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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.02
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Category : 有職故実
 昭和20年8月、終戦直前に書かれた海軍省記録、大臣官房日誌が、なかなかね。ポリティカル・コレクトっぽい記述があるのが興味ふかい。

 まず、原爆に関する記述では、当初、原爆とは書かれていなかった様子である。8月6日条に原爆投下を「本日B-29広島市ニ対シ原子爆弾攻撃ヲ実施ス」とある。だいたい海軍関係の日誌や日記を見ると、その日の段階で原爆だと判断している。しかし、この日記で、下線部は消しゴムで消して書きなおしてある。最初は、ポリティカル・コレクトな感じで「新型爆弾」と書いてあったのではないかと邪推したくなる。原爆と認めてしまうと、米国に戦争では勝てないことを認めるような印象があったんじゃないかね。

 また、8月15日条では、叛乱を犯乱と書き換えている。「〇四〇〇 近衛師団ノ一部宮城ニ於テ犯乱ノ行為アリ〇八〇〇頃鎮定」とある。下線部は消しゴムで消されて書き換えられているが、圧痕は「叛」の字がある。大逆を意味する「叛」ではなく、刑法犯程度のニュアンスである「犯」としたわけだ。もちろん、官房日誌で書き換えをしても意味はないが、そういうふうにしなさいとする指示なり圧力なり雰囲気があったのだろう。

 他にも、どこまで本意かわからない大臣訓示とかね。8月9日御前会議から、12日サンフランシスコ放送での対日和平条件の間に、11日に大臣訓示がある。大意は、ソ連が攻めてきたけど、海軍は『不抜ノ闘魂』で寇敵撃滅するよ、といった内容。倒産秒読みの会社で、裏では最期の詰めをしている経営陣が、朝礼では最後の最後まで景気のいい話を飛ばしているようなものか。勿論、そう発言しなければならない状況なんだろうけど。

 別に、海軍省と大蔵省がインフレ問題で話しあったり、8月14日午後4時半には部内に終戦を知らせていた、とあったりする。
 8月10日閣議に関して「(四)蔬菜[野菜のこと]ノ供給改善ニ関スル件(決定)」とある。相当深刻だった様子。もともと野菜や花を作っていた近郊農業は戦争でカロリー生産に転換している。農地や労働力は穀物生産に投入された。余地、余力で野菜を作っても交通網が混乱しているため、都市に運べない…とかあったのだろうね。

 まあ、こういった記録以外にも、慰安会やりましたみたいな事項があるのも面白いんだけどね。たとえば、8月2日(木)午後6時から、勤務員慰安演芸会が日比谷公会堂で行われている。
 これは海軍省に限った話ではない、軍令部で勤務した人の日記を拝見すると「今日はバレーボールやったよ」とか結構ある。おそらく、海軍以外でもそんなものでしょう。戦争末期には、他省庁や県町村も土日休みなし※※になっている。どっかで休みは必要だろう。
 民間も、徴用等は厳しかったが、一部を除けばそれほどミリミリに仕事はしていない。戦争末期はそもそも物流がおかしいので、開店休業みたいなもの。適当に理由つけて買い出しとか食料生産とかやっていたようだし。

※ 『昭和二〇.八.一 ~ 二〇.八.二八 大臣官房日記』
※※ 戦前は、官庁や民間も夏休みがあり、7月下旬から8月中旬までは毎日半ドンだった。日中戦争以来の総動員体制で働きかたが変わったんだろうね。
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