Category : ミリタリー
アメリカ人にも「ソ連軍150個師団が、アラスカからカナダを経由し、合衆国本土に侵入してくる!」と言い出す人はいるのだろう。アラスカ・アプローチ※はまずあり得ない。だが、そこが手薄であるように見えると、危機感が駆り立てられる人もいるのだろう。
山陰に外国軍が上陸戦を仕掛けてくる。自衛隊は配備が薄く危機的である。そう考える人がいる。
「微妙に絶望的な某地方に於ける対上着陸作戦」http://togetter.com/li/216536
しかし、これは米人がアラスカ上陸を恐れるようなものである。まず、どこの国が攻めてくるかがあるが、それはさておこう。日本侵攻で山陰を、裏日本の中国地方に大規模な上陸部隊を揚げるような悪手を実施するだろうか?
まず、山陰には高い価値を持つ目標はない。
また、内陸侵攻のための拠点としても向いていない。内海に向け、内陸侵攻をしようとしても、中国山地を通過する数少ない道路を通らなければならない。山地であり、迂回路はない。日本側の妨害により、容易に交通は遮断する。さらに、苦労して内海にでても、補給は日本海からの陸路に頼る必要がある。線形が良くない山地の道路は、輸送力を制限し、日本側妨害により交通は容易に遮断する。
しかも、山陰は攻めるに遠い。日本は北朝鮮を除き、周辺国とは友好関係にある。だが、頭の体操として、あり得ない話であるが、ロシア、中国、韓国と戦争となったと考えても、山陰はない。もともと3国とも、渡洋侵攻能力は限定されている。それを抜きで考えても、わざわざ山陰は攻めようとは考えない。
ロシアにとっては、山陰は遠い。沿海州航空基地群からも遠く、船団にエアカバーをつけることも難しい。
中国にとっても、チョーク・ポイントである対馬海峡を300マイル東航しなければならない。
韓国にとっても、最短距離である対馬-北九州にくらべ、距離が2倍以上に伸びる。エアカバーも厳しくなる。
友好関係にない、北朝鮮は大規模侵攻はしようがない。海軍力も船舶もない。そもそも食うや食わずである。
リスクばかり高く、メリットも少ない山陰を攻める悪手をなんで取らなければならないのか。
中国地方に回せる日本側陸上戦力は少ないものでもない。
日本側は発達した国内交通網を利用できる。このため、中国地方への戦力集中は容易である。確実に山陽地区までは容易に移動できる。
このあたりについて「微妙に絶望的な某地方に於ける対上着陸作戦」を読んだ友人(名は秘す)は次のように評している。
「今度の震災で瞬く間に10万もの自衛隊が同じくインフラの貧弱な東北に展開してるんですが、この「戦訓」をなんだとおもってるのでしょうか」
中国地方に所在する陸上戦力も、少ないとは言えない。
極端な例を挙げれば、面積あたりの陸上戦力云々なら、カナダはもっと絶望的である。また「脅威」に陸で接している国をみても、フィンランドやノルウェーの極北部は中国地方を大きく下回る配備密度にある。
友人も「これで『かつかつの防衛力』なら人民解放軍はどうなるのよ。四川の震災やチベットの治安戦とか投入部隊を捻り出すのに相当苦労してるんですが」と評している
そもそも、どことも見当もつかない「敵国」が、渡洋侵攻に必要な上陸船団と護衛艦艇を確保できるかどうか。その戦力で、海空自衛隊、在日米海空軍による攻撃をかいくぐり、上陸船団を日本近海まで海上輸送できるかどうか。その点についても全く検討もない。
山陰に大規模部隊が揚がってくる。そこでドンパチやるような事態は考えなくても良い。仮に大規模部隊が揚がってきても、そこから動けない。
来たところで、コマンドのたぐいである。山陰沿岸は、上陸に備えて、強力な部隊を多数配備する必要がある地域ではない。まずは警戒程度でよい地域でなのである。
…ま、なんにしても、危機感に突き動かされ、妥当性について判断を放棄した発想だということです。おそらく、本土四周、どこに上がられても大丈夫な「本土決戦準備+」がなければ安心できないのでしょう。
極端な話、本土防衛を考える上で、対上陸戦を考える上では、山陰は岐阜や長野と同じような場所です。敵上陸はない。あってもコマンド程度です。
※ 「『着上陸』とか言いだす米国人もいた」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-160.html
2011年11月24日MIXI日記より転載
12月になって、仕事も趣味も忙しいので、しばらくMIXIの日記の転載でお茶を濁します。
山陰に外国軍が上陸戦を仕掛けてくる。自衛隊は配備が薄く危機的である。そう考える人がいる。
「微妙に絶望的な某地方に於ける対上着陸作戦」http://togetter.com/li/216536
しかし、これは米人がアラスカ上陸を恐れるようなものである。まず、どこの国が攻めてくるかがあるが、それはさておこう。日本侵攻で山陰を、裏日本の中国地方に大規模な上陸部隊を揚げるような悪手を実施するだろうか?
まず、山陰には高い価値を持つ目標はない。
また、内陸侵攻のための拠点としても向いていない。内海に向け、内陸侵攻をしようとしても、中国山地を通過する数少ない道路を通らなければならない。山地であり、迂回路はない。日本側の妨害により、容易に交通は遮断する。さらに、苦労して内海にでても、補給は日本海からの陸路に頼る必要がある。線形が良くない山地の道路は、輸送力を制限し、日本側妨害により交通は容易に遮断する。
しかも、山陰は攻めるに遠い。日本は北朝鮮を除き、周辺国とは友好関係にある。だが、頭の体操として、あり得ない話であるが、ロシア、中国、韓国と戦争となったと考えても、山陰はない。もともと3国とも、渡洋侵攻能力は限定されている。それを抜きで考えても、わざわざ山陰は攻めようとは考えない。
ロシアにとっては、山陰は遠い。沿海州航空基地群からも遠く、船団にエアカバーをつけることも難しい。
中国にとっても、チョーク・ポイントである対馬海峡を300マイル東航しなければならない。
韓国にとっても、最短距離である対馬-北九州にくらべ、距離が2倍以上に伸びる。エアカバーも厳しくなる。
友好関係にない、北朝鮮は大規模侵攻はしようがない。海軍力も船舶もない。そもそも食うや食わずである。
リスクばかり高く、メリットも少ない山陰を攻める悪手をなんで取らなければならないのか。
中国地方に回せる日本側陸上戦力は少ないものでもない。
日本側は発達した国内交通網を利用できる。このため、中国地方への戦力集中は容易である。確実に山陽地区までは容易に移動できる。
このあたりについて「微妙に絶望的な某地方に於ける対上着陸作戦」を読んだ友人(名は秘す)は次のように評している。
「今度の震災で瞬く間に10万もの自衛隊が同じくインフラの貧弱な東北に展開してるんですが、この「戦訓」をなんだとおもってるのでしょうか」
中国地方に所在する陸上戦力も、少ないとは言えない。
極端な例を挙げれば、面積あたりの陸上戦力云々なら、カナダはもっと絶望的である。また「脅威」に陸で接している国をみても、フィンランドやノルウェーの極北部は中国地方を大きく下回る配備密度にある。
友人も「これで『かつかつの防衛力』なら人民解放軍はどうなるのよ。四川の震災やチベットの治安戦とか投入部隊を捻り出すのに相当苦労してるんですが」と評している
そもそも、どことも見当もつかない「敵国」が、渡洋侵攻に必要な上陸船団と護衛艦艇を確保できるかどうか。その戦力で、海空自衛隊、在日米海空軍による攻撃をかいくぐり、上陸船団を日本近海まで海上輸送できるかどうか。その点についても全く検討もない。
山陰に大規模部隊が揚がってくる。そこでドンパチやるような事態は考えなくても良い。仮に大規模部隊が揚がってきても、そこから動けない。
来たところで、コマンドのたぐいである。山陰沿岸は、上陸に備えて、強力な部隊を多数配備する必要がある地域ではない。まずは警戒程度でよい地域でなのである。
…ま、なんにしても、危機感に突き動かされ、妥当性について判断を放棄した発想だということです。おそらく、本土四周、どこに上がられても大丈夫な「本土決戦準備+」がなければ安心できないのでしょう。
極端な話、本土防衛を考える上で、対上陸戦を考える上では、山陰は岐阜や長野と同じような場所です。敵上陸はない。あってもコマンド程度です。
※ 「『着上陸』とか言いだす米国人もいた」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-160.html
2011年11月24日MIXI日記より転載
12月になって、仕事も趣味も忙しいので、しばらくMIXIの日記の転載でお茶を濁します。
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