Category : ミリタリー
陸軍輸送潜水艦、㋴(○ゆ「まるゆ」)について、計画した塩見文作さんによる記事をみつけた。ハッキリ言ってアレな人で、「無線機をつけるから逆探知される、要らない」とか「海軍に潜水艦の委託教育出すと、安全に気を使うようになったヨクナイ」とか言いたい放題している。
塩見さんは自分が作った「まるゆ」については、相当に自信をもっていた。「海軍よりも先に溶接を採用した、オレの溶接工法が海軍潜水艦に採用された」とか「海軍の協力を得ずに作れた」といった類の記述がある。
しかし、塩見さんの主張は首を傾げる。例えば「本来はガソリンエンジンが最適だと考えていた」というのは、密閉空間でのガソリン蒸気が持つ危険性を全く理解していない。ガソリンエンジンの高速艇は、防爆換気装置でエンジン起動前に5分程度の換気を行う必要がある。ホランド艇の類は使っていたが、まずは潜水艦では実用的ではない。
また、「まるゆ」が相当難産だったことも触れていない。作ってみたが、潜水艦として全く駄目で、結局海軍が助けたことは全く触れていない。高木惣吉さん、大井篤さん、堀元美さんあたりのメジャーな本には書いてある。だが、塩見さんの本では、全く問題なく就役したようにしか読めない。
そして、困ったちゃんの主張がある。
塩見さんは指揮官や乗員を漁船員と規定し『一枚の新聞付録程度の世界地図とコンパス[もちろんマグネット]だけでどこでも行ける人』と書いている。そんな人材はいるわけもない。大縮尺では目的地の近くで地文航法に失敗する。実際は陸軍省が行き先がなく余っていて、素養の高い戦車兵を連れてきた。しかし、塩見さんは怒って陸軍省を批判している。実際に北東アジア全図程度の1号海図、2号海図で航海させたようだが、手旗で付近の船舶に道を聞きまくっている。
また塩見さんはフィリピンに投入した「まるゆ」、笠戸2号艇が沈められた原因を「無線機なんかつけたから」と主張している。電波を発振したせいで敵に見つかったとする主張である。しかし、洋上でエンジントラブルの類を起こしたらどうするのかという観点はない。
安全対策を主張することは軟弱と考えていた風もある。中途から、乗員を海軍の潜水学校に委託に出したのだが、余計なことをやったと批判している。「贅沢に慣れてしまった」ように主張している。だが、これはあまりにもな「まるゆ」やその運用法に、乗員が正当な改善を申し入れた程度のことだろう。「まるゆ」に批判的になった点を許せない感がある。
塩見さんの魔法の言葉に「『まるゆ』の精神がわかってもらえない」がある。戦争が過酷である、戦力化を急がれたといった前提の下で、だから、塩見さんは自分の「まるゆ」は最適解であったと主張している。それに対する反論には、すべて「『まるゆ』の精神がわかってもらえない」と反論したのだろうなということが窺えるのである。
※ 「まるゆ」に便所がない話があるが、塩見さんの話には出てこない。逆に冷房は取り付けたことを誇っているのだが、優先順位は逆ではないかと思う。
塩見さんは自分が作った「まるゆ」については、相当に自信をもっていた。「海軍よりも先に溶接を採用した、オレの溶接工法が海軍潜水艦に採用された」とか「海軍の協力を得ずに作れた」といった類の記述がある。
しかし、塩見さんの主張は首を傾げる。例えば「本来はガソリンエンジンが最適だと考えていた」というのは、密閉空間でのガソリン蒸気が持つ危険性を全く理解していない。ガソリンエンジンの高速艇は、防爆換気装置でエンジン起動前に5分程度の換気を行う必要がある。ホランド艇の類は使っていたが、まずは潜水艦では実用的ではない。
また、「まるゆ」が相当難産だったことも触れていない。作ってみたが、潜水艦として全く駄目で、結局海軍が助けたことは全く触れていない。高木惣吉さん、大井篤さん、堀元美さんあたりのメジャーな本には書いてある。だが、塩見さんの本では、全く問題なく就役したようにしか読めない。
そして、困ったちゃんの主張がある。
塩見さんは指揮官や乗員を漁船員と規定し『一枚の新聞付録程度の世界地図とコンパス[もちろんマグネット]だけでどこでも行ける人』と書いている。そんな人材はいるわけもない。大縮尺では目的地の近くで地文航法に失敗する。実際は陸軍省が行き先がなく余っていて、素養の高い戦車兵を連れてきた。しかし、塩見さんは怒って陸軍省を批判している。実際に北東アジア全図程度の1号海図、2号海図で航海させたようだが、手旗で付近の船舶に道を聞きまくっている。
また塩見さんはフィリピンに投入した「まるゆ」、笠戸2号艇が沈められた原因を「無線機なんかつけたから」と主張している。電波を発振したせいで敵に見つかったとする主張である。しかし、洋上でエンジントラブルの類を起こしたらどうするのかという観点はない。
安全対策を主張することは軟弱と考えていた風もある。中途から、乗員を海軍の潜水学校に委託に出したのだが、余計なことをやったと批判している。「贅沢に慣れてしまった」ように主張している。だが、これはあまりにもな「まるゆ」やその運用法に、乗員が正当な改善を申し入れた程度のことだろう。「まるゆ」に批判的になった点を許せない感がある。
塩見さんの魔法の言葉に「『まるゆ』の精神がわかってもらえない」がある。戦争が過酷である、戦力化を急がれたといった前提の下で、だから、塩見さんは自分の「まるゆ」は最適解であったと主張している。それに対する反論には、すべて「『まるゆ』の精神がわかってもらえない」と反論したのだろうなということが窺えるのである。
※ 「まるゆ」に便所がない話があるが、塩見さんの話には出てこない。逆に冷房は取り付けたことを誇っているのだが、優先順位は逆ではないかと思う。
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