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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2011.06
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Category : ミリタリー
 中国空母って使い物になるのかね?(前編)の続きです。中国空母にはいろいろ足りないものがある。そこら辺とか、空母周辺にある能力を考慮すれば「戦闘投入可能なのは、南沙あたりだけだねえ」ってところです。件の『鏡報』でも、南シナ海の地図が載っていて「これで南沙諸島への侵略がとまる」とでも言いたげな感じで「空母ができれば日本本土に上陸できる」なんて阿呆なことは言い出していませんw
 まあ、中国人にしても、空母は「国之重器」、ある意味で床の間の置物と言ってるくらいだから、実用にならなくてもいいんでしょう。


 



 しかし、問題は空母技術だけではない。中国が空母を実用するためには、空母技術以外にも大きな不足がある。中国海軍戦力を見ると、空母機動部隊を運用するためには戦力・技術にも大穴が開いている。空母機動部隊を運用する上で、中国は護衛戦力、洋上哨戒力が欠けており、対潜技術が不足している。これらの欠落、不足は、空母実用上で相当の足かせとなる。

 まず、中国海軍には空母護衛用に必要な水上艦が不足している。中国海軍が保有する水上艦はそれほど多いものではない。『圧倒的な日米同盟』で示したように、現代的な駆逐艦は13隻しか保有していない。ひとまわり小さいフリゲートのうち、それなりの水準にあるもの6隻-16隻を足しても、20隻-30隻程度である。空母機動部隊1つを作るために、10隻程度を抽出するとそれだけで一線級にある水上艦戦力が3割-5割程度も使われてしまう。空母機動部隊を使うには、随伴する洋上補給部隊も欲しくなるが、それを直接護衛する為にもそれなりの水上艦は2~3隻は必要とされる。空母機動部隊を1つ作るだけで、駆逐艦・フリゲートはおおむね使い切ってしまう。空母機動部隊以外を編成する余裕は相当圧迫されてしまう。中国は、空母を5隻は作りたいとしているが、今保有している水上艦戦力は空母機動部隊1つを支えられる規模に過ぎない。空母1隻を増勢するためには、護衛戦力も一緒に整備しなければならない。しかも高価な防空艦や対潜戦力を強化した大型水上艦が必要になるが、所要を満たすことは難しい。

 また、中国海軍は洋上哨戒力を持っていない。中国は、空母機動部隊の前払いとなる長距離哨戒機をほとんど保有していない。仮に空母機動部隊を外洋で使うとしても、現状では洋上哨戒力に欠けるため、何がいるかわからない海に空母を放り出さざるを得ない。水上艦同様に『圧倒的な日米同盟』で出した数字を示せば、純然とした哨戒機は4機である。能力的にあまり期待できないだろうが、30機ほど保有しているH-6爆撃機を足しても洋上哨戒は大きく不足している。中国はShijianやYaoganといった偵察衛星を持ち、合成開口レーダや逆探、光学観測により洋上捜索に使うつもりである。だが、衛星では哨戒機ほど柔軟には利用することはできない。洋上哨戒力を持たず、水平線から先がどうなっているかもわからないのに、空母機動部隊を闇雲に進出させることは相当に危険である。この方面を強化するにしても、ほぼゼロベースから整備しなければならず、中国海軍にとって重荷である。

 そして、中国は対潜技術に優れているわけではない。中国にとって、空母機動部隊を日米潜水艦から守ることは容易ではない。中国水上艦は対潜戦を強く意識したものではない。中国水上艦は、まず対水上艦戦闘を第一としている。対潜技術がどの水準であるかはわからないが、重視してはいないことは明らかである。対潜兵装を見ても、ようやく新鋭艦に短魚雷が装備されはじめたが、それ以前には対潜ロケットや、場合によれば爆雷しか装備していない。艦載ヘリについては、ディッピングソナーは備えているが、ソノブイを運用するほどでもない。空母直衛には充分だろうが、艦隊前方で広域哨戒するほどの能力はない。その上、艦載ヘリ保有数も少ない。陸上に配置された長距離哨戒機にしても、対潜戦力としてどこまで期待できるかわからない。対潜ヘリや哨戒機も保有数からすれば、積極的に敵潜水艦を沈めるよりも、まずは中国戦略原潜を守るための戦力とみなすべきかも知れない。対潜兵器としての中国潜水艦についても、米海軍には「騒音潜水艦」※※と呼ばれている。日米潜水艦に対して優位に立てるとも思えない。そもそもs中国海軍そのものが、対潜戦をまともに意識しているか怪しいものである。対潜技術はノウハウや蓄積データがものをいうが、中国にはそれがないのである。

 中国は来年10月に空母を完成させるかもしれない。だが、完成した空母は直ちには実用とはならない。中国空母は慣熟訓練が終わったとしても、空母技術上の不足により、実質的には試験運用程度の段階にとどまる。空母以外の海軍戦力・技術の不足も大きい。当座の間は、空母は国威発揚、砲艦外交の道具としてしか使えない。強いて実用を、戦闘的な状況に投入するとしても、南沙諸島あたりでの紛争に投入するのが限界だろう。米日台の海軍力に対抗する手段としては使えるものではないのである。


※※ 'ENTER THE DRAGON INSIDE CHINA'S NEW MODEL NAVY’"Jane's Navy International"(IHS,May 2011)




 中国にとっては「空母出現を真に受けた日本人が本格空母を建造しちゃうかも」問題もあるよね。可能性は低いものではないと思うよ。(『中国が空母を完成させたら日本もすぐ作るのだろうね。』
 すでに日本は艦載早期警戒機、護衛用水上艦、哨戒機、対潜技術は保有している。アメリカもカタパルトも艦載機も売ってくれるだろうね。
 だいたい新規建造なんかしなくとも、すでに日本はすでに軽空母風を2隻保有している。まあ小さくてどうしようもないけど、すでに予算成立している22DDHなら、ちょっといじくれば武装させたゴスホークとかなら運用できるかもしれないw

 しかしまあ、日中両方とも海軍関係者からしてみれば、新しい玩具が買いやすい時代が来たわけだ。海自にしても、70年代後半からの拡張方針を続けてもらえる見込みもたつから、悪い話でもないのでしょう。
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