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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.03
09
CM:1
TB:0
13:00
Category : ミリタリー
 前々から言っていることだが、中国ができる行動を見ても、日本本土上陸はない。中国に対日侵攻の意図はないが、仮に気変わりしたとしても、中国による対日侵攻というのは能力的に無理がある。

 目黒で出している本を読んでたら「中国が1回で運べる兵力って1ヶ旅団程度じゃね」って記述があった。コステクカさんの「FROM THE SEA」を訳した記事※ なんだが。LSMとLSTを沿岸部や南シナ海の、小さい島嶼の取り合いにしか使えないよと言っている。また、将来完成する揚陸艦を勘定しても、1ヶ旅団程度だろうねと言っている。

 在来型揚陸艦への評価を要約すると「在来のLST/LSMは、金門、馬祖や南沙や西沙、中沙あたりなら使えるだろうね」といったものだ。
中国は現状のLSTとLSMからなる兵力を、台湾の沖合の島々(おそらく金門又は馬祖)又はベトナムやフィリピンと領有を争う南シナ海の島嶼への進攻シナリオに用いることはできるだろう。けれども、LST等は喫水が浅く、航空装備が劣ることから(LSTはヘリコプター着陸パッドを有するが、格納庫は持たない)、中国の沿岸部を超えた珊瑚島嶼作戦には最適とは言えず、東アジアを越える長距離遠征作戦や、人道支援や災害救難(HA/DR)といった非伝統的な安全保障作戦にはまったく適していない
コステクカ、ダニエル「フロム・ザ・シー」『海幹校戦略研究』(2012.8)p.56


 将来、建造されるだろう艦艇をかき集めたとしても「新型の071(Yuzhao)6隻、建造が噂されている081が3隻集めて、まず5000人内外の海兵旅団程度かな」程度である。
081 型LHD3隻、071型LPD6隻は中国海軍の将来の長距離強襲揚陸部隊の予測の上限を示しているのであろう。この大きさの部隊は、中国海軍が、そのような編成を望むのであれば、米国スタイルの3つの遠征打撃グループに近いものを配備することを可能にする。これは印象的に聞こえるが、実際には、わずか4500名から 6500 名の兵力、すなわち、南海艦隊に二つある海兵旅団の 1 つを輸送するに足るに過ぎない。
コステクカ、ダニエル「フロム・ザ・シー」『海幹校戦略研究』(2012.8)p.58


 コステクかさんは1ヶ旅団輸送の見積もりについても「稼動状態と輸送ヘリの数があるので、厳しいかもね」と言っている。
そのような見積もりは、これら艦艇の全てが稼動状態で完全な任務可能状態に同時にあることを仮定しているが、これはどん
な海軍でもめったに起こらないことだ。同様に特筆すべきは、そのような部隊は、任務の必要に応じて、全体で40から70機の各種ヘリコプターを運用する。しかし、中国海軍は全部で 35 機の回転翼航空機しか有しておらず、その大半は対潜戦や捜索救難に用いられる小型のZ-9又はKa-28ヘリコプターである45。中国海軍が現在保有する15機のZ-8中型輸送ヘリコプターでは、拡張された強襲揚陸部隊をサポートするには全くの不適格である。コステクカ、ダニエル「フロム・ザ・シー」『海幹校戦略研究』(2012.8)pp.58-59


 コステクカさんの見積もりを参考にしても、中国が物理的に日本本土上陸戦に指向できるのは、LSTと、Yuzhaoに限定されるということだ。中国に対日侵攻するつもりはない。それをあると仮定した上での検討をしてみても、LST以上でなければ難しい。コステクカさんはLSMを中国沿岸と南シナ海でしか使えないと見ている。外洋での運用が難しいからである。実際に、海象の厳しい日本近海までLSMを持っていくのは難しい。好天を選んで航海しないといけないし、それでも船足も遅いからである。日本侵攻にまずLSTクラス以上が必要となる。

 対日本土上陸戦を仮定しても、指向できる揚陸戦力は全く不足している。今の中国海軍が保有しているのは、LST×27隻とYuzhao×1隻(内2隻は建造中)足して27隻。輸送効率を50%とみなすと、3500人程度。将来的に、071型(Yuzhao)×6隻、081型×3隻が完成しても、今の3500人が8000-9000人に増える程度である。増えるのは生身の兵員だけで、マニアが好きな戦車や自走砲はほとんど増えない。日本本土侵攻には全く不足している。

 そして、コステクカさんも述べるように、稼働率や周辺器材不足の問題もある。稼働率は頑張ってどうにかするとしても、「中国海軍のヘリの数問題」は、揚陸時以外にも足を引っ張る。艦載ヘリが不足している点は、艦隊の船団護衛能力への疑問に繋がる。艦載ヘリが少ないことは、護衛部隊の側の海軍作戦能力も低いことを示しているからである。護衛部隊の対潜能力や対空能力も、日本に対して充分ではない。

 そもそも、中国海軍には日本本土揚陸戦を行うほどの数がない。揚陸艦35隻(27+8)も充分な数ではない。水上部隊にしても、その上陸部隊を護衛するのに充分ではない。直接護衛部隊と間接護衛部隊を準備できる数ではない。船団や艦隊の前路を哨戒する固定翼哨戒機も全く不足している。たどり着いた海岸で対機雷戦をする戦力も不充分である。

 日本側の海空戦力は強大である。その上、在日米軍もいる。その防備をかいくぐって日本本土に上陸できる戦力は中国にはない。もともと日本本土侵攻するつもりもないが、考えが変わっても実現不可能である。だいたい、いまの中国は国際協調路線からやや逸脱したせいで四面皆敵であって、日本侵攻に全力を尽くせる状況を作り出すことはまず無理である。



 まあ、LSMや商船、港湾直接侵攻といった、ゆとり上陸作戦には相当の無理があるということだね。

※ コステクカ、ダニエル、平山茂敏訳「フロム・ザ・シー」『海幹校戦略研究』(2012.8)
 しかし、印刷が印補隊なので、表紙もPPがないし、本文の紙質も悪い、英語の題名と著者名もないので調べにくい。公表と言いながら、頒布もしない。訳者と事務局にそれぞれ同期がいるのだが、その辺どーよと文句を言いたくもなるね。
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2013.03
09
CM:1
TB:0
06:37
Category : 有職故実
 JP-4とJP-5がコンタミすると大変なことになると言ったきり、具体的にどうなるのか説明できなかった方の発言ですが、CIFの意味を承知せずに、先物とかの話に繋げて「風説の流布」と仰っているのは、とんだ専門家であるなと。

@daitojimari @gaku226 お疲れ様です。例えば「財務省貿易統計(CIF)旬間速報」等 http://www.paj.gr.jp/statis/  からのリンク先をたどれば、基礎データが公表されており、ミスリードか否か、データを元に判断できること、広く知られて欲しいですね。
https://twitter.com/hebotanto/status/309875536044367875
赤字は筆者による
 

@noraapro @daitojimari @gaku226 また、CIFの読み解き方については、原油先物取引にも直結する「有料ノウハウ」であり、その予測については一般論でも取引材料として機微です。 一方で下手すると風説の流布にも繋がりかねませんので、公式機関解説推奨です。
https://twitter.com/hebotanto/status/309894695998353408
赤字は筆者による


 どうやったら「財務省貿易統計(CIF)旬間速報」がCIFになるのだろうか。これは「統計での金額がCIF価格です」と言っているだけに過ぎない。それを略語だと誤っているのは、貿易や統計について無知な証拠である。

 まず「財務省貿易統計」は略語にしようとする点が誤りである。普通は、2回めからは「貿易統計」とか「統計によると」で済ます。今調べたのだが、英語のニュースでも略さずに"trade statistics"とか"statistics”になっている。

 略語をCIFとした点は、完全な誤りである。CIFの意味は、海上輸送で到着港渡しの意味。FOBかCIFかという、価格の引渡し条件を示すものである。「CIFの読み解き方」の読み解き方なんてものは別にない。原油先物取引でも、基本はFOBかCIFである。今の原油価格では、輸送費も保険料も微々たるものである。原油価格の日内変動に収まる範囲であって、先物でも、それでどうこういう話はない。

 つまり、二つの誤りを犯していることになる。まず、財務省貿易統計を略す際に、英略字にしようとしたことが誤りである。つぎに、その略語としてCIFとしたことも誤りである。CIFの意味を知っていれば、このような誤りはしない。具体的な内容を知らずとも、CIFが貿易関係であり、だいたいFOBが対になっていることは一般常識である。

 そのあとの「風説の流布」云々も、自分には権威があると見せかけるための、イミテーションだろう。まず、JP-4とJP-5のコンタミでもそうだったが、簡単に説明できる話を、わざわざ難しい専門用語で修飾している。その本意は、自分を大きく見せようとするコケオドシである。



 まあ自分で「エリートでござい」と言っている奴は、たいてい…だよねってことですね、ハイ。