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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.06
30
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Category : ミリタリー
 OH-1よりも、OH-6の方が使い勝手が良い。OH-6は明らかにOH-1より有用であり、OH-1によるOH-6更新は失策であった。OH-1は、わざわざ使いにくいヘリを大金はたいて開発し、配備したものと言える。OH-1は戦闘には有利かもしれないが、普段使いはOH-6に劣る。戦時であっても、ヘリに与えられる任務は戦闘だけではない。また、ヘリは平時にも多用される。それを考慮すれば、戦闘に焦点を絞ったOH-1は、OH-6後継としては失敗である。

 確かに、空中性能はOH-1が優れている。速力、機動性、搭載力、生残性はOH-6よりも高い。やる気になればそれなりの武装もできる。OH-6武装型(MD500)よりも、強力な武器を搭載できる上、その能力も生かすことができる。

 しかし、普段使いは不便になる。OH-6は軽輸送、連絡にも使える。だが、OH-1は戦闘だけにしか使えない。偵察能力も、OH-6よりも後退している部分がある。

 OH-6は、軽輸送と連絡にも使える。OH-6は、後部にそのまま荷物が積み込める。ダンボールならダンボールのまま搭載できる。確かに、輸送能力は大きくない。頑張ってもせいぜい200-300kg程度となる。しかし、非常用の糧食、医薬品、小火器弾薬であれば、相当量にあたる。連絡にも向いている。助手席に1人、後ろに2人まで積める。車に便乗するのと大差はない。楽な姿勢ではないかもしれないが、救難者や怪我人、病人も積める。

 OH-1は、軽輸送にも連絡にも使いにくい。まず荷物は積む場所がない。パイロン部に荷物入れをくっつけるのが関の山である。それでは大して積めない上、わざわざ荷姿を買えなければならない。連絡にも使い難い。タンデム配置で、コクピットは高い位置にある。基本的に搭乗員だけが乗りこむもので、便乗はできない。

 本来任務である偵察にしても、OH-1が優れているわけではない。OH-1は、敵中での偵察に優れるかもしれないが、それだけである。OH-6は、必要に応じて他職種要員も乗せて偵察できた。偵察とは、敵を偵察するだけではない。地形や交通網、味方の状況把握も偵察に含まれる。こういった面では、便乗容易であるOH-6が優れている。また、視界が広い点、OH-1よりも偵察に向いている。電子光学的な偵察能力にも、OH-6は対応していた。陸のOH-6は暗視装置や画像転送装置まで搭載している。

 手軽に使える点で、OH-6は絶対的な優位にある。基本的な部分はそもそも壊れない。機械的に単純で、壊れる部分がないため、ほとんど列線整備で済んでしまう。これは海自機の話であるが、陸自機でも変わるものではない。エンジンを触るにしても、卵の殻を外せばそこにエンジンがあり、立ったままで整備できる。燃料搭載にも手間はかからない。平時有事を問わず、一日での飛行数を稼ぐことができる。

 OH-1は、OH-6後継としては失敗であった。何でも屋として使われるヘリとして、OH-1はOH-6に劣る。OH-1は、戦闘偵察ヘリとしてはそれなりに優れた機体かもしれない。しかし、汎用偵察ヘリとして活躍していたOH-6の役割を代替することはできない。OH-1によるOH-6更新は打ち切られたが、OH-1に更新されないで良かったと言える。



 でもま、戦闘偵察ヘリとしてもOH-1開発は規模の面で疑問だよね。対戦車ヘリとペアを組む分だけなら、大した数でもない。対戦車ヘリに対して3:2で配備しても、40機程度と、今の30機程度+で済むわけだ。それくらいなら、わざわざ開発しないでも良かったんじゃないかな。開発当時なら、割高でも開発費がかからないコマンチ買うとかいうオプションもあったんじゃないか。
 まあ、コマンチでなくとも、AH-1の偵察型作れば済んだ話かもね。AH-1との共同なら、対戦車ヘリを増勢して、武装取っ払って軽くした偵察型を使えばよかったんじゃないの。AH-1はUH-1と同じで、ローターに機体がぶら下がっているから機動力には難があるとか言うけどねえ。
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2012.06
29
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13:00
Category : 有職故実
 気仙沼にある興福寺からは、鐘が出征している。戦争中、金属資源回収で興福寺梵鐘は供出され、戦後も戻ることはなかった。
 その梵鐘が、ボツワナで発見された。平成5年の夏に、東京国立博物館に梵鐘のレファレンスが来る。『ボツワナのカトリック教会に梵鐘が吊るされているが、どういう素性のものか』という内容。
 銘から、寛政元年に鋳られた興福寺の梵鐘と判明。鐘は、平成6年に半世紀ぶりに帰国したという。
 これは、積読いた『国立博物館ニュース縮刷版』平成6年12月号にあった『梵鐘ボツワナより帰国す』で見つけた話。
 梵鐘は、結局は資源化されずに終戦を迎えた。その後、イギリスに持ち去られたものらしい
 梵鐘は1976年まで、北アイルランドの修道院にあり、その後に鐘がないボツワナの教会に引き取られたとのこと。
 ボツワナに梵鐘があることを見つけたイギリス生まれのライターにより、東博に問い合わせがなされたというもの。
 その梵鐘は、関係者の円満な合意によって気仙沼に帰って来たということだ。

2007年01月16日 MIXI日記より
2012.06
27
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Category : 有職故実
 ゴルフ場や射撃場の提供は、国民感情にそぐわないねえ。

 駐留軍提供施設、まあ米軍基地のことだが、航空基地にはゴルフ場まで存在しているのはご承知の通り。ゴルフ場は北から三沢、横田、厚木、岩国、嘉手納にある。

 まあ、土地が余っているところなら、まだいい。三沢とか、土地が余っているところで、弾庫の保安用地を兼ねてなら、まだ判る。

 しかし、土地が貴重なところで、ゴルフ場を作ることは理解できない。厚木や嘉手納のような都市化が進んだところで、米軍がゴルフ場を維持している。これは、日本人には面白くない。貴重な国有地を粗放的に、しかも娯楽に使う。維持費も日本側が負担している。米軍に基地を提供することへの賛否、騒音問題への温度は色々ある。しかし、基地に賛成する立場であっても、ゴルフ場まで提供しても良いとは思わない。

 厚木には娯楽用の射撃場まである。飛行場地区内にも関わらず、散弾をつかうスキート射撃場がある。ターニングしているP-3Cがいる、その方向にパカスカ撃っている。散弾はそれほど飛ばないため、安全には問題ないのだろうが、日本であれば航空保安上文句を言われる距離にある。人家や道路にも近い。民間射場とは違い、苦情を受け付けないので、何かの拍子で軽い事故でも起きれば、また基地問題に障ることになる。


大きな地図で見る

 人口密集地にゴルフ場やら射撃場を作るのは、日本の国民感情を害する。ゴルフ場を提供し、その維持も行う点は、30年前から問題にされている。問題が燃え上がる前に、処分させたほうがいいのではないかね。

 まあ、米軍は権利維持に汲々するので、すぐに解決する問題ではない。旧施設庁施設部あたりが何を言っても聞かない。シビルの米軍民生部長は、この手の米軍側権利、まあ権益を守ることが職務なので、絶対にウンとは言わない。その手の話をすると、本当に顔を真っ赤にして反論してくる。米軍指揮官も、権利上の譲歩をすると負け犬扱いされる。官対官ではどうしようもない。

 使っていない通信敷地と同じように、政治で要求するしかないのだろうねえ。
2012.06
25
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Category : 未分類
 建築で鋼管足場を組むのに使う鉄パイプなんだが。アレ、どうやって作っているのかね。溶接痕は見当たらないが、コスト的に無継目鋼管じゃないだろ。名だたる大企業が作るものでもなさそうだし、簡単な設備で作れるものではないのかなと。

 思いつく限りで簡単な方法だと、ベルマウス引き抜きかな。幅を円周に合わせた長細い鋼材を熱してベルマウスに入れて、反対からペンチで抜き出す方法。板だった鋼材が、ベルマウスの内側にあわせて変形し、一気にCの字からO字になる仕組みなんだがね。19世紀にガス管を作る方法で使われた方法。継目は組織的に融着していないので強度は足りないが、単管なら大丈夫だろ。

 高級にするなら、ベルマウスを2セットのローラに変える。リボン状になった鋼材を、ローラ寸前においた加熱炉で赤熱させる、最初のローラで鋼材の左右から、軽く耳をたわめてUの字に変形させて、次のローラで上下から抑えこんで真円にする。適当に引っ張って、冷えたあたりでノコギリで切る。しかし、足場に使うパイプを作る割には、設備が高く付くような気がする。

 あるいは、鋳造かね。鋼管と言いながらもダグタイル鋳鉄でOKならば相当安く作れる。もともと鋼管としての強度も高くないわけだ。同じ強度が出ればダグタイルでもいいだろう。

 なんにしても、それ以外の方法ではコスト的に合わないだろう。

 プレスで作るUOE法というものがある。冷間で、常温の鋼材をプレスする方法だが、比較的に肉も厚いので、付きあわせ面がキレイに合わさるのかなと言う気もする。まずUの字にプレスして、次にOの字にプレスして、溶接してから最後に拡張(EXPAND)する方法。冷間なので、加熱にかかる費用は安いのだろうが、突き合わせ面に溶接痕がないので使ってないだろう。そりゃ、磨いてメッキすれば消えるけど、足場用の交換にそんな加工をするはずもない。

 スパイラル法も安くない。クレラップやトイレットペーパーの芯を作るのと同じやり方だが、細いパイプには向かない。紙芯とは違って、鋼材は溶接しないといけないが、溶接長さが長くなって仕方がない。足場に使える方法でもない。

 無継目鋼管を作る方法だと、コストは天井知らずになる。砲身を作るみたいな切削加工、注射針を作るプレス法、石油用シームレスパイプを作るマンネスマン方式は高くて、それでなければならない方法でなければ使えたものではない。

 まあ、足場鋼管風情なので、小資本が作っているならベルマウス法、実は結構大きい工場で、一国分を大量生産するならローラによる熱間加工で作っているんじゃないかな。
2012.06
23
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Category : ミリタリー
 中国海軍がロシア海軍と組んでも、日米海軍力への劣勢は変わらない。ロシア太平洋艦隊は弱体である。中国海軍と合同したところで、日米海軍への劣勢を覆すことはできない。

 4月末に中露は共同演習を行った。梁天仞さんは、先に取り上げた「中国打造『均衡艦隊』」(※1)で「中俄軍演抗美打日意味濃」と述べている。中露演習は米国に対抗し、日本に打撃を与えるものとしている。

 しかし、ロシア海軍力は何かの寄与になるのか。東アジアでロシアはスーパーパワーではない。太平洋艦隊が持つ海軍力も見るべきもない。ロシア艦隊が合同したところで、中国海軍は軍事的に「抗美打日」できるようになるわけではない。

 東アジアでは日米同盟が絶対的な海軍力優位を持っている。東アジアでの海軍力1位は米国、2位は日本である。急成長している中国も3位、量的に離れるが、潜水艦・水上艦を揃えた韓国が4位にある。高く評価しても、ロシアは台湾と同率5位になる。水上艦の質・量で考えれば台湾海軍はロシア太平洋艦隊よりも上であるが、それは置こう。そして、ダントツ1位の米国と、中国に追われているとはいえ、2位の日本が同盟を組んでいる。3位と5位が組んでどうにかなる相手ではない。

 ロシア太平洋艦隊は、抜け殻である。『ミリタリー・バランス』によれば冷戦最末期、1986年には潜水艦109隻、フリゲート以上52隻(※2)を保有していた。外洋行動可能な大型水上艦として空母2隻、巡洋艦15隻、駆逐艦14隻(※2)が含まれている。しかし、2012年には潜水艦21隻、フリゲート以上21隻(※3)にすぎない。水上艦中、外洋で活動可能戦力は、巡洋艦1隻、駆逐艦8隻(※3)。『ジェーン海軍年鑑』により具体的に抜き出すと、スラーバ級1隻、ウダロイ級4隻、ソブレメンヌイ級3隻(※4)である。(駆逐艦1隻分の誤差がある)

 大型水上艦だけでみれば、ロシア太平洋艦隊は台湾海軍に劣っている。台湾はキッド級4隻、ペリー級8隻を主力とし、少々格落ちするもののノックス級8隻、ラファイエット級6隻も保有している。ロシア太平洋艦隊、その水上艦戦力は、量も質も共に台湾海軍以下にすぎない。

 中国艦隊にロシア太平洋艦隊が合同しても、大した戦力増加にはならない。中国海軍は強力である。しかし、ロシア太平洋艦隊は抜け殻のようなものだ。政治的効果はともかく、軍事的には大勢に影響を及ぼすものではない。まず、栗田艦隊に志摩艦隊が合流するかどうか。あるいは、日本海軍に満州海軍、あるいは仏印海軍が合同するかどうか程度の意味合いしかない。

 そもそも、有事にロシア太平洋艦隊が合流できるかも怪しい。ロシア太平洋艦隊は日本海最奥部にいる。東シナ海に出るには対馬海峡を通らなければならない。日米海空戦力を前に通峡は難しい。太平洋に出るにしても、津軽・宗谷海峡で日本に補足される。宗谷経由で首尾よく太平洋に出られたとしても、日米海洋哨戒力から逃げ切ることは容易ではない。


※1 梁天仞「中国打造『均衡艦隊』」『鏡報』(鏡報文化,2012.6)pp.6-9.
※2 Military balance 1986-1987 (London:IISS,1986)
※3 Military balance 2012 (London:IISS,2012)
※4 Jane's Fighting Ships 2011/2012 (London:Jane's Information Group,2011)
2012.06
22
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Category : 有職故実
 江蘇では羊を飼っている。江蘇省は中国、上海や南京の後背地で比較的高温多湿な土地柄。通常、羊は冷涼な気候で放し飼いにするものだが、高湿高温の環境で、屋内で過密状況で飼育している。飼育密度は豚どころではない。1~2平米だかで6頭とか飼うらしい。

 基本的に、子羊の革を狙った飼育になっている。大きく育てる必要はない。餌代も馬鹿にならないので、母羊以外は、種羊1頭を残してドナドナされる。種羊も交配のあとはドナドナ。

 ここで注目すべきは、種羊に母羊の子供を使う点にある。そして、母羊は5世代程度利用されるということ。つまり、第1世代は兄妹羊で交配され、第二世代は母-息子羊で交配、第三世代は母-孫羊、第3世代は母-ひ孫羊、第4世代は母-玄孫羊…となる。

 遺伝的にも、第一世代では番の遺伝子は期待値だが1/2が共通、第二世代では3/4が共通、第三世代では7/8が共通になる。実際には、交叉その他も起きるので、ここらへんで計算する意味はなくなる。第四世代で17/16、第5世代で31/32が同じになる。結果、生まれる子羊は63/64(98.5%)は同じ遺伝子になる。オスメスだから、XXとXYは違う。羊のXXとXYに載っている遺伝子セット次第では63/64まで小さくはならんかもしれないけど。

 第五世代で母羊をリセットすると、遺伝情報で98.5%(程度は)同じ遺伝子をもつ(だろう)兄妹羊の交配になる。つぎの母羊がリセットされたときには、99.98%が同じ遺伝子(だろう)兄妹が出てくる。これを100年(母羊20頭分)は続けている。多分、実験室のショウジョウバエなみに揃った羊がごろごろしているのだろう。

 まあ、実際には、中途で種付け失敗とかあるだろうから、ここまでうまくいかないかもしれない。でも、相当均質な羊が生まれているのだろうね。

 しかし、それで近親交配の害を聞かない。近親交配で奇形等が発生するという話は、眉唾なのだろう。もちろん、ハプスブルグ家的に都合の悪い体質が固定されるとかもあるだろう。病気なんかで一気に全滅する可能性もある。まあ、過密飼育だから遺伝以外でもアブナイけどね。
2012.06
20
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13:00
Category : ミリタリー
 新戦車なんか放っといて、その金で水上艦や艦載ヘリ買ったほうがいいねえ。

 当座の目標は、中国とのゲームに負けないことにある。ゲームは海軍力建設で行われている。そこに寄与しない陸上戦力整備は後回しでよい。

 日中軍事力の競争は、あくまでもゲームである。中国と日本は、友好関係が維持されている。かつてのソ連のように、冷戦関係にあるわけでもない。今日明日に戦争になる、中国が攻めてくるということはない。

 「中国による脅威」といっても、具体的な戦争や侵攻を意味するものではない。脅威の実態は、日本海空戦力が持っていた絶対的優位が崩れるかもしれないという予感にある。
 強いて言えば、絶対的であった海軍力アドバンテージが危うくなる点が「中国による脅威」である。中国が強大な陸軍を持とうが、新しい戦車を買おうが、どうでも良い。中国が大陸にとどまる限り、中国軍は問題ではない。日本人は海空戦力によるアドバンテージが維持されていれば、中国軍事力を歯牙にもかけない。日本人が気にするのは、海軍力で東アジアで優位に立てるかどうかにある。

 海軍力によるアドバンテージが維持されれば、日本人は脅威を感じない。歴史的に見ても日清戦争以降、日本は中国を脅威としていない。それまで日本は強力な中国海軍力に脅威を感じていた。しかし、戦後に海軍力によるアドバンテージが固定化されると中国は脅威ではなくなった。その後、民国、新中国と体制が変化しても、中国に対する海軍力アドバンテージは維持された。日本人は中国を脅威とみなす必要は感じなかった。

 まず最優先すべきは、海軍力強化になる。防衛力整備での焦点は、対中国である。「中国による脅威」、つまり中国海軍力拡張への対抗がテーマである。「中国による脅威」への対応は、まずは海軍力整備・更新になる。水上艦・潜水艦・海上哨戒機整備がメインであり、それを補助する航空戦力、早期警戒機や支援戦闘機が重要になる。

 対中国を意識する以上、陸上戦力更新・増強は不要不急である。日本本土でしか使えないような重装備、例えば新戦車や自走砲整備は、中国とのゲームには何も寄与しない。むしろ、悪化する財政下では海空予算圧迫に繋がる。

 陸自重装備、特に新戦車整備や新自走砲開発は、現情勢では何の利益も生まない。着上陸の危機はない。現代戦に対応できる戦車も野砲も、すでに揃っている。それを無理やり新しくするような予算配分は、死に金である。無駄金があるのなら、海軍力整備に注ぎこむなり、防衛費を削減するなりしたほうが有意義である。



 ま、律儀に防衛費を陸海空3等分するのは意味もない話。優先順位を考えれば、陸削って海に充当しなければならない。だが、役所のやることだから、方針変更は緩慢がすぎる。着上陸でしか使えない重装備更新なんか、無理に最新鋭に更新する必要もない。だいたい、今でも90式やら99式やら、充分に新鋭なわけだ。そんな無駄遣いがあれば、海空戦力に金突っ込めという話だね。

 戦車更新をやめれば哨戒ヘリが2機も買える。10式13両130億円もあれば、SH-60Kは2機も買える。哨戒ヘリは有事にも平時にも便利だ。中国向けで有事っぽい使い方なら、潜水艦による領海侵犯への対処といった実働任務がある。中国とのゲームとしての中国艦隊への監視にもつかえる。これらは着上陸と戦車とは違って、すぐそこにある問題だよねえ。平時任務でも、哨戒ヘリは海洋監視能力を活かした領域警備から、救難、軽輸送、災害派遣とよほど有用に使える。新戦車の100倍は役に立つだろうよ。


2012.06
18
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13:00
Category : 有職故実
 右舷・左舷はミギゲン・ヒダリゲンと読むことは広く知られている。もともとは、海軍での位相語であったかもしれない。だが、世間に知られるようになり、一般でもミギ・ヒダリが正しいとなりつつある。

 しかし、正式名称がウゲン・サゲンとされているものもある。航空関係機関にいた時、当直士官をさんざんやらされたのだが。ある日、航空用部品について故障速報があった。その部品は、たしかYS-11客室にくっ付ける過給器※か、SH-60系ボムラック※※のどっちかだった。翌日、日例会報で当直士官報告したとき、部品名「右舷◯◯」を「ミギゲン◯◯」と読んだ。会報での一番最後に指揮官等発言がある。そこで「あの部品名は『ウゲン◯◯』と読む」とのこと。

 これは、カタカナで定められた部品名称がウゲン・サゲンであるため。補給上、部品には統一名称が付けられる。電算処理上、半角カタカナで名称が振られているが、そこにウゲン・サゲンと明記されている。だからウゲン・サゲンと読むとのこと。

 おそらく陸海空共通名称にした結果だろう。防衛省横断で部品請求番号と名称を付した時、その読みを正書法的にウゲン・サゲンと振った。湯桶読みはあくまで海軍での位相語なので、防衛省的に正規名称にはならない。その名残が部品名なのだろう。



※ 断面形状から通称は「瓢箪」
※※ Bomb Rackだが、ボムラックではなくボンブラックと読む。紙屋さんがWrapを「ワップ」と読むようなもの。最初にボンブラックと聞いて、塗料の色、理由はないがケシズミ色かと思った。普段は、ミギ・ヒダリではなく、レフト・ハンド、ライト・ハンドと呼ぶ
2012.06
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14:39
Category : ミリタリー
 中国が装備しているフランカーやキロ級、ソブレメンヌイ級は、果たして最新装備なのだろうか?

 中国脅威論での論拠として、中国軍が最新装備導入を導入している点が挙げられる。具体的には、ロシアから導入した戦闘機Su-27フランカーと、そのファミリーがある。また水上艦ではソブレメンヌイ級駆逐艦であり、潜水艦ではキロ級である。

 しかし、これらは最新装備とは言えない。いずれも80年代に登場した装備であるが、西側装備と比較すれば70年代的装備である。キロ級潜水艦は80年代初頭に、フランカーとソブレメンヌイは80年代後半に登場している。しかし、装備としては、70年代西側装備と同水準である。

 フランカーは70年代に登場したF-15と同等程度にある。登場当時から現在に至るまで、まずそのように評価されている。両者には、項目ごとに多少の優劣があるが、それは些細な差異に過ぎない。少なくとも、性能面でF-15を超越する存在ではない。

 ソブレメンヌイ級も、70年代に登場した西側DDGと同じような水準にある。兵装的には、ターター・システムを搭載した蒸気艦である「たちかぜ」級DDGにヘリ格納庫を取り付けたようなものだ。DDGでは、キモはシステムにあるが、その優劣はわからない。しかし、ミサイル誘導能力は、70年代に建造された米防空艦を大きく超えるものではないだろう。カリフォルニア級CGN、ヴァージニア級CGN、キッド級DDGはランチャーを前後に2基持つ。ソブレメンヌイ級と同じダブル・エンダーである。これら米艦は、70年代に同時に4目標と交戦できた。おそらく、ソブレメンヌイも似たようなものだろう。いずれにせよ、ソブレメンヌイは80年代に登場した、イージス・システム搭載防空艦よりも能力は低い。

 キロ級も、西側潜水艦を凌駕するものではない。キロ級は、それまでのソ連/ロシア通常潜水艦に比較すれば、大きく進歩している。画期的な存在である。だが、当時から西側潜水艦を凌駕したものとする評価はない。あくまでも、ソ連技術により80年代初頭に建造が始まった潜水艦である。70年代西側潜水艦を超えるものではない。海自潜水艦の場合には、90年代以降、潜水艦がもう一段階ほど静粛性を進歩させていると言われている。キロ級後期型が、同様に静粛性を進歩させているかどうかは不明である。海自同様に静粛性が進歩しているかもしれない。しかし、キロ級が西側潜水艦を圧するほどの静粛性を持っているとする話もない。

 フランカー、ソブレメンヌイ級、キロ級は、次世代型装備ではない。ロシア系装備として最新鋭であるにすぎない。いずれも80年代に登場するが、後継装備もなく今まで生産されている。登場以降に行われた改良にしても、ソ連崩壊による影響を受けている。一時期には放置された状態にあり、その間には改良等も等閑である。西側からすれば、保有しており、そろそろ更新を考えている装備と同水準である。フランカー以下は、旧式化しつつある装備になるのである。

 中国軍が導入している新鋭装備は、すでに旧世代になりつつある。ベースは、西側での70年代装備相当に過ぎない。日米が持つ海空戦力から見た場合、旧式である。ソブレメンヌイ級は、イージス以下を主力とし、システム化が進んだ日米水上艦に比べ、明確に旧式である。潜水艦は不明な点が多いが、在来潜水艦としては日本潜水艦は新世代艦を導入している。キロ級は旧世代となっている。戦闘機としてのフランカーも、米国が導入したF-22よりも旧世代であり、日米が導入しつつあるF-35に比較しても旧世代にある。F-15との比較にしても、AWACS以下の支援を受けられる日米と比較すれば不利にある。中国AWACSは未だに開発・実験中であり、ノウハウも少ない。

 中国軍装備が日米装備を超えたとする見解は誤りである。まず、技術的にも遅れている。その上、練度やノウハウも加味すれば、さらに下方修正する必要がある。ロシア系装備は、数も限定されている。それまでの中国軍のように数を揃えることもできていない。

 フランカーやキロ級、ソブレメンヌイ級に代表される中国軍近代化は、西側最新装備に比するものではない。確かに、それまでの中国軍装備からすれば長足に進歩している。しかし、日米海空戦力を超える装備ではない。西側から見れば、70年代技術である。
2012.06
13
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13:00
Category : ミリタリー
 沖縄から海兵隊をどかせばいいんじゃないのかな。そうすれば、沖縄問題も相当軟化する。まあ、日本からどかせば、更に捗ると思うんだけどね。

 沖縄から海兵隊をどかして困ることはない。もともと、沖縄に海兵隊を置かなければならない理由もない。むしろどかすことにより、基地問題は軟化し、日米同盟も進捗する。
 日本にとって、沖縄に海兵隊を置かなければならない理由はない。海兵隊駐留は、日本にとって必須ではない。中国に対抗するため、朝鮮半島混乱を予防するために必要なのは、米国・米軍プレゼンスであり、別に海兵隊でなければならないこともない。これは中国の目の前、沖縄に置くにしても、すこし後方に下がって本土に置くにしても同じである。
 対して、海兵隊を置くデメリットは大きい。海兵隊駐留は、深化しつつある日米同盟の足を引張っている。在日米軍に関する問題は、半分は海兵隊問題である。ここ20-30年を見ても、厚木での騒音、岩国での騒音(これも海兵隊か)を除けば、悉く海兵隊駐留に関する問題である。しかも、海兵隊によるトラブルは、騒音問題以上に政治化しやすい。

 日本にとって必要なコマは、米国・米軍のプレゼンスであり、それが海兵隊である必要はない。海空軍でも差し支えない。しかも、沖縄に置く必要もない。本土、横須賀や佐世保、三沢、横田でも構わない。

 そもそも、日本にとって駐留軍が持つ今日的価値は、米国を東アジアに引きこむことだけである。日本は、東アジアでは強力なプレーヤーである。だが、単独で中国を圧倒することはできない。しかし、米国を引き込み、日米で協調すれば、政治でも経済でも軍事でも、中国を圧倒することができる。

 沖縄に海兵隊を置く理由として、台湾問題は問題にならない。リアリズムを標榜する人々は、台湾問題を挙げ、海兵隊を置く必要性を論じる。それらしく聞こえるが、そのために沖縄に負担を強いるほどの必要性でもない。

 まず、日本は台湾問題にコミットする立場ではない。日本は、中国が主張する「一つの中国」について「中国の立場を十分に理解し尊重する」立場にある。もちろん両岸問題が平穏であることを望んでいる。中国が、台湾での民意に背いた強硬な台湾回収を行おうとすればコミットするかもしれない。しかし、仮に中国による台湾回収が平和的に行われるのであれば、文句のつけようもない。日本は、現状では両岸関係にコミットするつもりもない。

 台湾問題のために沖縄を差し出す義理はない。米国が台湾問題にコミットするのは米国の勝手である。日本は邪魔はしないものの、積極的に協力する立場ではない。そのために沖縄に過度な負担を課す理由はない。台湾支援のための軍事力が必要というのであれば、直接、台湾を支援すればよい。軍事顧問団を置くのは無理かもしれない。しかし、今以上に防衛的な武器を供与する方法もあるだろう。海兵隊が必須というなら、洋上待機でもさせればいいだろう。もちろん日本は邪魔しないが、積極的に協力する立場にはない。

 沖縄から海兵隊をどかすことは、メリットが大きく、デメリットは少ない。メリットとして、沖縄問題軟化により、日米同盟は進捗する。「中国向けの駒が減る」問題は、別軍種で補ってもらえばよい。減らした分、海空軍力を派遣してもらえばよい。

 沖縄に米海兵隊がいる理由は、惰性である。沖縄戦、朝鮮戦争、ベトナム戦争で海兵隊が居座っただけの話である。かつては、日本軍国主義対策、日本が米国から離れないようにする意味合いもあったかもしれない。しかし、平成に入ってからは全く意味もない。20年前にあった「ビンのフタ」発言は、怒りよりも失笑を買うものであった。今となっては、米国にしても、海兵隊がショバを主張しているから程度の意味しかない。

 まあ、海兵隊駐留は、日米問題にも影を落としている。面倒を解決するには、沖縄からどかす、できれば日本からどかすのが一番よい。日米にいる海兵隊提灯持ちが「台湾問題云々」を言ってくれば、強襲揚陸艦1隻を洋上待機させる面倒は見てやると言えばいいんじゃないのかね。
2012.06
11
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13:00
Category : 有職故実
 戦争中、外地部隊向けに砂糖から日本酒を作る方法が提案されたことがある。砂糖が余っていた南方向けの話なのだろう。だが、アジアでは甘薯による製糖がある場所では、米作もある。米があれば日本酒は作れる。まず砂糖があるところ砂糖はあるけど米がない事態はあんまり考えられないのだが。

 昭和19年、朝日新聞に「砂糖から日本酒 南の兵隊さんへ朗報」※ が掲載された。東京農大で教授をされていた住江金之さんの発表を元にした記事であるが、その発表名も時節を反映している。「蔗糖を原料とする第一線用清酒の簡易醸造法の研究」である。

 要は、砂糖に少量の醪を混入して醸造するというもの。1石1斗(200リットル)つくるためには、100斤(60kg)の砂糖と3斤(1.8kg)の酒種、1石(180リットル弱)の水を必要とする。酒種は、麹に日本酒酵母を加えたもの。後方で作り、乾燥させて前線に届ける。

 製造には1週間程度を要する。1日目に水8斗に砂糖40斤、酒種3斤を投入。3日目に水1斗と砂糖20斤を追加。5日目に水1斗と砂糖20斤を追加する。最終的には度数16度以上の酒、1石1斗が完成するというもの。

 しかし、実際にこの方法で醸造されたかは疑問である。

 単にお酒を飲みたい場合であれば、現地酒を手に入れる方が手間がかからない。製糖地域では、廃糖や糖蜜から酒を醸造し、蒸留した酒を作っている。米作地帯があれば、麹あるいはクモノス黴による醸造もある。軍隊で大規模にやることでもない。

 日本を思い出す酒が欲しいのであれば、米100%で作ったほうがよい。砂糖が余っているところでは、米も余っている。わざわざ砂糖ベースで、あるは砂糖混和することもない。日本酒風を評した麹風味砂糖酒よりも、ドブロクの上澄みのほうが日本酒っぽいだろう。戦前日本でもドブロクはご法度だったが、当時の農村では普通に作っている。※※ 軍隊でも、誰がしか技能を持っているものはいる。※※※

 住江さんには申し訳ないが、この方法は実用されなかったのではないかと思う。



※ 「砂糖から日本酒 南の兵隊さんへ朗報」『朝日新聞』(朝日新聞社,1944.4.24)2面。

※※ 旧内務省OB誌『大霞』には、警察を管轄する内務省の役人が農村でドブロクを振舞われた話がある。普通に醸造していた様子である。

※※※ 戦国時代にも、足軽が勝手に酒を作っている。『雑兵物語』には、足軽には3日分以上の米を支給するなとある。大量に支給すると、足軽は勝手に酒にしてしまい、飢えてしまう。3日程度なら食えなくとも我慢できるだろう。というものである。
2012.06
09
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 中国は、正規空母を多数建造するコストについて見通しが立たなくなったのではないか。

 「中国はVTOL空母にシフトする」記事がある。梁天仞さんの「中国打造『均衡艦隊』」が、香港月刊誌『鏡報』6月号※ 掲載であり「伝聞中国海軍近期作出一個重大決定、就是発展中国的直升機航母(特殊航母)」で始まっている。

 梁さんは、中国海軍が将来どのような戦力を中心にするのか、その伝聞情報を紹介している。戦力組成で柱となる装備については、攻撃空母とVTOL空母、原子力潜水艦とAIP動力潜水艦とする内容となっている。

 背景として、予算膨張への対処があるように見える。記事内容では「崑崙山18隻建造を6隻に止め、VTOL空母4隻を建造する」(大意)とされている。そして、正規空母運用を限定的に止める構想も紹介されている。揚陸艦を減らし、正規空母をVTOL空母に変更するもので、従来言論されていた大海軍建設から後退した内容となっている。大海軍建設が中途で変更される例は、戦争終結を除けば、悉く予算上での限界である。

 また、正規空母そのものへの懐疑もあるのではないか。中国正規空母でも相当に高価である。しかし、価格の割に高性能を望むこともできない。そして正規空母をもっても、日米に対抗できる見込みもない。

 中国であっての、正規空母はあまりにも高価である。取得も高くなるが、維持費も高い。

 正規空母は高価になる。大型船体と、高速発揮させるための大出力機関だけで高価である。しかも、エレベータや着艦制動装置、買える国であればカタパルトもつけなければならない。艦載機と整備器材は極め付きに高い。航空機と司令部機能を繋ぐC4ISRもコスト的に無視できない。護衛する艦艇や、対潜ヘリも揃えなければならない。

 その維持費も考慮しなければならない。まず、母艦・航空機燃料代がかかる。特に中国空母にはカタパルトがない。航空作業を行うときには、空母はほぼ全速で走り回る必要がある。航空機も、高頻度で飛ばさないと離着艦技能を維持できない。乗員や整備員給与ひとつにしても無視できない。なにせ人数が必要になる。大型水上艦と比較しても5倍から10倍が乗り込んでいる。さらに護衛艦艇ほかの維持費、経費も必要になる。

 そして中国空母では、高性能は期待できない。まず、まともな艦載機もない。そもそもノウハウもない。

 中国空母艦載機は、いまのところロシア製が主体である。しかし、ロシアにはまともな艦載機運用経験もノウハウもない。ロシアは20年程度、ほそぼそと空母を運用している。それなりに発着艦をしているが、実用には程遠い状況である。研究段階が継続している状況にある。南米空母と同じで、威信財として空母を維持しているに過ぎない。

 ロシア製空母装備は、低性能である。艦載機は陸上機改修であり、艦載機として開発されているわけではない。しかも、カタパルトもない。戦闘機・攻撃機だけではない。早期警戒機はヘリ運用である。その能力も高いとは考えられない。最新AEWヘリでも、E-2C初期型程度の能力(「限定的能力しかもたない中国早期警戒ヘリ」)しかない。空中給油機もない。

 そもそも、中国が手本にするロシアにはノウハウが欠けている。ロシア海軍は、機動部隊どころか、海軍作戦そのものの経験も少ない。沿岸海軍、潜水艦海軍であり、ノウハウに欠けている。中国海軍も似たような段階に留まっている。

 高性能を期待できない中国空母を、日米海軍力に対抗できるか疑問である。中国正規空母は、完成しても米空母よりも格下である。能力的に格下である上、数でも劣勢である。米艦隊と協調行動をとる日本海軍力も馬鹿にはできない。中国から見れば、日本はすでにヘリ空母を2隻装備しており、大型化したものを1隻建造中であり、別に1隻計画している。中国海軍が正規空母を装備したとしても、日米は圧倒できない。邀撃的に運用するにしても、数を頼んで押しつぶされる可能性も高い。

 もちろん、中国は正規空母は建造する。海軍力に蹂躙された中国は、その経験から海軍力を重視する。中国近現代史は、海軍力に蹂躙された歴史である。清朝は英海軍により侵略を受けて躓き、日本海軍力に止めを刺された。民国は海軍力に超越した日本により、長江デルタを侵略され、政経重心である上海から南京までを一気に占領された。また沿岸封鎖を受け、経済を破壊されている。新中国も例外ではない。50年代以降、中国沿岸部は米海軍力により圧迫されている。新中国にとって、国内問題であるはずの台湾問題でも、米海軍力による威嚇を受けている。海峡ミサイル危機はつい最近のことである。特に、海峡ミサイル危機での屈辱は、正規空母建造を決定付ける契機となった。

 しかし、正規空母整備は威信財と割りきったと見ることもできる。VTOL空母建造と運用構想として、梁さんは「正規空母により制空権を掌握し、攻撃はVTOL空母や水上艦に任せれば良いという話」と紹介している。マリアナ沖海戦での日本艦隊を彷彿させる構想であるが、そうそう上手くいかないだろうとは中国人も考えているだろう。大海軍建造は後退させるが、国民感情から正規空母は作らないわけにもいかない(「中国空母『空母を建造しないと死んでも死に切れねぇヨ』」)といったところだろう。



 ただねえ、まあ、中露については報道一つでどうと判断できるものでもない。「◯◯でこういっていた」というだけで信じこむのは危ういでしょう。微分的な変動であって、それで「将来こうなる」と断じては、全体を見失うことに繋がる。「中国空母はこうなります」とか「その話はデマだ」とか、言えるようなものでもありませんね。「こういう話もありますよ」程度にとどめておくのがよろしいかと。

※ 梁天仞「中国打造『均衡艦隊』」『鏡報』(鏡報文化,2012.6)pp.6-9.
2012.06
06
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 地対艦ミサイルも新型を作る必要はない。陸自は地対艦ミサイル(SSM)をシステムごと入れ替えようとしている。しかし、新旧装備に大差はない。無駄としか言えない。

 もちろん、対艦ミサイルは戦車よりも役に立つ。対上陸戦では、敵を揚げて叩くよりも、揚がる前に沈める方が手間がかからない。戦争末期、本土決戦構想でも、陸上決戦というより、半ばは近海決戦であった。日本陸軍であっても、主力は事実上、特別攻撃隊を主要した対艦艇、対船舶攻撃であった。対上陸戦以外にも使えないこともない点も、戦車よりも役立つ点である。

 しかし、現況でシステムごと新型SSMを作る必要性は見当たらない。日本本土に敵が上陸する脅威もない。念のため、用意しておくのであれば既存の88式SSMで充分である。性能的には、今の88式SSMに不足はない。12式SSMに変わっても、ミサイル本体は大して性能向上するわけではない。

 まず、着上陸の脅威はない。極東ロシアは日本に侵攻する余力はない。中国も、日本本土に侵攻する力はない。確かに中国は軍隊を近代化している。海軍力を増強しているが、日米同盟どころか、日本海空戦力を排除できる力は獲得できそうにない。いずれにせよ政治的緊張が高く、極東ソ連が最盛期であった80年代前半とは異なる。着上陸の脅威は無視してよい水準である。

 対艦ミサイルの性能を見ても、88式に不足はない。とりあえず中露艦艇を目標としても、88式SSMでも性能的に不足はないだろう。中露は対艦ミサイル防御を軽視しているとはいえないが、飽和攻撃への対処を目指した日米ほど重視しているわけでもない。日米はイージスのような専門艦を整備し、それ以外の艦艇にも80年代からシステム化を進めている。艦載ヘリも大型高級なヘリを導入し、早期警戒能力を付与している。投入した努力量からして、中露の対艦ミサイル防御能力は、高くても欧州海軍同等程度で、たいしたものではない。

 逆に、88式SSMで対抗できない場合には、12式SSMでも歯が立たない。12式は、公表されている限りは、88式と同じ亜音速SSMである。ある程度はステルス性も向上しているかもしれないが、敵防空網を突破する上で88式SSMと差はない。両者は同サイズであるため、弾頭も同程度と考えられ、破壊力に優れるわけでもない。88式では倒せない相手が、12式になって倒せるようになるわけではない。

 長射程化した点は性能向上かもしれない。しかし、長射程化させるにしても、システムごと入れ替える必要もない。ミサイル弾体だけで更新し、中間誘導機構を追加すれば済んでしまう。

 その、長射程化に実用性があるかも怪しい。射程延伸は悪いことではないが、その性能を生かせるかどうかは別である。88式SSMの射程は150㎞+、おそらく100nm程度であるが、内陸から沿岸域を叩くには充分である。日本の国土は狭い、それ以上に下がる地積はない。海岸線に前進して、水平線より先にある艦艇を叩くことを期待しているかもしれない。その場合に、艦艇や航空機による目標情報支援が必要となる。しかし、艦艇や航空機が、敵艦隊にシャドーイングできるような状態であれば、空対艦ミサイルや艦対艦ミサイルで済んでしまう。

 そもそも、88式でもオーバー・スペックである。上陸船団を叩く程度の所要であれば、中古ハープーンSSM程度で充分済んでしまう。抗湛性が気になるのであれば、陣地にこもらせればよい。台湾は山に地下陣地を作り、女性を含むおそらく2線級部隊で雄風を運用させている。おそらく、方位とレーダ開眼位置を指示する方位発射モードで運用している。前に「さおだけ屋SSMはなぜ否定されるのか」で書いたように、軽トラのトリイに積んで発射しても構わない。対艦ミサイルは発射時に大した設定は要しない。目視発射なり、方位発射なり、緯度経度指定程度であれば容易にできる。

 12式SSMは、必要な装備ではない。まず、着上陸の脅威はない。性能的に88式SSMと大差はない。システムも入れ替える必要はない。長射程化での利益もない。趣味的な技術開発にすぎない。12式SSMを大金はたいて開発し、性能も充分な88式SSMと交代させることは、防衛費の無駄使いである。

 もちろん、地対艦ミサイルは南西諸島に貼る政治的なコマとして、陸自戦力では最も適している。艦隊からみれば、小銃持った歩兵や戦車はハエのようなものだ。警戒する必要はなにもない。それに較べれば、地対艦ミサイルはスズメバチである。刺されたら厄介程度には意識される。地対艦ミサイルは、中国海軍力を掣肘できるコマとして、眼の上のたんこぶ程度にはなる。しかし、それは新型でなければならないわけでもない。別に12式SSMでなくとも、88式SSMでも、余剰ハープーンでも構わない。
2012.06
04
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 黒塗公用車は多過ぎないかね。特に防衛本省。儀礼広場の下は大規模駐車場になっている。1列20台分程度が、まあ8列ある。そのほとんどが2段式駐車場。3ナンバー、5ナンバーの黒塗が、無慮300台はあることになる。アレ、必要なのかね。

 まず、平時にもあまり稼働していない。駐車場の車が出払っているのを見たこともない。半分も出ていない。本来目的は業務上利用で、メインは各基地、永田町・霞ヶ関との往復だが、実態として駅への送迎、操縦員の練習もある。実利用率は相当低いだろうね。

 有事にも、あんま使えない。黒塗り乗用車だから、災害時には使えたもんじゃない。有事があったとして、戦場から離れた平穏な東京での連絡を考えても便利とも思えない。各基地・永田町・霞ヶ関との連絡に使うにしても、急ぐなら鉄道のほうが早い。永田町・霞ヶ関なら、一番早いのは自転車、原付、オートバイの類だけどね。

 自衛隊員といっても、役人だからね。自衛官・事務官問わず、本省室長級?には公用車があてがわれる。部長級になると3ナンバーを与えなければならない。他の役所なら、そんな階級はあまりいないが、自衛隊は同待遇の自衛官が一杯いる。同待遇だから公用車よこせになるわけだろう。

 しかしねえ、公用車には運転手がいる。自衛官用公用車の運転手は、下士官兵から適当なのを引っ張って操縦手指定して充てている。これがまた無駄。本人は悪くないのだけれども、仕事が仕事なので四六時中、車を磨いたり車の整備をしたりしている。事務仕事といっても車歴簿やら車両運行票の整理とかね。まず無駄だねえと思うよ。

 防衛本省での公用車なんか、市ヶ谷と四谷駅との循環バスで充分じゃないの。急ぐ人なら、最近見ないがタクシー券なり渡せばいい。自衛官指定職なんて、将以外は公用車はいらないだろ。偉くなるヤツはおおむね駆け足が大好きだから、走らせるなり、自転車でいいんじゃないの。




 予約投稿の日付を間違えたので、今、手動反映させました。月曜午後1時に予約投稿するつもりだったんだけどね。どうも月をまたいでいると間違いやすい。
2012.06
02
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Category : ミリタリー
 「スパローは地対空ミサイルに転用すべきだ」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-121.htmlのコメントで、罵倒とともに「スパローはSAMとして地上発射できない」散々言われたのだけれども。実際には、つい最近までAIM-7を対空ミサイルとして運用していたのよね。

 それが「しらね」と「くらま」。ただし、退役したFRAM「たかつき」級からFCSその他を移植されている。移植は、00年代の中頃の話である。「しらね」型がスパローそのものを使っていたのは2005年位までとなる。これに気づくまでは「『しらね』級が退役するまで言えないな」と思っていたのだけれどもねえ。

 実際のところ、スパローと初期のシー・スパローには差異はない。ロケットモータも同じものだった。その後の発展型でも同世代のスパローとシー・スパローの間にも大差はない。羽根が折りたためるかどうかである。両者に差が生まれるのは、VLS対応以降になる。

 なんにせよ、スパローはそのままSAMになるという話。実際に、スカイガードとかスパローホークSAMの例もあるわけだ。陸用短SAM程度の仕事、野戦でのデポや航空基地程度の、個艦防空レベルであれば、それでいいんじゃないかな。短SAMをミサイルそのものから更新するよりも、余ったスパローやシースパローをミサイル転用した方がエコじゃないの。セミ・アクティブだから、今の赤外線誘導よりもまあ高級で、キチンと狙った目標に向かっていく。新型のアクティブ・レーダ・ホーミングなんかだと、いくら掛かるのだろうかねえ。受け持ちは比較的狭い範囲、目視で見える範囲を担当するのに、1セット50億円は高いんじゃないの。

 まあ、新しい短SAM、「短距離」というのは予算要求でつけた名前で、師団とか旅団全体をカバーできるのかもしれんけど。そうだとすれば、中SAMと二本立てにするのはどうかって話だね。
2012.06
02
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12:59
Category : アニメ評
 神保町にある高岡書店はマンガを専門にした本屋である。現今のヲの字は、なんとなく秋葉に行くのだろうが、昔に何となしに行くのは高岡書店だった。どうということもないのだが、高岡では昔からマンガをフライング販売しており、いまでもやっている。ちなみに、雑誌は昔はどこでもやっていたが、今では販売日前に並べているのは十字屋だけになっている。

 結構、東京市内には出ているものだ。週末帰りしなは高岡書店を覗いていく。何を買いたいか極めているわけでもない。とりあえず新刊を眺めて買っていく。今日(6月1日)には渡会けいじさんの『O/A』6巻を発見した。ファンなので当然、購入。

 この歳になっても、好きなマンガを、しかもフライング購入できると嬉しいもの。この『O/A』、物語はラジオ局でアイドルと、声が同じ替玉芸人のストーリーということになっている。まあ、3巻以降は、実際にはラジオで放送することもなく声が同じことは脇にやられている。「ゆたか」と「はるみ」がワイワイやりますねという内容。「伊集院光の深夜放送企画を、キャラクター2人にやらせてみました」みたいな風が強くなったが、非常に面白い作品。

 この6巻には27話「Silent Service」という潜水艦ネタがある。米SSN艦長と副長が深夜ラジオ同時間帯でチャンネル争いする話なのだが。己も軍艦で中波受信ってやっていたことを思い出した。

 練習艦隊実習幹部の時、練習艦通信室でワッチがあるのだが、そこでAM放送聴いていた。アンテナも器材もいいので、ハワイくらいまでは容易に受波できるもの。もちろん通信室で正規のワッチについている海曹はいい顔をしない。

 通信室以外でも私物でBCLラジオを持ち込んでもいた。帰路、ハワイ出港から2日目あたりに、真昼間に旗甲板にでて聴いてみたら、毒蝮三太夫の声が聞こえる。帰ってきたと実感した時だった。居住区で「オイ毒蝮※が聞こえたよ」というと、関東者は喜んだが、それ以外はわからん顔をしていた。

 20年近く前を思い出す「Silent Service」だが、気になるのは、やはり用語。「副艦長」、「艦」の読みを「かん」というあたりが違和感。日本語であれば、「副長」あるいは「先任将校」「先任幹部」かな。「艦」にルビふるなら「ふね」か「ボート」になるのではないか。まず「艦」を「かん」と読むこともない。位相語として「ふね」と読む。※※

 あとは、セイルに窓がついている、ところも気になってしまう。艦橋との相似なので、中に部屋があるという感覚なのだろう。ロシアや中国の潜水艦には窓がついているが、西側にはない。あれはただの鉄塔で、梯子が通っているだけだ。中波で100kwあれば、露頂しないでも聞けるんじゃないの※※※とか、26話最後での予告「水深1000m」とかもね。ソーナーマンが将校で、帽子にカレーライス載っているところもそうか。

 もちろん、用語その他はどうでもいい部分で、物語そのものの面白さは阻害されない。想定読者層には充分物語の中でのリアリティは担保されている。ただ、そういう商売に関わる人には、気になってしまうもの。「Silent Service」では、宇多丸さんがよく言及される「リアリティ・レベル」での問題を感じてしまい、物語への没入感をそがれてしまった己が残念であった。



※ 「東食ミュージックプレゼント」(当時)、「大沢悠里の悠々ワイド」(TBSラジオ)内で10時半から約30分間放送される生中継。そのころは「蝮ちゃん」という呼び掛けはなかったと思う

※※ もちろん「艦」の読みは「かん」しかない。しかし、公文書でも「艦」一文字を「かん」と読ませないために工夫している。「艦」一文字が孤立することはまずない。そう読まないでいいように「艦艇」とか「自艦」とか「殿艦」みたいに書いてある。これは習慣、不文律だろう。

※※※ 中波は海中でも、極浅い深度であれば聞けるらしい。