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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2012.11
05
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Category : 有職故実
 海自教育部隊では「総員◯名、現整列員◯名、事故◯名、事故の内訳…」と整列時に報告する。やたら面倒くさいと思っていたら、やはり旧陸軍系要領※ である様子。

 額田さんの「海軍の言語生活」※※ にはそのように書いてある。この記事は、1960年代の『言語生活』という雑誌で見つけたものだ。額田さんは、交代要領について、陸式のアレと海式の「よろしい」「◯◯分隊」との差異が述べられていた。

 確かに、部隊では「総員◯名…」なんて使わない。整列時の報告は「よろしい」か「◯◯隊」だった。「みんな揃っているよ」と報告する場合(防火隊整列なんかだね)は単に「よろしい」である。儀式や課業整列での各隊各科での報告も「◯◯隊」とか「◯◯科」というだけ。

 報告様式の差異であれば、当直交代も陸海で隔絶している。額田さんは気づいていない様子であるが、交代要領が全くことなる。

 海だと「当直士官交代します」「交代しました、◯◯3佐」と届ければOK。航海中の当直士官なら、速力と針路を付け加えるが「両舷前進原速赤黒なし、針路230度、マグネット237度」と続ける程度。あとは互いに申し次ぐだけ。

 これが陸になると七面倒臭かった。陸の学校や統合部隊でさんざん当直をやったのだが「勤務に関する件、遺漏なく申し受け上番します」と言わなきゃならない。初手ではこの言葉を覚えるのだけでも苦労した。

 そもそも、海と陸空が違うなんて、お互いに全く知らない。陸自施設学校での課程2日目、つまり最初の当直学生交代が海同士だったのだが「当直学生交代します」「交代しました文谷2尉」とやったのだが、課程主任にこっぴどく叱られた。新着の課程主任も知らなかったわけだ。

 体操が違うことも互いに知らない。「自衛隊体操もできないのか」と呆れられたが、海自は「膝を曲げ伸ばせ」で始まる旧海軍体操をアレンジしただけの「海上自衛隊第1体操」しかやらない。「その場駆け足」から始まる自衛隊体操なんか存在もしらない。

 施設学校では、体育係が海自だったので、試しに第1体操やらせたら、陸空も教官もやっぱりできない。まとめた運動(別名いかれた運動)は「それは本物の運動か」とまで疑われた。

 ラッパも違った。国旗降下でのラッパを理解できず、それでも怒られた。だいたい「国旗効果は日没時」だと思っている。まだ日も出ている夏の午後5時に聞いたことのないラッパがなっても「課業やめ」にしか聞こえない。その時のラッパの「君が代」も、旧陸海軍の差で違う。国旗降下の時間もラッパも違うのだから最初は仕方ない。

 悪意があって怒られるならわかるのだけどね。どうしようもない講話の時に、手先信号とか手旗(指でやる)していた時にも怒られた。悪口を言っていたと思われたのだが、実際にそうだったから有罪だ。たぶん、いつもの通り、手先信号で「飯まだか」とか「急げ」、手旗で「オワレ」「子ムイ」みたいな悪口を言っていたはずで、それは怒られて当然なんだがね。

 ただ、後々の当直交代で「遺漏なく上番いたし候」と言ってしまったのは、わざとではない。とはいえ、ふざけていると怒られたのだが、それは日頃の行いだったのだろう。




※ 「物干場(ブッカンバ)」「煙管(エンカン、灰皿)」あたりは防大が持ち込んだんじゃないかね。海軍は訓読み、やまとことば主体で、漢語の音読みはしない。そもそも、エンカンは旧海軍だと同音異義で円管服(ボイラ整備服)の「円管」があるので衝突して使い難い。実際に防大と関係ないあたり、古い練習員あがりだと旧海軍と同じ「煙草盆(タバコボン)」を使っていた。

※※ 額田淑「海軍の言語生活」『言語生活』(1960.11,筑摩書房)pp56-61.
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