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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2011.04
30
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21:38
Category : ミリタリー
 前に肯定したハコ乗りSAM(「さおだけ屋SSMはなぜ否定されるのか」)についてです。別に私はハコ乗りSAMを作れと言っているわけではありません。(ただし、近接防御的な近距離防空であればそれなりに有効でしょう。)コメント欄では、そこまで読まずに「お前はバカか」や「人命軽視」(ミリタリ系だと便利な言葉ですね)といった、どうでもいい悪口を多数頂戴しました。中には「防空システムに連接しなければ効率が悪い」(ただし、相当長い)といった建設的な批判もありました。そのご意見に対しては、1基あたりの効率が悪くても問題はないと説明します。価格は安いし、弾体だけあれば応急的にも作れるので数でカバーできます。また、1両破壊されても、深刻な問題にならない利点もあります。

 こういったのコメントの中に「それで済むなら外国でもつくっているだろ」「実用例がないのが文谷の妄想である証拠」という、悪口か意見が微妙なコメントがありました。これに対しては、採用例があればよいということでしょう。実際に台湾は、天剣1型AAMを民生トラックに搭載し「車載剣1型防空飛弾」とし、航空基地防空用として運用しています。4連装発射機であり、重すぎるため動力操作背ざるを得ませんが、照準は目視-光学照準※です。ハンガリーとオマーンではより簡素な車両があります。ミストラル対空ミサイル(仏製)をトラックに直積みしたSAMを実用化しています。ミサイルの指向は人力操作であり、目視照準です。

 もちろん、両方のシステムでも目標捜索レーダの支援はあった方がよいでしょう。概略方位と高度が分かれば、そのあたりにミサイルを指向し、目視確認による即時発射が可能です。それ以上のカラクリは不要です。所詮は近距離用の、近接した航空目標を攻撃するシステムです。ミサイルの射程も短く、見える距離に入ってくれないと使えません。目視で見えないときには、まずミサイルからも見えません。発射したあとも、ミサイルは自身のシーカにより目標に向かいます。発射側からの誘導やCW照射は必要ありません。近距離用の打ち放しミサイルに、高度な射撃指揮装置をつけてもあまり意味はないのです。IFFだけあれば充分でしょう。

 この点からすれば、間違いなく近SAM(93式近距離SAM)は無意味に過剰です。近SAMは高度な射撃指揮装置(車両・発射機部分の値段は約6億円)をもっていますが、射程5km程度のミサイルに射撃指揮装置をつけても、ミサイルの射程は延伸しません。発射されたミサイルも、肩撃ちされた携SAM(同じミサイルです)を超える性能は発揮しません。つまり、なんで制式化してしまったかを疑うような装備です。予算に余裕があった時代の惰性としか言えません。

 近SAMなんかを作るくらいなら、肩掛け式発射機を持った操作要員をオープントップの車両に載せたほうがよかったでしょう。近SAMは8連装ですから、1両分のミサイルで8両のトラックを自走SAMとすることができます。ミサイルを除いた車両・発射機部分の値段(約5億)を節減することもできます。疲労軽減を図るのであれば、ミストラルのAtros Twin Lancherモドキでも作り、ポリカーボネードの腰壁でも付ければよかったのですけどね。


※  写真あり「国軍民国99年模範団体」14-21p.p『先端科技』2010年10月
※※ 16-17p.p "Jane's Land Based Airdeffence 2008-2009"
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2011.04
27
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22:04
Category : コミケ
 2010年夏コミで出した『瀛報』(ようほう)29号まえがきから。ナマモノなので一部訂正のうえ転載。



 映画版のソラヲト、なかなか良かったです。カナタ着任前のプレストーリー『ソラノヲト 拝啓大公殿下さま』ですが、インテリ初年兵のノエル着任から始まる小隊の心温まる交歓劇に仕上がっています。
 最初は荒んだ古兵クレハの無理難題、イジメ、鉄拳制裁でチョット沈んだ気持ちになりますが、二人の遭難から物語は穏やかに進展を始めます。山道からのクレハの転落と、殺意すら抱いていたにもかかわらず、惻隠の情から飛び出して助けるノエル。骨折で歩けないクレハを背負ってのサバイバルから互いのわだかまりは溶けていきます。

 そして入院中、新しい小隊長フィリシアの勧めもあってクレハはノエルから読み書きを習います。徐々に読み書きできるようになるクレハ、兵隊として成長していくノエルの姿に、小隊の連帯感が強まりが重ねられていきます。孤児であり、兵舎しか知らないクレハにとって、1121小隊は初めての家族なのでしょう。1年後、乙幹に合格したノエルが教導隊に入校するとき、別れを悲しむクレハが拙い文字で「拝啓大公殿下さま…」で始まる直訴状を書きます。手紙はフィリシアの検閲で差し止められますが、リオの口添えで天聴に達します。伍長昇任後に異例の原隊復帰をするノエル…

 映画版が心温まる話になったのは、TV版のソラヲトの反動なんでしょうね。でも、鬱展開、救いようがないと言われたTV版もドラマとしては傑作です。いや、ソラヲト熱がぶり返して、TV版を見返してしまったということです。
 やはり掉尾を飾るのは第12話『蒼穹ニ響ケ』です。あのスピード感はたまりませんでした。両軍対峙の中間線への進出。通訳の巫女ユミナを通じたアーイシャの捕虜宣誓と解放、独断での停戦ラッパを伝達してからの急展開は何遍見ても目が離せません。

 偶然の結果、始まってしまった戦闘。停戦ラッパを吹奏していたカナタは両目を負傷し車内に転落します。ユミナが包帯を巻いている間にも敵弾は小隊に集中する。そしてタケミカヅチは脚部が撃破され、地上に落下、横転します。
 かろうじて皆は底部脱出口から這い出たのですが、ノエルは整備担当としての責任感からか、または戦車への愛情からか、皆が止めるのも聞かずタケミカヅチに戻り、鹵獲防止用の爆薬を取り出し破壊部署を果たそうとします。車内破壊するために黄色薬のセットを終え、脚部破壊用の対戦車地雷を取り出したところでローマ軍の偵察戦車の接近を認めます。ノエルは躊躇なく黄色薬・対戦車地雷の双方に点火します。煙を引く導火線のついた地雷を持って,こけつまろびつ走るノエル。偵察戦車に接近、戦車底部に飛び込んだところで爆発。敵戦車の擱座と同時に自爆するタケミカヅチ。

 その状況を目の当りにし、狂を発し心身喪失となるフィリシア。「眼が見えない」と泣き叫ぶカナタ。そして偵察戦車から飛び出したローマ兵の接近。意を決したクレハは短機関銃を手に飛び出します。クレハは雄叫びを上げながらローマ兵に走り寄り、乗員を薙ぎ倒すことに成功します。ですが、最後の一連射は途中で弾切れを起こしてしまう。止めを刺しきれなかった敵兵に組み敷かれ、クレハは銃剣で腹を刺突されます。そして重傷を負ったもの同士の、雪の中で這いつくばった格闘。クレハは指でローマ兵の眼を潰し、かろうじて掴んだ円匙で敵の顔を殴り潰すことに成功します。その敵兵の絶命、痙攣のあと、クレハも斃れる。相打ちとなった二人の周りに、白い雪に血が広がっていく…

 そして、一旦落ち着いたカナタが立ち上がり、アメイジング・グレースを吹く。ここからが圧巻ですね。
 戦闘の合間に突然訪れた凪の瞬間、静寂の瞬間に始まったアメイジング・グレースですが、やはりマクロスではない。音楽で戦争が止まるはずもないというリアリティなのでしょう。カナタの音楽を聞き、倒れていた偵察戦車の最後の一人が車体にすがりつくように這い上がる。仲間の仇討ちのつもりなのでしょう。砲塔上に備え付けられた重機関銃にとりついて、カナタを狙う。連射の発砲炎のカットのあと、カナタの音楽が突如止まります。重機の弾で胴体を引きちぎられたカナタ。それを見た敵兵も引き金を引いたまま重機にもたれかかり絶命、空に向いた重機から続く連射。

 カナタの上半身が、ラッパを握ったままでフィリシアの足許に落ちるところからがクライマックスでしょう。
 戦闘の衝撃で心神喪失状態であったフィリシアですが、その表情が怯懦から狂気に変わります。その憎しみの視線は、ローマ軍の散兵線から飛び出してきた一人のローマ兵に向けられる。
 「カメラード」と叫びながら、笑いながら走ってくるローマ兵アーイシャ…時告げ砦でかつて肌を合わせたこともある、百合の仲になった恋人。それと知りながらも、敵として憎しみのまなざしを向けるフィリシア。自動拳銃にストックを取り付け、狙い、全自動で発砲。斃れるアーイシャと雪原に広がる血潮。その手にはヘルベチア語で書かれた『停戦になりました、戦いは終わりです』というビラ…。そして、ローマ軍から飛来した一発の弾丸と倒れるフィリシア。

 直後、停戦命令を伝えるラッパ。猛スピードで到着したクラウス少佐のオートバイ。その側車に乗って大公姫リオが到着するのですが、間に合わないのです。「みんなはどうした」と叫ぶリカに対して「みんな死んじゃったよ」という虚ろな眼をしたユミナ。
 最後に「停戦協定の翌日のことであった」がフェード・アウトしてFIN。

 映画版にしても、TV版にしても、硬軟どちらの展開でもソラヲトはいいですね。『ストライク・ウィッチーズ』とは全然違います。ストパンもソラヲトを意識して硬軟つくろうとしたのでしょう。ですが、軟派のストパンTV版は萌え兵営描写ばかり。硬派をやろうとしたのが映画版『ストライク・ウィッチーズ -音速雷撃隊-』なのでしょうね。でも戦争賛美アニメになってしまいました。よりによって原作のキモであった「月に行くため」と「基地外だ」のシーンをオミットまでしています。TV版にしても映画版にしても、ストパンのの限界はやはり制作総指揮の石原慎太郎の限界なのです。あの世代、従軍経験を持たず、戦場のリアルを知らない割に、一番過激なんですね。特攻隊の肯定や死の美化も甚だしいものです。
 いけませんね、ストパンの悪口を書くつもりはないのですけれども…でもまあ、映画版ソラヲト『拝啓大公殿下さま』、ストパンの『音速雷撃隊』よりもよっぽどオススメです!

 参考資料
『拝啓天皇陛下さま』(63年 松竹)
『血と砂』(65年 東宝)


   『瀛報』(ようほう)第29号『必要なのか新戦車』(平成22年8月15日発行) まえがきより
   





2009年夏コミ「かわいそうなしゃち」
2008年夏コミ「最後の早慶戦」
2011.04
24
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13:46
Category : 未分類
 中国とゲームで張り合うなら、外洋艦隊を強化するしかない。中国は軍事力を拡大していると言われるが、中国陸軍に関しては数的にも縮小であり、中国空軍も現状維持がいいところである。中国軍事力の拡大は海軍、特に外洋艦隊建設を指向している。中国の外洋艦隊拡張に付き合うなら、日本も外洋艦隊戦力を拡張するしかない。

 陸上戦力は洋上の艦隊に対抗できない。中国軍事力の強化に対抗するために、日本の陸上戦力を強化してもあまり意味はない。中国軍事力拡大の焦点は外洋艦隊にある。日本側が陸上戦力を強化しても、中国は日本との軍拡ゲームで痛痒は感じない。外洋艦隊の行動を制約させることのできない陸上戦力は、ゲームでは問題にもならない。

 航空戦力もゲームの主役にはならない。日本の航空戦力は、外洋艦隊が日本近海に侵入することを制約できる。だが、外洋域での活動を制約することは難しい。それは海軍航空戦力の仕事である。東シナ海で航空戦力同士が張り合うようなゲームがあれば主役ともなるが、いまのところその気配もない。東シナ海でのゲームは、日中のコーストガード同士で行われ、日本の圧倒的優勢で固定化している。

 中国の軍備拡張ゲームに対応するには、日本は外洋艦隊を増強するしかない。外洋艦隊とは潜水艦、外洋で行動できる水上艦、艦載ヘリと長距離哨戒機であり、補給艦ほかの支援戦力増強である。外洋で活動できるのは外洋艦隊戦力だけだ。中国とのゲームを念頭においた、中国と張り合うための防衛力整備をするのであれば、日本は外洋艦隊増強に力を注ぐよりない。

 しかし、日本の財政は相当悪化している。東日本大震災復興対処により、日本の財政はヨリ悪化する方向にある。本格的な歳出抑制はじきに始まる。防衛費も文教費も公共事業も抑制される。日本が中国とのゲームを続けるとしても、自衛隊全体を大きくするような施策はとうてい不可能である。80年代から90年代に実現した防衛予算全体の拡大をすることはできない。

 中国とのゲームを続けるとしても、縮小する防衛予算の範囲内で行うしかない。縮小する防衛予算の中で、中国とのゲームに乗り続けるならば、防衛予算内の配分を調節しなければならない。対中国を意識するとしたら、外洋艦隊の増強をすること。そのために中国とのゲームであまり意味のない部分を減らすことである。

 中国とのゲームを続けるのであれば、陸自予算を減らし、海自予算を増やすしかない。従来より防衛予算の内訳は硬直化しており、陸海空の比率は概ね2対1対1である。人員構成も同様であり、本土防衛の役にしか立たない陸自が、海空の合計よりも数多くの人数を抱えている。防衛予算配分での陸海空比率を変えることにより、現実に増強が必要な海空自衛隊を増強することができる。中国と張り合うという施策を続けるのであれば、陸を減じて外洋艦隊を増強するべきである。

 本土防衛に必要な陸上戦力は、10万もいれば充分である。横浜に英・仏軍(赤隊・青隊)が駐留し、日本にまともな海軍力もなく、戦争となれば日本本土上陸も必至であった明治初期にしても、陸軍は3万4000人(明治9年)である。明治15年であっても4万2000人に過ぎず、日清戦争寸前の明治26年でも6万3000人である。平成の時代、日本は東アジア最大の海空軍力を保有している。日本に上陸戦を行える国は、米国を除けば存在せず、その米国にしても日本海空戦力排除は容易ではない。本土防衛への必要性で見れば、予算上で海空の2倍近く、人員で3倍の約15万人という陸自は必要十分以上である。大幅に減ずる余地は存在する。

 世論も陸上予算削減、海上予算増強を認める。前の戦争は、海上封鎖と戦略爆撃により負けたとするのが日本人の共通認識である。本土での防衛戦でしか役に立たない陸上戦力よりも、防空や海上輸送保護にも使える海空軍力に予算を傾斜配分することについて日本国民に異存はない。力を増している中国脅威論にしても、その結果としては世論は正しく「海(空)軍力を増やさなければならない」と認識しているのである。

 中国とゲーム続けるためには、日本は陸自の予算・人員を減らし、外洋艦隊増強を行うべきである。
2011.04
15
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02:02
Category : 未分類
 対艦ミサイルでの攻撃は、小型のミサイル艇よりもヘリコプターに任せたほうが良い。ヘリコプターはミサイル艇よりも優速であり、哨戒圏も広い。生残性にも優劣と呼べるほどの差もない。そして、ヘリコプターの対艦攻撃能力も向上し、ミサイル艇と同等となった。ヘリコプターは一般的な対艦ミサイルを搭載できるようになった。沿岸域における対艦攻撃だけを考えるのであれば、発射母体はミサイル艇よりもヘリコプターが向いているのである。

 ヘリコプターはミサイル艇よりも優速である。ミサイル艇が発揮できる速力は50kt以下であるが、ヘリコプターは150k程度と3倍優速である。気象条件が変化しても、ヘリコプターの優位性は変わらない。小型艇ミサイル艇は海象により大幅に速力を減じる。ミサイル艇が発揮する高速力は、波の穏やかな状態でしか発揮できない。海が荒れると、途端に小型艇は遅くなる。これは水中翼型や滑走型だけではなく、排水量型でも同じである。対して、ヘリコプターは海象の影響を受けない。たしかに、気象条件が悪化すれば、ヘリコプターでは飛べなくなることもある。しかし、計器飛行できないような気象条件では、ミサイル艇も概ね航行することはできない。ヘリコプターが飛べないほどの気象条件では、ミサイル艇もヒーブ・ツーで風浪を凌がなければならない。

 ヘリコプターはミサイル艇よりも哨戒範囲は広い。ミサイル艇は船体が小さいため、対水上レーダを高い位置に配置できない。ミサイル艇はレーダ高さを稼げないため電波的地平線の影響から、比較的狭い範囲を捜索することになる。これに対して、ヘリコプターは高度を自在に取ることができる。対水上レーダが持つ性能に合わせた、比較的広い捜索範囲を持つ。ESM(逆探)も同じである。レーダ等搭載電子機器に関しても、すでにヘリコプターはミサイル艇以上の装備を搭載している。例えばISAR(逆合成開口レーダ)を搭載するヘリコプターもある。ヘリコプターはISARにより、大遠距離で水上目標を識別できる可能性もある。赤外線センサや、かつて利用されていた排気ガスセンサも、ヘリコプターであれば活用できる。原始的な目視捜索であっても、上から見下ろせる、高度が稼げるヘリコプターは圧倒的に有利である。肉眼の場合でも、50NM先で航行する船舶を発見できるという話もある。

 生残性についても、ヘリコプターはミサイル艇に対して不利ではない。対艦ミサイルは長射程であり、一般的に個艦防空用ミサイルの外側から攻撃をかけることができる。ヘリコプターにとって怖れるべきは、固定翼航空機とエリア・ディフェンス・ミサイルである。ただし、敵水上艦艇や船舶が直掩機の援護を受けられるのは、敵領土の沿岸に限定される。空母艦載機にしても、本格的な直掩を継続できるのは米海軍だけ、それ以外の国では、多少の直掩ができる程度に過ぎない。それ以外の地域では、ヘリコプターが航空機の脅威にさらされる可能性は低い。エリア・ディフェンス・ミサイルにしても、水平線の影を低空で飛行する限りは探知を受けず、エリア・ディフェンス・ミサイルも誘導できない。攻撃時のみホップアップすれば、危険は最低限に限定される。確かに、ヘリコプターの生残性については、高いとは言えない。しかし、ミサイル艇の生残性との比較に限定すれば、ミサイル艇も脆弱であるため、ミサイル艇よりも不利であるとも言えない。航空機に対して脆弱である点は、ミサイル艇も同じである。速力が遅いミサイル艇にとっては、艦載ヘリや哨戒機であっても脅威である。ミサイル艇は航空機に対してヨリ脆弱であるとも言える。また、たしかにミサイル艇は対空ミサイルの脅威を受けない※が、ヘリコプターでは無視できる対艦ミサイルは脅威である。

 ヘリコプターの攻撃能力も向上し、ミサイル艇と大差はなくなった。今までは艦載ヘリ程度のサイズでは、運用できる対艦ミサイルに制限があった。1970年代までであれば、対戦車ミサイルを転用したAS-12が限界である。その後、70年代後半から80年代には、シー・スクアやマルテ(Marte)といったミサイルが運用できるようになった。だが、いずれのミサイルも基本はFAC(高速艇)攻撃用であり、射程や炸薬量に制限があり、ハープーンやエグゾぜに劣るものである。サウジアラビアがヘリコプターにエクゾゼを搭載したが、そのためには大型のシュペルピューマを必要とした。しかし、その後もヘリコプターは能力を向上させ、一般的な対艦ミサイルを搭載できるようになった。ノルウェーではNH90にNSM対艦ミサイルを搭載しようとしている。多少軽いミサイルになるが、米軍もSH-60でペンギン対艦ミサイルを運用している。ニュージーランド海軍もエンジンを双発化したSH-2Gでマーベリックを運用している。ハープーンやエグゾゼを運用するとしても、NH-90やEH-101であれば余裕で運用できる。またSH-60やSH-2Gであっても可能である。

 沿岸域における対艦攻撃は、ヘリコプターに任せたほうが良い。ヘリコプターはミサイル艇よりも速力や哨戒能力に優れており、1機でより広い範囲をカバーすることができる。生残性もミサイル艇に劣る部分はない。対艦攻撃力としてのミサイル艇は、ヘリコプターに劣る。高度な対艦攻撃力を求めた、高級ミサイル艇※※は既に意味を失ったのである。


※ エリア・ディフェンス・ミサイルの多くはセミ・アクティブ・レーダ・ホーミング誘導であり、対水上攻撃も可能である。ミサイル艇からすれば、一部の対空ミサイルは十分脅威である。

※※ 安価なミサイル艇、哨戒艇にミサイルを載せたようなものは生き残るだろう。警備、漁業保護等をメインとした高速艇である。
2011.04
07
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19:41
Category : ミリタリー
 以下は、2007年12月に発行した『CIWS銃剣論 : 有無を問う 長短は問わず』※ で穴埋めに書いた文章です。増刷の予定もありませんので、一部だけですが掲載しようというものです。なお、加筆修正は施してあります。



 対艦ミサイルSS-N-2a、スティックス初期型について。発射手順と発射後にミサイルが行う動作は次のとおりです。

① 発射まで
  目標をレーダ(スクエア・タイ)で補足し、あるいは光学照準によって発射する。スティックスは発射前に調定を必要とする。調定時間は20~30秒程度であるが、その間は発射艦艇は15ノット以下で航行しなければならない。
② 発 射
  発射時に、搭載艦艇は目標に対して135度で回頭が必要をである。
② 上昇過程
  発射後、スティックスは、100~300mの指定高度まで45度の傾斜で上昇する。(高度は気圧計による)
③ 捜索過程
  上昇後、定められたコースで飛翔し、捜索をはじめる。捜索範囲は狭く、最初に指定した目標方位と、その左右どちらかの方向へ1km幅を捜索する。
④ 誘導過程
  目標まで6.5nmを切ると捜索をやめ、エコーに向かいホーミングする。複数の反応があれば、最も強いエコーに向かって進んでいく。
⑤ 突 入
  目標まで数秒以内となったとき、誘導をやめ、保持した針路を直進する。最後のレーダ・エコーに向かうため、船体後方に当たることが多い。

 これを承知していれば、スティックスを回避する方法も見えてくるでしょう。

 まずは発射を探知することです。今まで高速で航行していた艦艇が、いきなり15ノットに減速(これはレーダで分かる)したら、それは「発射準備」です。その方面で、強烈な閃光(水面から流星が上がるような光)が見える、あるいは大回頭した場合は「発射」したということです。なお、ステックスを見つけることは容易です。スティックスは飛行機を一回り小型にしたようなサイズで、エンジンからの明るい炎を伴います。中東戦争でも目視観察されています。

 回避する方法としては、まず、ミサイルの捜索範囲から抜け出てしまう方法があります。スティックスのシーク範囲は狭く、目標と、そこから左右いずれかの方向に1kmしか捜索しません。普通は目標の進行方向を捜索させるでしょう。ですから、ミサイル発射を確認したとき、ミサイルから見た進行方向を逆側すれば、ミサイルのシーク範囲から逃れられるかもしれません。発射時に大角度変針をすれば、回避できる可能性があります。

 ロックオンされたあとについても、諦める必要はないでしょう。最後の1km程度は、誘導が切れて直進します。その段階で直角方向に曲がってみるという方法もあるでしょう。船の大きさによって舵が効き出すまでの時間があります。操縦性能に優れた小型船舶であれば、速力を上げて舵効きを良くすれば、上手く逃げられるかもしれません。90度回頭に1分2分を要する船でも、キック(転舵方向とは逆にスリップする減少)でかわせる可能性もあります。なんにしても舵の効きを良くするため、スピードを上げておくべきです。

 同じ初期型であれば、赤外線誘導タイプ、SS-N-2bであっても、回避できる可能性はあります。赤外線シーカは視野角2.5度、探知距離10km以下です。シーカの視野角は2.5度しかありません。10km先で約300mの幅にすぎません。やはり、発射直後に、ミサイルからの見かけ進行方向と逆側に大角度変針をすれば誘導範囲から逃れることができるかもしれません。

 しかし、SS-N-2c以降は電子機器が固体素子化に改修され、誘導ロジックも複雑化しています。まず逃げるのは難しくなっているようです。さらに射程も80kmまで伸び、飛翔高度も25mまで下げられるようですので、まず見つけるのは難しいかもしれません。
 なお、本手法は『Conway's All the World Fighting ships 1947-1995』と『Jane’s Naval Weapon Systems 2005』に記載されたスティックス初期型の挙動をもとに考えたものです。実地に試しても成功するかどうかを保証するものではありませんのでご注意。



※『CIWS銃剣論』は「CIWSなんてサイド・アームだから、何でもよくね」「ゴールキーパーみたいな重たいやつよりも、軽くて取り回しのいいほうが便利だろ」といったものです。「ゴールキーパーは威力があるけど抜くのも不便で重たい軍刀、ファランクスはスグに抜けて負担にならないトレンチ・ナイフと思ってよ」ですね。
 『CIWS銃剣論』自体も、2000年に出した「重くて砲塔構造が必要なゴールキーパーよりも、軽くて載せればのOKのファランクスを、高くて射界稼げるところにおいたほうがいいよね」に加筆したようなものです。
2011.04
02
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TB:0
19:27
Category : 旧ソ連
 旧ソ連軍には、まともな渡洋侵攻・敵前上陸能力は保有していない。旧ソ連が保有した両用戦能力は、規模も質も限定されており、敵前渡河を拡大した程度に過ぎない。当時のDIA『ソ連とワルシャワ条約国の両用戦』(1984年 米部内向け資料 英文 Unclassfy)を見ても、ソ連両用戦戦力は大規模な渡洋侵攻や敵前上陸は難しいことを示している。『ソ連とワルシャワ条約国の両用戦』では、1967年から83年までに実施された東側の両用戦演習が提示されている。だが、提示中で最大規模の1981年に実施された演習でも、旧ソ連両用戦能力は限定された段階であったことが分かる。

 旧ソ連が実施できる両用戦は、規模として大きなものではない。1981年に実施された演習でも、参加兵力は艦艇100隻、戦車等100両、兵員6000人である。この演習では、不足する両用戦艦艇を北海艦隊と太平洋艦隊から回航・増援しているが、それでも6000人程度しか揚げることができていない。この6000名のうち、戦闘部隊は連隊×1と大隊×1、人数にすれば2000~3000人である。。

 両用戦の水準も、それほど高度なものでもない。1981年の演習では、上陸部隊は航空偵察を受けるが、航空攻撃は受けないことになっている。上陸部隊を直接護衛する戦力として潜水艦を使う不見識もある。対機雷戦部隊は83年演習まで登場しない。しかも航空掃海ではなく、掃海艇による掃海である。太平洋戦争での日米の戦いからすれば、そうとう甘い環境を想定している。

 旧ソ連にとって、両用戦とは渡河作戦であって、渡洋侵攻ではない。演習の中でなによりも奇妙であることは、上陸海岸の近くに味方地上部隊が存在する点である。ヘリの運用やLCMへの移乗は、既に味方部隊が占領した海岸や、その地先で実施されている。これは旧ソ連にとって両用戦とは、最終的には味方地上部隊と連絡をする発想であるということだ。旧ソ連にとって両用戦部隊とは、海岸沿いに侵攻する地上部隊を助けるため、海から先行し、港や橋のような重要地域を占領する手段である。概念的にはデサントであり、味方地上部隊の侵攻経路上に、先行して空挺部隊等を降下させるものである。技術的にも、それほど遠くない距離にある本隊(地上部隊)をあてにしている。水を渡るといっても、前提は渡河作戦であって、渡洋侵攻ではないのである。

 『ソ連とワルシャワ条約国の両用戦』には、ソ連海軍歩兵の運用想定についての記載もある。北海では、ノルウェー北部等での上陸作戦、黒海ではボスポラス海峡強襲を挙げているが、極東では防禦に用いられるだろうとしている。これは防備が希薄なノルウェー北部や、旧ソ連が圧倒的優勢であった黒海側からのボスポラス海峡には積極的に両用戦を実施できるが、日米が優勢であり、補給もままならない極東・太平洋方面では守勢しかとれないという見通しの裏返しである。

 旧ソ連には本格的な渡洋侵攻能力はない。両用戦とはいうものの、基本的には渡河作戦の延長に過ぎない。70年代半ば以降、世界的なソ連脅威論があり、その日本版としてソ連軍による日本侵攻の可能性も論議されていた。だが、旧ソ連の両用戦戦力や手法は、日本に攻め込める水準には達していなかったのである。その後のロシアにも日本を侵攻する能力はない。ロシアの戦力はソ連絶頂期の戦力には到底及ばない。守る側の日本にしても、80年代以降、防衛力は急速に強化されている。ロシアは、日本本土に上陸するどころか、日本側海空戦力排除することもままならないのである。