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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.01
28
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13:00
Category : 有職故実
 明治時代に発行された『海軍雑誌』でドイツ「空中雷船」発見したのだけれどもね。

空中雷船 
国立国会図書館 近代デジタルライブラリー『海軍雑誌』66号(http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1500469 館内限定閲覧) 56ページ折込図より
当記事は無記名であり、発行後120年を経過しているため、著作権による保護期間は経過している。


 要は、気球で爆撃しようというもの。有人気球1個が、爆薬を搭載した無人気球4個をコントロールして爆撃する仕組み。もちろん、気球であるため、自由に移動することはできない。風まかせである。正確に目標上空に到達できるものでもないので、城砦といった大面積目標を標的にしている。

 『海軍雑誌』ではドイツ人「『ゲオルグ、ローデック』氏」が発明した「独乙空中雷船」を紹介している。

 気球(文中では「風船」)は、図で見るかぎりは、水素気球である。有人、無人でサイズが異なっている。有人気球は容積1200m^3、無人気球は500m^3と記されている。有人気球には士官1名、練習生2名が搭乗する。

 無人気球には「雷函」(トルピードケヘッツ)が搭載されている。電機仕掛で投下が可能であり、炸薬は、ダイナマイトあるいは綿火薬50-75kgと記載されている。
 「雷函」に取り付けられた発火機構は不詳である。「ダイナマイト薬包百個ヲ装填スルヲ以テ」「雷函」が地面に墜ちた時に爆発するとされている。当時製造されたダイナマイトが、落下程度で爆発するものかは疑問である。函外側に、雷管多数をつけて落下衝撃で発火する、あるいは黒色火薬導火線程度で作られた時限発火装置が必要だと思われるが、詳細はない。
 「雷函」構造に関しては、詳細は記載されていない。おそらく弾殻は薄く、弾片効果は望めない。

 有人気球と無人気球は、索により連結されている。もちろん、連結された効果は、互いに離れない程度である。「雷函」投下以降、不要になった無人気球は綱の切断により放棄される。この際、無人気球は「戸口ヲ開放シ以テ敵ノ陣営外ニ剽落ス可シ」と、おそらく水素放出により墜落する。

 「空中雷船」がもたらす効果は、比較的高く評価されている。おそらく、空から攻撃するアイデアそのものへの賞賛である。直接的な威力を高く評価する様子はない。一応「堅城鉄壁」であっても「震動破壊スルニ至ル可シ」としている。だが、「縦令失敗シテ」(シテは合字)も「大ニ敵ノ気ヲ粗相セシメ」て、味方の「勇ヲ鼓舞スル」ことができると、比較的逃げている印象である。効果としても、敵にショックを与えられるとする、精神的な効用を説いている程度である。

 記事は、高度を取ることによって、気球は攻撃を受けず、安全であると主張している。「敵ノ砲弾ノ為ニ撃破セラルヽノ虞無者トス」とあり、高度1000m以上を飛行すれば砲弾は届かないと普仏戦争での例を挙げている。
 しかし、普仏戦争で用いられた対空砲、「『クルップ』気球砲(バルロングシュツ)」は射高800-900mあるとも、記事中で指摘している。漫然と風まかせで飛んでくる気球は、敵の標的となる点には無視できないと考えた様子である。

 「空中雷船」起源は、オーストリア砲兵士官「ウハチウス」氏である。翻訳元となった独文記事から、おそらく1886年前後にウイーン近郊で実験されたとある。その後、オーストリア軍が「フエ子シヤヲ」(フェンシャオ?、子=ネ)を包囲した時、「ウハチウス」氏は攻撃を試みたが失敗したとある。
 記事では、類似兵器としてアメリカ人「ルッセル」氏が発明した「空中『ダイナマイト』」船も挙げている。気球+爆薬といった点で、似たようなものなのだろう。



 まあ、実際に使うとすれば、地上が見える程度、月明かりがある夜間や、黎明しかないだろうね。高度を取れば安全といっても、昇る時間も伸びるから使いにくくなる。城砦間近から、風を待って低空で襲えばそれなりに攻撃のチャンスもあるだろうが、昼間だと小銃でも狙われる。そうなると『夜のスツーカ』みたにするしかないんじゃないかね。空から突然、攻撃される点で敵に衝撃を与えられるし、夜なら混乱も増えるだろう。枕を高くして眠れないんじゃないかね。
 一応、風船爆弾の先祖かねえ。有人管制式風船爆弾といえなくもないだろうし。さすがにジェットストリームアタックは無理だろうけれども。


※「独乙国空中雷船(千八百八十六年九月独乙国伯林『イルヽストリルテ』新聞抄訳)」『海軍雑誌』62号 pp.46-49. 
オリジナルはベルリンで発行された、おそらく”Ihre Straße”紙 
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2012.01
25
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13:00
Category : 中国
 日本と中国は友好関係にある。両国で全面戦争という事態はまず考えられないのだがね。ま、頭の体操としてね。

 日中が全面戦争になったとしても、まず互いに敵国に上陸しようとはしない。日本は、強固に団結した一つの中国に対抗できる陸上戦力を持っていない。中国は、膨大な陸上戦力を保有している。だが、強力な日本海空自衛隊を圧倒して、日本列島で制海権、制空権を維持できない。上陸戦力を運ぶ揚陸艦も日本本土侵攻には不充分であり、それを護衛する水上艦艇も少ない。限定された中国上陸部隊では、本土防衛※に特化した陸自は打倒できない。

 相手を屈服させる方法として、戦略爆撃・空爆も難しい。両国とも、戦略爆撃に適した装備を多数保有していない。日本は戦略爆撃機を全く保有していない。中国も戦略爆撃機や弾道弾を、それほど多く保有しているわけでもない。そして、両国とも、自国本土での防空では優位に立つことができる。日本は、JADGE以下により、防空戦では質的に優位に立つことができる。量的にも、日本本土に飛来できる中国空軍機数と比較しても、数的に不利ではない。中国は、防空戦力として旧式化しているものの、戦闘機や対空兵器は数も多い。遠距離飛行のあと、疲労もたまり、燃料も限られた侵入機に極端に遅れはとらず、数で消耗させることができる。

 対して、海上封鎖は両国にとって困難はない。両国とも、経済は多くを海上輸送に依存している。その海上輸送を阻害することにより、相手側の戦争経済を崩壊させ、屈服させる方法である。相手の主要港や、そこに至る航路を封鎖すればよい。相手の沿岸部に近づけなければ、相手のいない遠くで通商破壊をしてもいい。日本は強力な海軍力で中国に屈服を迫ることができる。中国にしても、日本側通商保護が弱い遠洋であれば、日本艦隊/船団を圧倒できる。

 海上封鎖は、敵本土上陸や戦略爆撃よりも有利である。まず、敵本土上陸よりも安くつく。大規模な陸空軍投入を必要としない。このため、コスト的に人命、予算、物資、装備を上陸戦ほど消耗しないため、敷居が低い。また、市民を直接戦闘に巻き込まずに済む。また、戦略爆撃・空爆ほど直接的な市民殺傷を伴わないため、敵愾心や恨みを買いにくい。

 ありえない設定であるが、日本と中国が全面戦争になったとした場合、両国が相手を屈服させるため、第一選択※※とするのは海上封鎖である。両者とも、いきなり上陸戦をとることはない。戦略爆撃をしようとしても、両者とも、防空側が優位すぎるため、準備としての航空撃滅戦も行えないだろう。

 なんにしても、今の日中関係は安定している。日中両国は友好関係にあり、経済的にも互いに欠くことのできない存在になっている。緊張、衝突といっても、小さい無人島で、低強度で衝突しているにすぎない。国民感情に関しても、両国政府ともコントロールに努力している。両国軍部による競争、張り合いは、あくまでもゲームに過ぎないわけだ。



※ 冷戦が終わったあとでも、ほとんど可能性のない大規模着上陸対処、対上陸戦を主軸に据えている点は、旧態依然であり、無駄なんだけどね。
※※ その前にサイバー戦とかあるだろうけどね。
2012.01
24
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14:27
Category : ミリタリー
 書き物の途中だけど、アジ歴で手旗を検索したら見つかったので。



 公文書館に収蔵された文書で、手旗信号に関する起源を見つけた。「海軍大尉正七位勲六等功五級釜谷忠道以下二名勲位進級及勲章加授ノ件」(『叙勲裁可書・明治二十九年・叙勲巻一・内国人』)に
右[釜谷さんと、多分、道本誉声さん]ハ、海軍艦船艇間迅速ニ気脈ヲ通セン為メ、有馬海軍大尉カ、片仮名五十音ニ因リ手旗信号法ノ発明実験ノ際、釡谷海軍大尉、之ヲ熟視シ、片仮名ノ字画ヲ手旗信号ニ現ハス所ノ最軽便ナル方法ヲ成就シ、明治、二十二年五月海軍ニ於テ之ヲ採用セリ、[中略]愈々[いよいよ]大ニ明治二十六年陸軍ニ於テモ陸上軍隊間ノ通[アジ歴ではここまで]
([ ]内と読点は、文谷による)

とある。明治22年採用、26年陸軍採用なのね。でも、海軍が秘していたため、冒険収蔵資料での初出は陸軍の密大日記になっている。秘密としていた云々は、前の記事の通りだけれども。

 他にアジ歴で公文書を漁ると、当初海軍では「仮名手旗」、それを導入した陸軍では「片仮名手旗」と呼称した様子である

 それまでの手旗は、英式仏式セマフォア手旗で用いるものであったのだろう。前に、防研で磐城艦に積み込む備品目録「定備品並ニ御備付之義上申」『明治17年普号通覧 巻19』(403-408)を閲覧したのだけれども。その中に手旗があったが、これはセマフォア用だということになる。

 また、この目録には端舟信号旗もあった。これはカッター用に使う形象物信号資材なのだが、日本式手旗があれば不要なもの。日本式手旗は使われていなかった時代は不便だったのだろうねえ。
2012.01
21
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13:00
Category : 有職故実
 ちょっと、漢字文化関係、日本語関係でカキモノの必要があったので調べたのだけどね。

 19世紀末には、手旗信号には少なくとも3種あった。まず、英式、仏式と手旗信号が2つあった。これはセマホア信号を手旗で送るものであり、それ以前の端船通信を置き換えた。そして、日本式手旗信号である。これは、セマホアではなく、旗でカタカナを書く。送信はそれなりに慣れが必要だが、日本語話者、読解者であれば受信は容易、子供でも読める。英仏式手旗が廃れた(いまは旗でモールスを送る決まりだが、実用した例は聞いたこともない)あとでも、日本式手旗が残っているのは、読解容易という利点なんだろうねえ。

 この日本式手旗信号は、いつできたのがが判然としない。

 まず、海軍省公文書に載っていない。状況証拠から、制定されたと考えられる時期、明治10年代後半から、明治20年代初期まで、海軍省公文書を一覧してみた。カタカナ式手旗信号に関する既述は、気持ち悪いくらい見つからない。

 というのも、海軍は手旗信号を軍事機密としていたためだ。おそらく、部外に対しては、存在そのものが秘密であったのだろう。というのも、日本海軍式手旗信号が、幼児~小学生向け雑誌に掲載されてしまった時に、流出元である陸軍に海軍から抗議が行われている。陸海大臣間で「バカ、あれは軍事上の秘密だぞ」という公文書が残っているのである。

 まあ、手旗だからね。大した距離も届かない、しかもカタカナで、相当早く送出する。重篤な秘密に繋がるような、抽象的な内容を送受しないから、とりこし苦労なんだがね。
 日本式手旗信号が海軍省文書に出てくるのは、明治20年代後半に入ってから。最初は、陸軍省や逓信省(商船を管轄)から、海軍に「手旗教えて」という内容になっている。その時には成立していたということだな。

 しかし、手旗は便利なもの。一回習ったことがあれば、なかなか忘れず「テンワ」「子ツチ子イ」「オシマイ」くらいは容易に伝わる。20台前半に一回こっきりしか習わず。その後縁遠い仕事をしたオトッアンでも、口々に「素直に見たままで、読める」と言う。送出には慣れが必要で、チョット考えるが、受信は楽勝。それこそ子供でもできる。

 去年6月にニュースで
  皇后陛下、美智子様が、行幸啓先で畏れ多くもシレっと受信なされたというのも、頷ける話、そもそも幼児-小学生を対象にした雑誌に掲載されるくらいだからねえ。
2012.01
18
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13:00
Category : ミリタリー
 米国は、対機雷戦準備は等閑視している。機雷でエライ目にあった日英独のように高い優先度を与えていない。おそらく、次に機雷戦に直面したとき、ボロをだすだろう。

 実際に、戦後、米海軍は機雷でボロを出し続けている。第2次世界大戦が終わってから、米艦被害は過半が触雷である。具体的には、米艦被害22隻中、触雷は17隻にのぼる。機雷以外による被害は5隻 ※ であり、ミサイル被弾×1、魚雷攻撃×1、航空攻撃×2、自爆艇×1。あとは全部、触雷による被害となっている。

 しかも、米海軍は比較的原始的なコンタクト・マイン(繋維触発機雷)にも引っかかっている。※※ これは、機雷に対する警戒感が低いことを示唆している。米海軍では、対機雷戦はいつも等閑視されているが、問題は、対機雷戦器材等ではなく、それ以前の危機感、警戒状態にあるようにもみえる。

 コンタクト・マインであれば、ヘリを前方に飛ばして、上から海中を透視すればそこそこ見える。コンタクト・マインは船底にぶつかる程度に浅く仕掛けられる。機雷が船体にぶつかって、触角(ホーン)がポキリと折れた時に発火する。よって水面から、-3m、-5m、-7m程度の水深に仕掛けなければ意味はない。実際に、トリポリが触雷したあと、ヘリを飛ばして前方海中を透視したところ、機雷多数を目指発見している。

 なんにせよ、米海軍は、対機雷戦準備に真剣味を欠けている。過去にも、大規模な機雷戦に直面した時にはボロをだしている。おそらく、次に機雷戦に直面したときには、またボロをだすのだろうね。

 米海軍が対機雷戦で真剣味を欠くのは、機雷戦で深刻な被害を受けたことがない点にある。第二次世界大戦では、参戦以降、大西洋に機雷を入れられた程度である。機雷で飢えた経験も、戦争に負けた経験も持っていない。対機雷戦への準備も、真剣味は少ない。

 そして、対機雷戦で面倒に直面しても、米海軍は概ね他国の力を借りられた。米海軍は、第二次世界大戦では、ノルマンディーでは面倒な機雷原 ※※※ に直面した。しかし、英海軍がいたので投了せずに済んだ。朝鮮戦争での掃海でも、日本に掃海艇を無理矢理に派出させることができた。湾岸戦争終了後に実施した対機雷戦でも、西欧と日本に依頼し、イラク機雷原の過半を実施してもらっている。

 機雷や対機雷戦をあまり意識していないのである。おそらく、それが機雷への警戒感に欠く原因にもなっているんじゃないかね。警戒感が低ければ、まあ浮遊機雷あたりにぶつかる可能性もあるだろうね。



※"Navy International"(OCT,2011)より
 ミサイルは、スターク被弾。
 魚雷は、リバティ船被雷(中東戦争でのイスラエル攻撃)
 航空攻撃はヒグビー(ベトナム戦争)リバティ船(中東戦争でのイスラエル攻撃)
 自爆艇はコール大破
※※ トリポリはコンタクト・マインに触雷している
※※※ ドイツに水圧複合感応機雷(オイスター機雷)を航空敷設された
2012.01
14
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13:00
Category : ミリタリー
 アメリカはイランの機雷に対抗できるのかね。アメリカとの緊張を受けて、イランも「戦争になったらホルムズ海峡を封鎖する」と言っている。実際にやるとなると、機雷を敷設するイメージなのだろう。その時、対機雷戦を冷遇していた米海軍は対抗できるのかね。

 イラン原油禁輸措置で、アメリカとイランが緊張している。アメリカだけではなく、EUも原油禁輸に同調する様子である。日本もお付き合いで輸入量を減らすらしい。

 実際に戦争になるかといえば、そうとは思えない。「緊張しつつある」とはいうものの、アメリカとイランの緊張状態は30年継続している。また、戦争に疲れたアメリカが、本気で戦争するとも思えない。そして、イランも本気では衝突を望んでいない。イラン現体制も、立場上、アメリカとの対立を避けるわけにはいかないが、イライラ戦争とは時代が違う、それなりに喪うものもある。多少の摩擦や小規模な衝突があっても、エスカレーションするとも思えない。

 しかし、イランは、アメリカに対して強硬発言を繰り返すしかない。イラン現体制そのものがアメリカとの対立の産物である。ガチガチに固めたイラン内政も、アメリカによる外圧の結果である。反米で成り立っている以上、内心どう考えていようが、対米強硬発言以外はできない。

 その対米強硬発言の一環が、ホルムズ海峡封鎖発言である。砲やミサイル、高速艇や潜水艇等も使用されるのだろうが、もっとも有効な手段が機雷である。ホルムズ海峡は比較的狭い航路収束点であり、機雷敷設に向いている。

 機雷は効率が良い。ホルムズ海峡幅60kmは、感応機雷100個程度で構成される機雷線※を設定すれば、10%航路幅の10%が危険域になる※※される。この機雷線を3条(300個)も引けば、触雷率は30%近くになる。分かりにくいように100個程度ランダムに敷設して、合計400個も敷設すると、ホルムズ海峡はしばらく使えなくなる。

 さて、イランが感応機雷を敷設したとして、米海軍は対抗できるかね。米海軍は、機雷を敷設する方に熱心であり、対機雷戦は等閑にしていた。その対機雷戦も、上陸戦に先立った、上陸海岸での、短時間での大まかな機雷処分を目的にしている。そのため航空掃海を維持している。だが、航空掃海にできることは、なんでも感応するダボハゼ機雷を発火させる程度である。商船を通すために、完全に機雷を処分するような戦力ではない。

 アメリカは掃討艇を14隻しか持っていない。地道に海中を探査して、機雷を見つけて破壊できる掃討艇は必須であるが、冷戦以降一気に減らしてしまった。この14隻にしても、掃討艇を機雷処分に専念させられればいいが、実際には、重要艦船への先導にも使う必要がある。こと機雷が敷設されれば、アメリカは対機雷艇不足に悩むだろう。

 救いは、ホルムズ海峡は水深が大きいことである。ホルムズ海峡は、おおむね-60mより深い。このため、使えるのは繋維機雷となる。厄介な沈底機雷は使えない。旧軍資料によれば、-60mを超える深さでは、沈底機雷は発火しても大きな被害はでないとされている。繋維機雷であれば、感応でも、触発でも見つけやすいため、機雷掃討も容易である。また繋維掃海でも対抗できる。これなら米海軍でもできる。おおむねペルシア湾でも、イラン側は水深が大きい。まず、沈底機雷は使われない。

 しかし、機雷の数が多くなるとどうしようもない。繋維機雷への掃海や掃討であれば、飛行機、補助艦船、漁船でも可能である。だが、事前の機雷捜索や、その後の処分確認には掃討艇は必須である。また、重要艦船への先導も掃討艇でなければできない。

 イランが100個以上の繋維機雷を使用したら、おそらく米海軍が持つ対機雷戦戦力では飽和する。この時には、日本や西欧の手を借りるしかない。

 仮に使用機雷が沈底機雷となると、日欧への要請も早期に、且つ大規模なものになるだろう。ペルシア内湾南側(26度30分以南)や、西側は相当浅い、おおむね-40mもない。沈底機雷敷設も可能である。イランにとって敷設が厳しく、アラブの敵、世界の敵にもなるけどね。でも、仮にデタラメに沈底機雷を敷設されたら、米海軍はお手上げではないかな。

 米対機雷戦戦力は、必要な時にはたいてい不足している。朝鮮戦争でも、紅海危機でも、中東危機でも、湾岸戦争でも、アメリカはその場になって対機雷戦力不足に気付く。米軍は高価なハイテク兵器には金突っ込むけど、対機雷戦には金を突っ込まない。そして、対機雷戦戦力に困ると日欧に泣きつく。世界でもっとも掃討艇を保有している日本、そして英仏独伊蘭以下の欧州に泣きつくしかない。

 掃討艇は偏在している。世界にある掃討艇は207隻、うち日米欧が158隻を占める。日本24隻、アメリカが14隻、欧州140隻。欧州は、西欧8ヶ国80隻、非西欧NATO加盟国30隻、スウェーデン7隻、フィンランド3隻。※※※ 技術的に優れている、掃討技術に習熟しているのは、西欧(英仏独蘭あたりか)が一番で、最近、日本がそれに次ぐ地位についたあたりか。当てになるのは、欧州ならイギリス、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、あとベルギー、スウェーデン、アジアでは日本だろうね。

 また、日本と西欧に泣きつくのだろうね。



※ 実際には、方位と場所を微妙にズラした5-20個の短い線を、何本かつなげて対岸まで渡す。
※※ 有効半径25mとみた
※※※ 2011年夏に出したウチの本、『瀛報 掃討しかない-感応機雷と対機雷戦-』でまとめといた数字。
2012.01
11
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13:00
Category : ミリタリー
 中国は、E-2を模倣した試作AEWを作っている。機体は、スキー・ジャンプ方式で運用できるかもしれない。しかし、肝心のレーダはどうなのかね。

 気の早いことに中国は艦載AEWを試作している。写真を見ても、米国製E-2を模倣した機体である。格納庫に入れるため、尾翼を低くしたい気持ちは分かる。しかし、垂直尾翼を4枚構成としている点、各垂直尾翼形状もE-2に似せている点には、全くオリジナリティがない。試作AEWは、垂直尾翼構成でE-2を完全に模倣している。両端の1・4枚目は、水平尾翼の上下方向に伸びている。そして中間に挟まれる2・3枚目が、水平尾翼の上方向にしか伸びていない。

 レドームとの干渉を避けるには、完全コピーが一番てっとり早いのかもしれない。レドームと垂直尾翼で起きる、電磁波的、また空力的干渉を避けるには、成功例を真似るのが一番早い。ほかの部分でも、冒険を避けるため、E-2を模倣しているのだろう。

 試作AEWは、カタパルトによる運用を前提で製作されたらしい。中国がカタパルトを保有していない点からすれば、相当に先を見越した話だ。

 ただし、E-2と同じ程度の性能を確保できれば、スキー・ジャンプ方式への対応は難しくない。E-2Cは、失速速力は75ktである。一般的に、失速速力を2割増すれば離陸速力であるので、90ktになる。これは、Su-33よりも有利である。

 失速速力・離陸速力とも、E-2CはSu-33よりも低速である。Su-33に関しては、最低飛行速力が130kt、おそらく、失速速力を2割増ししたようなものだろう。おそらく、失速速力は100ktである。

 中華空母も、25ktは発揮できるだろう。この際に生まれる対気速力25ktは、90ktから差し引いてよい。中国製AEWがE-2と同じ空力性能であるとすれば、飛行甲板・スキー・ジャンプで55ktまで加速できれば、発艦できる計算になる。中国製試作AEWをスキー・ジャンプ運用するのは、あまり難しいこととは考え難い。あとは、甲板上での機体加速力にかかっている。※

 中国製試作AEWに関して疑問視すべきは、搭載機材である。AEWにとって、本質は搭載するレーダ等である。レーダそのものの性能、信号処理、リンク・システムあるいは通信能力が全てである。

 中国がもつAEW、AEW/C、AWACS技術は、あまり高いとは考え難い。まず、中国はロシアからこれら技術を導入しようとしている。つまり、ロシアよりも低い技術水準にあると考えられる。また、中国はAEW、AEW/C、AWACSに関して、インドと共同開発を試みている。もちろん、中国はインドと違い、AEW、AEW/C、AWACS試作機を作っている。インドよりも高い技術は持っているのだろう。中国がもつ早期警戒機関連技術は、ロシア以下、インド以上である。ロシアが持つこれら関連能力も高いとは言われていない以上、それなりの程度である。早期警戒ヘリである、Ka-31の能力にしても、20-30年前の水準である。

 実際に、中国が試作したAEW、AEW/C、AWACSを見ても、方向性も定まっていない。レドーム搭載タイプだけではなく、背ビレ状レーダを搭載した、スウェーデンAEW/Cもパクっている。定見がないということは、試行錯誤であるということだ。

 レーダそのもの、信号処理がよくても駄目である。データ・リンク、あるいはボイス/ビジュアルによる通信が悪くても駄目である。最終的には、要撃管制や対空戦闘に反映できなければ意味もない。

 まず、外見をE-2に似せても、中身が伴わなければ意味もない。似たような飛行機だから、似たような性能がある ※※ ように錯覚するかもしれない。しかし、中国側早期警戒機技術からすれば、使い物になるかどうかはわからない。


※ スキー・ジャンプと相性が悪ければ、着艦帯からでも飛ばずでしょう。
※※ E-2に似ていても、E-2A程度の能力かもしれない。
2012.01
08
CM:0
TB:0
13:34
Category : ミリタリー
 昨日まで仕事が忙しいかったので、ココもありあわせで済ましていたけど、あまりにもナンなので今日も投稿。まず、積んどいた『鏡報』で離着艦云々を見かけたという程度ですけど。



 年初に届いていた香港誌『鏡報』に、中国空母でSu-33離着艦に成功したとする、梁天仞さんの記事がある。中国空母は、11月から海上試験を3次に分けて行い、その第2回次試験でSu-33(殲15)着艦ならびに発艦に成功したらしい ※ とのことである。甲板上にそれらしい機体が載っている写真も掲載されている。

 空母として整備した以上、できて当たり前である。空母を購入して、工事を進めて、設計当初から適合するように作られた、Su-33を運用した。特に不思議はない。

 ここで注目すべきは、滑走距離と搭載能力である。最初の試験である。おそらく、Su-33はなるべく軽量な状態で、一番長い滑走距離設定で飛んでいる。実用的な状態ではない。

 中国空母が持つだろう航空戦力は、艦載機搭載力をどこまで確保できるかに左右される。搭載力は、航空機に搭載する兵装だけではない。燃料搭載量も含まれる。スキージャンプ運用では、機体性能上限は期待できない。
 Su-33は、14度のジャンプ台を使用し、距離120mでの運用が、おそらく実用上の下限らしい。

 右舷側発艦線で、滑走距離120m程度で運用する。この際には、機内燃料搭載量も調整しなければならないだろう。右舷側でできる任務は、短時間、近距離の迎撃程度である。
 左舷側発艦線、滑走距離(180-220m:後述する)は、右舷よりも搭載量に余裕はある。しかし、着艦線と干渉するため、運用はしづらい

 おそらく左舷側を使ってもSu-33はその性能を出しきれないだろう。実際に、中国空母は滑走距離を延長している。梁さんは、今回の記事で発艦線を延長している旨報告している。中国空母には、発艦線が2本設定されている。これまで長い方は、着艦側甲板、アングルドデッキの中頃まで(180m位か?)設定されていた。しかし、その長いほうの発艦線が、更に延長(220m位か?)されている ※※ とのことである。

 運用をイメージすると、艦載機能力をある程度、生かせるのは、最初の一撃だけ。着艦収容を考慮せずに、左舷側発艦線を活用できる時に限定される。しかし、左舷発艦線1条では発艦に時間を要する。攻撃部隊を編成するため、空中待機させると、貴重な燃料が消費される。攻撃機を左舷、援護機を右舷から発艦させると、攻撃範囲が右舷側援護機の行動半径に限定される…といったあたりだろうかな。

 具体的な数字は、ロシア空母運用が参考になる。同じ船体、同じ機体である。同じ運用条件となる。しかし、そのロシア空母運用がパッとしない。空母を運用できますよ、と誇示する威信財でしかない。仮に、派手な航空運用がができれば、見せつけるはず ※※※ であるが、それも聞かない。おそらく、中国空母も、派手な航空運用はできないのだろう。



E-2CのパクリっぽいAEW以下については、水曜にアップ分にでも。


※ 梁天仞「瓦良格服役在即」『鏡報』414(香港,鏡報文化企業有限公司,2012.1)pp.6-9.

※※ もちろん、長ければ長いほうがよい。将来的には、アングルドデッキの更に左舷側に張り出す?かねえ。スポンソンを設定してまでも延長するカモね。

※※※ Su-33は、機内タンクだけで航続距離3000km(おそらく兵装なし)とされている。見せつける演習や訓練で「1000km位先に進出して、攻撃、援護機は空戦、そして帰ってくる」とかできそうなものだけど、それもないよね。
2012.01
07
CM:0
TB:0
13:00
Category : コミケ
 アニメ『アイドルマスター』最終話『洲崎炎上』について感想ですが、ネタバレを含みますので注意してください。



 3月10日の空襲で七六五楼が燃え上がる。その映像美は荷風散人が原作で描いた滅びゆく美しさです。

 最終話は永井荷風『アイドルマスター 日陰の花』での洲崎空襲を見事にアニメ化しています。燃え上がる洲崎パラダイス、女だてら警防団員として焼夷弾と戦ったの真が、消防吏員とともに炎上崩壊する建物に飲み込まれる。炎に巻かれた室内で、沖縄で戦死したパトロンの忘れ形見をあやしながら「旦那様のところに参りますよ」と島言葉で言い含める響。ナパームからわが子を救うため、その上に覆いかぶさり、生きたまま黒焦げになっていく春香。燃える七六五楼。神棚に面した彼女たちの看板が焼けていく。東洋一の傾城と呼ばれた竜宮小町。捕獲ブロマイドから、戦後GI達が「ランクSアイドル」として探しまわったあずさ、伊織、亜美。彼女たちを筆頭とした芸妓名札と写真が徐々に燃えていく。華やかな世界が終わる様子を、美しく、また悲しく描いています。

 花柳界は華やかな話だけが語られがちです。しかし『アイマス』は裏にある陰や闇も逃げずに描いています。

 やよい回、藪入で帰省する話は貧困層ルポそのものです。帰る家を持たぬ伊織が帯同しますが、畳も布団もない貧しさにショックを受ける。わずかなモヤシに喜ぶやよいの弟妹ですが、茶椀に盛切った麦だけの食事は、伊織の喉を通らない。出身である資本家階級との格差に涙を流しながら憤る伊織。戦前日本資本主義の矛盾を描いた、監督ヤマサツの神回です。

 美希回も切ない。在上海九六一機関の女スパイ「滬浙のマタハリ」も情人を喪った後は魂の抜け殻です。帰国した美希の壊れ方には怖気が走る。ただ快楽を求め、毎晩十を越える客を取り、挙句翌朝にも役者◯◯◯、相撲◯◯◯を買う。ヒロポンを常用し座敷ではハイですが、オフではオピウムでダウナーになる落差。その白痴の微笑は、演技でのアヘ顔とは全く違う。まぶたは見開き、輝きのない瞳にハエがたかっても瞬きもしない。脚本野坂昭如が特飲街で実見した最低の娼婦が活写されています。

 『アイマス』は軽い作品ではありません。キレイ事だけ。枕はない。借金や人身売買の陰もない。性病も堕胎も結核もない。遊郭をピュアな純愛の場所であると嘯く『ドリームクラブ 嬢王物語』とは違うのです。

 純愛を描いても、雪歩回でのリアリティには全く及ばない。決して客に体を許さない雪歩に「男嫌いか穴なしか」と責め立てる小鳥と律子。しかし、雪歩にはただ一人、体を許した異母兄への操がある。兄の将来を言い含められ、強要された中条子堕で愛の結晶を守れなかった負い目がある。下腹部に残る大きな傷跡に、学徒出陣で戦死した兄と、陽の目を見なかった命の記憶を重ねている。これこそがピュアな心でしょう。

 純愛と喧伝しながら、その実「馴染」「情人」「浮気」を連呼しながら誰にでも転ぶ。亜麻音も雪もカフェー上がりで何一つ芸もないが、その口で客を馬鹿にし「野暮」と言い放つ烏滸がましさ。そのような『ドリームクラブ』とは大違いです。

 『アイマス』には確かに暗い展開もありましたが、希望につながるラストは素晴らしいものでした。唯一生き残り、焼け跡の中で戦後に向かい歩き出す千早は、明るい未来を予感させます。結核で動けない千早は、空襲のなか、竜宮小町に金庫に押込まれ命永らえます。あずさ達は、金庫を密閉するため、パックや洗髪に使う泥で目塗をしますが、それで逃げ遅れ落命してしまう。千早は竜宮小町から命をもらったのです。ラストでの千早は託された生命が萌え出る姿です。

 戦後編、XBOX360版『アイマス・酔いどれ天使』でラジオから流れるブギ「腰が抜けるほど恋をした」が千早声であること。PS3版『同・生きる』ブランコのシーン「いのち短し恋せよ乙女」と千早持ち歌が歌われる。これらは千早が結核を克服し、芸妓から歌手として大成したことを暗示しています。

 むしろ今期でやるせないのは、野坂昭如自伝『Fate/Zero 火垂るの墓』です。終戦後、冬の神戸での聖杯戦争。教会軒先に寝泊まりする戦災孤児には満足な食も服もなく、凍死の恐怖と戦っている。その壁一枚挟んだ反対側では、教会、魔術師、サーヴァントが暖衣飽食している。野坂が召喚した騎士王は誇りから闇米に手を出さない。腹ペコにもかかわらず配給米も節子に譲る。セイバーは最後に勝利するものの、そのまま栄養失調で倒れ、帰らない。平和を渇望した野坂が聖杯に望んだ「豊かな日本」も、朝鮮特需で実現する皮肉。

 野坂ほか焼跡派も既に齢八十。赤線もなくなりはや半世紀。当時を知る人は櫛の歯を引くように減っています。その当時の雰囲気を、片鱗であっても引き写した作品が『アイマス』なのでしょう。




※ 2011冬コミ新刊「あとがき」から、ナマモノなので此処で開陳
やはり、戦前でアイマスなら花柳界しかないですな
2012.01
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Category : 有職故実
 1882年のフランス海軍陸戦隊に関する史料読んでいたら発見。

 フランス海軍陸戦隊は結構大きい。別の史料だと、当時1万3000人いたらしい。

 その陸戦隊になかには懲罰隊がある。上陸止め以上、軍法会議未満の、それなりの犯罪を犯した陸戦隊員と艦艇乗員で編成した部隊とされている。

 配備先は、懲罰期間が長いか短いかにより分かれる。懲罰期間が短いものは、サント島、アンティーユ島での防備に付く。それぞれの島がどこにあるのかは、詳しくは知らないが近場なのだろう。満期まで18ヶ月以上、懲罰期間6ヶ月以上のものは、陸海軍合同植民地懲罰隊に回される。セネガル、マルチニック、サンピエール、テールニューブニ派遣される。

 陸海軍合同植民地懲罰隊は海軍少佐に指揮されるとのこと。
 海軍士官が植民地陸戦部隊の指揮をとるような記載も多い。フランス植民地には、海軍部隊しかいないところもあったための様子。戦争中の海軍占領地みたいなものかね。マカッサルとかあのあたりは、軍政も海軍が行なっている。※


※ 内務省から派出された民政官に丸投げだったみたい(旧内務省系の雑誌『大霞』での回顧録)だけどね