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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.04
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Category : 有職故実
 1960年の新聞なんだが、中国で空前の豊作と、中国式密植は駄目という反対方向の記事が同居している。1960年10月8日の朝日新聞5面なのだが「チベットで空前の豊作」※ から一つ記事を挟んだ隣で「中国の衛星田は失敗」※※ が掲載されている。

 「チベットも空前の豊作」は、海外短信の欄にある。農業は生産互助組で、放牧はオーナーと労働者の和解で生産が向上したという内容である。特に牧畜は「三反両利」と、叛乱、強制労役、人身従属制度に反対し、放牧民と放牧主両方の利益を図るというもの。毛主席にこの収穫を見て貰いたいみたいな写真とキャプションがある。

 その左、一つ記事を超えた隣「中共式稲作は失敗、来年は日本式に本腰 インド」という記事がある。大躍進時期に新中国が行った衛星田(人工衛星のように高い収穫がある田んぼ)は、確かに収量は上がるが、手間と肥料を計算すると到底実用的ではないといった内容。しかし、衛星田を批判すると諸外国も困るので控えめに発表したとのこと。

 中国農業の大成功と、その手段についての批判的な視線が並んでいる形になっている。
 当時は大躍進時期なので、中国側発表は眉唾である。景気のいいことを言っている部分は割り引くべきだろう。

 実際に読者も大概は分かっていたようである。新しい中国を否定するのは悪いけど…といったあたりが世相だろう。前者記事はANSとある。おそらく中国系通信者による海外短信の紹介であり「中国ではこのように伝えている」といった扱いなのだろう。

 ただ、前者を事実と異なると断ずることも乱暴な気がする。それまでが封建チベットの、どうしようもない農奴制であったわけだ。自作農ではないにせよ生産組合制度に移行すれば、労働意欲は上がる。それまでは、リアルで搾取されていた利益を、農業器材購入に回すことにより、生産性もあがる。また、多少のアニマル・スピリットも生まれる。これらを勘案すれば、農業生産があがったとしても不思議はないる。

 ちなみに海外短信には、ソ連のディズニーランド構想も載っている。「ソ連『不思議の国』でも追い越せ」§で、モスクワ川湾曲部に、2630平方キロ、1/5000スケールで縮小したソ連領土を模したアミューズメントパークとのこと。ただし、宇宙船や人工衛星の模型があり、子供でもトラクターを運転できるというもの。資本主義の本家に較べてワクワク感は相当に劣る構想に見える。

※  「チベットで空前の豊作」『朝日新聞』(朝日新聞、1960.10.8)p.3
※※ 「中共式稲作は失敗、来年は日本式に本腰 インド」『朝日新聞』(朝日新聞、1960.10.8)p.3
§  「ソ連『不思議の国』でも追い越せ」『朝日新聞』(朝日新聞、1960.10.8)p.3
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