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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.11
30
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13:00
Category : ミリタリー
 いまある88式SSMの、誘導部を交換すれば済む話ではないのかね。

 前からしている12式SSM、12式地対艦誘導弾なんて必要なのか?という件(これとかこれ)なんだけど。なんでわざわざ高く付くやり方をしているのかと怪訝である。性能向上、垂直発射の必要性も疑問だけど、旧品である88式を捨てるやり方はどうかしている。

 だいたい、SSMなんていまあるミサイルの誘導部を交換すれば同じ性能になる。それで済むのに弾体から発射装置までの新開発をして、スクラップ・アンド・ビルドでの置き換えを狙っている。発射装置の垂直発射にしても、従来のミサイルを使えなくする便法なんじゃないかとも思うよ。iPhoneのコネクタとか、浄水器のカートリッジみたいな商売だなあと。


■ ミサイル誘導部だけ交換すれば済む話
 仮に、新地対艦ミサイルで性能向上が必要※ だとしても、既存ミサイル弾体を改修すれば済む話。GPS誘導を始めとする種々の性能向上にしても、誘導部に限定されている。既存ミサイルの誘導部だけ交換すれば済む話にすぎない。

 毎回「なにをバカな」と言ってくる人もいるけど。これには実例もある。米国ではハプーンで既存弾体に対してアップグレードをしている。

 米国では、既存ハプーンを改造してブロック2にしている。並行して新造品も作っているのだけれども。コスト的にはアップグレード・キットを用いた改造が絶対的に有利になっている。コスト的には、新造の20-30%で済むとしている。

 ブロック2は、12式とほぼ同じようなものでしょう。12式SSMで、目標識別能力が上がったというのは、ブロック2で採用したドップラー・プロセッシングあたりを利用したものじゃないですか。ブロック2では、それを利用して商船や地物にロックオンしない、沿岸Littorial ASuW能力を確保したといっている。具体的にはアルゴリズムとかロジックの話ですけど、中身的には12式SSMで言っている性能向上と同じようなものではないですかね。


■ 旧式ミサイルを共用できないランチャー
 百歩譲って、せめて発射機は共通にできなかったものかね。

 SSM発射機の共用化には何の問題もない。弾体のサイズを同じにして、データを流しこむ接続方式を必要な分つけて置けばいい。実際にはRS-232CとかRS-422の類なので、安いし、簡単に追加できる。実際にも、陸のホークでは改良版も同じ発射機で運用している。

 12式SSMでの性能向上は、ミサイル弾体の中だけで達成した話なわけだ。目標識別能力云々は、ミサイルのレーダとその後のアルゴリズムで達成している。この種の対艦ミサイルは、打ち放しなので、発射母体による影響を受けない。

 実際には、地対空ミサイルのホークでは散々やった話ですよ。改良ホーク以降のアップグレード・タイプも、ランチャーには互換性があった。海の発射機なんか、昔のペッパー・ボックスでも、アスロックもシースパローも、ハプーンもスタンダート対艦ミサイルも全部発射できた。発射方式が違うから、前のタイプのミサイルは搭載も発射もできませんというマヌケな話もないだろう。

 12式SSMでは、発射機から置き換えたのは相当にマヌケだったわけだ。本来必要もない専用発射機を作り、既存の88式SSMの弾体を使用できない垂直発射方式にしたのは、国損以外の何物でもないんじゃないかね。


■ 陳腐化させる商売じゃないの
 陸自のSSM調達って、旧品をわざと陳腐化させて破棄させ、新しいものを買わせる商売かと疑うよ。iPhoneのコネクタとか、浄水器のカートリッジみたいに、前のバージョンではダメですよ、新しいの買いなさいと無駄な買い物を強いるアレに似ている。

 既存の88式SSMと共用性をもたせると、予算規模ほかのパイが小さくなってしまう。それを嫌って互換性を排除したんじゃないかとも疑いたくなる。防衛省の省益は増えるだろうが、国家・国民にはに明らかに損だよ。

 役所だから、組織や事業、予算規模は大きくするモーメントが働いている。エリートさんなんかは、組織が大きくなるように一生懸命に働いている。※※ 命ぜられてもいない、予算節減なんかやるはずもない。誰かが「こうすれば安く出来ますよ」といっても、「折角、完全新式を導入する予算を取ったのに、バカを言うな」と言われるのだろう。



※ そもそも、88式で困ることもないんじゃないの? 中露艦艇にしても、80年代後半の旧ソ連艦艇と技術的に大差もない。特に対艦ミサイル防御能力が上がったわけでもない。量的にもソ連太平洋艦隊を超えたわけでもないのにねえ。

※※ エリートさんの中には、気づいている人もいるが、それは口に出しても無駄だと思っている。そもそも、組織教育の純粋培養や、なんでも自衛隊中心の考え方を持っている人は、確信持って不要な予算要求やってるから、まあダメだろ。
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2012.11
28
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13:00
Category : ミリタリー
 P-3Cの中でも、JP-4とJP-5は混じっているってことです。

 海自飛行場ごとの燃種を見ると、北がJP-4、南がJP-5になっている。主だったところでは八戸と下総がJP-4、厚木、硫黄島、岩国、鹿屋がJP-5になってる。
 そして、P-3Cは、結構あっちこっちに移動する。単純に移動することもあるし、訓練や哨戒で海の上を飛んで、ヨソの基地に泊まる(これをRONという)こともある。当然であるが、その際には現地で燃料を貰う。
 つまり、P-3Cのタンクの中がJP-4になったり、JP-5になったり、両者が混ざることがある。他の固定翼機、回転翼機も同じである。しかし、なんの問題もない。

 というのもね、P-5のエンジンにJP-4を混ぜると「様々な課題が出てくる」とおっしゃっる方がいらっしゃるのだが、その「様々な問題」がってホントに起きるのかな、起きたとしたら、何が起きると言いたいのかが理解できないわけです。

 時系列で整理するとこんな感じかな。

 その方なんだけど、海自がC-130Rを導入するのは、JP-5対応エンジンであるためと断言してらっしゃる。通常のC-130はJP-4なので、海自が使うJP-5を入れると壊れるという理屈なんでしょう。航空エンジンは繊細だから、非対応の燃料を入れると腹痛を起こしてしまうとも主張されているわけです。

 実際には、そんなこともないわけです。まあ、実際に艦載ヘリにJP-4入れてるの見たことあるし、陸空自ヘリへの給油実施報告も聞いたことあるけど、腹痛起こすなんて話は聞いたこともないですよ。だいたい、C-130R買おうと決めた海幕だって、そんなの気にしていません。担当したパイロットも航空装備幹部も、JP-4とJP-5は互換だと思っているわけです。-Rに決めたのも出物があっただけの話でしょう。なんにしても、まあ繊細であるな思ったわけです。

 それを受けてでしょうね。「様々な課題が出てくる」さんが、己の主張に「『ガスタービンは燃料を選ばない…』と公言なさっていた人物がいるが、モノを見ているのか?と小一時間。」と[JP-4とJP-5混交利用を]「長期使用をしていると、それらに応じて様々な課題が出てくる。」と御注意を頂いたのですけどねえ。さて、具体的にどんな課題が出てくるのですかね。

 JP-4,-5,-8なんて同じようなものです。航空エンジンであっても、混ざっても、ブレンドしてもエンジンに何の負担にもならない。だいたい、さらに異質な代替燃料にしても、国際民間航空機関ICAOは民間機にブレンドを認めている。米軍もブレンドして問題ないとしている。
 ICAOは、代替燃料XTLやCSPKを半分までブレンドしていいよ認めてます。さらに、その他の燃料も混交できるだろうといっているし、将来的にはJET-Aに植物性燃料FAEを10%ブレンドしようとしている。それ以外の燃料にしても、高空で粘性があがり、配管が詰まるのでダメと言っているだけの話。エンジンのダメージなんかは全く問題にしていない。
 米軍もブレンド使用を実施している。前から実験的にF-18を植物燃料で飛ばしている。が、艦艇には実運用をしている。USSフォードでは、藻類バイオ燃料(50%ブレンド)を使っているが、それにより性能低下もないし、エンジン整備でも何も変わらないとしているわけです。
 代替燃料混ぜても大丈夫な航空エンジンに、JP-4,-5,-8を混交してなにか問題が起きるとは考えがたいのですよ。

 「様々な課題が出てくる」さんも、JP-5用のC-130Rに、JP-4を入れたときに、どういった「様々な課題が出てくる。」かを明確に示してもらえると有難いものです。



 …なんにしても残念な内容なんだよね。「様々な課題が出てくる」さんの「2012/11/13 帰ってきた燃料話」で、それを示していただけるかと楽しみに拝見させていただいたのですけどねえ。航空エンジン、高空燃料の話から始まる話なのに、問題点が示せるのが、自動車用エンジンと自動車用燃料の組み合わせというのは、竜頭蛇尾が過ぎるのではないですかね。
2012.11
26
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13:00
Category : ミリタリー
 定数枠による防衛力規定は、防衛費を高騰させるだけではないのか。陸兵14万、護衛艦48、戦闘機260という定数の内側であるというだけで、吟味されることなく、無駄に高い階級配置や装備が与えられている。そこに防衛費を安く上げようとする意見は反映されない。

■ 定数枠により、予算は吟味されない
 同じ防衛費ならヨリ強力に、同じ防衛力ならヨリ安くすべきなのだが、いまのシステムではそれは実現されない。定数内にとどまるかぎりは、予算が通ってしまう。その中身については、細かい審査はされない。

 現行では、防衛費を安くあげさせる仕組みはない。人件費も装備品調達も、費用と効果の検討もなく、金をつぎ込んでいるのが現状である。

 人件費は定数枠に応じて自動的についてしまう。給与の高い中級以上の幹部を抑制する仕組みはない。既にできた予算定員の大概は変わらない。人件費が義務経費として自動的についてしまうので、1尉配置のままでも、不必要であっても、能力に欠けていても、枠があれば昇任する。防衛省からすれば、枠を余すことは無駄であるためだ。自衛官は合計して25万人いるが、まず現業にはあたらない3佐以上が17600人、15人に1人いる。※ 比率では、旧日本軍隊の下士官なみにいることになる。

 装備品も定数枠にあわせて買い放題である。定数内であれば、機械的に決められた耐用年数を超えれば、まず新しい装備が買える。この耐用年数は昔に決まったもので、諸外国と比較すると極めて短い。ついこの間まで、海自の潜水艦は耐用年数16年であった。諸外国では30-40年使用することを考えれば、半分かそれ以下である。ただ、潜水艦は必要性が理解できるからまだいい。だが、陸自の本土決戦にしか使えない戦車や大砲も、車検の度に新車を買うようにポイポイ更新されるのは無駄だ。

 こんな無駄をしている国もない。海外ちょっかい掛けまくりのフランスも、戦車は日本と同じ約400両であるが、半分が90式戦車相当のルクレール、残り半分が74式相当のAMX30で済ませている。90式、ルクレールと大差のない10式を新造して配備するようなムダもない。

 装備品調達は抑制されていない。やるのは財務で値引きする程度である。陸空装備であれば、今年10買うところを8にしろ。艦艇であれば、排水量を100トン減らせ、この装備は後日装備にしろという程度である。無駄な装備であっても、大概通ってしまう弊害がある

■ そもそも防衛力にタガをはめるための制度
 定数枠は、防衛力に上限を設けるための制度であり、防衛予算を制約するための制度ではない。

 定数枠は、昔の憲法論争を引きづった結果である。自衛隊が戦力であるか否か、自衛権の範囲を超えるか否かが争われた時代、左派は自衛隊に関しては戦力上限にタガをはめることだけが焦点であった。防衛費に関しても、戦力のタガとして1%枠が問題になっただけである。防衛費を効果的に使用するかどうかは全く意識されていない。防衛力に比して高い防衛費、防衛費の割に低い防衛力は問題にされなかった。

 制約に対する代償として、予算面を潤沢にしてやった面もある。平和憲法や自衛隊に課せられた種々の制約について、右派や自衛隊関係者は不満を持っていた。その不満をそらすため、高いおもちゃを買ってやった部分はある。昭和50年代以降、常に高級な最新装備、必要なのか分からない施設、曹の定年引き上げといった厚待遇が実現された背後には、平和憲法、1%枠、特定装備保有制限に対する右派や自衛隊関係者の不満を埋め合わせる面もあった。

 定数枠のタガは、防衛予算を制限する機能を持たなくなった。装備数の範囲内であれば、そのコストはほとんど論じられない。逆に、定数内であれば、過剰性能も無駄遣いも許される構造になってしまった。

■ 同じ防衛費ならヨリ強力にすべき
 しかし、憲法論争は終わった。自衛隊に課せられた制約はなくなった。政治的に戦力や軍隊と明言しない限り、自衛隊保有への反対はなくなった。自衛隊に戦力のタガを課すべきという主張も減った。法的制約についても、自衛のための軍隊が、遠く海外に派遣される状況である。

 不満をそらすために、潤沢な予算を与える必要はなくなった。同じ防衛費ならヨリ強力に、同じ防衛力ならヨリ安くすべきである。そのためには、定数枠による防衛力規定は改めたほうがよい。

 定数枠内部でなるべく高級装備を買おうと、過剰性能を与えている現状は無駄遣いである。重要性が増している艦艇や航空機であれば、トータルで安くなれば数を増やしてもいいだろう。逆に必要も減った戦車や大砲については、その戦車や大砲をわざわざ新型化することを許さない仕組みを作るべきである。

 枠による人員数制限だけで、給与総額を考えない仕組みもやめたほうがよい。人員や階級も予算総額との関係を重視すべきである。配置以上に階級・給与を与えるような仕組みはなくせばよい。人員構成上とやらで、実際に佐官は佐官配置より多い。あるいは、階級に応じた給与ではなく、配置に合わせた給与にすればいい。大原則として賃金は労働に応じる。その階級に応じて給与を払う必要はない。実際に階級の名前が残れば、1尉クラスへの給与ダウンにも、それほど不満はでないだろう。



※ 平成24年度予算「1042 防衛省所管 予算定員及び俸給額表」(http://www.bb.mof.go.jp/server/2012/dlpdf/DL201211001.pdf)では、中級幹部である3佐は10300人、防衛省幹部にあたる2佐以上は、2佐は約5000人、1佐は約2000人、将官は260人である。
2012.11
25
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20:38
Category : ミリタリー
 中国の空母「遼寧」で離着艦作業が順調であると報道されている。日経「中国空母の着艦試験が成功 新華社など確認」※ には動画もついており、まずは問題なく離着陸している様子が示されている。

 しかし、これで戦力化できたと見るのは早計である。

 空母で艦載機が離着艦していることには不思議はない。もともと、離着艦できるように艦艇も機体も作られている。同型艦や、同じような機体はソ連/ロシアでも航空作業を行なっている実績もある。それには不思議はない。

 戦闘機が離着陸できたことと、戦力として実用化できることは違う。戦闘機にしても、兵装や燃料を搭載した状態で運用できなければ、意味は無い。また、甲板上での運用でのノウハウ集積も必要になる。そもそも、殲-15を海上作戦機として熟成させる必要もある。

 今回の離着艦では、何も搭載していない。記事に付された動画では、軽量状態で運用している。何も搭載していないだけではなく、燃料も少なめにしているだろう。試行段階であるのでそれは当たり前である。しかし、実運用する場合には、燃料と兵装を搭載する必要がある。戦力化では、それがどの程度積めるのかが問題になる。重量級機体と、スキー・ジャンプ方式の組み合わせだと、Su-33の最大離陸重量、30tをそのまま達成することができるかどうかは分からない。

 また、甲板上の運用能力、取り回しについてのノウハウ集積も必要である。戦力化するためには、例えば、離着艦の間隔を短縮や、そのために甲板上で機体をどう取り回すのかといったノウハウ集積も必要となる。

 他にも、殲-15を熟成させる必要もあるだろう。ロシア機にしても、その技術を継承する中国機にしても、基本は陸上機である。海上機のノウハウを持たない。塩分等、防蝕対策確立も必要だろう。実際に、陸上機である運-8を改良した哨戒機、高新シリーズでは、腐食対策※※ に苦労している。

 いずれにせよ、殲-15はその性能を生かし切れない。陸上運用よりも劣る状態で運用せざるを得ない。「遼寧」と殲-15の組み合わせは、技術収集の域は出ない※※※ だろう。ある意味、鳳翔と十年式艦上戦闘機みたいなものだ。本格的な戦力としては、新しい空母と新しい艦載機の組み合わせができるまでかかるのではないか。



※ 「中国空母の着艦試験が成功 新華社など確認 」(日本経済新聞,2012.11.25)http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2500C_V21C12A1000000/?dg=1
※※ 汪海清,譚小輝「海軍飛機腐食防護設計方法研究」『運輸機工程』(2011.1)pp.10-13.
※※※ 南沙諸島あたりならば、実用できるかもしれないが。


ニュースで見っけたナマモノなので、たまにはその日に投稿
2012.11
24
CM:0
TB:0
13:00
Category : ミリタリー
 自衛隊で最大の高給取りが、パイロットと潜水艦乗り。パイロットは、月給に階級初号俸の6割が足される。中でも艦載ヘリのパイロットは破格。部隊から艦艇に派出されると、乗組員手当と航海手当もつく。30代前半で年1000万超えることもある。また、潜水艦も給料が高い。月給に現号俸の4割5分が加算される。ほかにも、日数に応じた航海手当や回数に応じた作業手当もつく。潜水艦は行動が長い上、そうそう寄港しない。たしか、中には自販機すら無かった。金の溜まること夥しい職域。※

 でも、家を建てる奴はいない。あればあるだけ使ってしまう。車や時計に大枚はたく。酒や悪い遊びをする。貯金を作る奴もいないし、借金作る奴も多い。

 とにかく高い買い物をする。制服なんか安藤洋服店で高級品を仕立てる奴も出てくる。己は夏冬ともフジの洗濯可で上下で3万、彼らは上下8万、冬服なんか毛織物でできている。夏服の肩につける階級章は、己は1500円の旧式ダンゴムシ型、彼らは9000円の刺繍高級品。同期のパイロット(TACOだったかもしれない)には、20代なかばでアルファロメオを買った奴が居て、ほかにも、100万を超えるような機械式クロノグラフを買っていた。まあ、飛行機に乗るときに「壊れたら困る」とGショックに付け替えているともいってたがね。潜水艦で奢ったやつだとマセラッティ買ったやつか。乗る暇もないはずなんだよねえ。だいたい、横須賀の場合、潜水艦岸壁(B岸壁だったか)は、米軍基地の中。憲兵隊の乗り入れが降りにくい上、駐車場も少ない。そもそも出航中に使えない上、平素の通勤で使えなければ、いつも官舎の駐車場にでも停めておくオブジェなんだろう。

 酒の飲み方も、遊び方も派手。パイロットや潜水艦に連れて行かれると、高いとこで高いものを頼む。水上艦乗員も高いとこが好きだが、パイロットや潜水艦みたいな無茶苦茶な頼み方はしない。「あるやつ全部」とか「高いやつ」とか言わない。パイロットは翌日、飛行作業があると飲めない。潜水艦は行動中には何もできない。飲める機会が少ないから、飲める時にお祭りのように飲む。手が付けられない上に、その上、妻子持ちなのに率先して悪いところに遊びに行こうとか言い出す。そこも高いところを選ぶのだろう。

 映画『Uボート』、その最初でやる宴会をイメージすればいい。あんなものだ。まあ、同期の宴会なら逃げ出すからいいのだけれども、教官で課程主任をやると逃げ出せない。マーク関係なしの教官教育の課程主任を2年半やったのだがね。一つのクラスで、パイロットではないが同待遇の機上整備員、その幹部と海曹、潜水艦の海曹を預かったことがあった。その宴会はスゴイものだった。水上艦あがりの曹長さんもついていけない金の使いっぷり、奢りっぷり。フネとは縁のない海情報、固定翼整備、航空管制、地上救難のあたりは驚いていたよ。ブランデーのスコッチ割とかギャグで頼むから。

 とはいえ、飛行機や潜水艦から降りると、途端に金が詰まる。収入は激減する。手当がなくなる上に、税金は高いまま。なんせ税金は去年の収入にかかる。降りて最初の一年は陸上勤務者よりも手取りが少ない。車や時計のローンは続いている。毎日上陸できるようなものだから、誘惑に負けて飲んで遊んで、買い物をする。幹部でも遊興のために借金するアホも出てくる。

 航空部隊や潜水艦に戻れば、お金が増えるので一息つく。しかし、狭い世界で付き合いがあるので、また遊ぶ。そこでセーブして貯金の一つもすればいいのだけれども、それができない奴もいる。まず、同じ事を繰り替えすことになる。

 パイロットとサブマリナーで家建てる奴はいない。むしろアリンコのほうが収入が少ないのに家を立て、貯金をしている。まったくアリとキリギリスそのもんだ。



※ 昔には、これを超える高収入配置があった。父島基地分遣隊の特務艇、ASU83だが、艦艇乗組員手当と小笠原手当と出港時には航海手当がついた。乗組員手当は月給の33%位、小笠原手当は月給の35%位、小笠原周辺海域だと、航海手当は1日1000円くらいは付く。
 基本的に、海曹に関しては、心正しい借金持ちが配置されるフネと聞いていた。商売している親の借金の連帯保証みたいな子が、真面目に勤務するフネ。勤務した本人から冗談めかした話で聞いたのだが、金を一切使わないようになっている。自販機も酒保もない、上陸もさせないフネだと言っていた。
 今は特別警備隊か。月給の5割がつく上、転入海曹のボーナス評定を見ると常にA、たまにSになっていた。Aで1.5倍、S(己は一回しかもらったことないよ)で2倍近くだったか。まあ、相当に金づかいも荒いのだろうね。
2012.11
23
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13:00
Category : 中国
 ダライ・ラマさんは、プレスター・ジョンではないだろうか。

 ダライ・ラマさんに含むところはない。好きでもなければ嫌いでもない。宗教指導者であるところから見ると、大人物なのだろうとは推測できる。しかし、周辺にいるダライ・ラマさんを過剰に持ち上げ、期待する人々には不健全なものを感じる。

 例えば、櫻井よしこさんの記事「中国への遠慮捨てよ」「国会議員が初めて法王を迎える」である。どちらもへの新中国に対する強烈な反感と、その裏返しとしてのダライ・ラマさんを持ち上げる気持ちがある。

 ダライ・ラマさん待望は、プレスター・ジョン待望と同じである。プレスター・ジョンは、中世欧州でアジアにいるアンチ・イスラムとして想像された。十字軍時代、ヨーロッパ人が待ち望んだ、アジアにいる高潔で熱心なキリスト教君主であり、反イスラム同盟として提携する勢力がプレスター・ジョンであった。

 桜井さんを始めとする、アンチ新中国の皆さんにとっては、ダライ・ラマさんは救世主である。新中国との戦いでの、反中国の同盟者であることから、ダライ・ラマさんは美化される。美化するだけならいいが、そこに自由と民主主義と人道主義といった西側価値観を共有していると考えるのは、勝手な投影※ である。

 ダライ・ラマさんはチベット亡命政府の顔である。亡命政府であるから、西側には自由や民主主義をリップ・サービスはする。そのリップサービスを真意と真に受けるのは早計ではないのか。

 これはインドへの傾倒でも似ている。だいたい同じ人たちは「インドとは価値観を共有しており、同盟関係を強化する」とも言っている。ダライ・ラマさんと同じように、駒としては便利で、互いの利益にもなるだろう。しかし、過度な思い入れをするといずれしっぺ返しを貰うのではないか。

 敵の敵を持ち上げるのはいいが、そのうち深い絶望を味わうのではないか。第二次世界大戦で、米国はソ連に対して過剰な思い入れをして、戦後に絶望を味わった。それと同じことが、ダライ・ラマさんやインドとの共闘の後に生まれる可能性を考えないのは危ういように見える。

 大人物に見えるダライ・ラマさんがそうだとはいうわけではないが、李承晩という例もある。キリスト教倫理観や自由や人道を共有しており、パペットやプロクシとして安全牌だったはずの李承晩がやったことを見れば、まず亡命政権首班ほどあてにならないものもないのではないか。

 いずれにせよ、なぜ、駒と割り切れないのか不思議である。櫻井よしこさんほか、新中国に反感を抱く人たちが、中国に膨張主義に見るのは理解できる。その上で、いわゆる中国膨張主義を封じ込めるツールとして、ダライ・ラマさんは便利な道具である。しかし、そこに同志的連帯を見だすまで心酔するのは行き過ぎに見える。「現実主義」や「冷徹な国際政治」を標榜する割には、敵の敵にはやたら甘い。そこに理想まで見てしまうのは、中世のプレスター・ジョン待望論そのものだ。相当に甘い認識である。



※「ゴドーを待ちながら」みたいな、本人不在の空間で好き勝手言っている感じがするんですよね。各国を問わず称揚者が人道主義、中国のチベット政策、社会思想、あるべき仏教みたいな話について、自己の理想像を勝手に投影しているようにも見えるわけです。
 いや、己はダライ・ラマさんには悪気も憎しみもないんですけどね。
2012.11
22
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03:53
Category : 有職故実
 よくできたもので、三沢で雪が降っている時に八戸は晴れていることは少なくない。三沢に降りられない時には、八戸に降りられる。おそらくその逆もあるのだろう。

 たまに、雪の三沢に降りられない飛行機が八戸に降りてくることがある。平素はターボプロップとヘリしか運用しないところに、三沢のジェット機が降りてくると煩くてかなわない。本部庁舎の前だと煩いせいか、エプロン端にあるウチのショップの前に止めることが多い。昭和30年代の写真に載っているショップで、ペアガラスでもない。向かいに座る地付の准尉さんも「静かな八戸にジェット機は要らない」という。

 ショップに近いものだから、天候回復までショップにパイロットが待機することになる。なんだかんだ言って海自なので、応接室でフネの士官室で応対するような感じで茶菓の接待になる。20年近く前の話で、まだ初級幹部だった己の仕事になる。

 とはいえ、いつも騒音が煩いのも半ば癪。なので、海曹に命じて、高級煎茶を思いっきり濃い目で出し、お茶うけは業者からもらったモナカ(当時はうるさくなかった)と、卓費で買ったカリントウの類を出してみたことがある。お茶については、渋そうな面をした。ただし、最後までカリントウには手を出さなかった。「うまいよ」と食ってみせてもダメ。

 その後、別配置の時、面白半分で米海軍に出したときは食った。しかし、やや躊躇はあった感じ。まあ、海軍だから客として客の役割、マナーを守ろうとしたのだろう。

 米空軍のパイロットにしても、好意的に見れば、空中勤務だから妙なものは口にしない。腹壊して飛行機落としたら大変という考えもあったのだろうよ。とはいえ、空自もそうだが、米空軍も自由というか、マナーとしてもわがままな感じはある。こっちが歓待しているのだから、それに応じる態度はあるはずなのだが、やや淡白というか、追従しない感じがした。

 もちろん、いつも意地悪するわけでもない。大体はコーヒーメーカー丸ごと出してコーヒー飲み放題にする。お茶請けは、大概は業者さんからのお菓子か、卓費のお菓子だった。だが、お歯にあう様子でもなかったので、機嫌のいい時に机の私物をだしたこともある。多分、歌舞伎揚げかサラダせんべいの類、それとみすず飴だったと思う。まあ、日本に駐留していれば、せんべいに抵抗ないのだろうとは思ったが、みすず飴もパクパク食うもんだとは思わなかった。婆さまの食い物というイメージがあったのだけれどもね。

 食い物で言えば、米海軍や外国艦艇指揮官の食事や弁当の仕事をしたこともあった。豚がダメ、牛がダメ、鱗のない魚がダメとかあるので、鶏と魚が無難だった。いつものピジン英語で、先方の庶務に「海老天は大丈夫かね」とか尋ねたこともあった。苗字的に鱗のない魚ダメかなと尋ねると、本人、出たものはなんでも飲み食いするから気にしないでいいと言われたよ。
2012.11
21
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13:00
Category : ミリタリー
 12式SSM、12式地対艦誘導弾だが、わざわざ垂直発射にする必要はあったのだろうか。

 12式SSMが採用した垂直発射方式は、不利は多く、利はない。価格を押し上げるだけの自己満足機能である。例えれば、車の電動格納式アンテナである。実用上、何の価値もなく、高く付くだけのオプションである。

 12式SSM整備への疑義は「無駄遣い 12式SSM」で書いたとおりである。それに加えて今回は、垂直発射方式採用は無駄であった点を示してみたい。

■ 垂直発射の不利
 垂直発射にすると不利が多い。まず射程が短くなる。その分、ミサイルが大型化、あるいは弾頭が小さくしなければならない。また、ミサイルも高くなる。垂直発射に対応するギミックが必要であるからだ。

 垂直発射だと射程が短くなる。SSMを最大射程で使う場合、目標に向けて撃つのが一番である。撃ってからグルリと向きを変えるのは燃費が悪く、射程が短くなる。相当昔に習った数字なのだが、ハプーンの場合「目標に向けて撃たないと射程は◯◯%も短くなる」と言われた。おそらく、射程の短い旧式を、180度の正反対に向けた場合の数字なのだろうが、◯◯%は小さい数字ではない。

 垂直発射採用は、ミサイルの大きさ、性能で不利を伴う。垂直発射による射程減少を補うためには、ミサイルを大型化するか、弾頭を小さくするしかない。逆に、在来発射方式にすれば、同じ大きさでヨリ高性能、あるいは同性能で小型化が可能になる。

 垂直発射の分、値段も高くなる。細かい点が公表されていないので、具体的には言えないが、いずれにせよ垂直発射のギミック※ の分、価格も高くなることは間違いない。

■ 有利な点はあまりない
 逆に、垂直発射で有利な点はあまりない。好意的に見ても、狭隘な場所から発射できる、また、車体の向きを変えずに全周360度の攻撃が可能である程度だ。

 たしかに、垂直発射により、狭隘な場所から発射できる点は、隠蔽や防御上優位だろう。例えば、非常に狭い盆地、蛸壺状の地形から発射できる点があるだろう。車体が隠れる穴を掘って、その中から対艦ミサイルを運用することができる点も、有利かもしれない。

 しかし、それは在来発射方式でも難しくはない。在来発射でも、狭い盆地や、窪地状にした陣地から発射はできる。従来の対艦ミサイルでも、上昇角度は45度程度はある。45度程度、クリアランスを取れば、充分に隠蔽可能である。

 在来型対艦ミサイルでも、上昇角度は45度程度ある。旧式ミサイル、旧ソ連のスティックスでも、巡航高度までの上昇角度は45度であった。また、ハープーンほかのSSMも、現用の88式も、実際には水平には発射されず、斜め上に向って発射される。発射方向に45度もあれば、大概の地形でミサイルと地物は引っかかることはない。

 垂直発射により、ランチャーの向きを変えず、360度攻撃可能な点は、対艦ミサイル運用では優位にはならない。発射方位は海の方向であり、だいたい決まっている。対水上戦闘は、対空戦闘のように1秒を争うものでもない。仮に変更するにしても、車体の向きを変える程度の時間はある。ランチャーの向きを変えず、360度攻撃可能であっても利益はない。

■ 垂直発射は不必要な技術
 12式SSMでの垂直発射は割に合わない技術である。垂直発射に必要なコストは安くはない、対して、その利益は少ない。対空ミサイルとは違い、対艦ミサイル運用で、垂直発射でなければ困る切実な理由もない。強いて言えば、最新技術っぽく見える点だろうか。前に述べようたように、乗用車の電動格納式アンテナに似ている。自己満足のためのオプションに過ぎない。

 そもそも12式SSMをシステムごと新造する必要はあったのだろうか。

 まず、既存の88式SSMでも性能的に問題はない。ロシアや中国海軍の戦力や、その防空能力は、冷戦末期のソ連太平洋艦隊の足元に及ばない。陸自が対艦ミサイルで狙う揚陸艦や輸送船であれば尚更である。

 仮に対艦ミサイルを更新するにしても、ミサイル本体だけを新しくすれば済む話である。対艦ミサイルの性能は、ミサイル本体で完結している。適切な設定があれば、発射方式や発射機、FCSは関係なく威力を発揮する。本来であれば、対艦ミサイル更新は本体だけを新しくして、88式SSMにそのまま入れ替えれば充分であった。

■ 過剰性能を許す仕組になっているのではないか
 国産兵器には、不必要なまでの過剰な性能が付加される。12式SSMでの垂直発射は過剰性能であるし、そもそも88式SSMで充分な現況では12式自体が過剰性能とも言える。陸戦兵器では10式戦車もそうだ。航空関連でも、P-3Cで不足はなく、搭載機器改修で性能向上を図ればすむ話であるが、P-1を作った。

 過剰性能が生まれる原因は、要求元と開発側で要求性能を吟味できない点にある。

 各幕は、まず価格や維持費といったコストはあまり意識しない。自衛隊装備は、定数あるいは現在数ベースであり、その範囲であれば予算要求は容易である。また官僚組織であり、予算を含めて規模を大きくしようとする習性がある。仮に必要充分な装備が安く作れても、同じ数であればその調達は望まない。予算要求上、余裕があると見れば無駄なオプションを付ける。それが過剰性能である。

 開発元も、利益を極大化するために行動する習性がある。官側開発者にとっての利益は、組織の成長である。開発規模を大きくしたい、予算額的にも、性能的にも大きくしたい願望がある。垂直発射のように不必要な機能であっても、最新技術として導入したいと考える。防衛産業にすれば、額は大きければ大きいほどよい。防衛装備に関しては、開発も生産も、原発と同じで経費に企業ごとに固定された利益率を載せたものである。経費がかかればかかるほど良い。無駄なオプションも、載せれば載せるほど利潤に繋がる。

 兵器国産開発には、過剰性能が盛られる仕組みになっている。それが、12式SSMの調達であり、無駄なオプションである垂直発射方式採用である。



※ 例えば、低速で急変針するためのギミックが必要になるだろう。地対艦ミサイルは運用上、非探知を防ぐために発射直後に目標方向に変針し、低く飛ぶように飛ばすことになるだろう。だが、そのためには発射直後に急変針をする必要があるが、発射直後は低速で舵効が良くないので何かの工夫が必要である。もちろん、在来発射型ではこの点は不要である。
2012.11
20
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21:54
Category : 未分類
 国のやる事業に経済性なんかない。いっそ官舎は全部売っぱらって、家賃補助だけでいいんじゃないかね。

 国が官舎の家賃を上げるという。※ まあ、安すぎるので上げれるのは当然なのだがね。上げて入居者が減り、スカスカになったらどうするのだろう。前に書いたように、一部の立地条件はともかく、官舎の質は低い。財務局が管理する普通宿舎も、防衛系の国設宿舎と特借も同じ。築30年以上を経て大規模改修もしていない官舎なんか、都心はともかく、近郊でも誰も借りない。

 そもそも、間取りがどうしようもない。いまどき55平米、一切含めて16坪、6畳一間と4畳半一間なんて、東京市内でもなければ誰が借りるのか。

 民間にも住宅はだぶついている。まず人口は減ってきている。貸家も貸地も余っている。今UR、昔住宅公団の団地もガラガラ。国が住宅を世話する時代でもない。

 官舎は、売っぱらったほうがいいだろ。東京市内みたいに条件の良いところから売っぱらえば国庫の収入になる。僻地での宿舎は売れないかもしれないが、それなら更地にしてしまえいい。田舎では官舎なんか誰も住みたがらない。その官舎に人と金を突っ込む無駄は減るだろうよ。



※ NHK「財務省 国家公務員宿舎の家賃約2倍に」(2011.11.20)http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121120/k10013634361000.html
 ま、ニュース見たらやっていたので、たまには予約投稿でないのもいいかとね。
2012.11
19
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13:00
Category : ミリタリー
 陸自の某官舎に入居した時だが、一階に入居すると床が沈む。なんせデブで、持ち物でも本も多い、床が抜けるとメンドイと畳をはぐると、貧相な昔の床組のまま。杉床板が1枚おきにしか貼っていない。しかも下は土間で束柱で立てている。昭和40年代そのままになっている。なんせ、新聞に周恩来がパンダを持ってくるみたいな記事が載っていた位だった。

 しかも、水道、下水の配管工事のために床板は何ヶ所も切られている。それどころか、大引の上で根太を切ったあともある。復旧後は釘ドメすらしていない。貼り直さないで済ませたのは完全な手抜き工事で、代理人や監督官も何をやっているのかというような代物。

 海なら厚生か施設あたりにねじ込んで、部屋を変えるか、修繕させる。だが、ヨソの陸なのですぐに動いてはくれない。

 仕方がないので、勝手に改修した。近所のホームセンタに行って、6mmベニアを購入し、採寸した通りの大きさ切らせた。それを官舎に持ち込んで、床板の上に敷き詰めて釘で止めた。寒い地方なのだが、断熱がプアなので押入れの奥や天袋も腐って半ば破れている。これも手前にもう一枚の壁を作って、床下からの吹きこみを止めた。押入れそのものも撓んで3センチも落ち込んでいるので、車のジャッキで持ち上げて、つっかえ棒をいれて、構わず構造用の木ねじで敷居にネジ止めした。すきま風が酷かった窓のサッシは、片方はサッシをビス止めして、コーキングを入れてハメ殺し状態にした。

 お陰で2年間はそれなりに暮らせた。本の詰まった、無慮90kgの本棚を4棹入れても床はたわまず、押入れの結露もシミ程度ですみ、冬でもすきま風に悩まされることはなかった。

 このあたり、出ていく時にそのままにしたのだが、何も言われなかった。厚生が仕事をしているのかね。一応、ハメ殺しの窓は復旧したが、それ以外は復旧すると次の人が大変だろうと、そのままにしたのに全く気づいていなかった。畳の高さとか、押入れの色やつっかい棒で気付きそうなものなのだがね。

 厚生は官舎の数を数えるだけなのだろう。退去立ち会いでも何も見ていない。官舎の床の沈みや結露、すきま風にも気づかないのだから、そんなものだ。おそらく、官舎の維持は、部屋の中のペンキ塗ることとしか心得ていない。営外居住の曹士が官舎に入りたがらないのも当然の話。整備もせず、ペンキ塗りで金をとることしか考えていない自衛隊官舎に入りたがる奴は、何も知らない幹部だけではないのかね。
2012.11
17
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13:00
Category : ミリタリー
 中国海軍力は、海洋拒否に特化している。自国が制海権を得るための、海洋を支配し、利用するための海軍ではない。たしかに、中国は海軍力を増強し、その装備も外洋向けに更新している。しかし、米国制海権を邪魔するための戦力であり、中国自身が海を利用するための装備ではない。

 中国海軍が整備している戦力は、米水上部隊の接近を邪魔するための戦力である。かつて中国で大量建造された魚雷艇がそうであった。今も同じように、ミサイル艇を大量整備している。魚雷艇もミサイル艇も、米水上部隊を邀撃することだけを考えた装備である。中国では潜水艦や水上艦も同じで、米水上部隊、とりわけ空母機動部隊と刺し違えることだけを考えている。中国が整備しているロシア系艦艇は、長射程大威力の対艦ミサイルのプラット・ホームのようなものだ。

 中国は、制海権を得ようとしているわけではない。あくまでも米国が中国周辺で制海権を確保するのを邪魔しようとしているだけである。その証拠に、敵性潜水艦といったものへの備えは等閑視されている。仮に、中国が米海軍水上部隊を寄せ付けなかったとしても、米潜水艦や航空機の活動を許せば、中国は海を自由に利用することはできない。

 米国の海洋利用を拒否しても、中国は制海権を得られない。仮に、東シナ海で考えてみよう。米中戦になったとしても、中国は海軍力がそれなりにすり潰されるまで、米水上部隊が東シナ海で自由に行動することを許さない。中国海空戦力が健全である限りは、東シナ海で海洋拒否を行うことができる。しかし、中国水上部隊や船舶が東シナ海を自由に行動することも許されない。米国も潜水艦や航空機により、同じように海洋拒否を行うことができる。

 オーストラリアの国防次官だったホワイトさんも、中国による制海権確保は難しいとみている。『外交』の記事で、ホワイトさんは「『海洋拒否』(Sea Denial)は制海の鏡像ではない」※ と指摘している。「拒否は容易である。制海は難しい、中国にできるのは拒否であって制海ではない」と述べている。

 中国が米国やそれ以外の国に、海洋拒否を選択された場合、中国は対応できるだろうか。中国海軍力は、海洋拒否、特に米海軍空母機動部隊への攻撃に特化している。中国には海洋支配、制海を達成する能力は低い。

 例えば、対潜戦戦力や対艦ミサイル防御技術で劣っている。中国の対潜戦力は明らかに劣っている。水上艦の対潜能力は低い。哨戒機も少ない。その潜水艦も、おそらく対水上艦襲撃に力が入れられているだろう。水上艦も、対艦ミサイル攻撃に強靭であるとは考えがたい。中国艦艇は、米国なみの対艦ミサイル防御能力を持たない。哨戒機等による通り魔的な攻撃でも混乱してしまう。

 中国海軍は制海には向いていないのである。中国は海洋拒否に対して脆弱であるとも言える。

 ホワイトさんも、ベトナムであっても工夫すれば中国に対して海洋拒否できると述べている。※ ホワイトさんは米国や日本は中国への海洋拒否は容易であり、韓国以下の諸国でもできるとしている。

 中国は第一列島線の内側でも制海権を立てられるかは怪しい。もちろん、相手の国の持つ海軍力による。しかし、米国を相手にした場合、制海を達成することはできない。

 米国も中国に対して海洋拒否を行おうとしている。中国やイランによるA2ADを打破しようとする、新コンセプトJOAC:Joint Operational Access Conceptがそれである。その中では、海洋拒否によって海洋拒否を邪魔するアイデアが大きな部分を占めている。

 中国が対米戦を行った場合、第一列島線の内側で制海権を確保できるかは難しい。対日戦でもそうであり、対越戦でもそうなるかもしれない。



※ ホワイト,ヒュー「アジアの世紀の海洋戦略」『外交』(外務省,2012.5)pp55-61.
2012.11
16
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Category : ミリタリー
 仕事中に仕事をしている夢を見る性質がある。もともと居眠り常習犯なのだが、朝方一人で仕事をしていると朦朧としてくる。だいたいの部署は誰かいるもので、仕事をしながら話なりしていれば特に眠気もなくなるのだが、部屋に一人きりだと全くダメだった。

 海自の後方部門での人員不足は酷いもの。確かに、艦艇が少ないよりは、陸上部隊が少ない方が害はない。だが、あまりにも足りない。予算定員5名、訓令定員◯名(訓定はナイショあつかい)の部署に幹部2人だけだったことがある。科長は定年前の3佐で、そのころ己は1尉だった。科長は生徒出身の気さくな人で、「じゃあ二人で掃除するか」と、部屋の掃除、ゴミ出し、区域内にあるトイレと共同の喫煙所掃除をやっていた。トイレは使用各科が気づいて、海曹(部に海士はいなかった)を輪番で派出してくれたが、掃除をやっていればそこそこ手伝った。

 別に二人とも曹士の仕事は嫌いではない。むしろ事務仕事をやっていて疲れると、気分転換になんとなく掃除をする。小出庫(消耗品を補給するコンビニみたいなもの)に物取りに行く。芝刈りもやる。

 ただし、部の筆頭科であるので、部割当も含み書類仕事の量も莫大で、だいたい夜10時くらいまで夕飯も食わずに残業、2-3ヶ月ごとに1回ある繁盛期には、一週間は深夜2時くらいまで残業をしていた。かつて出向していた施設庁なら翌日は1-2時間遅れ出勤なのだが、自衛隊だと、それでも翌日は7時半には出勤、8時には国旗掲揚と課業整列なので寝不足になる。

 そして、科長は部先任なので、日例会報やら会議やらでだいたい午前中はいない。そこで己一人だと、まあ、寝てしまう。寒ければ寝ないだろうと、真冬に窓を全開にして、ワイシャツ1枚(2種ワイシャツは貰うが着た事ない)でいても寝てしまう。眠気に襲われるのは科長も同じで、会報やら会議やらでは「時間の半分は寝ていたよ」とのこと。

 とはいえ、寝ている間には仕事が進まない。文書だけのどーでもいい仕事も捌かないと溜まる一方になる。仕方がないので、ラジオをつけっぱなしにしていた。家がTBS党で、聞き慣れていたので、午前中は常にゆうゆうワイド。それをズーッと昼までつけっぱなし。だいたい毒蝮三太夫のミュージックプレゼントが終わるころ、科長が帰ってくるのだが、科長も慣れてラジオはそのままにすることにした。

 偶に部長が来ると「大工の仕事場じゃねえぞ」とそのたびに言われたが「『情報収集中』のテレビと同じだから、ラジオはお構いなし」とも言われていた。

 ラジオは聞きながら仕事ができるのと、時間が把握できるので便利だった。秋山ちえ子が聞こえれば10時で、毒蝮が10時半、森山陽子が11時、永六輔が11時30分、浜美枝が11時50分。だいたい永六輔の話が始まると、海自は自主的な昼休み時間になる。

 飯を食って、12時を超えたころからは、これまた海自伝統のお昼寝タイムにはいる。科長はソファーでゴロリ、己は腰が悪いので、硬くてダニのいない倉庫のタタキの上にゴロリ。暖房もなにもない倉庫だが、腰がラクなので冬でも雨衣を着て寝ていた。

 残業中もラジオだった。最初のうちは、午後7時あたりからはNHKのテレビをつけていたのだが、面白い番組をやっていて、二人とも釘付けになり、2時間だかを無為に過ごしてしまったことがある。これでは商売にならないと、やはりラジオに変えた。これもTBSだったが、どちらも野球中継が嫌いなもので、野球シーズンは進駐軍放送に切り替えていた。進駐軍放送は英語なので意識しないと引き込まれない、そう思ったが、偶に明瞭に分かる話者がいてその時には、やはり仕事をやりながら聞いていた。

 このとき使っていた庁舎は、GCAかなにかの局舎に近かったので、中波の入りが悪かった。そこで庁舎に勝手に孔を空けてアンテナを引き回し、川口送信所に向けて屋上にループアンテナを取り付けた。資材は廃用器材の中から頂戴したものだが、転出するときに元に戻すのを忘れていた。いまどうなっているのかは知らない。
2012.11
16
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13:00
Category : 有職故実
 最近はあまり聞かないが、中国由来の鍼麻酔ががある。人によってはイカサマという人もいるが、効かないということもない様子である。ただし、今の中国で使っていないあたりから、万人に効くものでもないのだろう。まずは新中国成立のナショナリズム高揚で、中国独自の科学力を示すために称揚された技術である。

 その鍼麻酔を日本でもやっていたらしい。外務省アジア局中国課が翻訳・編纂した『中国対日重要言論集』に載っていたのでメモしといたのだけれどもね。日中国交正常化以前は『中共対日重要言論集』だったように基本的に政治発言を集めたものなので、まあ、マヌケな記事だなと思って控えておいた。

 国交正常化以降、対日言論が気持ち悪いくらいほのぼのしているんでよねえ。1973年前期の発言を集めた22集には、田中内閣の日中国交正常化の効果が現れている。佐藤内閣までの激越な政治発言が一切なくなっている。尖閣諸島を奪おうとする日本帝国主義云々もキレイに消えている。極悪な日本漁民による中国漁区への侵入も無かったことになっており、日本漁民が北方領土で如何にエライ目にあっているかが書かれている。

 政治的に日本の悪口を書く必要が無くなったわけだ。そこでどうでもいい記事が多数収録されている。日本のパンダブームとか、中国農民が山口県を訪問したとか、卓球選手が信州でもてなしを受けたアリガトウみたいな記事。

 その中に、中国の医療技術は日本でも受け入れられているといった記事があった。なんでも、都立豊島病院で鍼麻酔による出産があったとのこと。担当医と患者さんの実名が乗っており、開腹と書いてあるので帝王切開であった様子。(会陰切開かもしれないけど)おっ母さんは「痛くなくてよかった」、先生は「十何例やっているけど、問題なし、オススメです」とのこと。

 米中正常化と、その後をうけた日中国交正常化で、日米中は基本的に平和になりました。日中友好と交流になったことをみんなに知ってもらいましょうということで、鍼麻酔以下のノホホン言論をしたわけだ。

 ただ、国交正常化までの関係は、殺伐としたもの。中国からすれば「殺るか殺られるか」、日本からしても、隣国が穏当じゃない状態であったわけだ。それが国交正常化でそれが落ち着いて、とりあえずはムード優先の友好、そのあとは実利がある商売で繋がるようになった。

 いま、日中関係が表面上多少ゴタついても、50年代、60年代ほどの敵愾心剥き出しでもない。鍼麻酔で交流みたいな無根拠の友好ムードに立ち戻ることもないが、昔に帰ることもない。たしかに、軍事力のゲームに加えて領土問題も出てきたけど、利益を通じた戦略的互恵関係は維持されるわけで、両国関係は極端に悪いわけでもないということだ。
2012.11
14
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13:00
Category : ミリタリー
 あんまり使い道もない艦艇を維持してもしょうがない。一番無駄っぽいのが、先に書いた「はやぶさ」型ミサイル艇だけれども。「あぶくま」型DEも似たようなもの。大湊か江田内あたりで保管したほうがいいんじゃないの。

 「はやぶさ」ミサイル艇は、仮想的程度しか使い道はない。港湾防備にしてもオーバー・スペック。領域警備では能力不足、定繋港あたり限定しか使えない。積極的に使うにしても、長距離行動はできない上、捜索能力もない。維持費がかかることは、先に書いたとおり

 「あぶくま」型DEも、北方監視でステーションさせる程度しかないでしょう。ヘリを搭載していないので、汎用性に大きく欠ける。水上捜索能力も、対潜戦も、ヘリがないと能力を発揮できない。救難や連絡、軽輸送、臨検といった、非戦時的な用途にもヘリがないのはキツイ。冷戦期に海峡付近での対潜戦に使う頭だったのだろうけど、その必要もなくなった。今での使い道にしても、宗谷海峡で4週間(だったか)の監視程度しか無いんだろ。

 DEは保管するか、練習艦にするかしたほうがいい。ヘリ積める「ゆき」や「きり」を護衛艦を練習艦に落とすのはもったいない。新しいかもしれないけど、ヘリ積めない「あぶくま」を練習艦に落とした方が合理的だと思うけどね。

 DDGの「かぜ」もNRF風に落として方がいい。

 DDGのうち、「かぜ」もあんまし使い道良くないでしょ。ヘリがない、多数の乗員を必要とするのは効率が悪い。ヘリがなければ、対空戦・居住性を除けばDEと大差はない。対空戦能力にしても、イージスに較べれば品下る。まあ、しまかぜ艦長やった人の話だと「訓練で対艦ミサイル(標的の類だろうね)を全部落としたよ。米イージスには的をやらなかった」とか言ってたけど、職人芸だから再現もできないでしょ。

 「はたかぜ」、「しまかぜ」も、アクティブから落としてもいいんじゃないの。NRFみたいに、人員と運用経費削っといて開店休業にでもすればいいのにね。対空戦に特化して、船務科だけ充足させておけば、職人芸みたいなこともできるんじゃないのかね。

 あとはP-1が非効率の極み。運用サイドはP-3Cで良かったのに、自衛隊の開発したい病で作ったような飛行機。結局、P-3を置き換えられる目処もない。「P-3Cの寿命は伸ばせない」といってP-1を作ったのに、今じゃ平気でP-3Cの寿命が延長されようとしている。

 開発するにせよ、機体から設計する必要なんか何もなかったわけだ。速度も航続距離もP-3で問題ない。「日本から遠く離れたところで云々」も、アデン湾でやっているみたいに基地を借りれば済んでしまう。新規開発も、哨戒機なんて中身で勝負の飛行機だから、P-3Cの中身だけ総取替えでも、SH-60みたいにP-8の機体だけ導入でも良かったわけだ。何も見えていない国産兵器を持ち上げる人は怒るかもしれんがね。

 なんにしても、海自は人員が足りない上、予算が減ってきている。要らない艦艇や航空機を切り捨てて、その人員予算をDDや潜水艦、艦載ヘリにまわさないといけないんじゃないのかね。

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予約投稿を誤って、10日に2時間程度公開状態にしたものです。ハイ
2012.11
12
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13:00
Category : コミケ
 2011年夏コミで出した同人の、まえがきです

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 あなるは体を売るべきでしたす。『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない』では、あなるはビッチでなければなりません。売女でなければ、堅物のつまらない女、つることの対比が弱くなります。登場人物で、つるこが隠れてしまったのは、あなるが売女ではないせいです。あくまでも、あなるは股の緩い、ビッチーズの一員であるべきでした。

 あなるは、聖なる娼婦であるべきです。もちろん心は綺麗な娘です。あなるは思いを寄せるじんたんに、家に上がりこみ甲斐甲斐しく尽くすのは当然です。あなるは一途なのです。
 そして、じんたんの夢を叶えるため奔走する。ロケットの費用を稼ぐため、夜も昼もなく春をひさぐ。件の合コン男も、あなるの優しさにほだされて大枚をはたくでしょう。供養に反対するめんま父を肉体で籠絡する。断わる職人さんにもサービスする。優しい娘ですから、悩むぽっぽも肉体で救済する。怖がるぽっぽに「怖がらないでいい」とか言いながらね。

 でも、ゆきあつには決して体を許さない。「じんたんの敵」だから操を立てるのです。いくら言い寄られても、すげない態度でね。そこまで、じんたんに義理立てしても、じんたんは、めんまの面影を追い続ける。でもダメ男だから、あなるとはナアナアの関係も続ける…と、こうすれば、あなるの鏡像としてつるこも生きるのではないかと。

 ゆきあつの心を奪いながらも酷い仕打に出るあなるは、つるこが憎む敵、憎まなければならない敵になります。自分は何もできない、しないのに、事あるごとに、あなるを責め立てるつるこ。体は清いが、その心は濁っている。うん、つるこも動き出しますよ。最後に、二人も纏めて回収するのが、めんま復活とその奇跡ですよ。
 物語冒頭では憎しみあっていた、じんたんとゆきあつ、あなるとつるこがラストでは手をとり和解するのです。すばらしい人間の成長、ドラマはこうでなければならないでしょう。

 ハイ、『あの花』にやられました。異界から客人が来る。客は幸福を与えて帰る。単純な話ですそして、客人が帰った後では、皆は成長している。それがいいのです。

 ま、最終話での演出が少々気になりますがね。定林寺以降のシーンですが、演劇になってしまった。視聴者に説明する演出、セリフによる説明とネタばらしが残念でしたけどね。

 でも『まどかマギカ』に較べれば大した問題ではないですね。過剰なまでの説明をしないと理解できないない物語って、なんでしょうね。『マギカ』ラストは、「奇跡」や「救済」の意味を説明するのに、セリフとナレーションで延々30分ですよ。

 『マギカ』はリアリティ・レベルでも問題があります。「魔女になってしまう」や「魂を抜き取られてしまう」恐怖に、視聴者はリアルを感じない。「現実っぽい」という意味のリアルではありません。その恐怖に「ハラハラしない」わけです。説明臭い上に、キャラクターがどうなるかハラハラしない、没入できない物語ですから、面白くない。やはり『マギカ』は『あの花』には敵しないのです。

 あとは『花咲くいろは』ですか。『花いろ』は、実際に存在していて不思議はないものを並べている。物語で起きることもリアルである。その点『あの花』に近いのです。

 ただ、『花いろ』人物行動がリアルではない感じもありますね。物語で起きる事態も現実の事態ですけど、登場人物が取る行動は、現実では取らない行動でしょうと。登場人物も、役割、行動、発言が定型化され、カリカチュアされている、誇張が過ぎている。

 例えば、お嬢の結名は機械仕掛のピエロです。抜いたほうがスッキリするでしょう。若旦那と次郎丸も二人はいらない。痩せ型、メガネ、優男、そしてダメ男は一人いれば十分です。出すなら、差異を強調すべきです。R2-D2とC-3POみたいにね。その点、母ちゃんの皐月と、コンサルの崇子は差異がクッキリし中々よろしい。辣腕ライターとピンぼけコンサル、ナチュラルとメイク強調、手に負えない女と勘違い女ね。

 なんにしても、登場人物をもう少し絞ればね。お花、みんこ、なこち、女将、母ちゃん、孝一、徹だけを前に出して、あとは背景に押し込めたほうがいいですねえ。

 いや、『あの花』もちろんオススメですよ。ハイ

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 ナマモノなので、まあ3年経つとわからなくなるでしょうねえ。
2012.11
10
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13:00
Category : 未分類
 韓国は慰安婦問題で人権を前に出している。『東亜』最新号で谷口智彦さんが書いている※ のだが、韓国が日本を非難するレトリックで人権を使うようになった。慰安婦問題では韓国は普遍的な人権思想、ジェンダー思想で武装している。韓国の普遍的人権を前に出したシンプルな主張に、英語圏は支持を与える。細部である歴史的真実でどうこう言っても対抗できない。谷口さんはそう言っている。

 実際のところ、韓国が慰安婦問題を持ち出すのは、半ばはナショナリズムをこじらせたゆえの対日非難である。日本を非難しても問題は何も改善しないが、対日非難により自尊心は満たすことができる。谷口さんも記事でこのように述べている。
韓国は、事実としての歴史ではなく、かくあれと信じたい、ないし進んでそう信じることを大義だとすら考える歴史を説き続け、自己洗脳を遂に国民的規模でなしおおせた
   「韓国のレトリックに戦略的洗練」
韓国が日本の苛政に虐げられていた※※ というのは、韓国が自主的に独立を成し遂げたという建国神話への信仰と似たようなものだ。

 しかし、普遍的な思想に裏付けされた単純な主張は強力である。韓国の主張に応じて、米国務長官ヒラリー・クリントンは慰安婦を性奴隷と呼ぶべきと述べた。これは彼女自身の信念がそう言わせたものである。彼女の良心は、慰安婦問題を軽視することはできない。仮に国務長官の立場から、小賢しく同盟国日本に配慮しても、政治的に人権を軽く見ると批判されるだろう。

 慰安婦問題での韓国側主張に対抗するには、この構造を理解しておかないとならないのではないか。慰安婦問題で細部の歴史的事実「強制連行の事実はない」とか「軍による管理売春ではない」を全面に押しだず対抗は、無意味か、却って不利を招く。歴史的事実は、人権問題から言い逃れれる手法にしか見えないからである。

 この点「慰安婦問題で米紙に意見広告 強制連行裏付ける資料なし」は悪手に見える。「作曲家のすぎやまこういち氏やジャーナリストの櫻井よしこ氏ら[神がかり右派の]有識者」の段階で、韓国側に対しては火に油そそぐだけなのだが、米国内世論に対しても悪い影響しか与えない。

 実際に歴史的事実であっても、言い訳にしか見えない。「日本軍による強制連行を裏付ける資料はなく、発見された公文書によれば強制募集や誘拐を禁じていたと訴え」たところで、人権的・ジェンダー的な嫌悪は消えない。そもそも慰安所はあったのだから旗色は悪い。普遍的人権の話に対して、区々たる言い訳をしているようにしか見えないのである。

 歴史的事実による言い訳よりも、人権思想に基づいた対応の方がよい。日本が河野談話等で謝罪し、対応をとった点を前に出すべきではないのか。そして、慰安婦問題を政治的に利用すべきではないと主張したほうが筋が良い。

 韓国に対し、反論も人権の面からすべきである。韓国は慰安婦救済ではなく、政治的に利用しようとしている。それを非難する方法もある。アジア女性基金の時には、韓国国内で受け取りを妨害する運動が起きた。韓国が旧従軍慰安婦救済をよりも、政治問題として利用することを選んだともいえる。そのあたりをほじくり返し、場合によれば再び救済を行い、政治利用しようとする世論と元慰安婦を分断するとかしたほうがよい。



※ 谷口智彦「韓国のレトリックに戦略的洗練」『東亜』(霞山会,2012.10)pp.2-3

※※ もちろん、日本による植民地支配は慈愛に満ち溢れたものではない。朝鮮半島を一方的に利用したものであり、収奪も弾圧もあった。谷口さんもその点について「およそ植民地統治なるものが、そうである程度の非道を含んでいた」と述べ、ヨリ一般化している。

※※※ 産経「慰安婦問題で米紙に意見広告 強制連行裏付ける資料なし」(2012.11.7 12:01)http://sankei.jp.msn.com/politics/news/121107/plc12110712020007-n1.htm
2012.11
09
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13:00
Category : ミリタリー
 尖閣諸島に海自艦艇を出すのは、よいアイデアなのだろうか?

 濱口和久さんは「尖閣有事に対応するための海保の態勢強化を図れ」※ で海保の強化が必要であると指摘している。実際に、海保は慢性的な人で不足である。その上、尖閣諸島での警備行動が加わっており、能力的に限界にあるといってよい。海保強化は早急に解決する課題である。

■ 軍艦を出すべきではない
 しかし、そこで海自艦艇を前進させようとする主張は、妥当とは考えがたい。濱口さんは巡視船に洋上補給設備を作り、尖閣付近で海自給油艦から給油できるようにすべきであるとも主張している。しかし、尖閣付近に海自艦艇を出すことは、中国を刺戟してしまう。

 そもそも、海保を出しているのは、軍事行動ではないことを示すためである。巡視船は、船体にハル・ストライプをつけている。これは、警察力を行使するコースト・ガード組織であることをアピールするためである。その行動が、軍事的行動ではなく、警察行動であることを示すためである。

 補給艦を出した場合、洋上給油の利よりも、エスカレーションの不利が大きい。日本も中国も、軍事的行動ではないことを示すため、ハル・ストライプを付した政府公船を出している。そこに軍艦旗(自衛艦旗)を掲げた軍艦(補給艦)を出すことは、国際社会に日本がヨリ軍事行動にシフトしたという印象を与えてしまう。また、中国も対抗上、軍艦を出さざるを得なくなる。

■ 蛇管と金物の問題でもない
 また「洋上給油が技術的に不可能である」とする指摘は誤りである。

 もちろん、濱口さんが指摘する巡視船の燃料問題は、鋭い指摘である。尖閣での配備は、経済速力で2点を往復するような単純な行動ではない。小競り合いが始まれば、燃費は一気に跳ね上がる。そもそも、予備燃料がなければ小競り合いにも参加できない。巡視船は、燃料が半分になれば帰港せざるを得ない。

 しかし、装備の差異により、洋上給油ができないとする指摘も誤りである。

 濱口さんは「給油口の大きさ・形状の違い」を解決すれば、日米海軍や実施する横曳での洋上給油ができただろうと考えている。
[東日本大震災では]救援活動する米海軍や海上自衛隊の艦艇は、すべて海自の補給艦が洋上で給油していたが、海保の巡視船は給油口の大きさ・形状の違いから、救援活動を中断して港まで帰らなければならなかった。
   濱口和久「尖閣有事に対応するための海保の態勢強化を図れ」http://www.data-max.co.jp/2012/10/31/post_16448_hmk_1.html
しかし、それは正しくない。海保の巡視船が洋上補給できなかった理由は、「給油口の大きさ・形状の違い」といった蛇管、つまり給油ホースの先である金物形状だけではない。問題としては、本質ではなく些少である。

 洋上給油はできなかったのではなく、やるつもりもなかったのである。そもそも海保が本格的な横曳の洋上給油を想定していない。訓練の手間、甲板作業を行う要員を考慮すれば、海保の巡視船には横曳を採用することはできない。そもそも並走しての洋上給油は、器材以上に面倒が多い。互いのジャイロ誤差0.1度まで確認し、紐を引っ張り、適切な距離を保ち続ける必要がある。甲板上での作業にも多くの人手が必要であるが、その人数が巡視船にはない。器材も「給油口の大きさ・形状の違い」だけでなく、ハイラインを受け入れる設備も必要になる。

 逆に、本格的でない洋上補給であれば、今の装備でも可能である。縦曳や接舷給油であれば「給油口の大きさ・形状の違い」は問題にならない。通常の燃料・真水のホースでよい。縦曳は戦前の海軍や、戦後の東側海軍で多用された方式である。効率は悪いものの熟練はいらない。接舷給油は、第二次世界大戦で英海軍が行った方法である。H鋼にタイヤを通した緩衝材を作り、足が短く、運用能力が低い船団護衛艦艇に接舷給油を実施している。天候に左右されるが、技術的にはさらに容易である。とちらも給油側は民間タンカーで充分である。

■ まず乗員が持たない
 尖閣に巡視船を貼り付け続ける上で、一番問題となるのは、むしろ乗員の休養である。同程度の護衛艦に較べ、人員数で半分から1/3に過ぎない巡視船では、燃料補給が必要になる頃には乗員が参ってしまう。巡視船が頻繁に港に戻る理由は、燃料の余裕がないこともあるが、乗員疲労により余裕がなくなることがメインだろう。

 洋上給油だけを実施しても、巡視船の行動能力がもとどおりになるわけではない。ヘリで交代といった方法も考えられるが、艦船勤務者にとって船は住居である。慣れない船に体一つで移動しても、非直時に休養できない。携行できる程度の被服や私物では、すぐに困るし飽きが来る。

 乗員は家にも帰さないといけない。乗員は入港し、出先で休んでも、やはり復活するものではない。出先で休養しても飲むか、あるいは悪い遊びをする程度である。3ヶ月、あるいは半年ならともかく、尖閣での行動が長期になる。士気を維持するためには、なおさら妻子の待つ家に帰さないといけない。

 海自補給艦を出すなら、遠隔地から来た巡視船乗員に官費での休養と帰省手段をあてがった方がよい。民航機のチケットがいいのだろうが、その金がないのなら、海保、海空自衛隊の航空機を使わせるほうがよい。



※ 濱口和久「尖閣有事に対応するための海保の態勢強化を図れ」http://www.data-max.co.jp/2012/10/31/post_16448_hmk_1.html
2012.11
07
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 「殲-31はF-35に勝る」の一節を書かねばならなかったのだろう。香港誌『鏡報』最新号※、梁さんの「『雪鴞』為何令美国打寒顫」だが、国産機を肯定的に書かなければならないので苦労している様子。なんにしても、殲-35は飛行映像がもたらされたばかりであり、詳しいことは何もわからない。それを褒める方向に持っていくのは容易ではない。

 どこの国も、国産機は褒めないとファンは怒る。国産機を紹介するときには、その利を褒めて、その不利に触れない。

 殲-31では梁さんは頑張っている。殲-31が間違いなくいい飛行機であれば苦労はしない。しかし、海山ともつかない機体である。良かった探しをしてどこか褒めなければならない。

 数少ない写真や、噂レベルの情報の中から、殲-31が優れた機体であろうことを述べている。「殲-10『速龍』や殲-20『威龍』といった従来の龍シリーズとは違う」と述べて、画期的である点を暗示している。また「艦載機に発展する余地がある」として、アレスティング・フックを伸ばした想像CGを最初に提示している。「機体番号の桁が増えている」とも述べ、実用機として大量整備に繋がる点も暗示している。

 これらが根拠に乏しいことは、梁さんも承知しているのだろう。名前の付け方が龍から猛禽類に変った点、なるほど進化かもしれないが、具体的な能力向上を伺わせるものではない。次に龍に戻る可能性も捨て切れない。艦載機云々といった話も航母熱の名残だろうが、艦載機の実運用経験を積まない段階では絵空事である。機体番号の桁数増加も、なんとも言いがたい。実戦配備をしてみて成果を見ないことには、大量整備の可否は判然としない。

 しかし、商業的には「国産機が優れている」と無難に書かねばならない。言論は金を出す読者に応じたものであり、読者を喜ばせなければならない。このため、国産機について述べるときには褒めなければならない。広告主が出すPR記事と同じで、良い所を徹底的に褒め、悪いところは触れてはならない。これは日中で変わらない。F-2ができた時も、雑誌ではその利だけが書かれ、不利や凡庸はないもののように書かれた。

 ただ、殲-35は分からない点が多く、その仔細は全くわからない。しかし、読者は、航空機、軍艦、戦車のマニアは大抵が、どうでもいいような細部の情報を求める。読者の要求に基づき、ディテールが明らかでない機体について、その細部に至って褒めるのは、やはり大苦労である。

 梁さんは、細部についてはコストとデザインでF-35に勝ると褒めている。頑張った成果なのだろうが、牽強付会であるようにしか見えない。

 コストでは、梁さんは「日本がF-35を調達する価格の3割」としている。日本のF-35が2-3億米ドルであるのに対して、殲-31は0.6-0.8億ドルと述べている。
 だが、どちらの価格もまだハッキリしていない。実際、日本のF-35調達価格は23年度から24年度予算で跳ね上がっている。そもそも中国では、航空機生産のコストが明確にはなっていない。日本のF-35がさらに高騰する可能性もあるので、なんとも言えないが希望的観測にすぎる。

 また、相当苦心している様子だが、F-35への優位性をデザインでも示している。「高速兼霊活 戦力勝F-35」と、6つの点で優れるとしているのだが「双発であるので単発よりもポテンシャルが高い」程度の話である。
 6つの点は、次のとおりになっている。
・第一に、[F-35に比べて]機体が滑らかで主翼が薄い。速力と敏捷性で勝る。
・第二に、殲-20のエンテ型[鴨翼]をやめたので、発達の余裕がある。
・第三に、双発機なので単発機のF-35より優位にある。
・第四に、中国の新型レーダを使用している。[だから今までみたいな不利はない、と言いたいのだろう]
・第五に、能力向上に成功した渦扇-15エンジンに載せ替えられる。
・第六に、多用途化・汎用化のために妥協したF-35に対して、速力、ステルス性で優れる。
 文意としてつばがりにくい部分もあったが、そこはF-35に優れた点であると推測して[ ]の中に足してみた。

 いずれにせよ、国産機の不利は書けないのである。不利はいくらでも思いつく。戦闘機単体でみても、アビオニクスやエンジン技術で米国に並ぶ力がない点、航空戦でのノウハウ不足があり、それが設計からソフトウェアまで足を引っ張っている可能性、兵装での遅れがある。背景にも、システムとしての空軍力の遅れ、例えば実用AWACSがまだないあたりを指摘するのは、読者は喜ばない。それが真実であればあるほど不機嫌になる。これもどこの国でも同じことだ。

 むしろ、梁さんの記事で注目すべきは、輸出可能性への指摘である。大意であるが「殲-31は売れる。ステルスがほしいが、ステルスを売ってくれない国。しかも、隣国がステルスを持っている国には、売れる」は、大いに参考になる指摘である。

 売れる可能性のある国として、パキスタン他を挙げている。パキスタン、サウジアラビア、ブラジル、アルゼンチン、ヴェネズエラ、エジプト、インドネシアである。特にパキスタンについては、F-35は買えそうもない。しかし、不倶戴天の敵、インドがロシアとステルスを開発している状況である。パキスタンも第四世代機体を買わなければならないと考えるだろうと言っている。

 その国の国産機を取り上げる記事は、PR記事そのものになる。実際には不本意な内容であっても、また海山つかないものであっても、良かった探しをしなければならない。だが、その合間合間には、本人が主張したいことがあるのだろう。この記事では、それが殲-31の輸出可能性がそれだと見るのである。


※ 梁天仞「『雪鴞』為何令美国打寒顫」『鏡報』(鏡報文化企業公司,2012.11)p.p78-81
2012.11
05
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Category : 有職故実
 海自教育部隊では「総員◯名、現整列員◯名、事故◯名、事故の内訳…」と整列時に報告する。やたら面倒くさいと思っていたら、やはり旧陸軍系要領※ である様子。

 額田さんの「海軍の言語生活」※※ にはそのように書いてある。この記事は、1960年代の『言語生活』という雑誌で見つけたものだ。額田さんは、交代要領について、陸式のアレと海式の「よろしい」「◯◯分隊」との差異が述べられていた。

 確かに、部隊では「総員◯名…」なんて使わない。整列時の報告は「よろしい」か「◯◯隊」だった。「みんな揃っているよ」と報告する場合(防火隊整列なんかだね)は単に「よろしい」である。儀式や課業整列での各隊各科での報告も「◯◯隊」とか「◯◯科」というだけ。

 報告様式の差異であれば、当直交代も陸海で隔絶している。額田さんは気づいていない様子であるが、交代要領が全くことなる。

 海だと「当直士官交代します」「交代しました、◯◯3佐」と届ければOK。航海中の当直士官なら、速力と針路を付け加えるが「両舷前進原速赤黒なし、針路230度、マグネット237度」と続ける程度。あとは互いに申し次ぐだけ。

 これが陸になると七面倒臭かった。陸の学校や統合部隊でさんざん当直をやったのだが「勤務に関する件、遺漏なく申し受け上番します」と言わなきゃならない。初手ではこの言葉を覚えるのだけでも苦労した。

 そもそも、海と陸空が違うなんて、お互いに全く知らない。陸自施設学校での課程2日目、つまり最初の当直学生交代が海同士だったのだが「当直学生交代します」「交代しました文谷2尉」とやったのだが、課程主任にこっぴどく叱られた。新着の課程主任も知らなかったわけだ。

 体操が違うことも互いに知らない。「自衛隊体操もできないのか」と呆れられたが、海自は「膝を曲げ伸ばせ」で始まる旧海軍体操をアレンジしただけの「海上自衛隊第1体操」しかやらない。「その場駆け足」から始まる自衛隊体操なんか存在もしらない。

 施設学校では、体育係が海自だったので、試しに第1体操やらせたら、陸空も教官もやっぱりできない。まとめた運動(別名いかれた運動)は「それは本物の運動か」とまで疑われた。

 ラッパも違った。国旗降下でのラッパを理解できず、それでも怒られた。だいたい「国旗効果は日没時」だと思っている。まだ日も出ている夏の午後5時に聞いたことのないラッパがなっても「課業やめ」にしか聞こえない。その時のラッパの「君が代」も、旧陸海軍の差で違う。国旗降下の時間もラッパも違うのだから最初は仕方ない。

 悪意があって怒られるならわかるのだけどね。どうしようもない講話の時に、手先信号とか手旗(指でやる)していた時にも怒られた。悪口を言っていたと思われたのだが、実際にそうだったから有罪だ。たぶん、いつもの通り、手先信号で「飯まだか」とか「急げ」、手旗で「オワレ」「子ムイ」みたいな悪口を言っていたはずで、それは怒られて当然なんだがね。

 ただ、後々の当直交代で「遺漏なく上番いたし候」と言ってしまったのは、わざとではない。とはいえ、ふざけていると怒られたのだが、それは日頃の行いだったのだろう。




※ 「物干場(ブッカンバ)」「煙管(エンカン、灰皿)」あたりは防大が持ち込んだんじゃないかね。海軍は訓読み、やまとことば主体で、漢語の音読みはしない。そもそも、エンカンは旧海軍だと同音異義で円管服(ボイラ整備服)の「円管」があるので衝突して使い難い。実際に防大と関係ないあたり、古い練習員あがりだと旧海軍と同じ「煙草盆(タバコボン)」を使っていた。

※※ 額田淑「海軍の言語生活」『言語生活』(1960.11,筑摩書房)pp56-61.
2012.11
03
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Category : ミリタリー
 OTOが76mm誘導砲弾を作るとのこと。最新のIDR※ によると、76mm版Volcanoを2015年までに生産を開始するとのこと。最大射程は40kmまで到達するという。検索してもあまり出てこないが、まずはこんな内容

 これが使い物になれば、76mmでピンポイントな攻撃ができる。艦載砲は陸砲より弾殻重量が大きい。終速次第だが、トーチカ、戦車その他も撃破できるのではないか。

 Volcanoを使えれば、「ゆき」のような76mm砲を搭載した艦艇での艦砲射撃も侮れなくなる。通常の76mm砲弾でも空中爆発させば暴露人員、ソフトスキンにはそれなりに威力がある。しかし、それなりの築城があれば効果は期待できない。しかし、ピンポイントで命中できれば話は別である。また射程も大きく伸びる。通常砲弾では、射程はいいところ15kmであり、海岸際しか攻撃できないが、予定されるBER弾では30km、GLR弾薬では40kmまで伸ばすという。

 さらに、対水上射撃にも使えるのではないか。GLR弾薬はGPSとINSで誘導される。その発展系として、GLR /EO弾薬も計画されている。遮蔽できる地物がない海上で、艦船を狙うのは容易だろう。最大射程40km近くになるとFCS側から光学照準ができなくなり、方位もレーダで狙うので相当甘くなる問題があるが、EOで目標を捕捉できれば問題はない。

 威力も大きくなる。76mm砲での対水上射撃は、まずVT※※ (海自では「フラッシュ」という)が多く使われる。弾が多少外れていても、空中爆発させればそれなりの効果は見込める。信管を遅延、あるいは瞬発することもあるが、命中精度から第二選択である。これが必中の誘導砲弾であれば、最初から遅発とし、船体にめり込ませ、中から破壊できる。

 IDRによれば、2015年に初期生産を始めるとのこと。2012年中に砲弾形状のテストを終わらせ、BER砲弾の要目を決定する。真打のGLRについては、2013年に要目が決まるとのことなので、生産開始は10年代後半になるだろう。



※ "Feature Naval guns""IHS Jane's International Defence Review" (IHS,2012.10)p.40
※※ 最近は、精密になり、発射時に砲口で設定できる時限信管が復活している。だからVTとは言い切れない。
2012.11
02
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19:15
Category : ナショナリズム
 離島上陸訓練中止は、なかなかの妙手ではないか。

 日米共同演習で、日本政府は離島上陸訓練取りやめ※ を決定した。それを※※ 弱腰となじる論調もある。

 だが、中国の行動と較べてみると、上陸訓練中止は面白いオプションに見える。

 実際には、中国の行動も軟化しつつあるためである。中国は政府公船で日本が主張する領海に侵入するものの、半日も居座ることもない。25日は3時間程度で、本日2日は15分程度で退去している。尖閣諸島国有化以降、7回侵入しているが、間隔も開いているように見える。

 日本の離島上陸訓練取りやめは、中国の軟化を受けてのものではないのか。中国が事態をエスカレーションさせなければ、日本は眼鼻の先で露骨な演習はやらないというシグナルを送ったものにも見える。

 また、中国のエスカレーションを防ぐ目的も見える。中国も国内世論※※※ がある。尖閣諸島で日本に対して引くことはできない。公船を派遣し、時折アリバイ的に日本が主張する領海に侵入しなければ、政権は弱腰となじられる。

 仮に、日本が眼鼻の先で上陸演習をやれば、中国もエスカレーションせざるを得ない。例えば領海居座り、あるいは上陸である。日本にとっては、どちらも面倒この上ない事態である。

 中国による領海居座り、上陸はどちらの利益にもならない。中国にとっては、最終的には排除されてしまう可能性が高い。日本にとっては、排除できたとしても、平穏な実効支配の実績が今以上に失われてしまう。

 そもそも、日中両政府にとって、尖閣での過度な緊張は望ましいものではない。今の緊張関係は、両者にとって何の利益も産まない。あまりこういう言葉は使いたくないが、ゼロサムゲームですらない、ルーズ・ルーズの状態である。

 尖閣諸島での緊張緩和に繋がるのであれば、上陸訓練中止は悪いオプションではない。上陸訓練中止は、領土での妥協ではない。

 どうでもいい訓練を止めることにより、中国にシグナルを送るのは妙手である。上陸訓練は、やる気になればいつでも実施できる。中国の眼の前であっても、離れたところでも自在である。中国向け、尖閣諸島問題向けの訓練を中止しても、日本は困ることはない。逆に「中止した」点で、ゲームでの信頼を得ることができれば安い買い物だろう。



 …車のなかで領海侵入のニュースを聞いたのだけど。なんというか、国内工作向けのアリバイ工作臭いなと思ってね。上陸演習中止とリンクさせると、案外、ココらへんで日中に暗黙の了解ができつつあるんじゃないかと思ったよ。で、パパっと書いて、ナマモノなので即時投稿した次第。



※ NHK「日米 離島上陸想定の洋上訓練実施へ」http://www3.nhk.or.jp/news/html/20121031/k10013133441000.html
「日米両政府は、当初、その一環として、沖縄県の離島で敵に奪われた島を奪還することを想定した上陸訓練を検討していましたが、尖閣諸島の問題を巡って中国との関係が悪化するなか、必要以上に日中間のあつれきを高めることは好ましくないなどとして、見送ることにしました。」

※※ 宮家邦彦「野田首相、あなたもか…日米共同演習 無神経な突然中止」http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/politics/politicsit/603130/
「[野田政権は]大局的、戦略的考慮を欠いたまま、政治主導の名の下、無責任な判断を無神経に[下した]」

※※※ 国民国家は領土問題で妥協することはできない。国民国家にとって領土は神聖であり、妥協した場合には政府は持たない。これは、中国も日本も同じである。
2012.11
02
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Category : コミケ
 冬コミのお知らせ

・「陸上戦力は10万あれば充分じゃね」本
  明治期の本土防衛は5万、海外派遣でも、ちょっかい出しまくりのフランス陸軍で13万

・「LCSは失敗だったんじゃないかな」本
  できることの割に高すぎるし、モジュールもアレだし

 あと、1種類は例の折本を作る予定です

 ま、新刊の1冊は毎回できるので、今回もできるでしょう。
2012.11
02
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Category : 有職故実
 昭和30年の新聞で見つけた話。小菅の拘置所から鉄格子切って脱獄した人なんだが、その目的は母に会うためというもの。これは親孝行の一種だろう。

 今でも有名な事件である様子。グーグルで「脱獄 ◯◯」と、彼の苗字を入れると、そのまま名前まで出てくる。ほぼ新聞記事と同じ内容がでてくる。ただし、捕まったのは22日ではない。新聞によれば昭和30年5月に5月11日に脱獄、21日に捕まっている。

 脱獄自体は、彼の兄が差し入れた金ノコで鉄格子を切るというもの。脱獄後、彼の兄は逮捕、おそらく別件で引っ張られている。彼は脱獄後、鉄道を使い春日部まで無賃乗車、そこから歩いて栃木まで移動している。

 注目するのは、脱獄そのものではない。脱獄の理由が母に会うことにある。そして、とっ捕まえた警察が母に会わせてやったということ。その時に、実家の飯を食わせてやったことにある。

 彼は、重罪を犯したものの、親孝行でもあった。母のことを考えると居てもたってもいられなかったのだろう。そして、実家で張り込んでいた警察も親に会わせてやった。親に一目会いたいという気持ちを認めたものだ。家に上げてやり、10分ほと話をさせ、食事も許したという。

 彼を母に会わせたことは、正しい行動である。法理に適っているかはしらない。しかし、人倫の道に従った行いである。警察官であっても、刑務官であっても人倫を無視することは許されない。

 脱獄の理由が「母に会いたい」であるのだ、会わせないのは人情にもとる。もちろん、罪は罪であるし、脱獄も許される話ではない。しかし、果たして実家に駆け込んだ脱獄囚を、母に会わせないのは血肉の通った人間のやることではない。

 張り込んだ警察が彼を憎んでいたかどうかは知らない。しかし、憎んでいても、念願叶い、実家までたどり着いた彼をおっ母さんに会わせないのでは、警察は人でなしである。法理には適っているかもしれないが、人として正しくはない。禽獣の行いである。当時、なお不浄役人と嫌われた警察官も刑務官も、禽獣であることは許されない。

 論語にも「政は正なり」とある。法理がどうであろうと、最後に母に会いたいとする子の願いを曲げることは正しくはない。その場の正義は、孝行を許すことにある。法理を優先し、西欧的な法=Law=正義を機械的に振り回し、すぐに連れ去るのは「正」に反する。

 彼の脱獄は、法は許さない。しかし、人情としては許さねばならない。母に一目会いたいと、警吏の待ち伏せる実家に向かうのは、刑から逃げようとする心ではない。親に寄ろうとする子の心が現れたものだ。己の罪により母に不孝をなし、それを詫びるのは、むしろ称揚すべき行為である。