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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.04
03
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Category : 未分類
 フォークランド諸島は、81年の英国にとって重要性は低く、海外遠隔地の離島なので手当のしようもなかったのではないかな。

 実際には杞憂だが、中国やロシアによる日本本土侵攻を危惧する人がいる。だから10式戦車が入用とか言い出している。まあ、実際には逆で戦車に入れ込んでから理由付けをしているわけなんだがね。

 その人達は戦略的奇襲とか言い出し、だいたいフォークランド紛争の例があると言っている。

 しかし、フォークランドへの上陸については、実際は手当する力の余裕がなかったのではないか。

 60-80年代中頃までは、英国はどん底に時期である。経済は英国病、政治的にはかつての海外領土が尽く独立していた。軍事的にも縮小のピークにある。東洋の国益を喪った英国は、シンガポールから、そしてスエズ以東から撤退した。それに伴う軍縮により、英海軍力も大きく減少している。

 英国も、自身に政治・経済的にフォークランドにコミットする力がなかったと見ていたのではないか。英国の旗が揚がっているだけのフォークランド諸島に、英国の利益はなかった。政治的にアルゼンチンをどうこうする力もない。そして、軍事的に手当しようにも、現地で投入できる軍艦は、砕氷船のエンデュランスしかなかった。

 フォークランドは事実上、ノーマンズ・ランドである。アルゼンチンによるフォークランド上陸は、人口希薄の事実上の無人島に上陸しただけである。英国からすれば、あまりに遠く、何もない島である。象徴的なごく少数の海兵を置くことしかできなかった。当年2月にはアルゼンチンから交渉打切が通告されている。交渉ができなければ打つ手なしである。※

 フォークランドは特殊例にすぎる。紛争前のフォークランドでは、英国に打つ手がない。これはノルウェーが南極領土と基地を保持てきないのと同じである。仮に南半球で南極領有している国が、ノルウェーの領土主張と南極観測基地を撤去せよと要求し、以降は交渉を打ち切ると言われたものと変わるものではない。その後に武力回収されたからといって「戦略的奇襲と受けた」と評する、あるいは「だから国防上、常に戦略的奇襲の虞があるのだ」とするのは、妥当ではない。

 フォークランドの例を以って、日本本土への戦略的奇襲をありえるとするのは難しい。日本本土はノーマンズ・ランドではない。内地や北海道では、日本の国力は十分活かせる。その上、陸海空戦力の運用も可能である。

 なんにせよ、持ち出す例がどういった条件で成立したかを考えないのは短慮であるし、その例が普遍的であり、どのような状況でも成立すると考えるのは、あまりにも単純である。



※   そのあとで英国のナショナリズム※※が燃え上がったのは別の話ね

※※  英国のナショナリズムというのもあやふやで、今となってはイングランドとかスコットランドとかウェールズへの帰属心のほうが強くなりつつね?って、アンダーソン先生が言っている。サッカーのワールドカップで、ここ30年で英国旗なんか全然なくなり、それぞれの構成国の旗を持ち込むようになってんじゃんとのこと。
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