Category : ミリタリー
いまだに「ロシア海軍歩兵が日本に揚がってきたらどうする」みたいなコトを主張する御仁もおらっしゃる。いわく「海軍歩兵は強力装備を持っている」「上陸戦に対応できる」とのことである。本当に新型戦車が配備されているのか、高度なノウハウを持っているのかも疑問であるが、それはさておこう。まずそれ以前の話で、太宗である極東部での輸送能力や、ロシア艦隊戦力からすれば無理ゲー以外の何物でもない。
そして、ロシア極東部での防衛をどうするのかも問題である。上陸戦で海軍歩兵を使ってしまったら、ロシアは極東部で海上機動可能な予備戦力を失ってしまう。これでは、オホーツク以東の防衛に困難を伴う。
海軍歩兵は、極東部では攻勢に使うことは難しい。海軍歩兵を使ってしまうと、オホーツク海以東での沿岸防衛に差し支える。オホーツクやカムチャッカへの増援、逆上陸準備、港湾防備に穴が開いてしまう。
オホーツク海沿岸、カムチャッカは無人地帯である。アムール河口にあるニコライエフスク以東は、無人地帯と見て良い。カムチャッカ、千島列島、オホーツク沿岸、樺太北部には、補給限界を超えた1万人に満たない小都市がいくつかあるにすぎない。
無人地帯に配備される兵力も僅少である。補給限界を超えているため、大規模な兵力を配備できない。カムチャッカはロシア本土と陸地で連絡しているが、鉄道では繋がっていない。道路も悪路であり、輸送幹線とはならない。海運に頼るしかないのだが、そこにも制限がある。冬季には流氷により凍結し、夏も概ね濃霧である。低気圧の墓場でもあるため、船舶輸送も容易ではない。無人地帯で、まがりなりにも守備があるのは、樺太南部、北方領土、ペトロハバロフスク程度である。
無人地域に駐留している部隊は、貼り付けられた全滅予定部隊である。北方領土、ペトロハバロフスク守備部隊は、ロシア本土と事実上、連絡されていない。その島、港湾一点を守るだけの守備隊である。北方領土に配置された部隊は、それぞれの島を守るだけ。海で隔てられた千島列島各島まで機動する力はない。ペトロハバロフスクに配置された部隊も、港湾防備以外には何もできない。
冷戦期に米国は、オホーツク・アプローチを検討していた。カムチャッカ半島からオホーツク海は、米ソが直接対峙する正面である。そこには第三国がない。このため、第三国に属する領土や、その立場を考慮せず、存分に戦争できると考えていた。米国は、優越する海軍力により、カムチャッカ、サハリン、オホーツク湾底部への直接侵攻が可能であった。冷戦集結以降にロシア軍事力は大きく弱体化している。オホーツク・アプローチにある米優位は、今日さらに際立っているのである。
米国によるオホーツク海侵攻に対して、投入できる陸上戦力は、海軍歩兵しかない。無人地帯で機動的防備に使用でき、重装備を持つ戦力は、海軍歩兵しかないのである。太平洋艦隊が持つ海軍歩兵は、海上機動に習熟した陸上戦力である。※ オホーツク海での沿岸防衛、オホーツクやカムチャッカへの増援、生地への逆上陸のため、海軍歩兵は予備戦力の価値が高い。
仮に対日戦をやるとする。補給上にある限界、海軍力にある限界がないものとして、ソ連/ロシアが北海道に上陸するとしよう。
上陸第一波には、海軍歩兵を宛てるしかない。海軍歩兵が習熟した戦力であるというだけではない。ソ連/ロシアにあるセクショナリズム、政治的立場から、上陸第一波は、それを表芸にする海軍歩兵である必要も海軍にある。
しかし、ここで海軍歩兵を使ってしまうと、米軍がオホーツク侵攻を行ったとき、対抗できる予備戦力がなくなるというジレンマに陥る。同時に、極東への輸送力、海上輸送力、揚陸艦艇も北海道正面に張り付いてしまう。オホーツク方面は米軍のやりたい放題になる。
ロシアが対日戦をやるとすれば、海軍歩兵を始めとする海上機動戦力を充当しなければならない。しかし、それでも日本に勝てる見込みはない。日本は強力な海空軍力を持ち、輸送力に問題はなく、強力な工業生産能力を持ち、米国と同盟を組み、侵略を受ければ援助する友好国を多数擁している。わざわざ負ける為に上陸する行為で。
負け戦が決まった話に海軍歩兵を投入するほどの悪手はない。海軍歩兵が上陸を始めた段階で、オホーツク方面がフリーになってしまう。北海道で負けた上、オホーツク方面を失う、泣きっ面に蜂になる。
極東域では、ロシア海軍歩兵は貴重であって対日戦に投入するには敷居が高い。ロシア側による対日侵攻能力を検討する上で、海軍歩兵は注視すべきである。上陸戦に対応できる海軍歩兵は陸上戦力での筆頭になる。しかし、実際に対日戦に投入できるかどうかを判断する上では、また別個の問題もある。オホーツク以東は太平洋方面に開放されており、米軍は容易に侵攻することができる。海軍歩兵はその備えでもある。海軍歩兵は、極東部では攻勢に使うことは難しいことにも注目すべきである。
…まあ、駒としての海軍歩兵、兵員や戦車・装甲車・大砲に関しては、予備役動員や、ヨーロッパ方面各艦隊から陸路移動という手段もないではない。
しかし、海軍歩兵というシステム、揚陸戦用の装備(米英蘭に比べればおもちゃみたいなものだが)や、その背後にある揚陸艦は如何ともし難いね、ってとこだね。
※ 冷戦期、サハリンに所在した地上軍2ヶ師団が上陸戦機能を持っていると言われていた。これも今から見れば、北海道侵攻用ではなく、オホーツク海内での逆上陸、沿岸防衛等に備えたものだったとも考えられる。
そして、ロシア極東部での防衛をどうするのかも問題である。上陸戦で海軍歩兵を使ってしまったら、ロシアは極東部で海上機動可能な予備戦力を失ってしまう。これでは、オホーツク以東の防衛に困難を伴う。
海軍歩兵は、極東部では攻勢に使うことは難しい。海軍歩兵を使ってしまうと、オホーツク海以東での沿岸防衛に差し支える。オホーツクやカムチャッカへの増援、逆上陸準備、港湾防備に穴が開いてしまう。
オホーツク海沿岸、カムチャッカは無人地帯である。アムール河口にあるニコライエフスク以東は、無人地帯と見て良い。カムチャッカ、千島列島、オホーツク沿岸、樺太北部には、補給限界を超えた1万人に満たない小都市がいくつかあるにすぎない。
無人地帯に配備される兵力も僅少である。補給限界を超えているため、大規模な兵力を配備できない。カムチャッカはロシア本土と陸地で連絡しているが、鉄道では繋がっていない。道路も悪路であり、輸送幹線とはならない。海運に頼るしかないのだが、そこにも制限がある。冬季には流氷により凍結し、夏も概ね濃霧である。低気圧の墓場でもあるため、船舶輸送も容易ではない。無人地帯で、まがりなりにも守備があるのは、樺太南部、北方領土、ペトロハバロフスク程度である。
無人地域に駐留している部隊は、貼り付けられた全滅予定部隊である。北方領土、ペトロハバロフスク守備部隊は、ロシア本土と事実上、連絡されていない。その島、港湾一点を守るだけの守備隊である。北方領土に配置された部隊は、それぞれの島を守るだけ。海で隔てられた千島列島各島まで機動する力はない。ペトロハバロフスクに配置された部隊も、港湾防備以外には何もできない。
冷戦期に米国は、オホーツク・アプローチを検討していた。カムチャッカ半島からオホーツク海は、米ソが直接対峙する正面である。そこには第三国がない。このため、第三国に属する領土や、その立場を考慮せず、存分に戦争できると考えていた。米国は、優越する海軍力により、カムチャッカ、サハリン、オホーツク湾底部への直接侵攻が可能であった。冷戦集結以降にロシア軍事力は大きく弱体化している。オホーツク・アプローチにある米優位は、今日さらに際立っているのである。
米国によるオホーツク海侵攻に対して、投入できる陸上戦力は、海軍歩兵しかない。無人地帯で機動的防備に使用でき、重装備を持つ戦力は、海軍歩兵しかないのである。太平洋艦隊が持つ海軍歩兵は、海上機動に習熟した陸上戦力である。※ オホーツク海での沿岸防衛、オホーツクやカムチャッカへの増援、生地への逆上陸のため、海軍歩兵は予備戦力の価値が高い。
仮に対日戦をやるとする。補給上にある限界、海軍力にある限界がないものとして、ソ連/ロシアが北海道に上陸するとしよう。
上陸第一波には、海軍歩兵を宛てるしかない。海軍歩兵が習熟した戦力であるというだけではない。ソ連/ロシアにあるセクショナリズム、政治的立場から、上陸第一波は、それを表芸にする海軍歩兵である必要も海軍にある。
しかし、ここで海軍歩兵を使ってしまうと、米軍がオホーツク侵攻を行ったとき、対抗できる予備戦力がなくなるというジレンマに陥る。同時に、極東への輸送力、海上輸送力、揚陸艦艇も北海道正面に張り付いてしまう。オホーツク方面は米軍のやりたい放題になる。
ロシアが対日戦をやるとすれば、海軍歩兵を始めとする海上機動戦力を充当しなければならない。しかし、それでも日本に勝てる見込みはない。日本は強力な海空軍力を持ち、輸送力に問題はなく、強力な工業生産能力を持ち、米国と同盟を組み、侵略を受ければ援助する友好国を多数擁している。わざわざ負ける為に上陸する行為で。
負け戦が決まった話に海軍歩兵を投入するほどの悪手はない。海軍歩兵が上陸を始めた段階で、オホーツク方面がフリーになってしまう。北海道で負けた上、オホーツク方面を失う、泣きっ面に蜂になる。
極東域では、ロシア海軍歩兵は貴重であって対日戦に投入するには敷居が高い。ロシア側による対日侵攻能力を検討する上で、海軍歩兵は注視すべきである。上陸戦に対応できる海軍歩兵は陸上戦力での筆頭になる。しかし、実際に対日戦に投入できるかどうかを判断する上では、また別個の問題もある。オホーツク以東は太平洋方面に開放されており、米軍は容易に侵攻することができる。海軍歩兵はその備えでもある。海軍歩兵は、極東部では攻勢に使うことは難しいことにも注目すべきである。
…まあ、駒としての海軍歩兵、兵員や戦車・装甲車・大砲に関しては、予備役動員や、ヨーロッパ方面各艦隊から陸路移動という手段もないではない。
しかし、海軍歩兵というシステム、揚陸戦用の装備(米英蘭に比べればおもちゃみたいなものだが)や、その背後にある揚陸艦は如何ともし難いね、ってとこだね。
※ 冷戦期、サハリンに所在した地上軍2ヶ師団が上陸戦機能を持っていると言われていた。これも今から見れば、北海道侵攻用ではなく、オホーツク海内での逆上陸、沿岸防衛等に備えたものだったとも考えられる。
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