Category : 有職故実
いまさらだけどね。
Pと雪歩が、闇物資の買い出しに行く話がね。東京洲崎の七六五楼を出て、入間、館林、野田を旅する話なんだけど、世相がね。昭和20年春、既に物資の底をついた東京から田舎に闇物資を買いに行く、いつもの所に挨拶がてら、増量を頼みに行くのだけれども。田舎は食べ物にあふれている。田舎の農家は白米を食べていて、ありあまる米で甘酒を、どぶろくを作っている。
そこに響ルートで入手した黒砂糖、伊織ルートで入手した衛生用のサックを持っていく。最初はPの情婦気取りの春香が一緒に行きたがったのだけれども。遣手のピヨ姐さんに「お春、オマエは、お白粉臭くて駄目だよ。歩き方からソレ者じゃないか」と言われてショボンとするところとかね。
堅気の風をした雪歩が「お雪、お前はまともに稼がないんだから、たまには働け」と言われてPに連いて行く。しかし、最初から厳しい展開。まず、上野の駅の、厳しい目をした戦災孤児に、世間知らずの雪歩はたじろぐ。せがまれて、また心優しい女でもあるので憐憫もあって、お弁当の、サラの白米で作ったおにぎりを渡そうとする。だが、孤児の群れにに荷物ごと奪われてしまう。呆然とする雪歩がいい。
汽車の中も雰囲気が変わっている。昭和15年、16年とは違う。明らかに廃兵であるPに席を譲ろうという人はいない。既に経済警察の取締は始まっている。雪歩の荷物に手をつけられる寸前で汽車が動き出して取締が終わるところは、前半のクライマックスです。誰も死なない話しなのにサスペンスで、緊張して見入ってしまうところです。
田舎に行くと、食べ物があふれている。入間にはお茶があふれている。野田には醤油があふれている。館林にはこんにゃくがあふれている。肉はないものの、川で捕れた鯉やうなぎがある。東京市内ではどこを探しても見つからない食べ物がいくらでもある。
座敷には、東京の人が持ってきた絹の晴れ着が何枚も無造作に置いてある。大農の家では酒盛りをしていて、飽食の上にドブロクを飲み過ぎた農民が泥酔し、庭先に嘔吐している。雪歩は上野の戦災孤児との落差に愕然とする。黒砂糖やサックで人の顔色が変わる、その醜さにもアテられる雪歩。
今後の物々交換の渡りをつけた上に、手荷物一杯のおみやげを貰った2人は帰りの汽車に乗る。汽車の中は乗客で一杯になっており、みんな明らかに下り列車とは違う大きな手荷物を持っている。汽車が荒川を渡る寸前に突然止まり、経済警察の手入れが始まる。Pと同じ中支で息子が死んだという、同席した地元の爺様の後をついて、何事もなかったように汽車から逃げ出したPと雪歩だが、あと一歩の所で警察に捕まってしまう。
巡査に遂に荷物を改められる。中身について説諭され、没収されるようとする。その寸前に、あの男嫌いの雪歩が、若い警官の手を引き、胸を触らせて色仕掛けをしかけるのだが駄目。
全てを没収されるその時に、隠れていた中年の警官が巡査を追っ払う。そして雪歩の方に近づいてくる。雪歩には生理的な嫌悪感をもった顔つきにしか見えない。雪歩の方に伸びてくる手。Pにしがみつき、穴に落ちるかのようにしゃがみこんでしまう。
しかし、よく見ると右手の指の数が足りない。その手はPの肩に伸びて、久しぶりだなとの挨拶。Pと同じ中隊の班長だった男。兵と下士官の落差や、逆に高蚕出と警官の差があるものの、中隊の誼と傷痍軍人としての連帯感で救ってくれる。
しかし、爺様は助けられない。その全ての米穀を没収される姿を見て、父のない孫のために米を手に入れようとした爺様の姿をみて、雪歩は別の涙を浮かべるところがねえ。切ないけどいい話だよね。
あとは、やよいの弟、長助の話も良かった。長介が家の自転車を盗まれる話。東京市内を探しまわる話なんだが、万策尽き、途方に暮れた長介が他人の自転車を盗んでお縄になる。これも涙なしには見られない話だったが、ちょっとアギトイまでのお涙頂戴にも見えたよ。
コミケの時に書いて放棄したのを見っけたので、手入れてアップしました、ハイ。
Pと雪歩が、闇物資の買い出しに行く話がね。東京洲崎の七六五楼を出て、入間、館林、野田を旅する話なんだけど、世相がね。昭和20年春、既に物資の底をついた東京から田舎に闇物資を買いに行く、いつもの所に挨拶がてら、増量を頼みに行くのだけれども。田舎は食べ物にあふれている。田舎の農家は白米を食べていて、ありあまる米で甘酒を、どぶろくを作っている。
そこに響ルートで入手した黒砂糖、伊織ルートで入手した衛生用のサックを持っていく。最初はPの情婦気取りの春香が一緒に行きたがったのだけれども。遣手のピヨ姐さんに「お春、オマエは、お白粉臭くて駄目だよ。歩き方からソレ者じゃないか」と言われてショボンとするところとかね。
堅気の風をした雪歩が「お雪、お前はまともに稼がないんだから、たまには働け」と言われてPに連いて行く。しかし、最初から厳しい展開。まず、上野の駅の、厳しい目をした戦災孤児に、世間知らずの雪歩はたじろぐ。せがまれて、また心優しい女でもあるので憐憫もあって、お弁当の、サラの白米で作ったおにぎりを渡そうとする。だが、孤児の群れにに荷物ごと奪われてしまう。呆然とする雪歩がいい。
汽車の中も雰囲気が変わっている。昭和15年、16年とは違う。明らかに廃兵であるPに席を譲ろうという人はいない。既に経済警察の取締は始まっている。雪歩の荷物に手をつけられる寸前で汽車が動き出して取締が終わるところは、前半のクライマックスです。誰も死なない話しなのにサスペンスで、緊張して見入ってしまうところです。
田舎に行くと、食べ物があふれている。入間にはお茶があふれている。野田には醤油があふれている。館林にはこんにゃくがあふれている。肉はないものの、川で捕れた鯉やうなぎがある。東京市内ではどこを探しても見つからない食べ物がいくらでもある。
座敷には、東京の人が持ってきた絹の晴れ着が何枚も無造作に置いてある。大農の家では酒盛りをしていて、飽食の上にドブロクを飲み過ぎた農民が泥酔し、庭先に嘔吐している。雪歩は上野の戦災孤児との落差に愕然とする。黒砂糖やサックで人の顔色が変わる、その醜さにもアテられる雪歩。
今後の物々交換の渡りをつけた上に、手荷物一杯のおみやげを貰った2人は帰りの汽車に乗る。汽車の中は乗客で一杯になっており、みんな明らかに下り列車とは違う大きな手荷物を持っている。汽車が荒川を渡る寸前に突然止まり、経済警察の手入れが始まる。Pと同じ中支で息子が死んだという、同席した地元の爺様の後をついて、何事もなかったように汽車から逃げ出したPと雪歩だが、あと一歩の所で警察に捕まってしまう。
巡査に遂に荷物を改められる。中身について説諭され、没収されるようとする。その寸前に、あの男嫌いの雪歩が、若い警官の手を引き、胸を触らせて色仕掛けをしかけるのだが駄目。
全てを没収されるその時に、隠れていた中年の警官が巡査を追っ払う。そして雪歩の方に近づいてくる。雪歩には生理的な嫌悪感をもった顔つきにしか見えない。雪歩の方に伸びてくる手。Pにしがみつき、穴に落ちるかのようにしゃがみこんでしまう。
しかし、よく見ると右手の指の数が足りない。その手はPの肩に伸びて、久しぶりだなとの挨拶。Pと同じ中隊の班長だった男。兵と下士官の落差や、逆に高蚕出と警官の差があるものの、中隊の誼と傷痍軍人としての連帯感で救ってくれる。
しかし、爺様は助けられない。その全ての米穀を没収される姿を見て、父のない孫のために米を手に入れようとした爺様の姿をみて、雪歩は別の涙を浮かべるところがねえ。切ないけどいい話だよね。
あとは、やよいの弟、長助の話も良かった。長介が家の自転車を盗まれる話。東京市内を探しまわる話なんだが、万策尽き、途方に暮れた長介が他人の自転車を盗んでお縄になる。これも涙なしには見られない話だったが、ちょっとアギトイまでのお涙頂戴にも見えたよ。
コミケの時に書いて放棄したのを見っけたので、手入れてアップしました、ハイ。
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