Category : ミリタリー
今、日本に上陸戦をかませる国がどこにあるのですかね。
ゆとり上陸作戦の人が、10式戦車がないと国が滅ぶとか言っていたのです。10式の必要性として「[日本の]戦争継続目的がアメリカ軍の救援が到着するまで橋頭保を確保し続けること」と言っている。しかし、これって相当に古い感覚ではないですかね。
今日、日本本土に攻め込める国はないことを理解していない。しかも、日本単独で対処できず、米軍の増援を待つほど強力な上陸軍を送り込める国なんてないでしょ。政治的にも日本本土に攻め込もうとする国はない。軍事的にも、中国にもロシアにもその能力はない。冷戦期、極東ソ連軍と対峙していた時代ならともかく、ソ連崩壊以降に日本本土上陸の脅威を持ちだしても、今更な話です。
その上、「アメリカ軍の救援が到着するまで」持ちこたえると悲壮感に浸っている。これは、70-80年代の、平和憲法に縛られた弱体な自衛隊という感覚そのものです。悲壮感の発露は、80-90年代の自衛隊増強と、ソ連崩壊以降の東アジアの現状を理解していない事を示すものでもあります。
日本に上陸してくるにしても、そもそもが、ゆとり上陸理論です。例えば「[日本海空戦力を]完全に撃滅せずとも局所的な優勢の元での揚陸は可能です。」や「周辺国の軍隊のうち2つは空挺戦車まで降りてきます。」といったあたりです。
局所的な優勢程度で対日上陸戦はできません。上陸作戦に必要な、制海と絶対的な航空優勢を理解していません。策源地から上陸海岸までの制海と、制空権といってもいいほどの絶対的航空優勢がなければ上陸作戦はまず不可能です。航空優勢という言葉が好きな御仁ですが、防御側も一時的・局所的な航空優勢をとれば、上陸海岸や上陸船団に打撃を与えることができることを理解していないのでしょう。日本側F-2やP-3が持つ、強力な対艦攻撃戦力の意味がわかっていないのです。
また、空挺部隊で日本に侵攻できるという発想も、ゆとり空挺作戦でしょう。日本への大規模空挺作戦は、上陸戦以上に困難です。大規模な空挺作戦こそ、絶対的な制空権なしにはできるものではありません。それこそ、防御側の一瞬の隙をついた攻撃ですべてオジャンになってしまう作戦です。上陸作戦もそうですが、空挺作戦は一回こっきりの輸送で終わるのではなく、その後も補給物資を送り続けなければならないわけです。日本相手の戦いで、その間、ずっと「局所的な優勢」を維持できると考えるのは、相当に甘い考えです。
旧ソ連やロシア通とのことですが、そもそも旧ソ連の空挺作戦は、国内の辺境への緊急展開や、第三世界への介入を狙った発想です。戦前ソ連が考えた、航空輸送の軍事的応用が空挺作戦です。今もそうですが、国内交通網が未発達なソ連は航空輸送に頼るしかなかったわけです。戦後も第三世界や衛星国への介入が、ソ連空挺部隊の大きな目的でした。この辺りは、80年代のソビエト・ミリタリー・スタディでデサント概念としてよく出ていた話です。ロシア軍事通を自負しながら、デサントの概念に弱いことは、対空挺地雷の件でも露見しています。
何にせよ、対日上陸戦が可能でなければ、大事な10式戦車の必要性がアピールできないので困るのでしょう。対日上陸戦が可能であることを、支持者に仄めかすために、MLPを持ってきています。
しかし、MLPを用いた上陸戦は、米軍でなければできないことです。形だけ作っても駄目で、海上に暴露し、不動のMLPを敵海空戦力から保護できなければ、敵前上陸には使えたものではありません。
また、MLPで輸送での不効率も言及していないのは、海上輸送や港湾荷役をご存じないのでしょう。「ホバークラフトとヘリコプターによる港湾以外への揚陸が可能となります。」「MLPとAFSBはその後に直ぐ続いて揚陸に参加し、港湾を使用せずとも上陸部隊を支え続ける事が出来ます。」と書いています。しかし、大した量を詰めないACVやヘリでの往復輸送は、かつての沖仲仕そのもので、不効率です。
沖掛かりから、ACV等での往復は、港湾やビーチングと代替できるものではありません。実際に「おおすみ」型輸送艦以降、海自は硫黄島への輸送でホバークラフトの低い輸送能力に難渋しています。「みうら」や「ねむろ」では、硫黄島輸送分の貨物はビーチングにより半日で卸せました。しかし、おおすみ+ACVでは、同量を1日で捌けず、積み残しも生じています。ACVやヘリの往復では、よほど多数を揃えない限りは、大規模な部隊を内陸侵攻させる輸送能力は実現しません。米軍でも、MLPで師団級の内陸侵攻部隊を支える貨物を捌くことは難しく、また経済的に許容できるものでもないでしょう。
10式戦車に目が眩み、戦争全体を展望する視点を失ったのです。周辺国による日本への上陸戦は不可能です。蓋然性もないのですが、上陸戦を行なっても、日本海空戦力の前に頓挫します。さらに、奇跡的に上陸部隊が揚がって来たとしても、その後が続かないのでは、春の雪のように直ぐに溶けて消えてしまいます。ディエップでは戦車が揚がって来たと力説しますが、その戦車は日本で言う独混旅団程度に行きあたり溶けて消えてしまったわけです。
10式があってもなくても同じ事です。すでに戦車定数の9割は90式戦車で占められています。90式と10式には大差はありません。まず、90式で勝てなければ、10式でも勝てません。10式でなければ、90式であれば日本が滅ぶということはないことです。
ゆとり上陸作戦の人が、10式戦車がないと国が滅ぶとか言っていたのです。10式の必要性として「[日本の]戦争継続目的がアメリカ軍の救援が到着するまで橋頭保を確保し続けること」と言っている。しかし、これって相当に古い感覚ではないですかね。
今日、日本本土に攻め込める国はないことを理解していない。しかも、日本単独で対処できず、米軍の増援を待つほど強力な上陸軍を送り込める国なんてないでしょ。政治的にも日本本土に攻め込もうとする国はない。軍事的にも、中国にもロシアにもその能力はない。冷戦期、極東ソ連軍と対峙していた時代ならともかく、ソ連崩壊以降に日本本土上陸の脅威を持ちだしても、今更な話です。
その上、「アメリカ軍の救援が到着するまで」持ちこたえると悲壮感に浸っている。これは、70-80年代の、平和憲法に縛られた弱体な自衛隊という感覚そのものです。悲壮感の発露は、80-90年代の自衛隊増強と、ソ連崩壊以降の東アジアの現状を理解していない事を示すものでもあります。
日本に上陸してくるにしても、そもそもが、ゆとり上陸理論です。例えば「[日本海空戦力を]完全に撃滅せずとも局所的な優勢の元での揚陸は可能です。」や「周辺国の軍隊のうち2つは空挺戦車まで降りてきます。」といったあたりです。
局所的な優勢程度で対日上陸戦はできません。上陸作戦に必要な、制海と絶対的な航空優勢を理解していません。策源地から上陸海岸までの制海と、制空権といってもいいほどの絶対的航空優勢がなければ上陸作戦はまず不可能です。航空優勢という言葉が好きな御仁ですが、防御側も一時的・局所的な航空優勢をとれば、上陸海岸や上陸船団に打撃を与えることができることを理解していないのでしょう。日本側F-2やP-3が持つ、強力な対艦攻撃戦力の意味がわかっていないのです。
また、空挺部隊で日本に侵攻できるという発想も、ゆとり空挺作戦でしょう。日本への大規模空挺作戦は、上陸戦以上に困難です。大規模な空挺作戦こそ、絶対的な制空権なしにはできるものではありません。それこそ、防御側の一瞬の隙をついた攻撃ですべてオジャンになってしまう作戦です。上陸作戦もそうですが、空挺作戦は一回こっきりの輸送で終わるのではなく、その後も補給物資を送り続けなければならないわけです。日本相手の戦いで、その間、ずっと「局所的な優勢」を維持できると考えるのは、相当に甘い考えです。
旧ソ連やロシア通とのことですが、そもそも旧ソ連の空挺作戦は、国内の辺境への緊急展開や、第三世界への介入を狙った発想です。戦前ソ連が考えた、航空輸送の軍事的応用が空挺作戦です。今もそうですが、国内交通網が未発達なソ連は航空輸送に頼るしかなかったわけです。戦後も第三世界や衛星国への介入が、ソ連空挺部隊の大きな目的でした。この辺りは、80年代のソビエト・ミリタリー・スタディでデサント概念としてよく出ていた話です。ロシア軍事通を自負しながら、デサントの概念に弱いことは、対空挺地雷の件でも露見しています。
何にせよ、対日上陸戦が可能でなければ、大事な10式戦車の必要性がアピールできないので困るのでしょう。対日上陸戦が可能であることを、支持者に仄めかすために、MLPを持ってきています。
しかし、MLPを用いた上陸戦は、米軍でなければできないことです。形だけ作っても駄目で、海上に暴露し、不動のMLPを敵海空戦力から保護できなければ、敵前上陸には使えたものではありません。
また、MLPで輸送での不効率も言及していないのは、海上輸送や港湾荷役をご存じないのでしょう。「ホバークラフトとヘリコプターによる港湾以外への揚陸が可能となります。」「MLPとAFSBはその後に直ぐ続いて揚陸に参加し、港湾を使用せずとも上陸部隊を支え続ける事が出来ます。」と書いています。しかし、大した量を詰めないACVやヘリでの往復輸送は、かつての沖仲仕そのもので、不効率です。
沖掛かりから、ACV等での往復は、港湾やビーチングと代替できるものではありません。実際に「おおすみ」型輸送艦以降、海自は硫黄島への輸送でホバークラフトの低い輸送能力に難渋しています。「みうら」や「ねむろ」では、硫黄島輸送分の貨物はビーチングにより半日で卸せました。しかし、おおすみ+ACVでは、同量を1日で捌けず、積み残しも生じています。ACVやヘリの往復では、よほど多数を揃えない限りは、大規模な部隊を内陸侵攻させる輸送能力は実現しません。米軍でも、MLPで師団級の内陸侵攻部隊を支える貨物を捌くことは難しく、また経済的に許容できるものでもないでしょう。
10式戦車に目が眩み、戦争全体を展望する視点を失ったのです。周辺国による日本への上陸戦は不可能です。蓋然性もないのですが、上陸戦を行なっても、日本海空戦力の前に頓挫します。さらに、奇跡的に上陸部隊が揚がって来たとしても、その後が続かないのでは、春の雪のように直ぐに溶けて消えてしまいます。ディエップでは戦車が揚がって来たと力説しますが、その戦車は日本で言う独混旅団程度に行きあたり溶けて消えてしまったわけです。
10式があってもなくても同じ事です。すでに戦車定数の9割は90式戦車で占められています。90式と10式には大差はありません。まず、90式で勝てなければ、10式でも勝てません。10式でなければ、90式であれば日本が滅ぶということはないことです。
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