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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.03
16
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19:47
Category : 未分類
 確認すれば分かる話なのに、確認しないのはナンだと思う。桜林美佐さんの「銃砲弾火薬メーカーを襲った恐怖…響き渡る悲鳴」※ だが、事実確認をしていない様子である。
 桜林さんは「『12・7ミリ』という数字を聞いて、すぐにピンとくる人は軍事通といえるだろう。12・7ミリ重機関銃(機銃とも呼ぶ)。かつて零戦にも搭載されていたものだ。」(桜林)と書いている。しかし、零戦に12.7mmは搭載していない。陸軍の12.7mmも弾薬は違う。このあたりは、一回ググるだけで確認できる話であるが、それもしていないわけだ。

 M2系列の話をしたいのだろうが、製造元は住重であり、取材対象である日本工機で作っているのは弾薬である。その上、M2や12.7mm×99の話は本筋と一切関係しない。「この銃弾を製造している日本工機は、福島県にある。今回の震災では、12・7のラインがとりわけ大きな被害を受けた。」(桜林)とあるが、孤立した内容である。

 武器等製造法の中身についても確認していない様子である。火気管理と結びつけようとしているが、武器等製造法は関係しない。「『最も怖いのは火が出ることです』という関係者の言葉通り、どんなことが起きても火の気を断つことが何より大事だ。そのために、同社のような銃砲弾火薬メーカーは、平素から火薬類取締法や武器等製造法などにより厳しい規制を受けている。」(桜林)とあるが、火気制限が関連するのは火薬類取締法の方だけである。武器等製造法は、武器の類を作る上での届出と認可であり、管理面に関しては防犯程度しかない。

 連載シリーズである「誰かのために」は、確認作業が相当にいい加減であり、この手の誤りは容易に発見できる。

 例えばタクアン漬けの大きさである。「日本一ドラマティックな『タクアン缶詰』」※※ では、「大根の繊維が少しでも残っていたらNG、幅や高さは極めて厳密で、当然、機械では切ることができず手作業で行う。いびつな形の大根の歩留まりが小さいことも覚悟しなければならない。」(桜林)とあるが、タクアン漬に入っているタクアンは、高さは缶に合わせているものの、大きさに相当の異同がある。横潜基から出てきた潜水艦の賞味期限切れを何回か缶詰処理で食ったが、市販品の漬物の方が、寸法の同一性は高い。

 タクアン漬けでは、確認作業を怠るという問題に加えて、プロであれば持つべき問題意識に欠けている点も覗える。

 桜林さんは、自衛隊納入のタクアン漬けを高性能であると主張している。「自衛隊のタクアンは、日本一安くて日本一検査が厳しいが、日本一ドラマティック!」(桜林)と述べている。

 しかし、タクアン漬の缶詰にそれほどの高性能が必要なのだろうか? 

 今のタクアン漬には価格を下げる余地はなく、一番安い状態であるのだろうか?

 逆に、タクアン漬がそれほど高性能である必要性を疑うべきではないのか。タクアン漬けは缶詰であり、味と内容量が確保されれば良い。無駄な仕様や検査によって、大根の歩留まりを下げ、寸法規格程度で廃棄を命じるのであれば、その基準を下げて、単価を安くすべきである。

 しかし、桜林さんには、そのような視点はない。防衛省が購入する日本製製品は高級高品質であると称賛するだけで、その高品質(と高価格)必要かといった問いは一切見られない。木で作ればいいものを鉄で作り、鉄で作ればいいものを金銀で作っているような問題に、桜林さんは一切気づかないだろう。

 桜林さんはアイドルに盲目となったファンのようなものだ。自衛隊スゴイ、防衛産業スゴイと言うだけで、主張には内実を伴わない。その文章は確認を怠り、持つべき疑問を持たない。その上で、贔屓の引き倒しまでしている。片思いを寄せられた防衛行政や産業にとっては有難迷惑なのだろう。



※ 桜林美佐「銃砲弾火薬メーカーを襲った恐怖…響き渡る悲鳴」http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110906/dms1109060655003-n1.htm 

※※ 桜林美佐「日本一ドラマティックな『タクアン缶詰』」http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20110920/dms1109200830003-n1.htm
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