fc2ブログ

RSS
Admin
Archives

隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

→ サークルMS「隅田金属」
→ 新刊・既刊等はこちら

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Powered by fc2 blog  |  Designed by sebek
2013.03
07
CM:1
TB:0
13:00
Category : ミリタリー
 交通安全協会への加入勧誘は「警察の天下り先確保のため」というのは国民の思いあがりです。警察の交通安全活動を維持するためであり、日本国民のためと言えるからです。

 桜林美佐さんの理屈を借りれば、そのように言える。ただし、実際にそんな間抜けなことを言えば、掩護射撃のつもりで味方を背射することになる。

 桜林美佐さんは、援護のつもりで味方を撃っている。F-35に関係する武器輸出三原則緩和の件を、「防衛産業の利益を見越してではなく、日本国民のため」と言っている。桜林さんが「防衛産業の利益」と言い出すことによって、防衛産業は痛くもない腹を探られる。そのうえ「国民のため」と説教臭いことを言えば、反発をもたらすだけだ。

 「F35のイスラエル輸出に」※ である。
そんなことはともかく、日本のF35導入に伴い、国内で修理や製造をした部品がイスラエルなどに輸出される可能性があり、そうなると「武器輸出3原則」に反するのではないかと言われていましたが、官房長官談話により、これは3原則の例外となりました。

このことについてはインタビューを受けたり、週明け月曜の夕刊フジ「ニッポンの防衛産業」にも書きましたが、「日本の防衛産業のために」などという表現は国民の思い上がりと言ってもいいのではないでしょうか。

これは、日本の戦闘機の可動率を維持するためであり、それは航空自衛隊ひいては日本国民のため、と言えるからです。

防衛生産・技術基盤の維持は「誰のためなのか」、これが崩れると「誰が困るのか」このことが、どうも、まだ完全に理解されているとは言い難い気がしています。

企業は現時点では、防衛部門を維持するべく奮闘していますが、いよいよ追い詰められれば撤退することは、そう難しくはありません。

桜林美佐「F35のイスラエル輸出に」http://ameblo.jp/misakura2670/entry-11481413716.html なお、改行は詰めた
この「一部の業界のためではない、国民のためだ」という理屈は、10年ほど前の、交通安全協会を擁護する理屈そのものだ。訴求力を持たないだけでなく、反発を招くような内容になってしまっている。

 まず、桜林さんが代理人を自認している防衛産業や防衛行政にとっても逆効果になる。国民のため、国防のために、イスラエルへの輸出が必要だという理屈は、防衛産業や行政にとって敬遠すべき理屈である。実際に、そのような主張は桜林さん以外にはない。

 防衛産業も、防衛省も、政府もF-35の部品をイスラエルに輸出したい気持ちはない。政府ほかもイスラエルほかに渡る可能性を努めて回避し、日本で生産できるメリットを活かそうとしているのが実態である。三原則緩和も、利益、雇用を確保するメリットを生かすためのものである。戦闘機がF-35になり、話が上手くまとまり国際共同生産に参加できるようになった。それが防衛側の利益だけではなく、国内に金が落ち、雇用も確保できる点を見込めることを大きなメリットと見た。イスラエルほか紛争当事国の手に渡るのはデメリットである。そのデメリットは回避しようとしている。

 イスラエルに日本製部品が渡る懸念であるが、そうならないように工夫する政府は言っている。アメリカにお願いして、日本製部品がイスラエルに回らないように努力するとしている。あるいは、どの部品がどの国に渡るか、渡ったかをウヤムヤにして日本製だとわからないようにするようにもするだろう。

 桜林さんの記事は、これらを全く無視している。「イスラエルに渡せるように三原則を緩和した」、「稼働率維持のためにはつまらない感情的反発を抑えるのがリアリズム」といったニュアンスで書くのは、防衛産業や行政、政府の立場を踏まえていない。そして「お前たち国民のためだよ」と説教臭く説くのは、擁護のつもりで擁護になっていない。

 桜林さんのテーマである防衛産業・自衛隊擁護であっても、それを恩着せがましく「国民のため」といってしまえば、擁護にはならない。かつての銀行への公的資金注入や、日航立て直しのための政府援助、東電への債務保証やクレジット供与のようなものだ。国民生活で必要になる内容であっても、説教臭く、居丈高に説明しても反発するだけである。

 なにより、武器輸出三原則緩和は、それをしなければ防衛産業が滅びるといったものではない。防衛産業は、銀行や日航や東電が置かれていた危機的状況にはない。

 逆に、日本製兵器を輸出するためには、国産品偏重を改めなければならないこともあるだろう。日本が輸出を図るとすれば、外国製兵器への、ヨリ進んだ門戸開放も求められる。特に、外国が日本製兵器を買ってくれる条件として、買ってくれた国の兵器を採用するような話もでてくる。少量しか造らない練習機、戦車、装甲車、大砲のたぐいはそうなる可能性も高い。その時になると、武器輸出3原則緩和の主張を忘れ、国内で作れないと本土決戦に備えられない、国民のために外国製は採用するなとでも言うのだろう。


※ 桜林美佐「F35のイスラエル輸出に」http://ameblo.jp/misakura2670/entry-11481413716.html
スポンサーサイト