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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2011.03
06
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12:19
Category : ミリタリー
 攻勢機雷戦という方法もある』の追記で書いたけど。ロシアと中国の対機雷戦戦力は少ない。また、技術的にも劣っている。ロシアも中国も対機雷戦の経験を持っていない。冷戦末期ですら「ロシアの対機雷戦技術は10年遅れ」(International Guide to Naval Mine Warfareによる)といわれた。それよりも遅れている中国が、台湾回収を決意したとして、上陸海岸で対機雷戦ができるのだろうかね?



 台湾は機雷原を構成する。台湾は膨大な機雷を保有している。米製機雷以外にも、外国製の機雷を多数購入し、また自国でもWSM-110とWSM-210と、機雷を2種類製造している。WSM-210機雷は上陸阻止用である。外国製機雷も含めて、台湾は、戦時には上陸適地に濃密な機雷原を構成するつもりである。歴史的にも台湾=中華民国には機雷戦の経験がある。上海事変でも、民国は上陸阻止のため機雷戦を実施している。台湾は中国侵攻に備えて機雷戦を準備している。

 中国が保有する対機雷戦戦力では、上陸戦のために機雷原を啓開は難しい。中国はそれなりの機雷戦準備をしているが、対機雷戦への準備はおろそかである。まず、掃海/掃討艇そのものが少ない。無人艇や徴用漁船は、掃海しかできない上、敵前での作業には向いていない。上陸戦に向いた、航空掃海戦力も保有していない。そもそも、中国には対機雷戦の経験そのものがない。ロシアよりもノウハウ蓄積は少ないのである。

 中国の掃海/掃討艇はあまりにも少ない。『攻勢機雷戦という方法もある』で示したように、中国は5隻しか保有していない。5隻では上陸海岸で、機雷位置を把握する任務(Mine Location)に手一杯である。同時に掃海や掃討を実施できる数ではない。もちろん、根拠地・策源地への機雷戦防護にも手は回らない。機雷位置を把握した後に、掃海や掃討を実施するとしても、やはり5隻では絶望的に少ない。台湾は複合感応機雷を揃えている。よって、掃討がメインとなる。掃討に際しては、機雷位置を極限しなければならないないため、掃海/掃討艇が持つソナーが不可欠である。中国が独立したUUV・潜水員をいくら投入しようとも、掃討作業そのものは掃海/掃討艇の数によって制約される。

 無人艇や漁船では、敵前での機雷原啓開は難しい。中国はトロイカもどきの無人艇、Futi級を保有している。しかし、掃海予定地点に回航し、乗員を退避させ、誘導船からコントロールすることは、敵前では難しい。これらの作業は、当然、昼間に限定される。無人艇は水圧機雷に反応しないように、喫水も極浅く、軽く作られている。天候・海象の影響を受けやすい。磁気・音響機雷を掃海できるが、機雷のロジックに水圧が含まれている場合は、対処不能である。第二次世界大戦で登場した、極原始的な水圧機雷、オイスター・タイプであっても対抗できない。漁船、トローラの類は、無人艇よりも作業に柔軟性はある。だが、基本的に係維機雷にしか対応できない。台湾の感応機雷に対しても無力である。

 中国は航空掃海もできない。中国は掃海ヘリや航空掃海具を保有していない。中国側ヘリに可能な掃海法は、MOP(Magnetic Orange Pipe)による原始的な磁気掃海だけである。MOPによる磁気掃海は、大型ヘリから磁気鋼管を曳航するだけである。手軽はであるが、狭い幅しか掃海できない。もちろん、複合感応機雷には対抗できない。ヘリあるいは飛行艇を用いた、目視による機雷捜索と小火器による直接破壊という方法もある。しかし、これは浅く設置された触角式の係維機雷を掃討できるだけである。実施時期も、海面状態が落ち着いた昼間に限定される。



 中国は、上陸正面にある機雷原を啓開できるのだろうかね? 繰り返すけど、中露は機雷戦には熱心だけど、対機雷戦には力を注いでいない。対機雷戦に必須であるノウハウ蓄積がない。また、中露は、まともな上陸戦の経験を持っていない。上陸戦へのノウハウ欠如と合わせて考えれば、中国は今以上の準備をしなければ、台湾回収を決意できないってことになる。逆に言えば、台湾は中国軍の上陸を充分に阻止する能力があるということだ。

 オマケで言えば、台湾侵攻すら難しい中国が、それよりも遠く、強力な日本に侵攻することは不可能だということだ。対機雷戦戦力一つを見ても、中国は上陸戦に足る戦力を保有していない。その他の要素も中国の日本本土上陸を否定している。例えば、日本の圧倒的な外洋艦艇戦力(『圧倒的な日米同盟』)や防空戦力。中国の貧弱な両用戦艦艇戦力(『中国の揚陸戦力(台湾海峡限定)』)、後続補給の制限(『ゆとり上陸作戦』)のあたり。つまり、中国が日本への侵攻、しかも本土に上陸戦を仕掛けるということは、能力上不可能だということだ。
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