものは各種サイズが揃っています

 瀬渡しや沿岸用の小型船を連れてくるつもりでしょうか?
 喫水が浅いということは耐航性も劣り、搭載能力も劣ります。速力も遅く、上陸船団の足手まといです。搭載能力の小さい船を何回も繋留替えするのも面倒です。
 少なくとも1万トンクラスの高速船を連れてこないと、所要をカバーできないでしょうし、効率も悪いでしょう。各種サイズの内、小型ではどうしようもない。

 あと商船について。
 JSF氏には、周辺国揚陸能力の数的劣勢は自説に不利ですので、どうにかして商船を使いたいという焦りなのでしょう。そこでフォークランド紛争を引き合いに出しています。
 しかし、上陸戦の経験をほとんど持たない周辺国に、英国のような徴用商船のコンバーションのノウハウはありません。そして日本側海空戦力はアルゼンチン海空戦力の比ではありません。さらに日本海空軍力は至近の国内基地を利用することができます。
 JSF氏の、商船で日本上陸を行えるという見通しは甘すぎるのです。やはり「ゆとり上陸作戦」です


> 「港湾は簡単に使用不能に出来る」と根拠も無く言い張るのも止めて下さい。

 相手が使える港湾は限定される。予め封鎖船を用意しておけばそれでOKでしょう。孔を空けて木栓でも突っ込んでおけばよい。相手の上陸必至となったら沈めるだけの話です。JSF氏が、それができないと考える理由がわからない。
 だいたい、敵港湾は簡単に利用できません。港湾です。水路は狭い。2隻すれ違うことができるかどうかです。そこに閉塞船があれば通れませんし、岸壁際に閉塞船をいれておけば利用はできません。
 なんで簡単に港湾が利用できると考えているのか、その根拠の方が脳天気です。


> ・・・あんまり馬鹿な事言ってると、萎えますよホント。

 海空戦力を考慮せず、後続の補給維持を考慮しない。このJSF氏の発想こそが「ゆとり上陸作戦」です。上陸戦と対上陸戦を戦車だけに収斂させようとする方が「馬鹿な話」でしょう。
2010.09
05
CM:0
TB:0
00:06
Category : ミリタリー
 結局のところ、相手国が
・ どこに
・ どれくらいの

 規模で上がってくるのか示せない点が問題ですね。

 そもそも、
・ 海上、航空自衛隊戦力
・ 同盟国である米海空軍

が無効化される状況で、

・ 10式戦車なら勝てる

 という状況を作為することが難しいのです。


 日本への上陸戦を考えるにしても、実際に海空自衛隊・米軍が機能しないことはありえません。周辺国の海軍力も、渡洋侵攻能力も大きいものではありません。その上、日本は無政府状態でもなく、10万を超える陸上自衛隊が存在しています。
 結局のところ、周辺国は、日本に上陸作戦を起こすことはできないのです。この状況の中では、陸上戦力の、さらにその一部である戦車の質が問題となることはありません。

 そもそもの「対上陸戦は戦車の質で決まる」といった主張に無理があります。「74式(あるいは90式)では負ける、10式なら勝てる」というのは「戦車vs戦車」しかも同数・同条件での戦いを考えた話です。対上陸戦を、さらに陸戦を全て「戦車vs戦車」に収斂させてしまう点が誤りでしょう。対上陸戦を「戦車vs戦車」だけに単純化して、陸上戦力全体について考えていない。さらには海空戦力の参加についても考えてない点は重篤な誤りです。
 特に後者は、海空戦力の参加は上陸部隊のその後の補給を遮断させることができます。補給に確実性がない、手持ちの物資だけの上陸戦を、しかも日本相手に実施することはありえないことです。 

 いずれにせよ、日本の周辺国の持つ渡洋侵攻能力は1~3個大隊に過ぎません。しかも、周辺国の航空戦力の及ぶ範囲は限定されます。
 ロシアも中国も日本と友好関係にあり、攻めて来るとは考え難いのですが、仮の話として、頭の体操として考えてみましょう。

 ロシアの航空戦力は、サハリンから道北(北方領土は補給限界の先であって、大規模な作戦行動は取れません)まで出るのが限界でしょう。中国であれば大陸本土から九州・沖縄が精一杯でしょう。
 周辺国航空機の航続距離に多少余裕があっても、それ以上進めば進むほど航空自衛隊の要撃(空自はJADGE等の支援を受けられます)が厳しくなります。
 ロシアも中国もこの範囲でなければ船団にエアカバーを与えることもできません。エアカバーを離れれば、海空自衛隊の航空戦力によって船団は重大な被害を受けるでしょう。いきおい、上陸適地もこの範囲に限定されます。

 道北であれば、上陸適地となるのはオホーツク岸の猿払から浜頓別の海岸だけです。そして付近で利用可能な港湾は稚内港だけです。
 沖縄であれば上陸適地は中南西岸の海岸となります。防備すべき港湾についても、特に那覇港を防備して、糸満港と名護港あたりを防備すればよい。九州の上陸適地は吹上浜しかありません。それ以外の海岸は、上陸適地とはならないでしょう。直に東シナ海に面していないため、わざわざ長い時間をかけて上陸船団を水道を通さなければなりません。その間、日本の海空戦力やSSMに晒されるリスクが跳ね上がります。そして吹上浜付近で利用できそうな港湾は串木野港だけですから、そこを防備すればよいわけです。

 日米の海軍力に対して、ロシアや中国の海軍力は比較劣勢です。いきなり太平洋岸に上陸を試みることはできません。上陸戦に伴う港湾防備の所要についても、全国に重要港湾がいくつあっても、対ロシア戦では稚内港だけを防備すれば充分ですし、対中国戦では那覇と串木野港だけを考えておけば充分です。周辺国の海空力は限定されています。その海空軍力では、エアカバーの範囲でしか上陸戦を実施できないのです。

 いずれにせよ、日本が強大な海空戦力を持ち、米国と同盟しているのです。1~3個大隊程度の渡洋侵攻能力しか持たない周辺国は、日本本土への上陸侵攻を実施することはできません。
 この前提からすれば、本土防衛戦力としての戦車については、その質は問われないということなのです。
2010.09
03
CM:0
TB:0
21:08
Category : ミリタリー
 『中国海軍の揚陸戦力』週刊オブィエクトの中国海軍の揚陸戦力は、台湾海峡を押し渡る戦力を指しているのでしょう。
 JSF氏の挙げた戦力のうち、渡洋侵攻に回せるものは

 Yuzhao × 1(LPD) 最大20kt
 Yuting?×10(LST) 最大17kt
 Yuting?×10(LST) 最大17kt
 Yukan  × 7(LST) 最大14kt ← 船団速力は10~12ktですね。

の正味28隻でしょう。

 LSM以下については参加は難しいでしょう。荒天に弱いLSMは、外洋に出す場合には上陸船団の足かせになるからです。(参加できないわけではありませんけど)

 この28隻の搭載能力についてですが、LST×27隻の搭載能力は間引かなければならないでしょう。LST満載時の搭載能力は、港湾から港湾への輸送に限られており、ビーチングの場合には搭載量は減少します。
 米大戦型LSTの場合、ビーチング時の輸送量は最大搭載量の20%。韓国に引き渡されたアリゲータの場合、ビーチング時の輸送量は最大搭載量の30%です。
 中国LSTのビーチング輸送能力を、高めに(一部のLSMが参加する可能性を含むとして)50%と見積もった場合、その輸送能力は1隻あたり戦車・装甲車×5、兵員100名程度でしょう(他にも物資や弾薬を積まなければいけません)。これに崑崙山の輸送能力(戦車・装甲車×20、兵員600名)を加えたものが中国軍の渡洋侵攻戦力となります。

中国軍の渡洋侵攻能力
 戦車・装甲車 ×  140両
 兵員     × 3500名


 といったところ。

 戦車・装甲車の搭載量は、砲やトラック、対空ミサイルや工兵機材で食われてしまう。兵員も工兵や海岸作業部隊を含めなければならない。この点を考慮すると、3個大隊程度と見積もるのが妥当でしょう。(これが今回の新刊の見積)

 JSF氏は例によって商船による上陸戦を指摘しています。今回は特にRORO船を提示しているようです。
 しかし、RORO船が入れる岸壁は意外と限定されます。港内水深・岸壁水深とも-6m以上の港が必要です。上陸適地の近くにそのような港湾が都合よく存在するかどうか。存在したとしても、使用拒否(破壊)される可能性は高いでしょう。また風当面積が大きいので、港外作業はできません。ポンツーンの類を持ってきても、外海に面したような、波浪の打ち込む上陸泊地では何もできない。

 話が抽象的であると分かりにくいかもしれません。ですから、仮に頭の体操としてそれを考えてみましょう。中国と日本が戦争になること考えがたいものです。さらに日本の強力な海空戦力や米軍との同盟を考慮すれば、中国が本土上陸を試みることはありえません。ですが、そういった条件を無視してみます。
 中国の本土上陸を考えるのであれば、上陸適地は鹿児島西岸の吹上浜になるでしょう。この上陸戦において、早期利用が可能な港湾は串木港しかありません。ここを防備しておけば、港湾の奪取も、被使用もできません。
 港湾使用拒否も簡単です。荷役設備の不要なRORO船といっても係船柱がなければ係留できないでしょう。全部切ってしまえば良い。他の種類の商船もあわせて使えないように、入港航路・-10m岸壁(全長185m)・-7・5m岸壁(船長260m)のそれぞれに2隻づつでも使用拒否用の沈船を用意し、あるいは邪魔になるように予め沈めておけば良い。日本は戦後にサルベージできるが、戦争中、中国がそれをするのは難しい。港外に浅海用の小型機雷を入れても良いでしょう。戦争が終われば掃討すればよい。それだけで商船と港を用いた上陸戦はできなくなる。商船に搭載した部隊は遊兵となります。
 港湾を使わないで上陸することはできません。吹上浜は外海に面しており、上陸用の泊地の設定も難しい。波やうねりがそのまま入ってくる。特にノッペラボウで背の高いRORO船は風で振れ回ってしまう。自前の錨を前後にいれても、把駐力で負けてしまう。RORO船は港内でしか物資の卸下はできません。

 結局、商船による上陸戦は不可能です。このような困難があったので、揚陸艦が誕生したわけなのです。
2010.09
01
CM:1
TB:1
20:07
 買っていない人に騒がれるというのも不本意なのですが。
 結局、今回の新刊の内容は

a 性能の向上は限定的
b 10式でできて、90式にできないことは、ない
c 本土防衛なら74式で充分
d 周辺国に日本に攻めこむ能力はない(せいぜい2~3ケ大隊)
e 日本の外洋戦力は圧倒的
f 本土防衛は戦争中でも2線級部隊の片手間仕事、専用の新戦車はいらない
g 陸自の本土防衛は、かつての対米戦を基準にした「本土防衛」ではないのか?

 となっています。

 この『必要なのか新戦車』という題に、JSF氏は「戦車無用論」の臭いを嗅ぎつけて、その内容も読まずに、批判しているのです。

 従来のJSF氏の言説と対立するa、bについては、耐え難いものを感じたのでしょう。反論するため、「新戦車が必要」という結論に持って行こうとした。
「周辺国の戦車は強力である。旧式戦車では対抗できない。だからそれよりも偉い新戦車が必要である。」こんなところでしょう。

 でも、周辺国の戦車は日本本土に現れる可能性はありません。だから従来の戦車でも困りません。(それが私のc、d、eなのですが) 
 それではJSF氏は困ってしまう。
 氏はa、bについては、微細なスペックデータを並べて反論できるのでしょう。しかしc、d、eについては事実をどうにかしないとa、bの反論自体が無意味になってしまう。
 結果としてJSF氏はc、d、eについて非現実的な条件や想定をこねくり回したわけです。

 曰く「商船で敵前上陸は可能」、「日本港湾を直接侵攻」、「海空自衛隊では上陸船団を叩けない」…等々。
 でも、商船での敵前上陸は自殺行為。気象海象の影響を受けやすく、時間もかかり、泊地も限定される。敵前で商船から上陸用舟艇をおろし、網や階段で兵員を移し、クレーン(最近の商船にはついていない)で重量物を移す。一回に運べる量も少ないから、それを延々何往復もする。海岸では各個撃破されますね。

 港湾の直接侵攻にしても、それは一六バクチが過ぎますね。ある程度水深を持っていて、岸壁長があるような港湾は防備の対象となります。さらに、いざ取られる時には湾内に沈船を置き(準備も、廃船に穴あけて木栓差しておけばOK)、ガントリークレーン以下の荷役機械・タグボート等の入港支援機材にガソリンでもかけて火をつけてしまえばよい。別に日本がそこの港湾を使いたいわけではない。相手に使わせなければそれでよいでしょう。

 海空自衛隊の軽視、JSF氏周辺が取り上げる「20%ルール」ですが、まずヘンです。上陸船団の撃破率についても、そもそも周辺国では大した規模の船団は組んで来ません。都市伝説の20%ルール、10隻の船団だと2隻しか沈められないのに、1000隻だと200隻も沈められる。その珍ルールに従っても、2割も沈んだら大混乱でしょう。それが泊地に集まって、チマチマ上陸作業をやる商船に付き合うのです。またそこを叩けば2割も叩けるでしょう。帰り道で2割叩けるでしょう…1往復で6割撃破です。

 新戦車への批判に対抗するために、ここらへんの非現実的な条件が、いかに可能であるかを力説したのが
『何故か◯◯◯◯演習の想定に拒否反応を示す隅田金属ぼるじひ社』(週刊オブイェクト)※伏字は隅田金属による
です。そこで引き合いに出した例ですが、結局は
> 近年の温暖化により北極海航路が確立された場合、ロシア海軍主力の北方艦隊が極東に回航して来る可能性があります。
レベルなんですよね。

 なんでこんな無理な批判をしなければいけないか。やっぱりJSF氏はネットスターであり続ける為には、自転車操業が止まるのを避けなければならないのでしょうね。『隅田金属ぼるじひ社レッテル妄想編』(週刊オブイェクト)でも、ネットスター指向や自転車操業そのものには否定していないみたいです。

 あ、あと
『隅田金属ぼるじひ社レッテル妄想編』(週刊オブイェクト)
 なんですが

> 私はこれを笑い飛ばせましたが

 笑い飛ばせたなら、それでいいのではないでしょうか。
 私の人格が疑われるようが、第三者にどう見られようが、それはJSF氏が心配する必要はないでしょう。
 逆に、JSF氏が、自身の戦車愛をどのような形で納得付けようとしているのか、それを聞いてみたいものです。