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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.02
29
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13:00
Category : ミリタリー
 人間魚雷への対策も、どこまでできるのかね。「米海軍はイラン人間魚雷に対抗できるのかね」で「人間魚雷に対抗する専用システムはない」としたけど、売っていないわけではない。ただ、それで「安全になるのかね」というと、違うんじゃないかな。




 港湾防衛における潜水員対策を謳ったシステムは、存在する。少々古いIDRに、DRS Technology社による港湾防備システム(Habour Security System)提案が掲載されている。記事では、米海軍/沿岸警備隊のシステムに連接可能であるとしており、一見、有効な器材であるように見える。

 しかし、実態は港湾監視システムである。DRSが提案した器材は、海面監視用に使われるレーダ、海中監視用ソーナー、光学監視器材にすぎない。レーダ、ソーナー共、極端に短い波長を使用している。波長が短くなると、高解像度が得られる。おそらくは物体の形状を画像確認しようとしているのだろう。

 海面監視用にはスカウト・レーダが用いられる。IDRによれば、Iバンド(Xバンド:8-10Ghz,波長3mm)が使用されている。出力は1wと小さく、システムはハンヴィーに搭載できる大きさである。エジプトが30セットを購入したとされる。能力的には、破壊工作対策でもあるだろうが、まずは密入国対策、国境管理用だろう。

 海中には、潜水員監視用ソーナーが提案されている。同じくIDRによれば、360度操作可能なソーナーで、800m以内の50目標を補足できるとされている。アクティブは、基本100khz、オプション300khzであり、機雷用ソーナーに似ている。別にパッシブで2-8khzを監視できるとされている。写真によれば、VDSタイプであり、使用時にも1-2ktで航行できるとある。

 別に、光学監視器材として、EO/IRが挙げられている。電子器材による光学・赤外線監視を指すが、細かい説明はない。

 このシステムでは、潜水員は確実に補足できないだろう。

 レーダで監視できる面積は、それほど広いとも思えない。大遠距離での分解能を確保できる出力ではない。低出力では、ノイズによって埋もれてしまう。遠距離、例えば10km先の小型船程度を追尾できるかもしれないが、泳者の頭は見えない。高分解能を実現できるのは、それなりの近距離になる。その程度の距離であれば、進入側は潜水したままで通り抜けようとする。

 ソーナーでの探知距離は、公称800mとさらに短い。泳者に限れば、探知できる距離はさらに短くなる。比較的大きな対機雷専用ソーナーでも、何かが落ちているとわかる距離、公称で同じような距離である。ソーナーの大きさはわからないが、掃討艇よりも小さい船を投入するだろうとすれば、800mで探知できると見るのは楽観的である。また、360度方向にアクティブ・ソナーを振り回せるだろうが、同時に全周を監視できるわけではない。スリ抜けられる可能性は高い。

 EO/IRも、泳者には有効とは思えない。船舶から横合いに海面を見ても、海中は見にくい。機械でも同じである。真上から透視するように使えば、透視できる可能性も高い。しかし、常時在空しての監視は、監視できるエリアの広さにもよるが、UAVを使うにしても容易ではない。

 そして、このシステムは監視しかできず、侵入者排除・無力化は別の方法による。水中にいれた防御側ダイバーが、水中銃、ナイフ程度でどうにかする。あるいは、上方向から、銃撃や爆雷で攻撃しなければならない。排除・無力化はシステム化されていない。原始的に対応しなければならないのである。

 DRS Technology社による港湾防備システムは、確実に人間魚雷から港湾を防御できるものではない。まず、確実に泳者を発見できるものではない。その上、泳者を攻撃する手段は別であり、そこにも確実性はない。

 調教したイルカなりを投入した方が有効に見える。米海軍は、対機雷戦用に調教したイルカを、軍用犬的に警備にも運用する。相当有効だろうが、イルカはそれほど多数を擁しているわけでもなさそうである。対機雷戦もあるため、ペルシア湾での泊地防衛に投入できるかわからない。また、動物であり、24時間働けるものでもない。増やそうにしても、イルカは工場で作れない。捕獲調達には動物愛護との兼ね合いもある。調教にも時間を要する。

 イランが原始的な攻撃行った場合、やはり米海軍は対抗に苦慮することになるだろう。人間魚雷なら、経験豊富な英・伊に泣きつくしかない。



 …まあ、米国とイランは大規模な戦争にならないだろうけどね。多少の摩擦や小規模な衝突は起きるかもしれないが、エスカレーションするとも思えない。イラン・イラク戦争のような大規模なタンカー攻撃や、小規模な機雷敷設までも行かないだろうねえ。



※ Habour Security System DRS Technolog, Jane's International Defence Review  (Aug 2005) p.24
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2012.02
29
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12:59
Category : ミリタリー
 過渡期の文学といえば、『新体詩抄』なんだが、読み返すと直訳的な感じがヘンテコ。

 「抜刀隊」なんかは、近くに載っている和訳されたテニスン「軽騎兵」(クリミア戦争)を…パクリとはいわないけれども、まあ、インスパイアを受けている。「西南戦争で作り直してみました」という感じ。

 それに気づいてから「抜刀隊」の歌詞を読むとヘンテコな感じがして取れない。「進めや進め諸共に」は外国の軍歌の翻訳だ。「天地容れざる朝敵ぞ」は「天地不レ可レ容朝敵也」という漢文が頭に浮かんで仕方がない。

 「抜刀隊」でイメージする「日本精神」ってのは、勘違いだね。歌詞は輸入品を直訳したもの。ただの、当時のハイカラ歌謡に過ぎない。しかも音楽は「ヨドバシカメラの歌」(実はアメリカ軍歌)と同系列のマーチだし。

 「抜刀隊」で思い浮かぶ情景は、条件づけの結果に過ぎない。抜刀隊が「大和魂」を云々する状況で多く使われた音楽だからそれを聞くを尚古的かつ尚武的なイメージを感じるようになっただけなのだろう

 まあ、翻訳(漢語調)+マーチ(輸入音楽)と言う点では海軍の「軍艦」も同じ。今では「軍艦」の歌詞は脱落して行進曲(歩きにくいけど)になっているから気づきにくいけど、『うかべる城』は英語的な受動態だし、対句の利用、漢語調も同じ。

 直訳+漢語+マーチは、多分日本人に合わない。「抜刀隊」、「軍艦」タイプの軍歌の時代は、すぐに終わる。生き残ったのも、「抜刀隊」と「軍艦」だけ。以降に作られた『雪の進軍』や『勇敢な水兵』には、直訳調や漢語調は消えている。音楽も『雪の進軍』は俗謡。その後の軍歌からは直訳漢語調もマーチ調も消える。

 日本人にとって、完成形の軍歌って「海ゆかば」じゃないですかね。最初は「軍艦」のオマケに家持の歌をくっつけたものに過ぎない。それが歌としては独立して、マーチ転用不可の曲がついた。「海ゆかば」は大成功しましたよ。戦前・戦時中には、軍歌として「軍艦」以上に膾炙しています。実際には、戦争末期の記憶と結合して、戦後には反戦歌になりましたけどね。
2012.02
25
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13:00
Category : 中国
 沖縄問題でピントの外れた人が「台湾有事云々」を口にするけどさ、実際に台湾有事ってあるものかね。




 中国にとって、台湾問題での最善手は、平和回収となる。

 日米は、台湾が中国に回収されても文句のつけようはない。平和的手法なら、どこも文句はつけようもない。日米とも、微妙な表現は含むものの「中国は一つ」を認めている。

 平和回収は利が多く、武力回収には利がない。平和回収は、人命、コスト、予算、外交関係、経済的安定で優れる。武力回収は全てに劣る。武力回収での利点は、自己都合で着手できるという点だけであるが、成功する保障もない。

 その得失から、中国は平和回収を採用する。実際に、香港の例もある。台湾には、香港、澳門方式を応用する。中国人は気が長い。煮詰まって、熟した柿が落ちるまで待つ。経済格差がなくなり、中国での人権思想が成長し、一国二制度ならOKと台湾人が納得するまで待てば良い。

 台湾は今でも中国の一部である。台湾回収を急ぐ理由もない。今まで60年間回収しなかった領土を、急いで回収する必要はない。中国から見ても、別に国土が外国に奪われたわけではない。民国政府は外国の傀儡でもない。外国の軍隊が駐留しているわけでもない。中国の一部である台湾で、中国人である台湾人が政府の言うことを聞かない。それだけの話で、失敗した時の面子を考えれば、武力侵攻は危なくてできない。

 今の中国は、台湾が中国の一部である限りは、武力侵攻はしない。中国が台湾に侵攻する。そういうった状況をは考え難い。中国が武力行使するのは、台湾が中国から離脱しようとした時だろう。しかし、台湾で軍隊機構が健全なら海峡を渡っての侵攻は、相当にハードルが高い。失敗した時、台湾は中国から完全に離れてしまう。実際にできるのは海上封鎖と空爆に限定される。

 台湾への上陸を決意するのは、台湾が大混乱した時だけだ。台湾が中国から離れようとした時に、政治的大混乱が生まれ、軍隊機構が無力化した場合である。そうでもなければ、中国は台湾に武力侵攻しようとも思わない。

 対岸にいる中国軍は、台湾が中国から離れないように圧力を掛ける戦力である。「攻め込めるぞ」という姿勢を示す見せ金であり、台湾が中国である限り、武力侵攻は行わない。独立派が力を持った時に、演習をする程度のものだ。

 平和回収は妙手である。どこの国も文句のつけようもない。また、どこの国も大して困ることもない。

 日米としても、台湾が平和的に中国統治下に戻っても特に困ることはない。外交・軍事面を除けば、特に困る事態も考え難い。





 …確かにね、外交・軍事的には、中国の自由度が上がるから、日米はチョット困まる。中国を拘束した台湾がコマ落ちする。台湾正面に張り付けられてた中国軍がフリーハンドになってしまう。そうなると、日米とも後のゲームで困る。その戦力が、太平洋方面に指向された場合、日米は海空軍力でのアドバンテージを維持するために、大きな努力を強いられるからねえ。

 でもねえ、必ずしも太平洋に来るとも限らないんだよね。浮いた中国の戦力がどこに指向されるかは分からない。いわゆる中国「膨張主義」の結果、ゲーム的には四囲皆敵となっている。彼らが思い込んでいる「核心的利益」は南シナ海にある。インドやロシア、イスラム諸国との国境もある。もしかしたら、その頃になっても国内治安に問題を抱えているかもしれない。(あるいは、歴代王朝のように、外の世界に興味を失い、軍縮してしまう可能性もある。)

 まあ、日米としては、そこを上手く突いて、中国をどこか別正面で拘束させるべきなんだろうね。

 なんにせよ、沖縄問題と台湾有事をリンクさせるのには、無理があるだろうね。たしかに、中国と日米のゲームからは、沖縄に日米のコマを置く必要性はある。(それが海兵隊でなければならない理由はないけどね) しかし、その理由として台湾有事は、蓋然性に大きく欠けるよね。
2012.02
25
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12:59
Category : 有職故実
 『ユダヤ教の誕生 「一神教」の成立の謎』 荒井章三 (メチエ) を読んでいて。 牽強付会っぽいけど、「イスラエル」の起源を見つけたのでね。

 以下、「イスラエル」語源の大意

 ある夜、ヤコブ(アブラヒムの孫、イサクの息子)が「ヤボクの渡し」で神様と格闘した。
そして、夜明けまで神様を離さずに善戦。逃げにかかる神様から「お前はサラーエルを名乗れ、『神(エル)と戦った(サラー)から』からだ」と祝福を受ける。
以後、ヤコブはサラーエル、つまりイスラエルとなった。 「創世記」32章23-33節より

 そこで、著者の解説。
「ヤコブが叩かれた場所、『腿の筋』、『腿の関節』とは、おそらく性器」

 うーん、味わい深い。なんとなく印象に残り、木口小平風に
「ヤコブは金○を蹴られても、神様を離しませんでした」
って書いてみたのです。

 でも、なんとなく殉教者っぽくなっていけない。神様を第三者から守るために戦ったみたいになる。

 正確には
 「ヤコブは神様と喧嘩しました。しつこく付きまとい、ついには神様に金○を蹴られても離さなかったので、捨て台詞に『おまえ今日から【イスラエル】な』とあだ名されました」
なんですけどね。

 ヤコブは一方的に、この神様に襲いかかられている。

 この神話の起源として荒井章三さんは「川に棲む、デモーニッシュな存在ではないか」と言及されています。神が絶対唯一神となる前、河童みたいな土地の神様に尻子玉でも狙われたのでしょう


MIXI日記 2008年07月24日より
2012.02
22
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13:00
Category : ミリタリー
 イラン人間魚雷は、米海軍にとってのIEDになるのではないかな。仮に、ペルシア湾内でイランとの戦いとなった場合、米海軍は人間魚雷に手こずるような気がするんだよね。



 米軍は、原始的な攻撃に対応できないことがある。野蛮人の素朴な発想に基づいた攻撃に対抗できない。例えば、IEDである。色々な手段を、積極的なもの、消極的なものも試したが、被害を減らすのが手一杯であった。ついにIEDに勝利することはできなかった。

 米海軍は、イランによる原始的な攻撃を無効化することができるか。例えば半潜水艇、人間魚雷といった手段に対抗できるのだろうか。

 米海軍は、高度なシステムを持つ。イージス・システムでもたらされる高度な防御能力はその代表である。艦艇・航空機は高度な指揮通信システムで互いに連結されている。それぞれの艦艇、航空機もシステム化されており、その支援により航空戦、防空戦、対水上戦、対潜水艦戦を優位に戦うことができる。

 しかし、システムでは対抗できない、原始的な戦闘が起きたらどうなるだろう。

 まずは、半潜水艇である。イラクは潜水可能な高速艇※1を保有している。潜れる深さは-3m程度であり、小型魚雷、ロシア魚雷艇に由来する直径381mmタイプを2発装備している。

 米海軍も、最近は、自爆艇対策として、ファランクスに対水上射撃モードが付加され、57mm砲といった小型砲も導入されている。RAMも高速艇を攻撃できるようである。※2
 しかし、水上目標が潜水した場合には対応できない。水上目標は、主としてレーダや光学手段により、発見し、追尾する。水中に潜られれば(スノーケルは水上に残るらしいが)探知はできなくなる。レーダ等と同時に、ソナーでも追尾していたかもしれない。しかし、パッシブでは方位はわかっても、相手の速力が分からなければ距離は分からない。小型目標であり、水面近くにいる半潜水艇を、アクティブで探知できるかはわからない。

 仮にソナーで半潜水艇の場所を掴んだとしても、攻撃手段にも困る。近距離目標に咄嗟で攻撃できる手段は短魚雷しかない。確実に当たるものでもないだろうし、当たるまで矢継早に撃てるものでもない。

 対抗できるのは、ヘリしかない。戦闘ヘリ、艦載ヘリどちらでもよい。潜水している半潜水艇を目視確認できれば、機関砲、あるいは大口径機関銃で沈められるだろう。半潜水艇は-3m程度しか潜れない。その深さなら、真上からであれば、通常の弾薬でも威力を発揮できる。しかし、艦載ヘリも常に艦艇周辺にいるわけではない。艦艇護衛以外の任務も多すぎる。

 人間魚雷は、更に始末が悪い。ここでいう人間魚雷は、英伊方式である。停泊している艦船に、ダイバーを載せた人間魚雷が接近し、遊泳により爆薬を仕掛けて損害を与える攻撃法である。第二次世界大戦で英伊はこの攻撃法を活用し、大きな戦果を挙げた。日本の高雄も、シンガポールで被害を受けている。

 イランは、SDVを保有している。SDVはSwimmer Derivery Vehcleである。AL-Sabehat級を8隻、新型を1隻持っている。別に高度な正式品である必要もない。旧式魚雷を改造しても、車のバッテリーとモーターをつないでもよい。どうとでも作れる原始的な兵器であり、数はいくらでも増やせる。

 人間魚雷に対抗する専用システムはない。原始的な方法に対しては、原始的に対抗するしかない。停泊や仮泊では、網を引き回すか、防御用にダイバー(水中銃やナイフで武装する)を入れるか、予防的に内火艇で爆雷※3を落として防圧するしかない。仮に防御策を施しても、それらをすり抜けられる可能性もある。

 人間魚雷は威力も馬鹿にできない。一般的には、リムペット・マインと呼ばれる、旧軍吸着地雷程度での攻撃だが、スクリューやその推進軸、舵を破壊されると行動に支障がでる。ソナーを壊されると、対戦能力は喪ったも同然である。重要部以外でも、攻撃されればそれなりに浸水を引き起こす。人間魚雷でも、やる気になれば爆薬100kg以上※4を、理想条件である艦底真下に設置することもできる。魚雷や機雷で用いる高性能専用爆薬が200-300kgもあれば、1000トン、2000トンクラスの艦船ならならポキンと折れてしまう。

 ペルシア湾内は比較的狭く、人間魚雷も展開しやすい。イランから対岸までも200-300km程度しかない。ミゼット・サブ等で、人間魚雷を泊地近くまで輸送することは容易である。イランが人間魚雷を活用した場合には、米海軍を始めとする米軍は、ペルシア湾内での停泊が難しくなる。もし、湾内に停泊する場合には、厳重に防備する必要がある。艦船でも、航行あるいは戦闘時に準じた隔壁閉鎖を求められる。乗員も休養はできない。

 仮に全面戦争になった場合は、当然、米軍がイランを圧倒する。米海空戦力にイラン戦力は対抗できない。ペルシア湾での脅威であったイラン航空戦力、海上戦力、地対艦ミサイル等は鎧袖一触で撃破される。

 しかし、それでペルシア湾がセキュアになるか、と考えれば、そうでもない。

 イランは、米国に制空権や制海権を取られたとしても、戦い続けるだろう。空軍や地対艦ミサイルを喪ったあとでも、人間魚雷や半潜水艇は、隙間を見つけて行動できる。これらの兵器は原始的であるが、それ故に米軍は対処に苦労する。イランはミゼット・サブや自爆艇も保有している。両者は人間魚雷や半潜水艇ほどでもないにせよ、やはり対処は容易ではない。

 イランが原始的な攻撃行った場合、米海軍は対抗できない。米海軍は、ジェット機や対艦ミサイルによる攻撃には容易に対処できる。例外的な損害を除けば、被害は受けないだろう。しかし、原始的攻撃手段に対しては、被害根絶は難しい。



 まあ、人間魚雷に対しては「ペルシア湾内では停泊しないこと」だけが根本的な解決策だろうね。米海軍艦艇はいいけど、タンカー等が狙われたらどうしようもないけど。



※1 イランは、Gahjae級、Kajami級半潜水艇を保有している。これらは北朝鮮製とされ、-3m程度まで潜水できるとされている。

※2 RAMの広告では、目標として、航空機、ヘリ、対艦ミサイルに加えて、高速艇も描かれている。

※3 爆雷も適当なものは保有していない。機雷処分用に使う135kgでは重すぎる。イタリア、スウェーデンで製造された、対潜水員用爆雷(1-3.5kg)程度を使うか、爆薬そのものを使うか、脅し程度にしからならないが、手榴弾や水中発音弾を落とすしかないだろう。

※4 イタリアは大重量炸薬をもっている。「次の戦争でもイタリアは人間魚雷をやるだろうね」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-137.htmlを参照
2012.02
22
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12:59
Category : ミリタリー
 古いIDR(International Defence Review)を読んでいて。AMOS迫撃砲に関する記事に、信管、MO332A1の写真を見つけた。この信管、設定がピクトグラムになっている。

fuse

 画像がみつからないので、手許メモから起こした。左から秒時設定、遅延、瞬発、近接となっている。遅延、瞬発、近接は直感で判る。悩むのは秒時設定だけ。

 ヨーロッパ共通であるかと思えばそうでもない様子。南アフリカ製信管(M9815 Electronic Proximity Fuze http://www.fuchs.co.za/products/mortar.html)、あとはWikipediaで出てくる155mm砲弾用近接信管http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/7/7c/PD_and_Proximity_fuze.jpg/90px-PD_and_Proximity_fuze.jpgで、同じピクトグラムが見つかるだけである。

 逆に、NATO加盟国でも、PROX、PD、DL、Progと書かれている信管も見つかる。昔習っても、長いこと使わないと悩むんじゃないかね。特に近接とProximityが繋がらない言語だとね。

 この手の表示って、バカでも分かるように示す。それなら、ピクトグラムに統一すればいいのにね。
2012.02
18
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13:00
Category : ミリタリー
 中国に対するスクランブル措置をもって、日本への脅威とするには無理がある。

 「航空自衛隊F35の導入と日本の防空態勢」※1http://www.data-max.co.jp/2012/01/11/f35_hk_1.htmlは、濱口和久さんによるブログ記事である。濱口さんの記事は、中露航空戦力が活発に活動している点を提示している。また、日本と中露でのステルス機導入についても言及している。日本が保持していた防空体制での優位が崩れるのではないか、とする問題点を取り上げようとする、意欲的な記事である。

 しかし、防空識別圏に入ったことだけで、中国による脅威とみなす点は、行き過ぎである。濱口さんは中国機動向について
 最近の中国機は情報収集能力や電子線能力を強化し、東シナ海では日本側の緊急発進の対象となる防空識別圏(ADIZ)を越えて、日中中間線付近まで侵入してくるケースが増えている。
 濱口和久「航空自衛隊F35の導入と日本の防空態勢」http://www.data-max.co.jp/2012/01/11/f35_hk_1.html

と述べている。意図してか、あるいは変換ミスか分からないが「侵入」と表現している。全般的に、中国機が日本防空識別圏に「侵入」し、日中中間線付近まで接近することを問題視する雰囲気である。

 しかし、防空識別圏は略公海上に設定されており、日本領域ではない。公海上で日本が勝手に設定した線に過ぎない。公海上であるため、どの国の航空機であっても、自由に行動できる。もちろん、中国が航空機を運用するのは自由である。

 また、中国航空機は、挑発等を行なっていない。2010年4月、中国艦隊が琉球弧を通過した時、中国艦載ヘリは護衛艦に異常接近、危険である挑発行為に及んだ。しかし、いまのところ、陸上機は危険な行為は行なっていない。日本側防空識別圏に入った中国機は挑発行為は行わず、日本領域に過度に接近するような行動※2はしていない。

 防空識別圏や、日中中間線云々は、むしろ日本側にとって都合が悪い内容である。海自のP-3Cは、日中中間線を超え、東シナ海中国ガス田を毎日偵察※3している。もちろん、国際法的には全く問題はない。しかし、防空識別圏云々、日中中間線云々をもって脅威とみなすなら、日本による偵察は、「侵入」する深さ、頻度とも上である、脅威としても上になってしまう。

 スクランブルは領空侵犯対処と言われる。しかし、スクランブルの回数は領空侵犯の回数ではない。※4 ほとんどが公海上で中露航空機動向を観察しておわりである。領空侵犯そのものは例外にすぎない。

 スクランブル増加は、深刻な問題ではない。航空自衛隊によるスクランブルは、ここ5年ほどで増加している。日本領空への挑発的な接近はなされていない。中国には、日本領空をあえて侵犯する意図は見られない。

 もちろん、スクランブル増加は、周辺国航空戦力が活発に行動している証拠である。特に日本は、中国との間でゲームを行なっている。沿岸域や外洋域で、日本側が持つ圧倒的なアドバンテージを見せつけるためにも、航空自衛隊の維持整備には力をそそぐ必要はある。




※1 濱口和久「航空自衛隊F35の導入と日本の防空態勢」http://www.data-max.co.jp/2012/01/11/f35_hk_1.html

※2 冷戦期であれば、沿岸部偵察のために、米ソは領空ギリギリを飛行していた。外務省発表によれば、最近でも、ロシア機はたまに領空侵犯をする。軍事的には大した脅威ではないが、日本の主権を犯す行為である。また米国も、今日でも、米軍機は中国領域ギリギリまで近接している。2001年には、米EP-3は中国防空機と接触事故を起こし、海南島に緊急着陸した件は、記憶に新しい。

※3 「解放軍記者:日本の哨戒機、春暁ガス田に毎日飛来」http://japanese.china.org.cn/politics/txt/2011-06/16/content_22800019.htm

※4 たとえば、元産経新聞外信部長の経歴もある前田徹さんも、スクランブルと領空侵犯を混同している。
前田徹「政権交代で夢見た“日中蜜月”と副作用」 http://www.zakzak.co.jp/society/foreign/news/20120128/frn1201281425001-n1.htm
2012.02
15
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13:00
Category : ミリタリー
 ドイツは上昇機雷を作っていたのではないか。戦前に出された『火兵学会誌』に、ドイツ製磁気感応機雷を紹介する記事があるが、これが上昇機雷になっている。『火兵学会誌』昭和15年3月号に「ドイツの磁気機雷」とする記事がある。戦前とはいうものの、すでに欧州では第二次世界大戦が始まった時期である。英独が互いに機雷戦を始めた、その最初に使われたドイツ磁気感応機雷が説明されている。

 この磁気感応機雷が上昇式として説明されている。機雷缶体のうち、後部は浮力室になっている。沈底時には、浮力室は海水が溜まっているが、受磁以降、発火直前には浮力室に圧縮空気が流し込まれ、海水が押し出されて浮力を生み出す。説明では、尾部から圧縮空気を吹き出すことにより、ロケット的な効果ももたらすとされている。水中での姿勢を支持させるためか、爆弾と同じような尾翼も取り付けられている。発火は、水圧によるとされている。一定深度、-50ft(-15m)あるいは-20~-40ft(-6~-12m)に達した時、水圧深度計により発火するとされている。

 果たして、説明通りに動作するのだろうか。
 まず、上昇機構に不具合だろう点を見つけられる。浮力室を後部に作ると、重心から後部を上にして上昇するよう思える。その場合尾翼は上になる。真っ直ぐ上昇するためには寄与しない。むしろ、微妙な角度により、機雷を明後日の方向に進める結果になる。正のフィードバック(ポジティブ・フィードバック)であり、水深が深くなればなるほど、機雷はデタラメな方向に向かいがちになる。
 発火機構として、水圧を使う点も、具合が良いとは考え難い。記事では缶体頭部に水圧深度計が付いている。缶体が綺麗に真っ直ぐ上昇するのであれば、それなりに動作するだろう。しかし、姿勢がまちまちでは、水流との関係もあり、正確な深度で発火しにくいようにも見える。

 そもそも、この上昇式磁気機雷は実在したのか、と疑問が湧くのである。

 記事で示されたドイツ製上昇機雷は、別資料で見かけたことはない。第二次世界大戦で使用されたドイツ感応機雷は、沈底式と繋維式とされている。上昇式について言及されたものはない。

 ただし、上昇機構以外では、ドイツ製ニードル式磁気機雷が持つ特徴と一致する。非磁性素材で作られた外郭(ドイツ磁気機雷はアルミニウム系を使用)、5本あるニードルで構成される磁気感応機構、磁気感応機構を回転させて磁北を保持する方法である。これらの点については、この記事は日本陸軍※※が収集した磁気感応機雷情報よりも正確である。

 つまり、史料により実在は裏付けられないが、デティールは正確であり得る形ということだ。この点について、説明は考えつくが、仮説には確証は持てない。「極初期に試作したタイプではないのか」もしくは「ドイツ側ミスリーディングによるものではないのか」であったとすれば、納得はできるが、証拠はない。

 いずれにせよ、この上昇機雷は実用性に乏しいと考えられる。すでにきちんと上昇できるか、一定水深で発火できるのかといった問題は述べた。他にも、大深度でニードル式で感応できるほど、受磁できるのかといった問題もある。大深度では、艦船が通る水面までの距離が遠くなる。船体が消磁された場合、感応に足りる磁気変動が海底まで届くかどうかも問題になるだろう。ニードル式の場合、感応ロジックをいじりにくい※※※。単純に高感度にした場合、地場が強い艦船であれば、遠距離で発火してしまう。

 現実的には、大深度に敷設する場合には、繋維機雷としたほうが確実である。英独では航空機で敷設できる触発繋維機雷は、すでに戦前に準備されている。その缶体を磁気感応とすれば済む。実際に、ドイツはニードル式機雷を大深度で使用する場合には、繋維機雷としている。繋維掃海で処理されてしまう不利はあるが、確実性では上昇機雷に勝る。

 ただし、この「ドイツの磁気機雷」から上昇機雷に関するアイデアが、戦争初期にはあったことが確認できるのである。上昇機雷は、戦後にソ連が発明したものではなさそうだ。


※著者Milbury,C.E、訳者不明「ドイツの磁気機雷」『火兵学会誌』33,6(火兵学会,1940.3)pp.481-482. 初出はScientfic American(1940.3)

※※ 海軍ではない。陸軍資料では、現物とは違う、欧米雑誌による想像図が掲載されており、磁気感応機構や、発火までの感応ロジックも実物とは異なっている。

※※※ 誘導式(コイル式)磁気機雷であれば、機雷ロジックに磁気ピークを利用するため、感度を上げても的確に発火時期を設定できる。具体的には、朝鮮戦争で使用されたソ連磁気機雷は、毎秒0.6ミリガウスの磁気上昇の後、同じように毎秒0.6ミリガウス磁気下降した時に発火する仕組みとされている。これは公開資料(田村久三さんによる)で確認できる。
2012.02
15
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12:59
Category : 未分類
 これ、多分旧海軍水際機雷。その2触角タイプ。読みは「みずぎわ-きらい」で、今の陸自がもつ「水際地雷」、「スイサイ-ジライ」とは読みが変わっているが、用途は同じ。

 写真は、トラックで発見されたとのこと。触角(ホーン)取り付け前だから、基本的には発火の可能性ナシ。もちろん、爆薬で誘爆させれば発火するだろうけどね。

 この機雷は、米軍ではタラワ・タイプとも呼ばれた。7戦隊がタラワに緊急輸送した3000個が大規模利用された。その時、米軍は「エライ目にあった」と書いてあるとのことだけれども、手許のモリソン戦史には書いていない。海兵隊戦史かなにかかね。

 半球型で、海底/地面に据置、重さ60kgで、うち20kgが炸薬。当然、砂浜でも触角をポキリと破損すれば発火する。LVTがそれなりに引っかかったらしい。20kgも炸薬があるから、TNT/TNAじゃなくて、カーリットでも踏んだらオシマイなんでしょう。
2012.02
11
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13:00
Category : 未分類
 香港の雑誌『鏡報』2月号に、殲-15に関する記事が出ている。梁天仞さんの「中国『飛鯊』問鼎亜太」※ は、艦載機となる殲-15に関して述べている。件の中華航母で殲-15を用いた離着艦試験が終了したことから記事は始まるのだが、国産艦載機である殲-15に関して過剰な思い入れを見ることができる。

 梁さんは、殲-15はSu-33に対して優位に立つとしている。根拠としては3点を挙げている。まず、ASEAレーダを搭載している点である。次に航続距離が長い点である。最後に米艦載機F-18・米日台が保有するF-16に対抗できる点である。ただし、この最後の点は、Su-33に対する優位ではなく、また殲-15だけがF-18・F-16に対抗しうるとする理由は示されていない。

 Su-33と殲-15を比較して、後者が優れていることを主張することに意味はない。Su-33は20年前に製造された。そのSu-33を元に作った殲-15を比較して、新しい後者が前者よりも優れることを主張しても、新味はない。そもそも、両者は同じ機体である。

 国産機であるため目が曇ったのである。梁さんも、優位性を示したくなるわけだ。殲-15だけを褒めるのは、中国人としての身びいきである。殲-15もSu-33も、原型であるSu-27にもほとんど差はない。これらの機体は「他人が見れば同じお多福」で、似た様なものだ。

 その些細な差異を見つけ出して賞賛するのは、国民であり、当事者だからだ。梁さんは、些細な点を挙げて殲-15を賞賛している。曰く、AESAレーダを積んでいる。ロシアより優れた複合素材技術により、軽量化され、脚も伸びた。米国「防務新聞」でF-18並であると高く評価された。こういった点を誇らしげに述べている。

 しかし、その根拠は、おおむね憶測によるものである。AESAは搭載しているだろうが、その性能は未知数である。形状はそうなっているかもしれないが、何が出来るかは分からない。機体軽量化にしても、それが本当かはわからないし、強度上の問題も定かではない。米国「防務新聞」云々は、単なる舶来権威に過ぎない。

 当事者からすれば、冷静に見られないのだろうね。

 まあ、日本人にしても偉そうなことも言えない。F-16と大差のないF-2※※や、90式戦車と変わり映えもしない10式戦車を、些細な差異を見つけて賞賛する人も多い。しかし、ミクロでの差異を挙げるが、実用上ではほとんど無視出来る話ばかりである。他を圧するほどの質的優位を明示できないところも、同じようなものだ。

 分かっていてではなく、本気で国産兵器を褒めるというのは、多くは盲目状態なんだろう。エア当事者だからね。まあ、技術的成果とやらに目が眩み、どーでもいい部分を捨象できないのだろうね。



※ 梁天仞「中国『飛鯊』問鼎亜太」『鏡報』415(香港、鏡報文化企業有限公司、2012.2)pp.87-90.

※※ F-2はF-16原型に較べれば、開発時期で20年差があるわけだ。F-16からF-2への発展は、Su-33から殲-15程度の能力向上はあるだろうけどね。でも、結局はF-16と大差はない、同じと見て良い。今様の、ハンプバック風になった新型F-16とF-2には差もないでしょ。あと、対艦ミサイル4発をヨイショしていたけど、先行していたバッカニアもトーネードも4発搭載を実現している。対艦ミサイルは概ね1発500kg程度(ARHであれば、200kg代後半からある)と軽く、戦後の飛行機なら4発搭載は難しいものでもない。そんなにエライものでもないよね。
2012.02
09
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Category : ナショナリズム
 沖ノ鳥島は、島であり、200マイルの排他的経済水域(EEZ)を持つ。日本は沖ノ鳥島を起点とするEEZを、平穏に支配しており、国際社会でも認められている。

 しかし、沖ノ鳥島には見るべき利益はなく、「日本の生命線」ではない。濱口和久さんは「沖ノ鳥島は日本の生命線」※とする意見を述べている。しかし、沖ノ鳥島EEZは日本にとって死活的な利益を生み出すものではない。

 濱口さんの記事は、国際海洋法上の島の定義と、沖ノ鳥島に対する適用を非常によくまとめている。
 しかし、残念なことに、EEZと領海を混同してしまっている。そして、EEZにより中国潜水艦行動を平時・有事とも制約できるとしている。

[略]沖ノ鳥島海域は沖縄本島とグァム島を結ぶ直線のほほ中間に位置し、原子力空母を含む米海軍の艦船が日本周辺に向かって西進する最短の航路上にあり、極めて重要なチョークポイントとなっている。/もし仮に、沖ノ鳥島海域が日本の排他的経済水域(EEZ)から外れると、周辺海域は公海となり、中国海軍の潜水艦が大手を振って航行するようになる。[略]
 濱口和久「沖ノ鳥島は日本の生命線」http://www.data-max.co.jp/2012/02/02/post_16433_hk_1.html より


 しかし、沖ノ鳥島とそのEEZは、潜水艦行動を制約するものではない。※※ EEZは領海ではない。また沖ノ鳥島領海は太平洋上の点であり、容易に迂回できる。そもそもチョークポイントでもない。沖ノ鳥島で制約しようにも、島は根拠地とはならず、付近にも拠点はない。

 まず、EEZは、領海ではない。経済活動を除けば、沿岸国主権はEEZに及ばない。潜水艦が行う行動に関しては、公海と同じである。無害航行の必要もなく、潜水可能である。戦争に伴う行為にしても、沿岸国は自国領域としての権利を主張できない。

 また、沖ノ鳥島を起点とする領海は、12マイル(22km)にすぎない。その範囲であれば、潜水艦に無害通航(浮上し、旗国を明確にする)を強要させることは、国際法上は可能である。しかし、沖ノ鳥島を起点とする領海は直径にして50km程度である。太平洋に浮かんだシミであり、迂回は容易である。

 そして、沖ノ鳥島はチョーク・ポイントではない。マリアナ、ハワイから横須賀、津軽海峡、沖縄、台湾、朝鮮半島、南シナ海…どこに行くにしても、特に沖ノ鳥島を通航する必要はない。グァムから沖縄に行くまでの最短距離かもしれないが、迂回しても大して時間はかわらない。マラッカ海峡のように、そこを通らないといけないわけでもないのである。これは、戦時に中国潜水艦が米艦艇を邀撃するとして同じである。沖の鳥島は、米艦隊が通るか分からない。中国も、その島を中心にしてた拒否水面(Offensive Sea Denial)は設定しない。

 最後に、沖ノ鳥島は足がかりとはならない。沖ノ鳥島は、根拠地として使うことはできない。実際に海空自や海保の根拠地は設定できない。実際には、領海や接続水域、EEZを実行支配することも容易ではない。※※※

 沖ノ鳥島と、島を起点とするEEZは貴重である。また、近代国家にとって、領土を失うことに耐えられない。そのため、沖ノ鳥島保全には力が注がれている。
 しかし、沖ノ鳥島には国防、防衛上の価値はない。実際に得られる利益は、漁業しかない。その漁業にしても、あまり漁獲も見込めない、砂漠のような海である。

 沖ノ鳥島は、日本にとって死活的な利益ではないのである。



※ 濱口和久「沖ノ鳥島は日本の生命線」http://www.data-max.co.jp/2012/02/02/post_16433_hk_1.html

※※ 領海であっても、交戦される可能性もある。米中交戦の場合、日本は米側に付くため、中立はとりえない。仮に中立を宣言しても、一方が領海を利用する(米軍が日本領海を利用する)場合、交戦国間に公平でなければならないため、もう片方にも領海利用を許さなければならない。

※※※ 沖ノ鳥島を「島」と認めない立場で、領海内を潜水して通航しても、日本が事実を確認し、追尾し、浮上を求めることは難しい。仮に日本側が中国潜水艦を追尾できるとしても、沖ノ鳥島周辺では、固定翼哨戒機以外では追尾は難しいだろう。実際のところ、水上艦でなければ、浮上を要求し、強制することはできない。
2012.02
07
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13:00
Category : 有職故実
 対中円借款に関して、元気のいい人達は「(仮想敵国である)中国にお金を貢ぐのか」云々と声を挙げていたけれども。

 アレ、過半は貸与であって、返済が必要な貸付なんだよね。「対中国ODAに関する基礎資料」http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/seisaku/kondankai/senryaku/21_shiryo/pdfs/shiryo_2_1.pdf によれば、貸付は計3兆円(利息付)であるが、無償供与は1400億円に過ぎない。

 しかも、中国は律儀に返済している。いまのところ、中国からの返済は滞ってはいない。誠実さを信じていいんじゃないのかね。

 そもそも対中円借款、対中援助は、暗黙の戦時賠償なんだよね。日本人も、日華事変以来「[日本が]中国人民に多大のご迷惑をおかけした」(1972.9.25 田中角栄)ことは認めていたわけで、それには謝罪しなければならない。しかし、日中国交正常化で、日本への戦時賠償は放棄された。それに対して、なんらかの埋め合わせが必要と、両者が考えて進めてきたのが対中円借款だったわけだ。

 そういった認識を持たず、しかも「中国に無償でお金を貢ぐ」と勘違いしていたのが、元気の良い人達だというわけだ。

 逆にね、日本も中国を充分サポートしてきたと思うよ。文革で傷めつけられた中国経済を救ったのが、日本よる円借款であり、有形無形の援助(贖罪でもあるよね)だったわけだ。天安門事件を機に、世界は中国に制裁した。それが中国を逼塞させたときに、最初に中国を助けたのが日本だったわけだ。具体的には
天皇陛下訪中で外交的な閉塞状況を救っている。まあ、国交正常化以来、日本は陽に蔭に中国をサポートしてきた。

 でも、中国でもそこら辺を知らずに、日本を攻撃する世代が増えているわけでね。

 まあ、日中とも、経緯を知らない若い連中が、互いに攻撃的なんだよね。

 もちろん、中国が巨大な大国になって、日本や同盟国米国と摩擦が起きている現状がある。そうなると、今まで通り日中友好で全部誤魔化すわけにもいかない。互いに経済的実益を確保しながらも、外交・軍事でゲームをやる必要がある。とはいえ、中国も約束は守る国であるし、そこのところも理解してあげるべきじゃないかな。
2012.02
04
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23:39
Category : ミリタリー
 10式戦車を導入しても、抑止力はほとんど増えません。

 日本本土への侵攻を躊躇わせる抑止力は、経済力、日米同盟と海空軍力がほとんどですよ。戦車の質による抑止力は問題にならないほど小さい。しかも90式戦車が10式戦車に変わっても、ミクロで微増するだけで、マクロに、全体を見ても何も変わりませんね。
 まず、日本本土に侵攻しようと考える国はありません。周辺国を見ても、北朝鮮を除きすべての国、地域と日本は友好関係にある。離島での領有権、交流関係深化による摩擦といった、多少の対立はありますが、戦争に繋がるような対立はありません。

 クローズアップされる中国との競争も、外交や海軍力競争であり、ゲームにすぎません。どちらも問題を大きくするつもりはない。尖閣諸島をめぐる応酬も、両国とも拡大防止に意を砕いている。あの中国にしても、ナショナリズムを抑制しようとしている。全面的な対立に結びつくようなものではないのです。

 周辺国は、日本との全面戦争は望みません。対日線は経済的困難を伴います。日米同盟もある。そして、日本は地域屈指の軍事力を持っている。

 日本との全面戦争は、経済的困難を伴います。
 日本、その背後にいる米国を敵にまわすことは、交易困難を伴います。
 中国脅威論が流行りですので中国を例に挙げますが、中国GDP6兆ドルに対して、輸出が1.6兆ドル、輸入が1.4兆ドル、輸出入合計して3兆ドルあります。中国の輸出先で、日米は4000億円を占め、輸入先としても3000億を占める。また対中投資でも日米が占める割合は大きい。香港からの投資を除き、対中投資額は2011年実績で300億ドルですが、そのうち日米が占める割合は100億ドルと1/3を超えています。
 また、海軍力に長じる日米を敵にまわすことにより、海路による交易が途絶えてしまう。日米以外との輸出入も止まることになります。

 日本との全面戦争は、アメリカとの対立も覚悟しなければなりません。周辺国には、少なくとも外洋域で日米同盟に対抗できる戦力は存在しません。質的要素も加味すれば、日米同盟はロシア・中国のの10~20倍の外洋戦力(圧倒的な日米同盟)を持っています。日本本土への侵攻どころか、日米により沿岸域に閉じ込められ、沿海地域への攻撃をおそれなければなりません。

 日米同盟を除外しても、周辺国は地域屈指の日本軍事力を圧倒できません。日本本土への侵攻は事実上無理ゲーです。戦後レジュームで、日本人は「専守防衛のための軽武装」であると考えがちですが、日本が持つ海軍力、海自と海保はあまりにも強力です。駆逐艦以上の軍艦を比べても、日本は48隻を保有していますが、ロシアは8隻、中国は13隻に過ぎない。潜水艦、哨戒機、艦載ヘリ…何れも日本が圧倒しています。また、空軍力にしても、昭和50年代から、空自は脚の長い最新鋭機を導入しています。国内や沿岸では、空自機はJADGEにより高度に管制され、侵入機に対して優位に立てます。外洋であっても、AWACSを主力とする早期警戒機により優位な戦闘が可能になっています。

 経済的理由、日米同盟、海空自衛隊が持つ軍事力、周辺国が日本との全面戦争を決することは考え難いですし、日本本土に侵攻することはできません。

 抑止力としての陸軍力には、あまり力をそそぐ必要もありません。陸軍力によって抑止される以前に、経済、同盟、海空軍力により抑止され、日本本土への侵攻は封止されています。その陸軍力のごく一部である戦車、その質が担う抑止力は、毛の先ほどもありません。抑止力全体を100としても、1に満たないでしょう。

 その戦車が、90式戦車から10式戦車に変わったとしても、抑止力云々は何も変わりません。90式戦車も10式戦車も同じようなものです。フェアレディZをGT-Rに乗り換えた程度に過ぎません。日常的に道路を走る分には、別に速い遅いもありません。10式戦車になって増えた抑止力なんてものは、頭の髪の毛を数えて、その一本の毛先が太くなった程度にすぎないのです。

 陸軍力は、力の真空を作らない程度で充分でしょう。海空軍力は、インド洋でも使える、国際貢献にも使える。対して、陸軍力、今の陸上自衛隊は、本土決戦に特化しているので、より重要度が増す海外での活動には使い難い。まず、陸上自衛隊に予算をつぎ込んでも、しかも本土決戦準備に予算を投入してもリターンは見込めません。もちろん、災害時等に国家が直轄投入できる人的資源としては重要ですけどね。でも、戦車はありさえすればいいんじゃないですかね。
2012.02
04
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13:00
Category : ミリタリー
 魚雷艇あたりに積む長魚雷は、短くしても構わないんじゃないかな。まあ、ドイツ魚雷が馳走距離に応じて電池を増減しているのをNAVINT※で見つけて思いついたのだけれどもね。



 長魚雷も、短射程で使用するなら電池を減らしてもかまわない。ドイツが使用している長魚雷(Heavyweight Torpedo)、DM2A4では、短射程であれば電池を減らして使用できるようになっている。

 DM2A4は、潜水艦から運用される長魚雷である。商品名として"Seehecht"あるいは"SeaSHARK"。性能は最大全長6.22m、最大重量1530kg、炸薬はPBXで250kg、最大雷速50kt(90km/h)、最大馳走距離50nm(90km)となっている。用途としては、米Mk48、英スピアーフィッシュと同じ仲間である。

 特徴としては、バッテリー駆動であり、電池が増結式となっている点である。このDM2A4は、長射程ではバッテリー4個であるが、極短射程、あるいは航跡追尾や、AUV運用ではバッテリーは1個になる。魚雷はバッテリーの数により、A4無印(4個)、A4-M(3個)、A4-S(2個)、A4-VS(1個)と分類される。航跡追尾式(Wake Homer)は、光ファイバーディスペンサー(ホビン)と、頭部センサー部が省略されており、A4-LC(1個)とされる。機雷でも搭載するのだろうAUVタイプも、ディスペンダーはなく、A4-AUV(1個)と命名されている。

 バッテリーは、相当高価な様子である。長魚雷そのものも高価であり、対艦ミサイルよりも高い。誘導機構、炸薬も高価であるが、動力部分も安くはない。バッテリーで駆動するDM2A4であれば、モータは安価であるが、電池が高くつく。1.8v銀亜鉛電池を86セルでつかい、150vで300kwモータを動かす。最大速力50ktでの馳走距離、25nmから逆算すると150vで2000Ahになる。バッテリー1ユニットが150v500Ahになる。1ユニットあたり、少なくとも邦貨換算1000万円以上はするのだろう。

 短射程と割り切れば、電池式魚雷は安くできる余地がある。長魚雷を最大射程で使うことは、それほどないと思われる。DM2A4は最大50nm、最大速力で25nmである。だが、潜水艦から使用する場合を考慮しても、その距離では、ソーナーで敵が探知できるかわからない。詳しくは「やっぱり魚雷を使うんだろうね」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-188.htmlで書いたが、洋書で示唆されている限りでは、ソーナー探知できる距離は直接波で約10km程度にすぎない。また、実際にはソーナー探知した水上目標であっても、一度は襲撃用潜望鏡で確認したいだろう。最大速力での最大馳走距離25nmは、過剰性能とも考えられる。



 特に魚雷艇で襲撃的に運用する場合では、長魚雷は短く使って構わないんだろうね。バッテリー1ユニット分、50ktで6nm走れば充分じゃないのかな。昔、スウェーデン魚雷/ミサイル艇が狙ったミサイルと長魚雷による、同時弾着攻撃(TOT)でもなければ、25nm、50nmもの射程は不必要な長さでしょう。魚雷艇であれば、ディスペンサーを通じた音響誘導も不便で、打ち放しか、航跡追尾式で充分だろうね。航跡追尾式DM2A4-LCであれば、全長も3.5m程度になり取回ししやすいだろうね。



※ Jane's Navy International(2005.6) pp.12-16.

※※ 市販されている時計用銀亜鉛電池の能力・単価で割ると、全体で1億8000万円、1ユニット4500万円程度。それほどでないにしても、魚雷全体で2~3億円程度とみれば、バッテリー4ユニットで4000万から8000万くらいはするだろう。

※※※ もちろんUSMで行われるように、魚雷を迂回させて潜水艦位置を掴ませない方法で使うかもしれない。USMの場合は、例えば目標西にいる潜水艦から、ミサイルを南に迂回させ、攻撃潜水艦が南にいる(虚像、phantom)ように見せかけることも行われるらしい。これはHervey,John,Submarines(London,Brasseys,1994)p.131.に図示されている。
2012.02
01
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13:00
Category : 有職故実
 昭和20年8月、終戦直前に書かれた海軍省記録、大臣官房日誌が、なかなかね。ポリティカル・コレクトっぽい記述があるのが興味ふかい。

 まず、原爆に関する記述では、当初、原爆とは書かれていなかった様子である。8月6日条に原爆投下を「本日B-29広島市ニ対シ原子爆弾攻撃ヲ実施ス」とある。だいたい海軍関係の日誌や日記を見ると、その日の段階で原爆だと判断している。しかし、この日記で、下線部は消しゴムで消して書きなおしてある。最初は、ポリティカル・コレクトな感じで「新型爆弾」と書いてあったのではないかと邪推したくなる。原爆と認めてしまうと、米国に戦争では勝てないことを認めるような印象があったんじゃないかね。

 また、8月15日条では、叛乱を犯乱と書き換えている。「〇四〇〇 近衛師団ノ一部宮城ニ於テ犯乱ノ行為アリ〇八〇〇頃鎮定」とある。下線部は消しゴムで消されて書き換えられているが、圧痕は「叛」の字がある。大逆を意味する「叛」ではなく、刑法犯程度のニュアンスである「犯」としたわけだ。もちろん、官房日誌で書き換えをしても意味はないが、そういうふうにしなさいとする指示なり圧力なり雰囲気があったのだろう。

 他にも、どこまで本意かわからない大臣訓示とかね。8月9日御前会議から、12日サンフランシスコ放送での対日和平条件の間に、11日に大臣訓示がある。大意は、ソ連が攻めてきたけど、海軍は『不抜ノ闘魂』で寇敵撃滅するよ、といった内容。倒産秒読みの会社で、裏では最期の詰めをしている経営陣が、朝礼では最後の最後まで景気のいい話を飛ばしているようなものか。勿論、そう発言しなければならない状況なんだろうけど。

 別に、海軍省と大蔵省がインフレ問題で話しあったり、8月14日午後4時半には部内に終戦を知らせていた、とあったりする。
 8月10日閣議に関して「(四)蔬菜[野菜のこと]ノ供給改善ニ関スル件(決定)」とある。相当深刻だった様子。もともと野菜や花を作っていた近郊農業は戦争でカロリー生産に転換している。農地や労働力は穀物生産に投入された。余地、余力で野菜を作っても交通網が混乱しているため、都市に運べない…とかあったのだろうね。

 まあ、こういった記録以外にも、慰安会やりましたみたいな事項があるのも面白いんだけどね。たとえば、8月2日(木)午後6時から、勤務員慰安演芸会が日比谷公会堂で行われている。
 これは海軍省に限った話ではない、軍令部で勤務した人の日記を拝見すると「今日はバレーボールやったよ」とか結構ある。おそらく、海軍以外でもそんなものでしょう。戦争末期には、他省庁や県町村も土日休みなし※※になっている。どっかで休みは必要だろう。
 民間も、徴用等は厳しかったが、一部を除けばそれほどミリミリに仕事はしていない。戦争末期はそもそも物流がおかしいので、開店休業みたいなもの。適当に理由つけて買い出しとか食料生産とかやっていたようだし。

※ 『昭和二〇.八.一 ~ 二〇.八.二八 大臣官房日記』
※※ 戦前は、官庁や民間も夏休みがあり、7月下旬から8月中旬までは毎日半ドンだった。日中戦争以来の総動員体制で働きかたが変わったんだろうね。