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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2011.10
29
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Category : 有職故実
 『イギリス連合王国の政治と行政』(発行年月日不明 東京駐在英国大使館情報部)※を読んで少々。

 わりと有職故実紹介で面白い。
 有名ところだと、王妃は王と同格になるが王配は女王より下になる。嫁さんは政治に口出さないけど、婿さんは口を出す可能性があるから影響力を下げておく。いまも女王に対してエディンバラ「公」というアレね。
 それ以外でも、珍妙な組織もある。中世以来の四季裁判(Court of Quater Session)、巡回裁判(Assize)がある。教会裁判所である大僧正裁判所(Provincial Court)と僧正裁判所(Consistory Court)も戦後に残っている点。組織名だけの話だと、検死裁判所(Coroner's Court)とかスコットランドの奉行裁判所(The Sheriff Court)といった珍妙な名前もある。
 近代以前を引きずったような制度もある。軽微犯罪治安裁判所は無給判事(多分、地方の名士のボランティア)による。ただしロンドンは有給判事である。これは自治都市ロンドンの格の高さなのかねえ。

 で、一番興味をそそられるのが、警察組織の「王立アルスター警備隊」(The Royal Ulster Constabulary)だね。 北アイルランドの警察組織なんだが、北アイルランド政府とベルファウスト諸団体のカンパで運営されているような書きぶり。植民地の権力側が金を出し合って作った自警組織がそのまま警察になったような感じ。東インド会社自前の陸軍に似ている。 東インド会社軍、のちのインド植民地軍と王立アルスター警備隊は相似形になのよね。植民地支配そのものの制度じゃないのかな。

 これがアイルランド紛争激化に至る原因だね。アイルランド独立運動が長引き、過激になり"Ireland Terrorist War"までエスカレーションした原因には、王立アルスター警備隊も挙げられる。スポンサーが英国にしがみつくユニオニストだから、独立運動に対して中立的な立場は取れない。ハッキリ言えばユニオニストの犬。アイルランド独立を主張するナショナリストへの弾圧に躊躇はない。過剰な暴力の行使を行なって、一般市民や穏健派を武力闘争に追い込み、アイルランド紛争を泥沼化させたんだろう。

※ ”Goverment and Administration of the United Kingdom”1952年版と1956年の抄訳とのこと
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2011.10
26
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Category : 未分類
 昭和10年、司法省による研究。要はイカサマ詐欺についてなのだが、これがメッポウ面白い。

 詐欺賭博とはいうものの「『イカサマ賭博やろうよ』詐欺」がメインだった。これは何も知らないお客さんを賭場で騙そうというものではない。イカサマ賭博で儲けようとする欲張りを騙す構図。被害者(本人は加害者のつもり)にしても、イカサマ賭博に関与しているという負い目から、まずは訴えない。うまいなあ。

 具体的には「抱き落とし」「鹿追」と称する詐欺賭博がある。犯行グループは、詐欺賭博技術者と、偽装カモを含で構成される。被害者に「あいつ(偽装カモ)からイカサマ賭博で金を巻き上げよう」と持ちかける形となっている。当然だが、最初はイカサマで勝が、最後には大負けする仕組みである。偽装カモが最後に大勝ちして、被害者から金を巻き上げる。このとき、詐術により被害者自身がイカサマに失敗したと思わせることにより、スムースに金を巻き上げるというもの。

 ここで使われるイカサマ技術については、サイコロ細工、カードへの細工・すり替え、碁石隠し…いろいろある。なによりも面白いのはイカサマ・サイコロ。まあ、カード細工やすり替え、碁石隠しはご存知の方法なのだけどね。

 サイコロへの細工については、サイコロの重心細工、奇数・偶数しかないサイコロ、台錐形サイコロ、針脚つきサイコロ、丁半判別可能サイコロ、角削り・・・色々。中でも面白いのが「モーカルゼー」という薬品塗りつけ。針脚つきと同じで、定着力を強くする薬品であり、サイコロが定着面でとまるというもの。つまり塗布面の裏目がでる。

 各種賭博と詐欺手法が詳細に述べられているのも宜しい。名称で一番面白いのは「ポンコツ詐欺」、やっているのはイカサマサイコロのすり替えなんだけれどもね。ポンコツという言葉がね…

 最後に、詐話師実名名簿が付いているのが、親切?なのかね。昭和10年6月現在の名簿だから、みなさん鬼籍なのだろう。生前にお話を聞いておくと面白かったろうに。
2011.10
22
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13:00
Category : ミリタリー
 概算要求で10式戦車は16両要求された。 しかし、この要求は過大である。10式はそれほど必要はない。

 10式は、必要な装備ではない。そもそも、今、戦車そのものを更新する必要は、ない。すでに本土への敵上陸という脅威はない。この判断から、戦車の定数は約400両に引き下げられている。戦車定数が約400両を維持するために、今年、10式を13両も整備する必要はない。

 戦車定数400両は、既に新型戦車で構成されている。陸自が保有している戦車を見ると、90式戦車が約350両保有されている。90式は10式と大差はない。質的に大差のない90式を、10式に更新する必要はない。また、10式もすでに約25両保有している。90式と10式を足すと約375両、新しい戦車の定数は概ね満たされている。

 74式戦車更新として調達しても、その規模は年2~4両で充分である。戦車定数、約400両に含まれる74式戦車は大した数ではない。多めに見て※※も、40両はない。昨今の情勢では、74式更新を急ぐ必要はない。着上陸はない。戦車vs戦車に対応しなければならない必要性はない。74式といっても、調達は1989年まで続いている。若い74式は、車齢20年程度に過ぎない。これから10~20年で10式に更新するとしても、毎年更新する所要は年2~4両に過ぎない。

 いまさら高い10式戦車を買う必要もない。すでに戦車定数は新型戦車で満たされている。そもそも、戦車は普段づかいしない。戦闘機や護衛艦は、日常的に使用されている。戦闘機は平時から領空警備を行なっている。護衛艦は海洋監視や通商保護に従事している。これに対して、戦車は平時には使い道がない。考えにくいが、平時にゲリコマ的な小戦闘が突発的に発生しても、その時には戦車は質を問われない。装甲車であっても対応可能である。何かの必要があって、海外に持ち出すとしても、その程度の数であれば既存10式と90式を持っていけば済む話だ。

 そろそろ10式戦車生産も御仕舞でいいんじゃないかな。90式と10式には大差はないわけだ。C4Iも「10式にしか搭載できない」なんて、予算要求でのトリックに過ぎない。財務省も、分かっていながら騙されてあげた話。C4Iが90式にレトロ・フィットできない理由もない。
 まあ、つまりだ、既存90式が時代遅れになるときにゃ、10式も時代遅れになっているってわけだ。90式が旧式化するときには、10式も旧式化している。その時には、30式戦車か40式戦車※※※か知らないが、新しい戦車でなければ対応できない。
 予算を突っ込んで、無理にスクラップ・アンド・ビルドをする必要はないってことだ。10式戦車作るのやめていいよ。


※ 24概算要求(防衛省) http://www.mod.go.jp/j/yosan/2012/gaisan.pdf 10式戦車は「ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応」→「特殊部隊攻撃等への対処」で挙げられている。新しい戦車は、戦車vs戦車で要求しても駄目だということだね。

※※ 既存90式が341両、既存10式26両で、367両、定数枠(400両とする)に満たない分は33両。切り上げてもざっと40両。

※※※ 極端な話、10年代末期に第4世代戦車となる画期的な戦車が登場すれば、10式も旧式化する。74式が制式化されてから5年後には、第3世代戦車が登場し、技術的には陳腐化してしまっている。
2011.10
19
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Category : 有職故実
 チョット昔、昭和40年代くらいの古新聞で見つけた話なんだけど。当時、カメラは不況カルテルが認められていて、再販制度、つまり末端価格が決まっていたらしい。本やCDのように値引きなしで、高い価格が設定されていたわけだ。
 でも、不況カルテルは国内でしか通用しない制度。自国に保護すべきカメラ・メーカがなければ、カメラなんか自由競争価格で、ドンドン値引きされている。
 日本国内でカメラは不況カルテルで再販価格が維持されていた。不況カルテル以降にもその影響で、日本国内では値段が高止まりしている。

 カメラは国産品でありながら、外国では安く、国内では安い。そうなるとどうなる? 国産品ニコンやキャノンであっても、海外から逆輸入するようになる。

 それを、ホンコンカメラ、と読んだらしい。

 ただし、当時はカメラの大量輸入はできなかったはず。外貨割当制度(今はない)と輸入割当制度(いまでもある)が厳しい。個人規模で小規模に輸入したのか。あるいは、ビジネス客や観光客に移入を以来したのだろうか。そこらへんがわからない。
 とはいえ、国内に日本製カメラが逆輸入されるようになった。それも、それなりの数が還流した様子である。それが、カルテルやカルテル体質にに影響を与えたらしい。

 カルテル体質の隙をついたのが、カメラ量販店だったようだ。淀橋カメラとかサクラ屋カメラ、ビックカメラ、あとサンゴーカメラの類は、カメラの不況カルテル前後に発展している。固定価格が終わったときも、市中のカメラ屋さんは値引きに鈍い。そこに、安売りを武器に発展したのが、当時のカメラ量販店、今の家電量販店なのだろう。

 しかし、このホンコンカメラ。ググッてもでてこない。新聞で見つけたほかには、社史で一回、眼にした程度。当時の経済誌とかカメラ雑誌あたりを探せば出てくるのかねえ。不況カルテルは、カメラと一緒に検索すると、少し出てくるんだけどね。

 なんにしても、不完全な話だから。ホンコンカメラとか、不況カルテルとか、家電量販店との関係は100%信用しないでね。
2011.10
15
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Category : ミリタリー
 ロシアには大規模な海軍作戦を行う能力はない。今年9月上旬、ロシアはカムチャッカ方面で大規模演習を行うため水上艦艇を派出した。その一群は、ウラジオストックから宗谷海峡を経由している。防衛省統幕発表※によると艦隊規模は20隻である。艦艇数では比較的大規模であるため、日本でもニュースとして報道された。しかし、この艦隊について具体的に組成を見ると、「20隻の艦隊」というほど強力な存在ではない。

 宗谷海峡を通過したロシア艦隊は、強力な存在ではない。その主力は、駆逐艦以上が4隻、揚陸艦が3隻にすぎない。残りは、1000トンにみたない対潜哨戒艦2隻と500トンに満たないミサイル艇6隻、曳船ほか補助艦艇5隻と、パッとするものではない。駆逐艦以上にしても、スラーバ(巡)×1、ソブレメンヌイ(駆)×1、ウダロイ(駆)×2である。それぞれ対艦攻撃能力こそ強力であるが、旧ソ連が70年代に建造を始めたシリーズで、防空や対潜戦力は低い。揚陸艦にしてもロプーチャ×1、アリゲータ×2、合算して1個大隊も運べば上々である。

 大型艦×4、揚陸艦×3が、ロシア太平洋艦隊が出せる上限と見てよい。ロシア太平洋艦隊が持つ巡洋艦は1、駆逐艦は5である。巡×1、駆×3は、ほぼ全力である。保有揚陸艦も4隻であり、1隻は調子が良くない様子である。揚陸艦×3も全力である。そして艦隊には航洋曳船を帯同している。機関故障に備えたものだろう。

 極東でロシアが実施可能な海軍作戦は限定される。数も少ないが、質も低い。大型艦×4にしても、対潜戦力は低い。防空戦力も日米DDGに比すれば2世代は遅れている。個艦でみれば強力な対艦攻撃戦力を持つが、所詮は4隻である。揚陸艦が持つ輸送力も低い。揚陸艦3隻は上陸戦に間に合うものではない。オホーツク内海での生地輸送がせいぜいである。

 ロシアには北海道に攻め込む力は全くない。本格的に侵攻するには、水上艦×4、揚陸艦×3では絶望的に規模が小さい。大戦での上陸戦を見れば明快である。マレー侵攻では、輸送船は第1波で×25、第2波で×44が準備された。水上部隊も、直接護衛だけで巡洋艦×6、駆逐艦×16が投入されている。比島侵攻では、輸送船は当初×19、その後に×100程度が準備され、直接護衛部隊も巡洋艦×6、駆逐艦30が投入されている。米軍による硫黄島上陸では、輸送船は400、護衛・支援戦力として、空母×10、戦艦×6、巡洋艦と駆逐艦×20が常時張り付いている。

 北海道にロシアが上陸することはない。防衛力は、西方に、中国とのゲームに焦点が据えられている。北方はすでに第二線である。第二線であれば、第二線の戦力、装備で充分である。演習等に便利なのかもしれないが、それほど戦力を置いておく必要もない。戦争中期までも、北海道本島には、1個師団を配置しただけであり、その仕事も軍政面が主体である。今でも、その程度でよい。

 北方にはそれほど備える必要もない。無駄に北方に予算・人員を突っ込むよりも、中国を相手にしたゲーム振り向けるべきである。北で大規模な陸兵を維持しても意味はない。同じお金を遣うなら、西で海空戦力に振向けるほうがまだ建設的であるといえる。


※ ロシア海軍艦艇の動向について(2011.9.10)統合幕僚監部
http://www.mod.go.jp/jso/Press/press2011/press_pdf/p20110910.pdf
2011.10
15
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12:59
Category : 未分類
 同じ内容を2種類に分けて売る手法が増えた。同じマンガの単行本でモノクロ版とフルカラー版(限定版)で、2種類を同時に発売している。2冊買わせようという目論見だろう。最初に気づいたのは4月頃に出た『榊美麗のためなら僕は…ッ!!』なんだけどね。他にも、限定版として上製函に収め、DVDをつけたようなとかも最近併売されるようになった。

 通常版と限定版、2種を同時に売りつける商売はうまくいくとも思えない。5年くらい前の、DVDとかCDとかゲームを、複数買わせようとする。あるいは上製の差額をかすめ取ろうとする商売のやり方を参考にしたというわけだ。しかし、大元のDVD・CD・ゲームでは、後に高い限定版だけが売れ残る喜劇に見舞われている。

 同じコンテンツを複数買わせる手法は、衰退への萌芽である。既にマンガも売れなくなっている。だから、1人に同じ作品を複数購入させようと、小手先で考えついた。しかし、客から見れば好感持てるやり方ではない。嫌悪感がたってしまうと、滅びの道につながる。

 高く売れるのであれば、ストレートに値上げをすればよい。通常版と特別版を買う客は、真のファンである。商業的に辛いのなら、普通に値上げすればよい。判型を一回り大きくして、単行本1冊1000円でも買うだろう。目眩ましに980円にしてもいい。それで売れない本ならば、フルカラーやらDVD付き特別版も売れない。例えば、安永の『青空にとおく』とか唐沢の『まんが極道』、他にも志村の『青い花』、柳原の『高杉さんちのお弁当』あたりであれば、一回客が付けば1000円でも躊躇なく売れる。





 まあ、付加価値をつけるなら、もっと素朴な物をつけたほうがいいでしょうね。例えば、本屋によって添付したりしている、コピーの著者メッセージペーパーですね。一種手紙のようなモノですから、B6で1枚でも有難いわけです。犬神すくねがコミケでうているようなブックレットを、更に簡略化してつけたほうがいいでしょうね。銭ゲバ臭はあまりしない。売りつけ感もない。あれはうまい商売だと思うのです。しかし、あれが別料金でDVDつけたり、函入りにしたりした途端に、銭ゲバ臭がするわけです。

 そもそも「フルカラーを喜ぶ人ってどれくらいいるのか」問題もあります。日本のマンガはなぜかスミ1色で、おそらくフルカラーは膾炙しないでしょう。極端に言えば、マンガの絵はオマケで、肝は作劇術でしょう。マンガをフルカラーとする事は、書籍のフォントに色をつける、大きさを変える手法と同じで、意味は少ない行為ですねえ。
2011.10
08
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13:00
Category : 有職故実
 帝国議会には『建議録』がある。文字通り、議会が政府に対する建議を記録したもの。建議には強制力はない、まあ「こういうアイデアなんだけど、どう?」といったもの。発案は議員個人なので、誰も困らない内容※であればそのまま衆議院として建議していた様子。無理に否定して議員の顔を潰す必要もないということなのだろう。

 で、その建議なのだが、戦争末期になると相当アレな内容が出てくる。それが「松葉酒醸造に関する建議案」。昭和20年第86帝国議会、その衆議院の建議集で発見。

 松葉を主原料として酒を作るという話なのだが、松葉ってそれほど糖分含んでいるのかね? 建議では副材料で甘薯と馬鈴薯を挙げらいる。でも、実際には、そちらが主材料だろう。芋のデンプンが糖化してアルコールになるとしか思えない。救荒食でもあった松皮ならともかく、松葉ではまともに醸造に足りる糖分はないだろう。

 建議案理由書によると、アルコール量が10数%で、腐らないとされている。航空搭乗者に必須の「ホルモン性飲料」とか書いてある。陸海軍将兵だけではなく、労働者に飲ませれば生産性向上に寄与するともある。効用にしても、ちょっと神がかりかね。バナナの葉っぱを売りだしたGOグループ、大神健太会長と大差ない。

 提案者の名は秘すが、前の帝国議会でも、国民健康食を云々し「肉を食う不健康になるぞと」という決議案を提出している。肉とか米とか、美味しい物を食べると堕落し寿命が縮む。穀物立ちをして、山野に自生するものを口にしなさいという発想なのだろう。これは別段珍しい発想ではない。『耳嚢』にも穀物を食わない村の話もある。インドでの断食思想や中国での仙人観念も似たようなもの。ただし、それが建議というシステムで、正規経路で政府に上がるのは喜劇である。

 もちろん、全部が全部とも松葉酒ではない。まともな建議もある。ただ、戦争期で戦況厳しいとなると妙な決議も出やすいのだろう。
 まず日華事変の段階で、チョットねえという話が出ている。昭和15年の75帝国議会だと、勤労奉仕のため、夏休みを3ないし5ヶ月に増やせとかいうのもある。ほかにも「山陰地方はソ連に面している、国防上必要だから山陰本線に東京発下関行きの急行を設定しろ」なんてコジツケもある。戦後に議会が強くなると、これがこうじて、我田引鉄となり国鉄が潰れるわけだね。


※ 建議で不利益を受ける議員がいると、同時に正反対な建議が出る。例えば東京港開港(国際港)に際しては、正反対である2つの建議が出ている。東京開港により、打撃をうける横浜港周辺選出議員は「東京港開発は予算の無駄なのでやめるべき」と建議する。それへのカウンターとして、東京港により利益を受ける議員は「早期に東京港を開港するべき」と建議している。
2011.10
08
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12:59
Category : 有職故実
 マツダ自動車がロータリ・エンジン生産をやめるとの話。
「世界唯一のロータリーエンジン車、生産終了へ」
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20111007-OYT1T00889.htm
滅びるべきエンジンが滅びたということだね。

 もともとロータリ・エンジンは駄目エンジンで、どうやってもレシプロ・エンジンにはかなわない。これは昭和40年代初頭から富塚清が予言しつづけたとおり。富塚は航空エンジンの偉い人で、高木がつくった海軍のブレーン・トラストにも入っている。それはさておき、戦後には異形エンジンは如何に駄目なのかを力説した人である。

 富塚は、特にロータリー・エンジンへの執着に警鐘を鳴らしていた。『機械学会誌』で、特にロータリ・エンジンを名指しし、その筋の悪さを否定するエッセイを幾つも書いている。中でも、50年前に掲載された「内燃機関禁忌集補遺 -特にレシプロ対ロータリについて-」※は筋の悪さを痛快に指摘しており、面白いものである。

 まず富塚は、ロータリ・エンジンについて燃焼室形状でダメだしをしている。ロータリ・エンジンは断面が長方形である。「熱膨張や圧力でどう変形するか考えてみろ」(大意)、「円筒状シリンダであれば、断面はどうやっても円だが、長方形は複雑怪奇な変形するだろ、それを気密出来るか」(大意)と一刀両断している。「ロータリの通る空間の断面は長方形、締切り棒は少なくとも4本いる[中略]締切りは[レシプロ・エンジンのピストン・リングのように]何段階に重複させることは不可能」とし、それが可能なら「従来のレシプロも[空間効率の良い]長方形シリンダの採用に踏み切ってよいはず」としている。

 そして富塚は、ロータリ・エンジンはレシプロ・エンジンに劣位にある点も指摘している。ロータリが持つ劣位点を(a)から(k)まで11点挙げている。逐一を示すことは面倒なので、特に致命的な点を上げる。(a)排ガス排出での劣位、レシプロのピストン機構に敵うものではない。(b)褶動部と熱源の接近、ロータリはエンジンに熱が籠もる。(e)円形シリンダは製作容易であるが、ロータリ外周である繭型も側板も製作は難しい。といった3点である。

 そもそも、レシプロ・エンジンは絶対的に優位にある。富塚も「レシプロ・エンジンなら、直径10mm、1.5cc単気筒から、1500リットル4000馬力まで任意の排気量・出力・気筒数で作れる、ロータリは無理だろ」(大意)と言っている。ロータリ・エンジンは50年前には芽がないことは明らかであるが、それを無理に続けていたのがマツダなのだろう。

 ロータリ・エンジンは威信財だったのだろうね。トゥールビヨン方式の高級機械式腕時計と同じ、実用ではなく愛玩物だ。見た目にメカニズムの妙があるように見え、製造には高度な技術が必要である。無理に実用にするには、巧緻に作らなければならず、当然製造も維持コストも高くなる。しかし、威信財としては、高コストであることはむしろ歓迎される。

 実用性でいえば、ロータリ・エンジンは、どうあがいてもレシプロ・エンジンに駆逐されるのは当然である。高級機械式腕時計と、1個1000円の使い捨てクォーツ、どちらが正確であるかを考えれば良い。

 威信財としてのロータリ・エンジンは終わった以上、ロータリ・エンジンが復活する芽はないだろう。水素エンジン云々とする負け惜しみもあるが、ロータリ・エンジンである以上、実用は問題点が山積している。さらに水素貯蔵をどうするかという問題もある。そもそも「環境にやさしい」イメージや「先進技術」で押し出すにしても、今度は燃料電池に敵わない。水素ロータリ・エンジンは燃料電池に敵わない。カルノー・サイクルの制限から抜け出せない上、先進性というイメージでで負けるのである。

 ロータリ・エンジンは、どうやっても駄目エンジンであり、これからもどーやっても駄目エンジンというわけだ。



※ 富塚清「内燃機関禁忌集補遺 -特にレシプロ対ロータリについて-」『日本機械学会 論文集』70.576(1967.1)p.p.23-25
2011.10
01
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13:00
Category : ミリタリー
 昨日届いた香港誌『鏡報』に「空母直衛艦としてスラーヴァ級『ウクライナ』購入がよくね?」という記事(梁天仞「烏克蘭巡洋艦宜租莫買」)※ が掲載されいたのだけれども。主張を見ても、空母直衛艦への要求性能や、そもそも運用形態について不思議な間隔を看取れたので少々。中国では海軍作戦というものがキチンと近いされていないんじゃないかな。



 中国では海軍作戦はそれほど理解されていない。梁さんの記事「烏克蘭巡洋艦宜租莫買」は、空母直衛艦や空母機動部隊に関し、理解は不十分、あるいはズレたイメージを示している。この梁さんの記事が、専門家による記事として掲載されている点、中国一般では海軍作戦への理解が怪しい点を示唆している。

 梁さんは「国産艦は空母直衛に足りない所がある。スラーヴァ級導入をすべき」(大意)と主張している。この「国産艦の不足」(「中国戦艦的四不足」)は、第1に最高速力、第2に航続距離、第3に対空ミサイルの搭載数、第4が対潜戦力である。

 しかし空母直衛艦として挙げた「国産艦の不足」は、実際には問題ともならないように見える。

 梁さんは最高速力について「空母が35ノット出した場合、最高速力30-27ノットである在来艦は追いつけない」と問題視している。しかし、空母は常に30ノット以上で航行するものでもない。大戦期とは異なり、直衛艦も厳密な艦隊陣形を維持する必要もない。兵器が持つ射程距離が伸びたこともあり、概略方位と距離を保てれば充分である。航空機離着艦のため、空母が短期間ダッシュしても問題はない。

 航続距離についても「在来艦はあまりにも短い」としているが、例示したLUYANGにしても、4500マイル(15ノット)と短いものではない。本来であれば、補給艦によって解決すべき問題である。広範囲を長期間行動する米海軍駆逐艦やフリゲートも、航続距離4500マイル(20ノット)であっても問題にはならない。

 対空ミサイル搭載数は、中華版イージスであるLUYANGⅡであっても「ただし、対空ミサイルは多くない」(「但防空導弾数量不多」)と述べている。しかし、LUYANGⅡは6連装発射機を8基装備しており、計48発と少なくはない。中華版イージスといわれるシステムが、考えがたいことだが、米海軍イージス並であったとしても、48発は少なくはない。アーレイ・バーク級であっても、VLSセル数は90程度であり、全てはSAMではない。中華版イージスが持つ、極端に高くないであろう性能に合わせるとすれば、48発は充分である。

 対潜戦力は「対潜用の魚雷[やロケット]が少ない」(「反潜魚雷品種甚少」)としている。しかし、対潜戦力でのキモはソナーや、対潜ヘリに搭載されたセンサーである。発見したあとの兵器ではない。しかも、対潜ヘリではなく、個艦が持つ対潜魚雷に機体を抱いている点は、ピントが外れているのである。

 そして、梁さんが主張する「国産艦の不足」を埋める、スラーヴァ級に対する期待も、その具体性を見るとピントは外れている。

 最高速力35ノット、航続距離7500マイルについても、スラーヴァ級を整備したところで、1隻だけが発揮できる性能に過ぎない。他の直衛艦は30-27ノットであり、航続距離4500マイルである以上、艦隊として速力も航続距離も伸びない。航続距離の問題は、本来は補給艦による洋上補給等で解決する問題である。

 対空ミサイル装備数にしても、梁さんは64発搭載した艦隊防空用対空ミサイルであるSA-N-6(射程100km)に、なぜか個艦防空用であるSA-N-4(射程15km)を40発足している。あまり意味のある数字ではない。防空能力について、CIWSであるAK630が6基用意している点を評価している。だが、低能力・低信頼性(独立動作しない)であるため、6基必要としている可能性に気づいていない。

 対潜戦力についても、同様である。スラーヴァ級が対潜戦力に優れる点として、5連装長魚雷とRBU6000対潜ロケットを提示している。しかし、潜水艦をどのようにして見つけるかについては、指摘がないのである。本来ならVDSやTASSの類、バウ/ハル・ソーナーに言及すべきであるが、それもない。

 そして、サンド・ボックス対艦ミサイルとAK130への評価も、空母直衛艦としての優位性を強調するものではない。対艦ミサイルは、搭載数や能力から、空母艦載機による対艦攻撃力を見込めない点を代替する手段かもしれない。だが、主砲であるAK130が持つ高発射速度を沿岸への艦砲射撃での優位性として示す点も不可解である。

 これらの違和感は、海軍作戦への理解が不十分である点に起因している。最高速力や航続距離についての勘違いは、空母直衛艦に必要とされる性能や、空母機動部隊が取る運用形態をイメージできない結果である。対空ミサイル搭載数についての誤解も、艦隊防空と個艦防空にある差異を意識しない結果である。対潜戦力についても、重視すべき点は潜水艦捜索であり、攻撃段階ではない点を誤っている。

 中国では、海軍作戦を理解する水準は低い。梁さんの記事は、中国での海軍作戦理解についての水準を推測する材料である。海軍部内では、少なくとも一部は西側的な海軍作戦理解をしている。しかし、中国は外洋海軍や空母機動部隊運用の経験やノウハウも乏しい。海軍を取り巻く外部は海軍作戦をあまり理解していない。海軍全体でも怪しい水準である。実際に、対潜戦力を軽視した水上艦や、実用性も怪しい紅稗級、対機雷戦に対応できないような対機雷戦艦艇が生まれている。おそらく、空母も空母直衛艦も、西側での先進的な海軍作戦には追いつかない水準で出現するだろう。

※ 梁天仞「烏克蘭巡洋艦宜租莫買」『鏡報』(鏡報文化企業公司,2011.10)p.p76-79



 威信財として強力な軍艦を手に入れるならまだしも。空母直衛艦だったら、同じ買うにしてもウダロイⅡの方がマシだと思うのだけれどもね。空母自体が威信財だから、なんでもいいのだろうけどさ。
2011.10
01
CM:1
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12:59
Category : ミリタリー
 防衛予算なんだが、陸自から海空自衛隊への振り向けは順調に進むだろうね

 9月30日、防衛省による平成24年度予算(2012年度)概算要求が提出された。その概要は『平成24年度概算要求の概要』(http://www.mod.go.jp/j/yosan/2012/gaisan.pdf)で示されている。

 この『平成24年度概算要求の概要』であるが、その中で、陸自は存在価値を示せていない。

 防衛力政策における焦点は明確に「日本の外側」に向いている。『概算要求の概要』は主要なテーマとして
・「実効的な抑止及び対処」
・「アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化」
・「グローバルな安全保障環境の改善」
と3点を挙げている。前からそうであるが、防衛政策での焦点は、アジア太平洋地域や地球規模を視野に入れている。

 このアジア太平洋地域や地球規模での活動では、陸自はそれほど存在価値を示せていない。『概算要求の概要』では幾つかの活動を示しているが、海空が多く、陸は影もない。ここ数年で実際に行った行動にしても、海によるインド洋給油やソマリア沖海賊対処、空によるイラク航空輸送がある。陸もイラク派遣等実施しているが、その影も薄い。

 純軍事的な防衛力整備でも『概算要求の概要』では焦点は本土ではなく、周辺部に据えられている。『概算要求の概要』では、最初の「実効的な抑止及び対処」で軍事的な日本防衛について述べている。この「実効的な抑止及び対処」は「周辺海空域の安全確保」を筆頭とし、ついで「島嶼部に対する攻撃への対応」という順番に展開していく。その次は、「サイバー攻撃等への対処」に過ぎない。軍事的な日本防衛については
・「周辺海空域の安全確保」
・「島嶼部に対する攻撃への対応」
と日本周辺部に焦点を据えている。

 純軍事的な防衛力整備でも、陸自は出る幕がない。「周辺海空域の安全確保」で挙げられた5事業は、全て海空自である。「島嶼部に対する攻撃への対応」でも、22事業中、陸自は3事業であり、そのうち2事業は地対艦ミサイル整備と輸送ヘリ整備である。離島戦では、制海権・制空権確保が最優先で、極端な話、海と空を抑えればどうにでもなってしまう。陸兵がどれだけ苦労しても、時間の問題にすぎない。純軍事的な防衛力整備で陸自がメインとなるのは「ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応」であるが、その優先順位も低い。

 必要性も、優先度も高い海空自は順当に予算が認められる。日本の防衛は、明確に海空主体となった。海外での活動や、日本周辺部での防備は海空戦力が主体である。この状況では、海空自が提示した事業は通りやすい。事業として認められ、削減幅も少ない。

 対して、陸自は必要性や優先度を示すことができない。海外での活動や、日本周辺部での防備では、今の陸自は存在価値を示せない。防衛省が提出した概算要求段階で、陸自は既に精彩を欠いている。新規事業にも説得力に富んていない。

 陸自は存在価値を示せていない。日本の防衛に関して、陸上戦力による本土決戦的な発想は、すでに過去のものである。そもそも、戦後日本とその周辺を見れば、日本に攻め込める力を持った脅威はない。今日、日本本土への着上陸を脅威と主張しても賛同は得られない。

 予算を査定する上で、陸自分は順当に査定で削減される。そして、新規事業が認められ、結果として削減幅が小さくなる海空自に防衛予算は振り向けられる形になる。24要求では、海自は純増になる可能性もある。

 長期的にも、陸から海空への振り向けは続く。陸上戦力は既に従属的な地位にある。しかし、人員でも予算規模でも陸自が最も大きなウエイトを占めている。これは奇妙な状態である。優先度が低い陸自が削減され、優先度が高い海空に振り向けられるのは当然である。

 陸は、存在価値を示せない限りジリ貧になる。従来どおりである本土防衛体制を大きく改め、海外での活動や、日本周辺部での防備に最適化しなければ生き残れない。日本本土での防衛を副次的役割として、海外活動用や、日本周辺での展開に適した形態に変化できなければ、このまま緩やかに縮小していくことになる。





P.S 本土防衛なんて、4ヶ鎮台4万人くらいに抑えて、余りで海外貢献師団風とか、日本周辺に展開できる海上機動旅団風にしちゃうとかね。

P.SのP.S 「陸上自衛官の実員増」「109人の増員」も、小細工に過ぎないよね。まあ、実員を減らされるにしても、その幅を小さくしようとフッかけているものだ。去年の「陸自2万人増員」と同じ。概算要求だから、まあフカシの塊みたいなもんだが。

P.SのP.SのP.S 実員増は福島第1原発の事故対処を理由にしているけど、短期的な変動だから「工夫すれば終わり」となるだろうね。要は予算上の定員増を指すのだろうけど、法規上の定員(訓定)が減るのに「それはあり得ない、無理」と言われる。人員を増やすのは装備を新しくするどころの難しさじゃない。まず無理だろうね。

P.SのP.SのP.SのP.S 逆に、人員を思い切りカットすれば、新規事業にしても通り易くなるんだけどね。10万人とか9万9000人にすれば、装備の更新も訓練や演習のお金も相当余裕が増えると思うんだけどね。みんなが大好きな新戦車も、実際に優先度の高いシステム・通信やらも、ロジスティックでの外注も容易になると思うんがなあ。まあ、将官・佐官のポストが減る、2佐以上への昇任も困難になるから、官僚組織として呑めない話なんだろうけどね。