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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.05
31
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Category : ミリタリー
 P-1で中国哨戒機をどこまでも追いかける、そういう嫌がらせというのはどうだろうか?

 中国が外洋艦隊を作る上では、まともな哨戒機が必要になる。哨戒機なしで外洋に艦隊を出しても、行き当たりばったりでしか行動できない。外洋を捜索し、あるいは前方を哨戒する哨戒機を出さなければならない。

 中国もその点は承知している。いまのところは旧式機を保有しているだけだが、新しい機体を作ろうともしている。とりあえずは、運-8輸送機を元にした、専用哨戒機として高新6号を開発中である。※

 しかし、中国が多数の哨戒機を作れるとも思えない。ここ10年の海軍最優先のなかでも、哨戒機はそれほど揃えられていない。陸空を後回しにした海軍建設でも、空母や大型水上艦にお金を吸われており、それ以外はあまり強化はされていない。今後をみても、空母や大型水上艦には、今以上に予算を吸いとられる様子である。世界有数の哨戒機数を誇る日本を超える長距離哨戒機を整備できるようにはみえない。将来的にも、中国が保有する哨戒機数は日本を超えることは難しいだろう。

 この哨戒機数でのギャップを利用して嫌がらせもできる。日中のゲームの中で、哨戒機数で優位に立つ日本が、劣勢の中国にたいして、哨戒機に哨戒機をぶつける。ワザと見える距離で、中国哨戒機をどこまでも追いかけるという嫌がらせをする。それで、行動を封殺ないし邪魔できる。

 新型哨戒機の性能も、日本が優位にある。日本新型哨戒機P-1はジェット機であり、中国が開発中のターボプロップ機、高新6号よりも相当に優速である。航続距離も同じ程度は確保できる。太平洋までの距離を考慮すれば、外洋での実質的な航続距離、行動時間は、日本の方が長い。日本側が持つレーダも対水上用であるが、ある程度の空対空捜索能力もある。概略位置がわかる中国哨戒機を補足することは、難しいことではない。

 P-1に空対空兵装を施せば、中国哨戒機に無言の圧迫を与えることができるだろう。サイドワインダーのような相手も装備できるチャチなものでは面白くない。より高級なAMRAAMのように、どうやっても逃げられなさそうな感じのミサイルや、実用性はともかく威圧感を与える動力銃座がよい。銃座は、対戦車ヘリに積んでいるような機関砲をポッド形式にしてパイロンにくっつければ良い。※※ もちろん、平時に指向するような無作法はできない。だが、それが見えるだけで中国哨戒機はプレッシャーを感じるだろう。

 空対空兵装を持ったP-1が、どこまでも追いかけて来る。平時も武装機にマークされ続ければ、有事には哨戒機を太平洋で運用できないこと前提に考えるのではないか。

 外洋でいきなりインターセプトをしてあげると、有事の行動を抑制する結果を生み出せる可能性がある。平時に第一列島線を超え、どうにか外洋にたどり着いたあとで、いきなり接近追尾すされる。それが繰り返されれば、有事に第一列島線での要撃を突破したあとでも、哨戒機は無事に運用できないとも考えるようになるだろう。

 そもそも、日本側は空対空兵装を持たなくとも、またP-1でなかったとしても、中国にとって徹底した追尾は大迷惑である。※※※ 第一列島線や、対馬海峡を北に抜けたあたりで延々と追いかければよい。平時に外洋での情報収集をやろうとしても、どこで何を狙っているのか、どこらへんに関心があるのかが、筒抜けになってしまう。なんにせよ、中国哨戒機を邪魔することが肝腎なわけだ。

 中国の哨戒機運用を邪魔することは、日本にとって悪い話ではない。外洋での中国哨戒機運用を抑制させれば、それは中国外洋艦隊の行動を抑制させるのと同じ効果を持つ。外洋艦隊の行動を不活溌にし、あるいは、その効果を減じることができる。逆に、中国が日本による嫌がらせを挽回しようと、哨戒機やその支援戦力に予算を投入するようになれば、空母や大型水上艦、潜水艦といった戦力への投資を減らす効果も見込めるだろう。



※   「中国海空軍の高新シリーズ(高新1号から高新6号まで)」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-337.html
    「新型哨戒機、高新6号」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-325.html

※※  別に本物を付けなくとも良い。ダミーのAMRAAM、ダミーの機関砲をつけても、相手は嫌な気分になる。ダミーなら軽くて安いので経済的だろう。

※※※ 極端な話、U-36や、U-4、U-125のようなビジネスジェットでも充分にできる仕事である。ターボプロップに対して優速であり、太平洋を横断できるほど航続距離も長く、居住性も高い。その割に軽く小さいため、機体も燃料費も安い。空対空の武装をつければ効果が増加するのも同じだ。
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2013.05
30
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Category : ミリタリー
 自衛隊任務で本土防衛しか見ないのは、了見が狭すぎるのではないか?

 「自衛隊が最優先するのは本土防衛である」という思い込みは強い。「陸自最優先、陸自がいるので、敵は日本上陸を諦める」や「防衛はサッカーと同じ、ゴールキーパなしでサッカーをやるのか」という意見は、その誤った思い込みである。自衛隊の役割を、日本本土への侵略に対抗する存在としか考えられない誤りの結果である。

 現今、自衛隊に期待される任務は、本土防衛ではない。メインは、海外での国益保護、外交の駒、災害派遣である。具体的には、自由航行の確保や国際貢献、中国とのゲームの駒、災害時に機動運用できる国家防災力である。

 海外での国益確保は、蓋然性のない本土防衛どころではなく、重要な問題である。日本が軍隊を使って保護すべき利益は、すでに世界中に広がっている。日本経済は、海外に依存している。まず、農水産業、鉱工業とも、海外にある安価なエネルギー、工業資源、食料に依存する前提である。また、日本自身が海外への直接・間接投資や、貿易で生まれる利益で金儲けをしている。

 実際にも、防衛政策の焦点は海外の権益確保に当てられている。公海の自由や、海賊対処、在留邦人保護、国際貢献とオブラートに包んだ形にしている。だが、本質は日本の商工業による金儲けや、資源や食料輸入先と輸送経路の確保、海外に投資した資本の保護である。国際貢献のうち、人道支援といた純粋なものであっても、慈善事業もあるが、それだけではない。「村八分にされないため」という国際社会での権益確保でもある。

 外交の駒としての役割も、本土防衛どころではない優先順位にある。今は中国とのゲーム、冷戦期にはソ連との対峙のために自衛隊は重要な枠割がある。中国に兆しの見える、「膨張主義を封じ込めるため」には、自衛隊による空海戦力の優位や、島嶼部への陸兵配置は重要な意味を持つ。冷戦期でも、専守防衛であるとごまかしていたが、陸海空自衛隊は、ソ連の脆弱部である極東につきつけた楔であった。

 災害派遣への準備も、本土防衛よりも現実味が高い。地震や風雨災害といった自然災害や、航空事故といった事故災害での救難は、毎日備えなければならない事態である。その時に、国家が手元に持っており、機動的に投入できる大規模な人的資源は自衛隊しかない。

 これらの任務に較べれば、本土防衛はそれほどの優先度はない。本土防衛は、実質的に起きる可能性が低い任務の一つにすぎない。確かに、本土防衛といた事態が起きれば、降伏するかどうかといった瀬戸際になる。だが、それは実際に起きる見込みはない。

 本土防衛は事実上無視してよい。周辺国には日本本土侵略の意図はない。また、日本本土侵略を実現する戦力もない。日本侵略の脅威は考えなくて良い。まず、宇宙人が攻めてくる程度に過ぎない。本土侵攻の確率と宇宙人が攻めてくる確率は、無視できるという意味では同じである。まず起きないことでは、航空事故に合う確率0.01%と、落ちてきた航空機にぶつかる確率0.0001%程度の差に過ぎない。どちらも無視してよいものである。もちろん、航空事故に遭った時には困るので、保険を掛けておく。本土防衛戦力は、その程度のものだ。

 防衛を本土防衛に限定するのは、字義に引きづられた結果だ。戦争に負け、新憲法を作ったあと、やはり軍隊がないといろいろ不便があるということになった。そして警備隊と警察予備隊を作り、ひとまとめに軍隊にしようとした。その時、軍隊の放棄といった憲法や世論との矛盾を避けるために用語をつくった。防衛庁-自衛隊-専守防衛がそれだ。当時でも「対侵略対処だけは必要ではないか」というコンセンサスはあった。防衛といった言葉は、それを利用した方便に過ぎない。要は、侵略はしませんというだけの話にすぎない。

 しかし、その言葉に縛られる人も出てきている。当初に決めた防衛庁-自衛隊-専守防衛という言葉によって生まれるイメージで、自衛隊の活動範囲を固定する人が出てきている。甚だしいものは、「海空自衛隊は領海・領空でなければ戦闘ができない」とか「相手によって上陸されるまで交戦できない」といった類の誤りがそれだ。

 すでに防衛政策の焦点は、海外での国益保護、外交の駒、災害派遣に向いている。運用方針も、装備調達も、教育訓練もそうである。

 それを見ないで、本土防衛以外を考えられないのも、了見が狭いと言わざるを得ない。防衛に詳しい、実際には防衛装備に詳しいと自称して発言をしている人が「陸自最優先、陸自がいるので、敵は日本上陸を諦める」や「防衛はサッカーと同じ、ゴールキーパなしでサッカーをやるのか」といった、本土防衛だけしか考えない発言をしている。それは、日本にとっての安全保障といったヨリ大きな概念に欠けるもので、残念なものだろう。
2013.05
29
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Category : ミリタリー
 冬になって日没が終業時間に重なると、最大6分ほど勤務時間が伸びる。海自では、国旗は日没時に号令で下げる。国旗降下の5分前に掛けておく「国旗降ろし方五分前」と、降下を宣言する「時間」(国旗降下)の二つ。だが、その間には日課に関する号令を入れられない。これが終業時間にかかると、「課業やめ」はかけられない。「時間」のあと、1分程度の国旗降下作業が終わるまでは仕事は終わらない。※

 その間は、まずサービス残業といったことになる。日が短くなる冬季の現象で、しかもたかが6分であるが、制度として組み込まれたサービス残業はそうそうないだろう。実際には、曹士(下士官兵)のうち、中で住んでいない連中は概ね帰り支度をしている。中に住んでいる曹士も、大抵は仕事を終えて飯を食っているか、上陸・外出の準備を万端に整えているので、仕事をしているわけではない。

 ちなみに、幹部や幹部事務官はまずは仕事が積み上がっている。国旗降下の6分程度では仕事も終わらないから意味もない話。人によっては、この時間は、夕飯にあてる。10時の消灯ころまでの残業を見越して、私費の飯を食っていたりする。もちろん、幹部でも仕事が積み上がらず、別課をやってシャワー浴びて、帰り支度に余念のない人もいるけれども。

 基本的に、曹士にとって課業時間とは、勤務時間、作業時間と言うよりも拘束時間だと見たほうがよい。

 その拘束も、その時間に外に出なければOKというもので緩い。現業でも、課業やめの相当前、1時間とか30分前には作業をやめている。片付けて、清掃して、明日の準備を終えてと帰る準備に余念はない。汗をかくような仕事なら、風呂かシャワーも使う。夕方にやる体力練成として「別課」をやっていても同じ。やはり課業やめの30分前にはシャワーでも使っている。「課業やめ」寸前には、帰りの会みたいな「終礼」をやる。その部署次第だが、「課業やめ」5分前には終わって、海曹クラスだと駐車場でエンジンかけている。凄いとこだと、正門前のスタート位置につけるところもあるという。

 曹士を非難するものでもない。逆に朝は早めに来るので、釣り合いはとれている。だいたい、課業整列30分前には揃って着替え終わり、その日の作業準備もできている。下っ端海曹や海士は、1時間前に職場に来るように言われていて、掃除その他を終えている。掃除終わってあまりにやることもないが、仕事をやるのもマヌケだと思っている様子。その後は課業整列までスポーツ新聞読むか、マンガを読むか、TVを見るかしている。最近では携帯を弄るのもそれか。

 そもそも、号令と時間も乖離している。食事関係は特に著しい。艦艇だと食事の30分前に「配食用意」がかかるが、その時には、大概食い始めている。陸上部隊もそうで、11時20分ころには食堂前に並んでいる曹士が居る。並ぶくらいなら、「開けてよ」「食わせてよ」といえばよさそうなもので、実際そうしているのも居るのだろう。食事時間のフライングについては幹部も同じで、だいたい11時半には飯を食っていた。だいたい、艦艇の「出港用意」の号令がマイクでかかるときには既に出港しているわけだから、フライングは海自の伝統か。

 ただし、国旗上げ下げは厳密にやる。5分前から時間までは駄話の一つもしているが、上げ下げ中は「気をつけ」か、座っていても姿勢を正し、無言。これは着替え中でも同じ。パンツ一丁、あるいは振珍でも無言で気をつけ。服を着ている時に、見える位置にいれば敬礼の一つもする。ただ、これは艦艇幹部は厳密ではない。

 艦艇系の幹部学生が国旗降下中も私語をやめないということがあった。3佐になる寸前の幕僚教育、中級課程の時の話になる。連中はTVもつけっぱなし。己達は別室だったので、高声が聞こえて常々苦々しく思っていたのだが。あるとき堪忍袋のおが切れた航空装備のオトッツァン、これは部内幹候のベテランの人が、ついに怒り心頭で出て行って怒鳴り込んだ。「給料払っているのは、あの布っペラだぞ」というと、艦艇系も黙っていた。

 艦艇系が全部そうというわけでもない。だが、艦艇系は作業中に国旗の上げ下げがあってもあまり頓着しない。会議なんかもそのままやろうとする。自衛艦旗の儀式をしていても、中で何をやっていても分からないという頭なのだろうかね。国旗への敬意は、むしろ海自の非艦艇配置の方が厳密だった。



※  仮に、その部隊の課業やめが午後5時、当日地方時での日没が午後5時4分だとすると

   午後4時59分「課業やめ5分前」「国旗降ろし方5分前」※※
   午後5時 4分「時間」、君が代演奏(ラッパ君が代§か、音楽で流す本物の君が代)午後5時 5分「課業やめ」

※※ 部隊によれば「国旗降下5分前」とするところもある。その舞台では、対になる「国旗揚げ方5分前」も「国旗掲揚5分前」になる。

§  面倒この上ないことに、陸は陸で、国旗の上げ下げで別のラッパ譜を使っている。アレが君が代かどうかは知らない。なお、陸空だと国旗降下の時間は固定されているので、課業やめと被ったりはしない。施設学校入校1日目に「一体何のラッパかね」といって呆れられ、国旗降下と言われて「まだ太陽が出ているよ」と完全にディスコミュニケーションだった。
2013.05
28
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Category : ナショナリズム
 バブル期、日本が米国で土地を買いまくったのは、侵略だったのだろうか?

 桜井よしこさんは、中国による土地購入を、侵略であるとしている。購入した土地を線で結ぶと、日本を包囲する様子が見えるという。日本国内で購入された土地は、有事には、作戦行動の根拠地となるとも言っている。

 桜井さんは「いつまで許すのか、外資の国土買収」※ で、中国人による土地購入を侵略の準備として非難している。曰く「[外国に]奪われた島や土地は無数にある」。「[購入された]島々や土地を線でつなげると日本包囲網のように浮かび上がる」「その形から」中国が日本を締め上げる意図があると示唆している。「[中国による]土地買収は、必要な時には対日攻略、或いは封じ込めの拠点となる」とも述べている。

 しかし、買った土地は侵略の拠点となるのだろうか。桜井さんは、中国人が行う行動は、すべて対日侵攻をするための下準備だと示唆している。だが、企業や個人で買える程度の土地では、侵略に役立つものではない。面積もそうであるし、土地だけあっても、土木工作物や建物ががなければ、滑走路にも倉庫にもならない。立地にしても、大概は鄙びた場所にある。近くに自衛隊がある云々は、単純に政治経済で重要な土地から相当に離れた田舎であるということだ。

 離島の原野や、自衛隊のそばにあるような山林を個人で買っても、日本侵略に足るものではない。情報収集拠点云々なら、貸家でも足りるし、逆に土地だけあっても仕方がない。桜井さんは、中国人に家を貸すなとでもいうのだろうか。

 そもそも、中国人による土地買収は、原野商法に引っかかったとしか思えない部分もある。桜井さんは危惧している内容について、某中国ウォッチャーは、中国人が原野商法に引っかかっただけではないかと評している。買っている場所をみても、離島や山中である。まずはリゾート開発云々の詐欺に引っかかったのではないかと疑うに足るだろう。

 日本と不仲な国が、自国の土地を買うことを「奪う」と書くことは、妥当ではない。穏当かつ正当な土地取引を指して、侵略の準備と非難することは、被害妄想に似たものだ。

 中国と日本を、日本と米国に置き換えてみると、非現実的な妄執であることがわかる。バブル期、日本は米国で不動産を買い漁った。東海岸、西海岸、ハワイとお構いなしに買い漁っている。そこで「日本企業が買った土地を線で結ぶと、米国包囲網のように浮かび上がる」「ハワイ諸島での不動産購入は、オアフ島や真珠湾を封じ込めるアルテミスの首飾りである」と言い出したら、日本人も、マトモな米国人も大笑いするだろう。

 無関係の点の間に、恣意的に線を引いて何が見えるというのは、一種のロールシャッハである。別々の企業が、それぞれその場の思いつきで購入した土地を線で結んで、何が描けたというほどマヌケなこともない。魔方陣が描けた、タモリの安産マークが描けた、だから、呪詛だとするのは、牽強付会もいいところである。それを信じて魔女狩りに興ずるのは、中国憎しとナショナリズムで正当な判断を失しているのではないだろうか。



※ 桜井よしこ「いつまで許すのか、外資の国土買収」(桜井よしこオフィシャルサイト,2013.05.23)http://yoshiko-sakurai.jp/2013/05/23/4706
2013.05
27
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12:00
Category : オカルト
 史実として神話を教えるのは、標榜する現実主義と相性悪くないか?

 観念的な理想主義に反発する、現実主義を標榜するのが保守派だが、ときおり非合理的な主張に傾くことがある。神話や宗教的倫理観の重視がそれだ。現実主義そのものには頷けるものがあるが、神話や宗教的倫理観を押し付ける主張は辟易する。

 自衛隊が持つ外郭団体風に、郷友連盟がある。基本的に、両者は無関係ということになっている。だが、所管官庁は防衛省になっており、人事的にも密接な関係がある、かつて理事の過半数が自衛隊OBであった。基本的に旧陸軍に関連する組織である。まずは、偕行社の政治版だと思えばよい。

 その郷友連盟が主張する歴史教育は、古代史は神話主体にしなければならないらしい。郷友連盟は、一般社団法人なので、どのような政治スタンスから何を主張してもOKなのだが。保守団体として、普段に標榜する現実主義と相性は気にすべきではないのか。

 郷友連盟は「愛国心を育てるために、古代史教育に神話を教えろ」と主張している。「郷友総研 教育研究委員会」名義による「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」 に明らかである。
小学校学習指導要領解説書(社会編)で解説している[中略]「高天原神話」「天孫降臨」「出雲国譲り」「神武天皇の東征の物語」「九州の豪族や関東などを平定した日本武尊の物語」を明確に例示しているにもかかわらず、殆どの教科書がこの記述を蔑ろにしている。このことは、我が国の歴史に対する教育関係者の怠慢としか言いようがない重大な問題である。
   郷友総研 教育研究委員会「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」
教科書が神話を取り上げないことが「我が国の歴史に対する教育関係者の怠慢」と断じている。

 各教科書への具体的な評価事項も、古代史についての評価は神話のあるなしだけが焦点とされている。検討項目も
(1) 我が国の始まりを「記紀」を主、魏志倭人伝を従として記述しているか。
(2) 国づくりの高天原神話を記述しているか。
(3) 天孫降臨の神話を記述しているか。
(4) 出雲国譲りの神話を記述しているか。
(5) 神武天皇の御東征を記述しているか。
(6) 「建国記念の日」を記述しているか。
(7) 「大和朝廷」という用語を使用しているか。
(8) 建国の由来に関する史跡を紹介しているか。
   郷友総研 教育研究委員会「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」
となっている。

 神社本庁であれば、スタンス上、記紀を大事にしろというのも分からない主張でもない。しかし、それを防衛省と密接なつながりのある、支持団体が主張するのは、よくわからない。歴史的事実と直接対応しない神話を以って、歴史教育に充てろとする所長は突飛に見える。それは、郷友連盟による他の主張と衝突してしまう。郷友連盟は国防や外交等に関する主張や、主催する講演録を読む限りは「国際情勢の現実を前にすると、観念的な理想主義は現実に基づかない空虚な主張であり、無意味である」と主張している。その姿勢からすれば、史実に基づかない、根拠として空虚な神話を歴史教育に持ち込めとする主張は、明らかに矛盾している。もちろん、神話はなんらかの歴史的事件の影響を受けたものだろう。だが、変容した物語であり、現実である史実とは遠いからだ。

 郷友連盟にとって最大の不満は、おそらく、天皇についての「神話」を載せていないことを、天皇制をないがしろにするものであるとする思い込みだ。
初代天皇であられる神武天皇についての記述は全教科書皆無であり、代わりに外国の史書から引用した卑弥呼が、全教科書の本文に挿絵入りで記述されていることは、日本国憲法 第一章 天皇についての歴史的記述を排除し、「天皇についての理解と敬愛の念を深めるように」との学習指導要領にも反する扱いであり、ある種の意図が働いているのではと危惧するものである。
   郷友総研 教育研究委員会「これで愛国心が育つか? - 第6学年用社会(歴史)教科書の検討」
と、現行憲法を持ちだしてまでも、神武天皇を記載しろ、卑弥呼は載せるなとしている。

 これは、天皇制への支持や、今上への崇敬と、神話への支持を取り違えたものだ。天皇制や、今上への崇敬は、天皇に付随する神話がなくとも成り立つものである。実際に、別に神武天皇が不存在でも、その即位が2700年前でなくとも、崇敬は成り立っている。むしろ「2700年前からの万世一系なので崇敬しろ」とする主張のほうが、崇敬とは程遠く危険である。それは今上への崇敬ではなく、神話への崇敬に過ぎない。だいたい、郷友連盟のスタンスでは、神話が史実ではないことが明らかになれば、恐ろしいことに今上への崇敬の念は消え失せてしまうのである。

 郷友連盟が、政治や国防について現実主義を語るなら、神話や教育からの脱却を果たしたほうがよい。皇室崇敬でも、神話や万世一系、神武紀元とは距離をおいたほうが良い。既述したような教育での神話導入や、別に行なっている道徳教育での主張は、各種の宗教団体との密接な関係を伺わせる。防衛省・陸自を支持・協力する上でも、郷友連盟の主張を普及する上でも、邪魔になるものだ。広汎な支持を得るためには、宗教関連臭を消したほうがよろしい。
2013.05
26
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22:52
Category : アニメ評
『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2期)第8話「俺が後輩とひと夏の思い出を作るわけがない」冒頭、高坂さんちの台所で奇妙な感覚を覚えたのだけれども。

高坂さんち
(『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』(2期)第8話「俺が後輩とひと夏の思い出を作るわけがない」冒頭部)

 パースが狂っているような、狂っていないような感覚なのだが、消失点を見るとキッチリ合っている。でもヘン。なにがヘンかと思ったら、壁の見切縁の高さが左右で違う。右の窓まぐさと扉まぐさの高さが違うあたりで違和感がある。

奇妙な見切り_矢印
(上図に、見切り縁の高さが一致していないことを示すため、文谷が赤い補助線と線と、同じ深度を示す白の半透明スクリーンを入れてた)

 本来なら、高さは揃えるもので、試しに扉側の背を高してみるとこうなるんだけどね。

高坂さんち修正済
(まぐさの位置を合わせたことにより違和感がなくなる点を指摘する目的で、上図を文谷が修正した)

 まあ、そういう家なら仕方がないが、最近建てられた住宅で、洋室に長押のような見切り縁があるものは、己の見た限りではない。壁紙貼るのも面倒なのでやらないのだろう。

 冒頭部の、絵としての違和感について、思いついたので書いた次第。

 もちろん、俺の妹…が、物語として面白いことは阻害しない。イイ歳こいて毎週楽しみにできるほどであり、オススメである。



 画像は、http://himado.in/147949をプリントスクリーンで取得したもの。俺の妹…8話の構図上にある違和感を批評するために引用したものである。
2013.05
26
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12:00
Category : ミリタリー
 80年代には、未来の鉄砲はブルパップになるみたいな話があったのだが。ブルパップ自体はそれ以前からあった。終戦から5年目には、次世代小銃としてトライアルまでされていたらしい。

 英国は50年代にはブルパップを作り、トライアルを行なっていた。昭和26年の"Ordnance"に英国新小銃を紹介する記事がある。self-loading rifle、自動装填銃としているあたりは愛嬌か。著作権保護期間を経過しているので写真ほか記事を丸ごと載せる。一見して英現用小銃と相当に類似している事がわかるだろう。銃床周りや、光学照準器を標準装備しているあたりは、L85小銃との縁戚関係を示している。

 検索してみると、この小銃はEM-2 http://en.wikipedia.org/wiki/EM-2_rifleとのこと。NATO標準口径を決めるときに英国が提示した.280(7mm)と組み合わせた鉄砲である。

 ただし、口径が.308に決まったあとに、EM-2もお役御免となった様子である。EM-2はボアアップして.308としたタイプも作られたようだが、結局はベルギー製のFALになってしまっている。

 原因は、上記リンクでは、.308に耐えられなかったように書いてある。だが、後に作られたL-85の評判が悪いあたりを考慮すると、同じように回転不良ほかがあっても不思議はないだろう。他にもブルパップが受け入れられなかったといった話もあったのかもしれない。

 ブルパップ自体は今でも残っている。80年代ころに、英仏墺で制式小銃になり、将来はブルパップになるのではないかといった予感もあった。なんせその時分は『ポケットの中の戦争』でもジムのマシンガンがブルパップになっていた。その後には特に流行るものでもないが、廃るものでもなく今に続いている。大国だと新中国が採用している。アデンに派遣した連中は、ブルパップ式にした新型小銃を持っていっている。

 珍しいものだと、ボルトアクションのブルパップを見たことがある。22口径の競技銃だが、話を聞くとアンシュッツで作っているのか、アンシュッツのアクションを載せ替えるブルパップ銃床があるだかだった。なんでも、頬付けしたままで弾を込められる(競技銃は単発)ことが利点だとかとのこと。

英国ライフル

"NEW BRITISH RIFLE""Ordnance" (American Ordnance Association,1951)1951Nov-Dec,p.430
なお、無署名かつ発行後50年を経過しているため、著作権による保護期間は終了している。
2013.05
25
CM:3
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12:00
Category : ミリタリー
 3.5tトラックは悪いトラックではない。特に欠点もなく、軍隊で兵站や雑用としては充分である。性質上は荷馬、農耕馬と同じであり、高性能が求められるものでもない。別に世界一である必要もないし、世界一でなくとも恥じる必要はない。

 しかし、桜林美佐さんは、その3.5tトラックを万邦無比であるように喧伝している。連続で掲載された「大震災の津波に襲われ唯一動いたトラック いすゞ『3トン半』」「米軍兵士が感嘆の声を上げた水にも強いトラック」がそれだ。


■ 「津波に耐えたのは3.5tだけ」は疑わしい

 2つの記事は、例によって対象である3.5tトラックを持ち上げるものだ。前者では、3.5tトラックだけが津波に耐えたとしている。後者では、赤錆だらけになった米軍トラックに対して3.5tは錆も出ないと称賛している。

 3.5tトラックだけが津波に耐えたとする話は、記事対象を称賛し、他を下げる、桜林さんのいつもの誇張、脚色の様子である。桜林さんの話に具体的な部分や状況が出てこないあたりでも、それは窺える。

 そもそも、3.5tだけが生き残ったという話は、桜林さんの記事だけしか出てこない。ディーゼル車であれば生き残っても不思議はないのだが、同じディーゼル車である高機動車や2tトラックが動かないで、3.5tだけが動いた§ という話は、ネットを検索するかぎり、桜林さんの記事とそれをコピペしたものだけである。そして、空自松島基地での被災に関する新聞記事では、それと異なる内容が述べられている。「動いた車両はトラックや除雪車など6台」とある。トラックは3.5tに限定されていない上、除雪車も動いたとしている。ちなみに、除雪車はプラウもマスターも3.5tがベースではない。

 米軍兵士が感嘆したとする話も、少々おかしい。
 「これはすごいトラックだ!」

 そう声をあげたのは東日本大震災の時「トモダチ作戦」で車両を整備していた米軍兵士だった。同じように水に浸かったトラックが並び、中を開けてみると真っ赤に錆びた米軍の部品に対し、「3 1/2tトラック」の中はピカピカ。
   「米軍兵士が感嘆の声を上げた水にも強いトラック」
とあるが、米軍車輌が同様に水を浴びる理由が分からない。「東日本大震災の時『トモダチ作戦』」とあるが、米軍が津波を被ってはいない。被災地区で唯一米軍が展開する三沢は台地上にあり、津波を被ってはいない。

 米軍トラックとの比較も、あまり意味のあるものでもない。まず、米軍はあまり錆を気にしない。軍艦でもそうであるが、性能に影響しない限りは問題視せず、毎日の手入れでサビ落としはしない。腐食しない限りは、一定間隔で落とせばいいと考えている。また、逆に言えば、赤錆が発生しても問題ないようにも作っている。アメリカのトラックは、電蝕を防ぐために犠牲的に錆を発生させる部分を作っているという話もある。


■ 外国の軍用トラックでも道交法はクリアできる

 他にも奇妙に感じるところがある。軍用として必要な能力と、道交法に基づく車両制限令の制限をクリアできるのは3.5tトラックだけだとする話だ。
これ[登坂能力等]だけなら軍用トラックとして驚くほどではないだろう。日本のものは、この上さらに国内の道路交通法の下で一般道や高速道路を走れるようにしなければならないのだ。
   「大震災の津波に襲われ唯一動いたトラック いすゞ『3トン半』」
 しかし、日本でも外国製の大型のトラックやトレーラは走っている。あの手の車両は、一般的な軍用トラックよりも大きい。10t以下の軍用トラックなら、大概は日本の車両制限令をクリアできるのではないか。

 実際に、海外の軍用トラックを見ると、日本の法令制限もクリアできるように見える。3.5tトラックと同等の能力を持つインド、ルーマニア、スペインの軍用トラックを見ても、サイズも重量も車輌制限令をクリアできる。

 3.5tトラックは、路上搭載力で言えば6tであり、足廻りは6×6である。同等のトラックとして、インドのタタLPTA(6×6)5000kg、ルーマニアの15.330 DFAEG(6×6)5000kg、スペインのPAGASO 3050 (6×6)6t がある。

 軍用トラックとしての能力もほぼ同等である。これらは登坂能力も3.5tと同じ程度で、クリアランスや渡渉能力は3.5tよりもやや優れる。

 これら3ヶ国の軍用トラックは、車両制限令で問題となるサイズ・重量を、ともに問題なくクリアしている。最も問題となる車幅は、インドとスペインのトラックは、3.5tよりも小さい。ルーマニアのトラックも、3.5tよりも1.5センチ幅広なだけである。次に問題となる高さはインドのトラックが3.5tと略同じ、ルーマニアとスペインは寧ろ低い。

 軍用トラックとしての能力と、道交法は普通に両立するということである。3.5tを唯一の選択肢と主張するために「両立しない」と述べているが、明らかに事実と異なる。その点は普通に確認できるのだが、それをせず「両立しないので、民生転用や外国製輸入はできない」と結論付けるのは、桜林さんが調べるべきを調べていない証拠だ。§§


■ そのうちにリアカーもヨイショするだろう

 桜林さんにとって、防衛産業を評価する方法は、その製品が高度な性能を持っていることを誇張して伝えることしかない。もちろん、防衛産業にも良い部分もあるだろうし、悪い部分もある。商業的に悪い部分に触れられないまでも、その良い部分を普通に褒めればよい。だが、桜林さんは悪い部分、おかしな部分でも無理に評価を与えようとする。例えば談合は悪ではないという主張がそれである。また、一般的な製品であっても防衛省専用では、高価格に見合った高性能であるとも主張するところが、不当だ。

 ある軍事評論家は、いずれはリアカーも褒めるだろうと述べている。実際に褒める可能性もある。自衛隊には、災害時に使う折りたたみのリアカーがあるためだ。

 自衛隊には、20ftコンテナに入った防災キットというものがあり、その中に折りたたみ式のリアカーが入っている。もちろん、無きに優ること満々であるが、能力的にはプアである。海曹曰く「アレなら3才位のネコ車のほうが重いものが運べる」や「氷屋の自転車の方が」などとと言っている程度だ。

 だが、その時には、桜林さんは如何に高性能であるのか褒めるのだろう。そもそも、取材もメーカにその利点を聞いて引き写すだけである。隊員が別の手押し車や自転車のほうがいいという話は聞いたとしても、防衛産業を褒める上で邪魔になるので書くことはないだろう。



※  桜林美佐「大震災の津波に襲われ唯一動いたトラック いすゞ『3トン半』」『ZAKZAK』(産経新聞,2013.05.14)http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130514/plt1305140709001-n1.htm

※※ 桜林美佐「米軍兵士が感嘆の声を上げた水にも強いトラック」(産経新聞,2013.05.21)http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20130521/plt1305210709002-n1.htm

§  今後、桜林さんが高機動車や2tトラックを褒めるときに困るのではないか。

§§ 3.5tや2tについて「外国の軍用トラックの方が安いから買え」という主張はない。
   なお、民生用転用についても否定したいらしい。だが、3.5tも2tも、載せる重さを減らし、足廻りを多少強化されている程度で、基本的に民生用と大差はない。


参 考 これまでの桜林さんの記事
2013.05
24
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 まあ、文芸作品だからね。あまり気にするものではない。

 文藝春秋に池上さんの「米英を畏怖させた『三人の艦長』」※ という記事がある。ご本人原作の映画『真夏のオリオン』とのタイアップ記事なのだが、非常に読みやすい。挙げられたイ58、雷、矢矧各艦長の判断を評価する池上さんの主張には、賛同の他はない。池上さんの記事からは、お三方の、高潔な人格、人間的な魅力までも伝わってくる良記事である。未読であれば読むべき記事だろう。

 ただし、アレっと思う点がいくつかある。

 駆逐艦「雷」の機関がディーゼルであるとするのは、明白な誤りである。

 池上さんは雷のエンジンはディーゼルで、停止すると再始動に20-30分を要するとしている。このあたりは「雷の艦長が英艦漂流者を保護した」と顕彰する上で、危険を顧みずと評価するためなのだろう。しかし、実際は、蒸気艦である。また蒸気艦でも、ボイラに充分な圧力があれば、直ぐに動き出すこともできる。ボイラを運転したまま、洋上で停止している蒸気艦は、車に例えれば、エンジンは動いているがギヤがニュートラルになっている状態に過ぎない。蒸気を前進段に入れれば、直ぐに航進を起こせる。

 他にも、軍艦「矢矧」艦長を顕彰する部分にも「アレ」と感じる点がある。矢矧沈没での生存者が多い理由を救命用に多量の木材を積んだためとするもの、大和の主砲火力を陸軍2ヶ大隊相当とする点がそれである。

 ただし、艦長を顕彰するための読み物であるので、このあたりは大した問題ではない。そもそもで言えば、潜水艦の「イ58」と、駆逐艦の「雷」の二人は艦長じゃない、潜水艦長と駆逐艦長になってしまう。だが、お三方の事績を顕彰する読み物である。ディーゼル、木材、2ヶ大隊と同じように些細な問題である。

 それよりも残念な点は、同時に日本は捕虜の処分をしていたことに触れない点にある。「米軍は漂流者を機関銃で撃ち殺すような非人道行為をしていた、それに較べれば、日本海軍の漂流者救助はなんという武士道精神」といった評価は、一面的で問題であるように見える。海軍水上艦でも、捕虜を処分したことがある。ご存じないのかもしれないが、その点に触れない点は、記事にとって残念な点ではないか。

 ディーゼル、木材、2ヶ大隊といった点は、瑣末な誤りであるが、捕虜処分で目を瞑っていることは、日本海軍への顕彰に関係する本質的な問題であるためだ。

 文芸作品の類で、誤認を云々するのは、本質的な部分であるべきである。瑣末な部分をを云々すべきではない。文芸作品として素晴らしいことに較べれば、瑣末な部分での誤りは大した問題ではないからだ。

 だが、木を見て森を見ない御仁は、瑣末な誤りだけを問題として糺そうとしている。一部の人が、取るにたらない事実誤認を挙げて文芸作品を非難するときに「過ちを糺す」「嘘」「捏造」という。しかし、それはディーゼル、木材、2ヶ大隊といったような瑣末な部分である。

 実際に、「海兵隊は云々」程度の瑣末な話で発火する人がいる。
https://twitter.com/obiekt_JP/status/337134351319965696
「間違い箇所を直接指摘したのですが、直す気は無い」
https://twitter.com/obiekt_JP/status/337152752675336193
「セリフを変え」ろと他者の著作物に文句もつけている
まずは、木を見て森を見ない好例だ。※※

 そんな些細なことを見て眼を三角にしてどうするのかね。それよりも、参加者全員が話題にしようとしない海兵隊へのネガティブ・イメージについて話した方がよほど生産的ではないのかね。

 海兵隊に肯定的な立場でも問題点を論じることはできるだろう。日本での海兵隊駐留の価値を肯定的に捉えた上で「なんで海兵隊が日本の地元で評判が悪いのか」や、それに付随する「平成に入ってまで『ビンのふた』とか、自分たちが占領軍だと思っているんじゃないの」といったあたりを問題とする意識があってもよさそうなものだ。しかし、出てくる話は海兵隊を全肯定するだけで、問題視する部分は瑣末な点ばかりである。しかも、文芸作品での問題点を指摘し、それを糺すことにより「正しい軍事知識の普及」とするのは、あまりにも浅薄にしか見えないものである。



※ 池上司「米英を畏怖させた『三人の艦長』」『文藝春秋』(文藝春秋,2009.8)

※※ 議会措置なしで投入できるのは海兵隊だけというのは、歴史的に見れば正しいのではないかね。
   第二次世界大戦まで、陸軍の海外投入は議会措置がなければできなかった。法令的には、大統領が行けといえば行けるのでしょう。だが、技術的な問題から陸軍は、命令だけでは海外に行けない。陸軍をは外征編制にする必要がある。そのためには議会の措置が必要になる。例えば動員や、動員と並行する装備購入、海外活動への経費支給といった予算承認。こういったといった議会措置がなければできない。
   大統領が、手軽に、直ぐに動かせる手駒が陸軍ではなく海兵隊であったことは、中南米への投入なんか見ても明らかなんですけどね。
2013.05
23
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Category : ミリタリー
 日華事変で中華民国が潜水艦を使っていれば、事変は相当に変わったのではないか?

 1937年上海事変以降、日本と中華民国は事実上の全面戦争状態に入った。

 中国が全面的な抗日戦を決意した理由は、長江デルタであれば決戦を強要でき、勝てるとする見込みである。東北や華北とは異なり、長江デルタならば兵力集中や兵站でまともな戦争ができるという判断にあった。

 だが、日本は海軍力の優位により、民国に拮抗した。海上輸送により、巨大な陸軍と補給物資を大陸に送り込み、また、航空機や艦砲射撃といった海上からの攻撃によって民国に打撃を与えた。

 その後の中国大陸に対する侵攻も、海軍力の優位を活かしたものだ。日本の陸海軍は船舶輸送力を生かして、長江内水や沿岸にある諸都市を次々に陥落させている。近世・近代の中国は海軍力に翻弄されたが、中華民国も日本海軍力に好きにされている。

 しかし、民国が積極的に海上機動を邪魔した場合は、日華事変はどうなったかわからない。日本が持つ海軍力の優位と、それを活かした海上輸送が阻害されたら、あれほどまで日本が快進撃することもできなかっただろうし、民国も後退を重ねることもなかったかもしれない。

 上海事変の段階で、海上輸送が滞った場合には長江デルタでの決戦に負けた可能性がある。長江デルタから日本勢力が一掃するという、民国や民国を支えたドイツ軍事顧問団の思惑通りに進む可能性もある。

 上海事変、南京陥落以降でも、日本の作戦を相当に邪魔できたかもしれない。例えば、海上輸送を邪魔することによって、大陸での作戦行動を抑制させることができる。あるいは、上陸作戦を難しくすることによって、沿岸部での活発な日本上陸作戦を、消極的にさせることも可能である。あるいは、日本に補給船や上陸船への護衛を強要させることによって、民国への海上封鎖を妨害させる効果も見込むことができる。

 日本海軍にとって、圧倒的に劣勢であった民国海軍であっても、日本海上輸送を妨害できる手段はあった。

 民国が潜水艦作戦を実施していれば、日本海軍は相当に振り回されただろう。

 上海事変当初に、日本の兵員を搭載した商船の2-3隻でも沈めれば、日本は輸送船の独航ができなくなる。輸送効率が落ちれば、上海戦の行方も怪しくなる。

 また、日本海軍は護衛に手を割かざるを得なくなる。これにより、沿岸封鎖に向ける戦力を相当に減らすことができる。

 日本側が東シナ海での船団護衛を厳重にしたならば、少し離れた所で、第三国の商船を停船臨検をしてもよい。潜水艦なので、移乗は難しいが、大砲を指向して、仕向地と積荷を尋ねるだけでよい。日本本土沿岸でやれば、日本海軍力を振り回すこともできる。これは、潜水艦は短期・戦術的ではなく長期・戦略的に使うものという、本来の使い方である。

 潜水艦はそれほどの損害を受けることもない。当時の対潜能力からすれば、潜っている限りは、潜水艦はまず沈められることもない。

 ただし、民国にとって残念だったのは、民国が潜水艦を保有できなかったことだ。民国は日華事変が始まってからドイツにⅡ型U-ボートを2隻発注したが、最終的に受け取ることはできなかった。民国が発注した潜水艦は、ドイツ海軍が買取り、U-120とU-121になっている。

 また、Ⅱ型Uボートには足が短いといった問題があった。排水量300トン程度で、航続距離は2700nm、5000km程度にすぎない。上海近辺から日本を狙うにはいいが、広州までさがると九州まで行って帰って来るのが精一杯である。

 仮に、事変前に民国が航洋型の潜水艦を4隻でも持っていれば日華事変はまた違った展開をしたことだろう。

 民国に売ってくれそうな国と航洋型潜水艦となると、イタリアのSIRENAあたりだろうか。民国は水雷技術をイタリアに寄っていた。また、イタリアは東洋にほとんど権益を持たず、日本に気兼ねせずに民国に売ることができる。

 SIRENAの排水量は680トンあり、後継艦のデータから類推すれば、航続距離は1万nm、1.8万km程度はある。広州から東シナ海でも、東京湾口でも余裕で作戦行動範囲に収められ、日本に脅威を与えられる。

 民国がこのSIRENAを4隻程度でも保有し、それを積極的に運用していれば、日本は相当に振り回される結果になっただろう。なにより、民国潜水艦が行動しているというだけで、日本の海軍力の相当を対潜戦に割くことを共用し、民国への上陸作戦や封鎖作戦、艦砲射撃や沿岸部への空襲を、相当に防遏する結果を産んだのではないかな。
2013.05
22
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Category : アニメ評
 西武池袋の駅で『L♡DK』(wikipedia)の広告を見た。不勉強にして知らなかったが、大人気のマンガだという。要は、一人暮らしの女子高生のところに、イイ男が転がり込んでくるという話。

 男のところに都合のよい女が転がり込んでくる話はいくらでもある。その萌えマンガ・アニメの男と女を入れ替えるだけでもどうにかなる。なんせ商業的に成立しているわけだ。女性は女性で、女のところに都合の良いイイ男が転がり込んでくる話にワクワクするのだろう。

 男が消費するものを、女に売りつけるのは、時節柄である。

 例えばオートバイも男が消費するものを女に売りつけようとしている。オートバイなんて男しか喜ばないものかとおもいきや、女にも喜んで買う者もいる。免許を取りに行くと女性は珍しくないという。

 タバコもそう。昭和中期、響、エコー、新生、わかばの時代には女性は吸うものでもなかった。女性でタバコを吸うのは、それ者か、それに近い商売の女が吸うものであった。だが、昭和末期頃から女性向けのタバコが出ている。ピアニッシモなんていけ好かないデザインであるが、あれも女に吸わせようと仕向けたものだ。

 ソフトなものでは、鉄道も山もカメラもそうだ。男の趣味として男が消費していたものを、女向けに手直しするだけで女に消費させている。鉄道であれば鉄子、山であれば山ガール、カメラで言えばカメラ女子がそれだ。

 オートバイ、タバコ、鉄道以下まで女に売れるのであれば、萌えマンガ・萌えアニメも女に売れることに不思議はない。男に売る女同士のエロも、女に売る男同士のエロとして20年以上前から成立している。ならば、男の家に女が転がり込んでくる話も、女の家に男が転がり込んでくる話にすれば普通に受け入れられるだろう。

 少し考えてみれば、『フルーツバスケット』もそういった話だった。女の家にイイ男が転がり込んでくるわけではなく、女がイイ男の家に入り込む話だが、願望的には似た様なものだ。女1人にイイ男複数という逆ハーレムという構造である。ヒロインの本田透は、草摩由希草摩夾を自由に攻略できる立場にあった。

 ただし『L♡DK』は、最初から女に都合のいい、イイ男に萌えるだけの話で済ましている。ざっくり見る限りでは、物語を作る、作劇をするというのではなく、男モノでいう「萌え」だけを玩味するものである。何にしても、知恵者はいる。話に中身の無い「萌え」であっても、男女を入れ替えるだけで、女に売ることができると考えた。そして、そのたくらみは見事に成功したというわけだ。

 いずれは中身のない、生徒会や部活モノも出てくる。『僕は友達が少ない』、『生徒会の一存』、『お兄ちゃんだけど愛さえあれば関係ないよねっ』の類、生徒会か部活という箱だけ用意して、その中にできるハーレムでの雰囲気だけを鑑賞する。何の事件も試練もなく、どうしようもない話である。いずれはフォーマットをそのままに、男女を入れ替えただけの話も出てくる。すでに出ているかどうかは承知していないが、出ているのも、出てくるのも不思議はない。仮に今、小説で出ているならば、それが退屈なマンガになり、退屈なアニメにもなるだろう。

 女が複数のイイ男を自由にする、鬼蓄その他といようなエロゲームやエロマンガも出てくるのではないかな。男の征服欲を満たすため、男が女を自由にするエロゲームやエロマンガもいくらでもある。その男女を入れ替えて商売しようとする者も出てくるだろう。すでに女性の性欲を利用した物語は商業的に大成功している。性欲を刺戟するメカニズムとしての征服欲について、それは男にだけあって、女に無いということもない。アレだ、学校トップクラスのイイ男を、全て肉奴隷にできるようなゲームは売れるのではないかね。
2013.05
21
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Category : ミリタリー
 当節、地対艦ミサイルが売れないのも、旧式な現用品でも問題ないためだ。

 チョット前のNavy Internationalに、Hewsonさんの"Fire From Shore"と題した地対艦ミサイルについての記事がある。

 まず、最近はヨーロッパで地対艦ミサイルは全く売れていない。奇篤なのはポーランドで、ノルウェーのNSM対艦ミサイルを契約したのだが、それくらいのもの。逆にデンマークが2003年にハプーンを廃止したことが挙げられている。まずは、売れるものではないのだろう。

 ヨーロッパで地対艦ミサイルが売れた国は、それほど多くない。その上、購入した国も、特に新型を要求せず、比較的古いものを現用している。

 記事中、ヨーロッパで売れた国として、記述のポーランド、デンマーク以外としては、スウェーデン、フィンランド、クロアチア、ギリシア、キプロスを上げている。まず、RBS-15を地対艦ミサイルをしたものが、スウェーデンとフィンランドに売れた。また、艦艇用としてユーゴスラビアに売れた分を、クロアチアは地対艦ミサイルとして使用しているという。地対艦ミサイルとしたエグゾゼはギリシアとキプロスに売れている。記事ではギリシアのエグゾゼは現用であることが示唆されている。

 地対艦ミサイルは、特に新型に更新されていない。比較的古いタイプがそのまま使われている点については、Hewsonさんは、今様の対艦ミサイルを地対艦で運用することに魅力がないためであるとしている。

 記事では、地対艦ミサイル販売側のインタビューを再録している。※※ 要約すると「たとえ新型が200kmの射程があっても、技術的な自己満足にしかならない」というものだ。「そんな遠くの目標を狙うのは沿岸砲台の仕事ではない」「どこの軍隊もそんな射程は持て余す」とも言っている。

 結局、地対艦ミサイルは、沿岸から見渡せる範囲を攻撃できればよい。欧州ではそう考えている。必要な能力は、一昔前の対艦ミサイルで充分ということだ。

 長射程化した地対艦ミサイルを作っても、沿岸防衛としては持て余す。長射程をカバーするために、航空機や艦艇からリンクを貰うのも本末転倒な部分がある。航空機や艦艇が行動できるなら、ヨリ遠くで航空機や艦艇で沈めてしまえば良い。逆に、航空機や艦艇が行動できないなら、目標データが必要ないので、長射程は意味がない。レーダなり目視なり狙える、水平線の内側に対応できる射程で構わない。

 沿岸防衛のために、射程で100km、200kmを誇る地対艦ミサイルは実用的ではない。



 その点からみれば、日本の作った12式地対艦ミサイルは過剰性能であるし、前の88式地対艦ミサイルであっても高級に過ぎた。

 地対艦ミサイルについて、日本での実用性を考慮すれば、射程は短くとも、むしろ軽いもののほうが良い。焦点となっている離島防衛を考慮すれば、機動力を重視すべきだろう。できればペンギンやマルテよりも軽くする。シースクア程度まで軽くすれば、ヘリで多数が容易に運べる。200kgを切れば、最悪、何人かで一輪車・リアカー・梶棒でも運べる。狭い掩体にも隠しやすい。射程も短くなるが、30kmもあればよい。照準も簡単で済む。目視でも10km先の艦艇は余裕で見える、高所に据えれば20km先も狙える。

 しかし、日本の新型地対艦ミサイルは、単純にスペック的な高性能を狙ったものとなった。12式地対艦ミサイルは無意味に射程を伸ばし無駄に垂直発射を採用し、しかも全部を新造するというマヌケなことをしている。※※※

 日本が行う兵器開発は、開発自体が目的化している。現実に必要な性能や、実用性についての検討がなされているように見えない。地対艦ミサイルの場合には「たとえ新型が200kmの射程があっても、技術的な自己満足」「そんな遠くの目標を狙うのは沿岸砲台の仕事ではない」「どこの軍隊もそんな射程は持て余す」といった問題は、全部無視したのだろう。結局は、スゲー技術、スゲー性能を実現したい技術サイドの自己満足にしか見えない。



※ Hewson,Robert"Fire From Shore""IHS Jane's Navy International"(IHS,2012.11)pp.14-18

※※ 同 p.15 "Our European Program Official said"以降の部分

※※※ 12式について、次の
   無意味に長射程については「無駄遣い 12式SSM」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-307.html
   無駄に垂直発射については「自己満足のための垂直発射方式」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-428.html
   全部を新造するマヌケは「ハープーンだと改修で済ませてる」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-434.htmlで述べている。
   そもそもなら、チリ海軍やサウジアラビアみたいに、陸自の大型ヘリにASM積んだほうがいいと思うけどね。
2013.05
20
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 防衛省が「敵基地の攻撃を検討」とあるのだが。まあ、いまどきに敵の上陸を待ってからしか使えない新戦車よりも優先するものは一杯あるという話だ。

 新防衛大綱策定にあわせて、敵基地攻撃能力保有を検討するとのこと。朝日新聞に出ている。※ まずはアドバルーンか、将来での地ならしなのだろう。まず、保有するかどうかでどれだけの反対が出るかを試す。あるいは、将来に具体的装備を購入するときに、急に言い出しても話が上手くいかない。北朝鮮がミサイルを振り回している時に言っておこうというものだ。

 それほどの反対もないだろう。20年まえなら憲法論議で面倒だったが、今はその辺りにアレルギーはない。専守防衛というお題目も、インド洋へ、イラクへ、アデンに自衛隊を派出している現状ではあまり意味もない。なにより、思い出したようにミサイルを発射して、核実験もやられている現状では、敵地攻撃への反論は少ない。

 だいたい、弾道弾やらを発射してから落とすよりも、発射する前に撃破したほうが効果的なのは当然の話で、それなりに賛同は得られるだろう。マヌケな連中は、巡航ミサイルで自走式発射機は狩れないみたいな、木を見て森をみないような話をするだろうが、別に発射機だけを叩く必要もない。ミサイルの整備工場や需品倉庫を叩いてもいいし、ミサイルが自在に通れないように橋を落としてもいい。やりようはいくらでもある。

 なんにしても、対上陸戦よりも重視すべきことはどんどん増えていくということだ。日本本土に敵の軍隊が上陸してくることは、まず重視するような脅威ではない。政治的にも無視して良いし、やりそうな国の軍事力を見てもそれは不可能である。※※

 それよりも、海外での日本の国益や、弾道弾に対する防衛、中国との軍隊を使ったゲームでの勝利が重視されている。海外での日本国益保護としては、海上輸送路の安定確保や国際社会との協調があり、その対処として海賊対策等に力をいれなければならない。弾道弾については北朝鮮の核とロケットがある行動がある。中国とのゲームも、尖閣諸島での睨みあいも含めて手を抜くことができない。

 敵基地攻撃能力は、悪手ではない。効用は、弾道弾対処だけではない。情勢次第では、国際貢献に資することもできる。中国とのゲームにしても、日本がそれを持つことで中国側に幾許かの負担を強いることもできるだろう。何の役にも立たない10式戦車を整備するよりも、敵基地攻撃能力保有のほうが、安全保障や国防の上ではよほど役に足つ。戦車教団を除けば、コレは誰もが頷ける話だろう。



※「敵基地攻撃能力保有を検討へ 防衛省、新大綱案へ議論」『朝日新聞デジタル』(朝日新聞,2013.5.18)http://www.asahi.com/politics/update/0518/TKY201305180002.html
※※ 基本、あまり準備する甲斐のない対上陸戦闘用に新戦車を整備することは、お金をドブに捨てるようなものだ。仮に10式戦車が優れていても、敵が上陸して来なければ役に立たない。そもそも仮に敵が上陸してきても、現今の90式戦車で十分である
2013.05
19
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Category : ミリタリー
 伊藤真広さんの95式レプリカ※ についての記事を見て思い出したのだが。

 米軍の逗子弾薬庫跡に95式があって、海自で貰ってくれないかという話があった。確か、財務局か施設庁あたりから出た話で、とりあえず見に行ったのだがね。

 米軍住宅から先に入ったところが野っ原になっており、そこに95式が置いてあった。

95鉄の墓標

 ただし、車体前面が溶接されている。割れた所を補修したあとなのだが、明治に作られた軍艦三笠の溶接部と同じで、旧日本軍の作業ではない。埋めて割れた部分を掘り出したあとに溶接したのだろう。

 あとは、上面が腐っていた。上から中が丸見えで、車体前部にある操縦機構も丸見え。あれ、2本の棒で駆動軸を押さえつけてブレーキにしているだけ。相当に簡単な構造だった。

 だいたい海自で貰っても仕方がない。その上にコンディションが悪すぎる。「海自が受けるのはダメですね」と断ったのだがね。例によって役得として、剥落した装甲板を2枚もらってきた。履帯も一枚頂戴しようかと思ったのだが、そこは丈夫で、軽くハンマーで叩いでもダメなので諦めた。

 その後、装甲板の組成を見たら、海軍の装甲板だったよ。研究している人がいて、削って組成をみたのだが、陸軍ではなく海軍のそれだった。海軍が自前の鋼板出して作った戦車だった様子。

 まあ、あの95式は溶鉱炉にいったのだろうね。以前にも、どこから聞きつけてきたマニアが売ってくれ譲ってくれといったらしい。だが、扱いが面倒なので断ったとのこと。武器だからとか、そういった問題もあったのだろうよ。

 写真はリバーサルかプロビアでとっといたやつ。2002年頃にとってスキャニングした。元のポジかネガが見つからないので、小さいけどこれでご勘弁。



※ 伊藤真広「実際に稼動も! 静ホビ会場で九五式軽戦車を見た」『ASCII.JP』(アスキー,2013.5.17)http://ascii.jp/elem/000/000/789/789515/
2013.05
18
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Category : ネトウヨ批判
 靖国神社は政治的主張を控えないと、国民支持を喪うのではないか?

 靖国神社が主催する講演会等は、穏当な保守と言うよりは、対外強硬策や戦前回帰的な右派で、政治的主張が激しい。対外強硬策や戦前回帰への主張は、崇敬奉賛会で毎年発行される『講演記録集』にも多く載っている。『平成22年度講演集』※ を見ると、口演者は田母神俊雄、青山繁晴、義家弘介、高橋史朗、桜林美佐となっている。主張は神社や祭神を崇敬するというよりも、英霊の名前を借りた中国や韓国、政権党への非難がメインであり、保守の範囲を越えた、右派の主張そのものだ。

 この点でも報道でも問題視されている。石山永一さんによる「中国敵視、差別的記述も」※※ では、崇敬奉賛会機関紙『あさなぎ』の中身について次のように紹介している。
 年4回発行の「あさなぎ」は中国を一貫して「シナ」と表記、2010年冬号では中西輝政・京都大名誉教授の講演内容として「日本人の国内での生活や教育の自由が、在日シナ人に脅かされています」、大阪市内で中国人が「路上で豚を屠殺(とさつ)し、車道を大量の血で染める」「(中国人)留学生は教授の授業内容を最前列に座り“監視”する。少しでもシナを批判する発言があれば、文部科学省に執拗(しつよう)に抗議」するなどと書いている。
 崇敬奉賛会青年部顧問でもある中西氏は「排外主義的な内容で、私の言葉ではありえない」と発言内容を否定している。(石山)
 10年秋号では「このままでは皆さんのお子さんやお孫さんはシナの独裁者の奴隷になりますよ」とのコラムニスト勝谷誠彦氏の言葉を紹介。今年夏号でも「日本の総理大臣が靖国神社に参拝するのにシナの許可をもらうようになった」との元特攻隊員の言葉を紹介している。
 沖縄関連では「(普天間飛行場の)辺野古沖移設に反対している人は“よそ者”ばかり」(10年春)という記述や、沖縄への戦跡ツアーに同行した陸上自衛隊の戦史教官(当時)の言葉を受け、沖縄戦史は「だれかの都合のよいように書き換えられたのかもしれない」(09年夏)などの記述がある。(石山)
なお、報道では勝谷誠彦さんのコメントとして
 コラムニスト・勝谷誠彦氏の話 (引用されている発言については)言ったように思うが、私は講演内容を活字にして公表することはすべて断っており、(無断掲載は)ルール違反だ。(石山)
を載せている。

 このような政治主張を続けていると、靖国神社は国民支持を喪うのではないか。

 国民は、靖国神社が存在していることは支持している。たしかに、総理大臣以下の参拝は意見が分かれる。だが靖国神社で戦死者を追慕する感情は否定されていない。昔の『雨の九段坂』のように、戦士した息子に会いに行くおっ母さんや、見たことのないお父さんに会いに行く息子や娘が神社に参ることを否定する世論はない。そのために神社があることは当然だと思われている。

 しかし、強度に政治的な色がつくと、靖国神社への国民支持が喪われることになる。もちろん、右派的な政治主張に沿っていれば、右派は靖国神社を支持するだろう。だが、素朴な追慕といった感情で支持していた一般国民は、靖国神社を胡乱な眼差しで見ることになる。

 靖国神社は、国民全体に支持される神社であるべきだ。祀られる200万の戦死者も、その遺族も、政治的に色のついた神社は望まない。靖国神社奉賛崇敬会は200万の戦死者を、勝手に右派の政治主張に賛同するものとしている。「戦争を辞するな」、「先人たちは逍遥として」云々は、戦死者にも迷惑である。戦死者のほとんどは徴兵であり、志願兵や職業軍人ではない。その志願兵や職業軍人の戦死者にしても、奉賛崇敬会の意見に賛同するのはごく一部にすぎない。軍隊で「悠久の大義」だの迷惑な話を聞かされた挙句、靖国神社に収まってまで右派的なアジ演説を聞かされるのは溜まったものではない。

 このままでは、靖国神社は将来的に国ほかからの支援を得難くなる。靖国神社は、規模に見合った氏子がいない。だから、いずれ金でいき詰まる。しかし、潰したり、縮小したり、引越したりしていい神社でもない。お父さんがあそこに居ると思っている人がいるお社だから、どうにかしないといけない。今の法体系では難しいが、国あたりから何処かを迂回しての支援も必要になる。だが、そのときに過剰な政治主張は枷になるようにしか見えない。



※ 『平成21年度 講演・シンポジウム・勉強会・記録集』(靖國神社崇敬奉賛会、2010.5)

※※ 石山永一「【靖国は今】中国敵視、差別的記述も 沖縄基地問題で反対している人“よそ者”  靖国神社崇敬奉賛会の会報/関係者にも懸念」 『47NEWS』(全国新聞ネット、2012.10.20)http://www.47news.jp/47topics/e/235482.php

※※※ このままでは、戦死した自衛隊員を合祀するのも面倒になるんじゃないのかね。政治性がキツすぎて、合祀そのものや、後の参拝も国の機関として参加できなくなってしまうよ。
2013.05
17
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12:00
Category : 有職故実
 1960年になっても江戸時代は残っていた。東京の○○島(島名は主旨ではないので秘す)なんかはそんなところだったらしい。

 「ついにきた!あこがれの東京」という記事がある。内容は、伊豆諸島の離島、○○島中学が、どうにかして生徒を東京に旅行させるというもの。頑張っても行き帰りの旅費しかなかったギリギリの旅行計画であったが、それが何回か新聞記事になると、篤志があつまって東京市内を観光できるようになった。

 ただし、当時の○○島は人口100人の村で、ラジオも電灯も井戸もない。もともと○○島は港もなく、耕地もそれほどない。交易や農業はあまりできず自給自足状態にあった。
 島には車もないので、バスに乗ると「牛よりも早い」、「目が回る」と言ったとある。

 また、初めて見たジュースにも手をつけない。篤志の振る舞いなのだが、見たことのないせいか、子供なのに冷たいジュースに口をつけない。

 そもそも、体格が劣っていた。米が取れないので芋が常食であり、子供も大人に混じって重労働をするので、当時の新聞でも小柄と書かれている。しかも、食べつけない米よりも芋のほうがいいという。「米ばかり食ったが、はやくカンモ(サツマイモ)食いたい」という話が採録されている。

 江戸時代の寒村から、戦後の東京に現れたようなものなのだろう。それがあったのは、たかだか50年前の話に過ぎない。



※ 「ついにきた!あこがれの東京」『朝日新聞』(朝日新聞,1960.9.7)夕刊 p.5.
2013.05
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Category : ミリタリー
 自動車教習は民間委託すべきではないか?

 自衛隊には自動車教習所がある。これは陸海空それぞれ持っている。だが、別にやることは民間と変わらない。むしろ効率は相当に悪い。ある専門課程なんかは、最初の実習をわざと外出日翌日の朝一番にもってきて「昨晩酒のんだヤツ」とか挙手させて「酒の影響があるのに運転なんかできるか」とやっていた。断熱性抜群の銀色の服、まあ宇宙服みたいなやつを着せて、1時間ほど教習場を走らせていた。アレはいつか事故を起こすだろうよ。

 曹士だと、厳しいのと面倒を避けて外の自動車教習所に行く奴も出てくる。なんせ、入校扱いになるので面倒極まりない。学生隊舎に放り込まれて外出はできない。夜もは、どうしようもない自動車運転の自習もさせられる。体力練成と称して課程や分隊対抗で走らされる。修業時には所感文を書かせられる。所感といっても検閲付、班長のチェック、分隊士・分隊長のチェック、教育科によるチェックもある。それなら、20万程度払って外で取ったほうがいいと考える奴も出てくる。

 逆に身内なら大甘になる。自教を持っている部隊で、関係する幹部なら闇でもとれた。己はその員数外で取った。一応、時間は乗るが、すざまじく融通が効く。当時の民間よりも丁寧な口調になる。

 面白い例だと、陸海の幕間協力というものがある。隣接する陸自教習所に、海自が教習指導員を添えて学生を派出するものだ。教官を出すので引け目もない上に、自動車教習所の闇整備も海が請け負っていたので、まずどうとでもなった。旧海軍でいう設営隊そのものが絡んでいるので、舗装が傷んだら全舗装、縁石も全部やり直し、できないはずの待機所の電気工事も、資格者を斡旋してやっていた。陸自の貴重品、買取だったコピー機の廃品や紙も相当に持ち込んだみたいだった。

 だから、陸の自動車教習所の所長は海には頭が上がらない。階級も己の方が上なのでなおさら。だから、司令や副長までも放り込んだ。名目は再就職支援だが、「事業用大型航空機(4発)20t以上」や「事業用回転翼操縦士」を持っている1佐2佐が、大型や大特を取ってどうするのかねとみんなで笑っていた。教習も、やりたいときにやる。なんせ教官は部下の2曹から曹長なので、これほど御大名な免許取得もない。

 ただ、教習指導員を確保するのも面倒だった。資格は相当に面倒くさい。一般命令を切ったが、講習だかなんだかにそれなりの期間を放り込む。中には難しい実技が合格するのだが、どうやっても学科が合格しない2曹とかもいた。「あと少しなんだからまた行け」というと「班長アレだけは勘弁してくれ」と泣きつかれたよ。もっと難しいはずの測量士は大丈夫だったんだけどね。

 確保した指導員を転勤させられないのも面倒。だから、同じ基地で命令系統が全く別の旧海軍設営隊相当と人事のキャッチボールをしていた。予算関連職員は2-3年で転勤させなければいけないのだが、その部隊と3年毎に行ったり来たりすることになる。何回か目に硫黄島か総監部か地本に放り込むが、その後も2つの部隊を行ったり来たりする。結果として人事が硬直してしまう問題が生まれた。人事硬直は、自衛隊の学校にくっついている教習所も同じである。

 自動車教習所は人員を吸い込み、人事の自由度を低下させる。一ヶ所で、教習指導員は50人からいる。車両も多く、その整備は車両班の荷重ともなっている。多少減らしたとはいえ陸自50ヶ所、海空自で2ヶ所づつある。教習指導員だけで陸で3000人程度、海空で100人づつは、民間と同じ事をしている教習所に拘束されている。この人数は有効利用できるのではないか。

 民間に投げてもいいんじゃないのかね。いくらでもやりようはある。基地近くの自動車教習所と単価契約させてもいい。「好きなところで取ってこい」と、標準日数と標準価格を決めて各個人に、足でた分は自分で払えと好きな所でとらせてもいい。金夜や土日に取りたいやつには、課業時間外にとらせてもいい。やることは自衛隊の教習所と変わらない。教習車も大差もない。民間の車を運転できれば自衛隊の車も運転できる。

 費用的にも高くなるとも思えない。外では20万もあれば大型は取れる。隊内であれば、教習指導員一人で1ヶ月に3人程度養成している。だが、指導員の人的コストは、20万円×3人分の60万円よりも高い。指導員の給料だけを見れば、30万-50万寸前程度であるが、自衛隊は社会保障ほか福利厚生、教育訓練費ほかで相当に支払っている。コストでみれば、部外に投げたほうがよい。

 実際に、アウトソーシングの話もあったのだが、教習所を持っている職域と関連職域が必死になって反対した。また、中級幹部以上であれば、うまい汁もなくもないので、その話はなくなった。

 しかしねえ、防衛省自衛隊が人間の数で困っているという。それなら、教習所は最初に民間に投げるべきだと思うのだけれどもね。
2013.05
15
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12:00
Category : 有職故実
 さっさと諦めてしまえばいいのに。東京オリンピックなのだが、どうみてもやる甲斐はない。戦後復興や平和のシンボル、先進国への仲間入りなんて50年前に果たしている。いまさらやっても何のありがたみもない。飛行機がが曲芸で五輪を描いても、二度目だと大した高揚感も沸かない。

 仮に東京でやっても、なんの賑わいもない。ロンドンでのオリンピックのように、これといった熱気もなく終わる。日本でも東京、札幌、長野と回を重ねるごとに冷めていく。長野オリンピックなんてなんの感慨もなかった。また東京でやってもいつの間にか始まっていつの間にか終わるだけだ。

 招致で金を使って、建設で金を使って、外国への援助で金を使ってと金が出て行く話ばかりである。儲かる連中は、建設業とホテルと、体育協会とIOC関係者だけだろう。他の人間からすれば、東京市内で混雑を招くだけ。

 イスタンブールに譲ったほうがいい。何故かよく分からないが、オリンピック招致は保守派が動いている。裏金まがいの謎マネーで「親日国」と戦うよりも、より深い友情とやらのために譲ってやったほうがいいのではないかね。トルコでのオリンピックは熱狂間違いない。その時、日本が譲ってくれたという話は後世まで残る。日本にとっても、金をドブに捨てることを止められて、結構な話だと思うよ。

 なによりも招致活動が気持ち悪い。オリンピックをやりたいという下からの民意ではなく、上からの招致活動になっている。やれば儲かるという理屈の上、やることも下品だ。

 招致のために、東京タワーからタロ・ジロの銅像を撤去する ※ なんてよく言い出せるものだ。一種の神話となった南極犬の顕彰より、招致のために「シンボルマークを花で描くこと」が重要だと思っているあたりがどうかしている。

 銅像は歴史を記憶するために立てている。そんな記憶よりも金儲けに繋がる招致活動が大事というなら、東京市内にある銅像の尽くをシンボルマークに変えればいいだろう。上野の西郷さんや皇居の大楠公、渋谷のハチ公の銅像を撤去してシンボルマークを花で描けばいいのではないかね。



※ 「タロ・ジロより五輪招致 東京タワー下の像、撤去へ」『朝日新聞デジタル』(朝日新聞,2013.5.11)http://digital.asahi.com/articles/TKY201305110054.html?ref=comkiji_txt_end_kjid_TKY201305110054
2013.05
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11:59
Category : 有職故実
 40年前にあった雫石事故なのだが。衝突そのものの他にも興味ふかい事件が付随している。岩手県警が遺体取り違いをしているのだ。

 金歯の数、指輪の内容と付ける指、ホクロでどうみても他人の遺体を引き渡された。

 遺族が妻ではないと抗議をすると「岩手県警の係員たちは『他の人たちが間違いない、とそれぞれ引き取っていたのだから、そういわれても困る』」『こんなに努力したのだから間違っても仕方がない』と言ったという。

 まあ、おおらかな時代で、記者に対して本音を言ったのだろう。だが、遺族に聞こえてはいけない本音は、部外者に話してはいけないわけだ。

 昨今はDNA鑑定をいれているのは、このあたりのトラブルが骨身に染みたせいだろう。航空事故でDNA鑑定云々を最初に聞いたのは、島根だか鳥取沖だかにC-1が落ちた時の話で、96幹候相当の女性パイロットの御遺体がそれで判明した云々のニュースがあった時。己は陸海空一緒の課程に入校中だった。空自の学生が「同期だから」でお弔いに行った。そのあたりをよく覚えているよ。
2013.05
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13:00
Category : ミリタリー
 MCH-101の掃海能力を、MH-53Eよりも高いとする行政評価は怪しいものではないか?

 防衛省の「平成23年度行政事業レビューシート」http://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h23/pdf/r-sheet24/0048.pdfにMCH-101がある。行政事業レビューは、本来なら防衛省の事業を批判的にみるべきであり、その欠点や足りない部分も明らかにするべきであるが、そのような記述は一切ない。第三者である有識者を選んでやらせているが、その人選や事務局が予算要求元の省庁なのだからそうなるだろう。

 行政レビューそのものも、もっと批判的にやって欲しいということはともかく。その中身に怪訝にも事実と異なるとなると、防衛省によるレビューそのものの信憑性はさらに低下する。

 MCH-101の記述でヘンな点がある。掃海能力がMH-53Eに優るとする記述がそれだ。
点検結果
[略]
3 有効性
MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れたMCH-101を整備することで、掃海艦艇が配備されていない港湾、水路等における機雷脅威
への緊急的対処及び掃海艦艇に脅威となる機雷への対処等を行うとともに、輸送任務として、機上水上部隊等に対する人員、物資輸送等
の任務支援を安全確実に対応できるとともに、将来の高性能化した対象目標に有効に対処できる。


 掃海ヘリとしての能力は、単純に曳航能力で決まる。航空掃海は、掃海具を曳航するだけが仕事であり、能力はどれぐらいまで大きく、重い曳航具を曳けるかで決まる。もちろん、単純に軽い掃海具が低能力というわけではないが、重い掃海具でなければ効果を見込めない場合もある。たとえば、水圧掃海をやりたければ、いまのところコンクリート・バージか廃船でも曳くしかないが、曳航能力が低いヘリでは不可能である。掃海ヘリとしては曳航能力が高いものが、高い曳航能力を持つといってよい。

 曳航能力だけでみれば、MH-53Eが西側トップである。エンジン出力を見ても、MH-53Eは15,000馬力であるのに対して、MCH-101は6000馬力に留まる。MH-53Eは、出力だけではなく、曳航具取り付け部も丈夫にできており、機雷原の中に取り残された1万排水トンクラスの艦船を曳航して脱出させられる。MCH-101では、1万トンクラスは曳航できるかどうかが分からない上に、その速力も低くなる。悪天候や海象悪化による抵抗に勝てるかどうかも怪しい。

 実際に、MCH-101が曳航する掃海具は、簡易なものとなる。防衛省では掃海具についての具体的な発表はない。※※ Mk-104、Mk-105、Mk-106といった従来掃海具は運用が難しくなる。まだ具体的な発表はないが、繋維掃海具であれば、幅は狭くなる。磁気掃海具はおそらく発電機を伴うものではなく、DYAD掃海具やMOP掃海具のように永久磁石を縦に並べたものになるだろう。あるいは、TEM掃海と言われる船舶の磁気・音響を正確にエミュレートする小型の掃海具も使うかもしれない。※※※

 もちろん、永久磁石でも役には立つ。航空掃海のメインは略掃、概略の掃海である。どこまで機雷が入れられているかを確認する。また、なんでも食い付くダボハゼ機雷の数を減らそうというものであるので、そこに問題はない。

 ただし、掃海能力そのものは減る。掃海という手法そのものが通用しなくなっているが、Mk-104、Mk-105、Mk-106の掃海能力は、簡易な掃海具よりは高い。曳航能力が減少したMCH101を指して「MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れた」とは言えない。

 MCH-101を買う事自体は悪い話ではない。もちろん、MCH-101は悪い飛行機ではない。まず、稼働率が悪いMH-53Eに較べれば、安定して運用できる点は大進歩である。また、アビオニクスの進化により、掃海作業での操縦支援も進歩している。航空掃海は基本的に真っ直ぐ飛ぶだけで、掃海具の負荷に応じた調整や、曲がる所で曲がる程度の操縦しかしない。MH-53Eでも、航法支援や、未掃海面である「ホリディ」を防ぐための掃海線確認機能はあった。しかし、MCH-101であれば、設定にあわせて、ターンや出力調整もやってくれるようになる程度の進歩はあるだろう。

 しかし、行政お手盛りの行政評価でMCH-101を褒めるときに、事実としても怪しい記述はすべきではない。役人作文であれば、劣っているものを「劣っていない」と修辞することはあっても、事実と異なることは書いてはいけないはずである。この点から見ても、「MH-53Eと比較して機雷掃海能力に優れたMCH-101を整備する」という記述は、行政事業レビューへの軽視であるようにも見えるのである。



※ 「0042 掃海・輸送ヘリコプター MCH-101」『平成23年度 行政事業レビューシートの最終公表』http://www.mod.go.jp/j/approach/others/service/kanshi_koritsu/h24/pdf/r-sheet/0042.pdf

※※ 具体的なポンチ絵では掃討メインにされている。曳航式ソーナー捜索具としてサイド・スキャン・ソナー、レーザー捜索具としてALMDSをつけている。おそらく、シー・アーチャー同等の使い捨て航空処分具も付けるのだろう。
   ただ、この手の器材は従来ヘリでも使えるし、普通の汎用ヘリにも搭載可能である。米軍のALMDSほかも、モニター画像を乗員が機上解析する手法で行われる。

※※※ TEM掃海は、いいとこづくめに見えるのだが。エミュレートが正確すぎるので、逆に機雷の設定がエミュレートした船舶を除外する条件では、機雷除去ができない。
2013.05
13
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13:00
Category : エネルギー
 「原発の汚染水が溜まっている」問題だが、物理的方法を使えばトリチウムを除去できるのではないか?

 福島第1原発では、大量の汚染水が発生している。冷却に使う水は極端に多くないものの、冷却済の水が建屋地下に湧き出してくる地下水と混交し膨大な量となっている。地下水の量は1日400トン以上と言われているが、汚染水貯蔵量のグラフ読み取りからすると1日200トン程度である。いずれにせよ、貯蔵量は膨大である。、

 汚染水を浄化できない原因は、トリチウム、三重水素である。トリチウム以外は化学的手段では除去できるが、性質が水そのものと変わらないトリチウムは化学的に除去できない。極端に危険なものでもない様子だが、放射能であることは間違いなく。海に放流することもできない。福島の県民も、沿岸の漁民も、日本の国民もそれを許さない。

 このトリチウムだが、除去すればいいのではないか?

 トリチウムを除去する手段は、ないこともない。重水と呼ばれる水があるが、製造方法は普通の水から、トリチウムとデュートリューム(重水素)を含む水を取り出す方法で行われている。逆の動作として、汚染水から軽水、普通の水だけを抜き出すことで、除去はできない話でもない。

 重水製造法は、物理的手段によって行われる。重水は単純に重い。電気分解をおこなって水素を取り出すときに、重い重水は動きが悪く、残りやすい性質を使うものだ。実際には、キレイに軽水からなくなり、きっちり重水が残るわけではないが、何回もやれば軽水が多い水と重水が多い水くらいにはわかれる。

 軽水だけを抜き出す内に、自然の水と同じ放射線量になる。そのあたりで放流すればいいのではないか。いずれは重水の量も減るだろう。

 もちろん、金はかかる。電気分解による重水製造は、電気がタダ同然の場所でなければできない。戦争中、重水製造がノルウェーで行われていたもの、単純に水力発電の電気が余っていたからである。

 ただし、沸騰させる方法でできれば、それほど金がかからないかもしれない。基準値以下の軽水だけを雑に得り取るなら沸騰でも解決する可能性がある。蒸発-凝縮操作なら、多重効用缶と真空引き、ヒートポンプを使えば、それなりの費用でできる。

 多重効用缶とは、砂糖水や塩水を濃縮したり、アルコールを蒸溜するための設備である。水蒸気が水に戻るときの凝縮熱を利用して、液体を加熱して蒸発させる仕組みである。もちろん、蒸発した水は凝縮器に導かれ、隣の缶の加熱に利用する。その時に真空引きをすることによって、低温でも沸騰状態をつくることができるようになる。低温沸騰であれば、熱源もヒートポンプで済む。近くに崩壊熱を出す厄介者もある。可能なら、ヒートポンプの吸熱側をそれにできれば経済的である。

 ほかにも水蒸気にして、拡散させる方法とかも考えられるだろう。ウラン235と238を選り分ける方法がそれである。コストはともかく、気相拡散と遠心分離を組み合わせでも、できないことではない。

 具体的にコストを論じることができるわけでもなく、そのつもりもない。だが、10回か、100回か、電気分解か、蒸発・凝集操作か、気相拡散・遠心分離を繰り返させれば、汚染水から放射線量で異常のない水、軽水を取り出すことはできる。また、汚染水の量も減らすことができる。実用性は極めて低く、コストも高いが、やる気になってできないことではない。

 もちろん、汚染水の量を減らし、それを保管できるならそれでいい。地下水の移動を止めれば、汚染水の量は相当に減る。高トチリウム濃度の水も、循環冷却で使う分なら何の問題もない。汚染水の量が減れば、トリチウム除去を剃る必要もない。発生する汚染水の量が減りました。その汚染水も、例えば半減期の12年×5で60年も保存しておけば、放射線量は5%以下まで低下する。それなら、それでもいいだろう。

 ただ、今のところは泣き事をいって放流しようという気分も見えてくる。まず弥縫策だけをしているようにしか見えない。電力会社の発表をみると「汚染水を貯める場所がなくなりました」「人体に直ちに影響はありません」みたいな泣き言をいって、放流できるようにしたいのではないかと勘ぐりたくなる。だが、仕方なく放流するにしても、その前に実用的ではないとか高いといった逃げ口上を塞いで、やらせることはあるだろう。
2013.05
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Category : 中国
 尖閣問題でアメリカが味方してくれると考えるのは、あまりにも無邪気で大甘ではないか?

 他国の領土問題に深入りしていいことはない。日本と中国が喧嘩しているところに顔を出しても何もいいことはない。関係ない家の土地争いに口を出しても恨まれるだけがオチだ。

 しかし、アメリカが助太刀してくれるという、甘い考えがある。古森義久さんの「『尖閣』揺れるオバマ政権」だが。オバマ政権は尖閣ごときで揺れることもない。まず、取るに足らない無人島の話で、アメリカからすれば、つまらない喧嘩にすぎない。経済や北朝鮮の問題もあるので、「日本と中国が喧嘩するのは困るなあ」程度の認識にとどまる。

 アメリカがどちらにもつかないことは、アメリカ自体が前々から説明している。前にも書いたのだが、アメリカの立場は巻き込まれないように注意しながら、日中双方に恩を売るというものだ。
[閔之才さんが指摘するように]
 1 尖閣諸島は日米安保の適用範囲
 2 米国は日中の領土係争には関与しない
 3 日中が冷静に処理することを望む
このように説明した上で、1で日本人を喜ばせ、2で中国人を喜ばせ、3でアメリカを巻き込まないでくれよといっている。
   「日中両方へのリップサービス」http://schmidametallborsig.blog130.fc2.com/blog-entry-472.html
古森さんがそれを知らないことは怪訝である。

 そもそも、保守はアメリカへ相当に片思いしている。「日本が保守政権であれば、右派政権であればアメリカとの関係はうまくいく」と勝手に思い込んでいる。今の安倍政権であれば、対米関係は勝手に上手くいくと思い込んでいる。

 しかし、それは勝手な思い込みに過ぎない。アメリカは中国と対立するつもりはない。オバマ政権の対中発言をみても、中国に対しては、敵対的な封じ込めではなく、国際協調路線に引き出そうとしている。国防省周りは中国と対立している頭かもしれない。しかし、国務省ほかはもともと協調路線であり、政治家も経済界も協調路線の頭にある。

 古森さんや産経が想定する読者は、中国は世界の敵に見えるのだろう。例えば、アジアや太平洋の諸国が競って対中包囲網に参加するというような、単純な発想がある。安倍政権のいう「安全保障のダイヤモンド」がそれであるが、「民主主義の価値観」という実情を見ない発想で、インドを対中包囲網に入れようといったようなあまり考えていない発想がある。※※

 領土問題でアメリカが日本の味方をしてくれるというのは、大甘な発想である。尖閣諸島にはアメリカの利益もなく、日本に肩入れしても経済的にも軍事的にも何の得もない。たかがその無人島についての領土問題で、しかも中国の恨みを買ってまで、日本の味方をしてくれる理由もない。

 アメリカが助太刀してくれる発想は、現実主義を標榜する保守としては、相当に現実を見ない、無邪気で単純な発想に見えるのである。



※ 古森義久「『尖閣』揺れるオバマ政権」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2013.5.11)http://sankei.jp.msn.com/world/news/130511/amr13051110360008-n1.htm

※※ インドは民主主義の価値観はあるかもしれないが、それ以外の価値観にある絶望的な段差を見ないようにしているのも奇妙に見える。
2013.05
11
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13:00
Category : ミリタリー
 高性能鋼材を使うことで、水中排水量は変わるのだろうか?

 Dragonarさんによると、海自潜水艦がNS110を使う理由は、軽く作るためであるらしい。高張力鋼を使うことにより、水中排水量を減らす効果を狙ったものとしている。
 なんでこんなに耐力求めるのか?

自衛隊の潜水艦では、なぜ高張力鋼の性能向上に力を入れているのでしょうか。
その理由は軽量化にあると考えられます。

自衛隊の潜水艦は通常動力潜水艦の中でも、かなり大型の部類に入るものです。最新の”そうりゅう”型では、現用の通常動力潜水艦で世界最大となる、水中排水量4,200トンにまでなっており、艦の運動性や燃費などを考えれば、重量を少しでも減らしたいのだと考えられます。
   dragoner「潜水艦用高張力鋼 NS鋼について(後編) 」『dragoner.ねっと』(2013.5.10)http://dragoner-jp.blogspot.jp/2013/05/ns_10.html着色部は文谷による

 これは奇妙な主張である。基本的に鋼材の質で潜水艦の排水量、とくにDragonarさんが提示する水中排水量は変わることはないからだ。

 潜水艦の原理を考慮すれば、奇妙な理屈であることが明らかになる。潜行中の潜水艦は、基本的に中性浮力に調整される。タンクに水を入れて、浮きも沈みもしない重さにする。この時、水中排水量は、潜水艦がもつ体積と同じになる。海水が多少重いことを無視してざっくり説明すれば、潜水艦の体積を4200立米とすれば、4200トンになる。船殻の重さを変えてもかわらない。高性能鋼を使い船殻を軽く作ろうが、普通鋼で船殻を重く作ろうが、さらにはFRPで作ろうが、水中排水量は変化しない。

 Dragonarさんの主張は、これまで公式発表してきた内容とも異なる。従来から高張力鋼については、潜航深度を向上させるためと発表されている。Dragonarさんは公式発表が大好きな方である様子だが、これまでの公式発表と食い違うことについて気づかないのは不思議でならない。

 仮に公式発表以外の利点を考えるとしても、普通は防御性の向上を挙げるだろう。潜水艦の本体は一種の圧力容器である。大水深では、攻撃によって生まれた傷や変形によって、容器が水圧に耐えられなくなる可能性がある。これは圧力と耐久力の関係で決まることだが、高張力鋼を使うことにより、耐久性は上げることができる。

 公式発表の背後にあるものを推測することは悪い話ではない。

 しかし、その推測には検討を加える必要がある。たとえば、潜水艦を軽くするためという理由は、思いつくことは素晴らしいことである。だが、残念だが検討すれば否定される内容である。潜水艦の大きさは、兵装、乗員数、航続距離、作戦継続日数といった能力で決まる。大きさについては、鋼材の質はあまり関係しない。

 Dragonarさんは、自己の主張を検討していないのだろう。実際に、「新戦車は作るべきではない」あるいは「新戦車の製造数を抑えろ」とする主張を、勝手に「戦車不要論」と早合点する。しかも「軍隊不要論」になるというよくわからない論理の飛躍をしている。※ このあたりでも、検討の不足が伺われる。




※ dragoner「戦車不要論者って、軍隊不要論を否定できます?」『dragoner.ねっと』(2013.5.3) http://dragoner-jp.blogspot.jp/2013/05/blog-post_4762.html

※※ 潜水艦用高張力鋼 NS鋼について(後編)は、NS110の件についても、珍妙な主張がある。
 NS110の謎

さて、より耐力が強固なNS110は、”はるしお”型以降で採用されているという話が文献やネット上であります。しかし、NS110の規格制定年が1998年であることを考えると、”おやしお”型以降なのでは無いかと考えています(ただ、”おやしお”も1995年起工だから、果たしてNS110使われているんだろうか……)。
   dragoner「潜水艦用高張力鋼 NS鋼について(後編)」『dragoner.ねっと』(2013.5.10)http://dragoner-jp.blogspot.jp/2013/05/ns_10.html着色部は文谷による

 NS110そのものは、すでに昭和50年代の雑誌に載っている。また、はるしお級に関する記事でもNS110を使用しているとある。手元にないので現物未確認だが、当時の防衛白書か装備年鑑にも書いてあった。このあたりは少し調べれば分かる話だ。

 規格化が1998年であることを根拠に「はるしお級に使っているわけがない」と考えるのは本末転倒だろう。現物があるのに理屈を優先するようなものである。北米のバイキング遺跡を見ながら、コロンブス以前にヨーロッパ文化の遺跡があるはずがないと考えるようなものだ。

 はるしおが使っているという記事から、規格化が1988年の誤植であるか、あるいは規格制定前に使用が始まっていると考えるのが普通だろう。実際に後者の例もある。ある旧海軍研究の大家によると、規格としてとレシピが決まる前に、性能規定だけで採用した例があるという。

 いずれにせよ、「はるしお級にNS110を使っているわけがない」と判断するほうが奇異な話である。
2013.05
10
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13:00
Category : 未分類
 フランス・スウェーデンでは、原発への侵入は容易だった。岩波『科学』の最新号には、佐藤暁さんの「核テロの脅威について考える」※ が掲載されている。そのなかで、フランスとスウェーデンの原発が、テロの危険性を指摘するグリンピース活動家により、易易と侵入を許した例が挙げられている。

 フランスのノシャン・スル・セーヌの原発では、9人が格納容器上に登攀し「楽々成功」と書いた幟を建てられたという。2011年12月5日のことである。

 翌2012年5月3日、同じくフランス、ピュジェの原発には、パラグライダーで侵入され、発煙筒を投下された。

 10月9日には、スウェーデンのリングハル原発ではストレス・テストと書いたツナギを着た活動家の侵入を許している。

 やる気になれば、50人もいれば、原発への侵入は可能だということだ。その後に、原発を暴走させるのもそれほど難しいことでもないらしい。佐藤さんによれば、アメリカの原発テロ対策では、テロリストは侵入から50分で原子炉が制御不能にできる見積もりを採用しているという。原発の知識を持つ、または原発制御室で働いたことがある人間が一人でもいれば、テロは比較的簡単にできるということだろう。

 実際に、警察や自衛隊の警備でも、原発を厳重に防備することは難しい。完全な防備をするためには、人は何人いても足りない形になるのではないか。そもそも、どちらもとりあえずの貼り付け警備と、なにかあったときの増援しか考えていない。

 警察も自衛隊も真剣に防備を考えているのだろう。核施設がある警察署の警備課に背広で行ったことがある。まず警備課なので、奥まったところにあるのだが、前の部屋では、大量のMP-5を並べて整備していた。(こっち見ないでと言われたけどね) 自衛隊でも、陸自は対テロで色々準備している。海の特警行った連中の話を聞くと、待機とか相当掛かっているらしい。

 だが、貼り付け警備要員はそれほどは確保できない。有事にはともかく、平時の配備数は大した数ではない。警察国家フランスですら成功した施設侵入が、日本で防止できるとも思えない。

 原発は、テロ対策でも面倒なものなわけだ。今までは安全神話に乗っかっていたが、3.11では、操作員も「放棄する」と言い出すほど責任感に乏しく、そもそも自然災害にも強いわけでもない。その上、テロ対策にも相当の手当をしなければならない。戦時には防備戦力を吸い取られる。こうなると、あまりいい所もない。

 まあ原発は、動かさないが正解なんだろう。金に目が眩んで安全だから動かす※ というヤツもどうかしている。リスクが大きすぎる上に、扱っている会社がアレすぎる。操作員の素養や、災害時の備えもプアだった。その上、テロ対策だが、ここでも電力会社は自己負担を限界までケチることは間違いない。電力会社が運用する限り、再稼働に堪える代物でもない。全廃するか、半端ないエネルギー価格上昇に備えて、安全なヤツだけをモスボールしとくかに留めたほうがいいんじゃないの。



※ 佐藤暁「核テロの脅威について考える」『科学』(岩波書店,2013.4)pp.0553-0561

※※ 選挙の時には原発を動かさないとかいって、選挙に勝ったあとでは動かすと言い出すのも酷いもんだと思うね
2013.05
10
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06:53
Category : アニメ評
 昨日ある席で「女殺し油地獄」というつもりで「女教師油地獄」と言ってしまったよ。サテ、それからなんだが正解が出てこない。近松作品とか、油屋のおかみさんとかいった断片的な情報は出てくるが、肝心の「女殺し」の部分が出てこない。「いや、女教師だったんじゃないの」という錯覚もするのだが、そりゃ歴史のフライングだろうと焦るが、単語が出てこない。結局、携帯電話でグーグル先生に尋ねるはめになったよ。

 「女教師油地獄」とは、まあ、安永航一郎さんの「赤貝ティーチャー」※ なみに、どうしようもない題名だね。

 己のオリジナルだと思ってググってみたら、2月21日にその単語を使っているヒトを発見。https://twitter.com/hideakioeda/status/304862566864265216だが、これもまあ、女殺しが出て来なかったのだろうと思うよ。



※ オリジナルは言わずもがなのアレです
2013.05
09
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13:00
Category : ミリタリー
 保全監視の休日直だか夜直だかの時の話なのだが。陸曹長、空曹、付幹部、己で、己以外は全部高射だった。どうでもいい話をしていたのだが、そこで高射の話になったことがある。

 最初はスカイスイーパーの話だった。付幹部は直近の下僚なのだが、生徒あがりの高射特科なので定年に近い。古いものを承知しているだろうと尋ねると、部隊にあったという。罰直で装填訓練があったかと聞くと、それほど年寄りでもないよ、やったことはないと言われた。

 大砲の装填訓練装置はどうみても罰直に最適に見える。「かとり」には装填練習用の装置があった。砲尾部に模擬弾を装填すると、落っこちて、そのまま下の揚弾筒部分に落ちてくる。それをまた拾い上げて砲尾部に装填する。これを繰り返す永久機関である。実習幹部なので、ヒマにかこつけて見ていると1分しない内に作業服の背中に汗が溢れてくる重労働。しかも、どうみても達成感はない。いやまあ、罰直にもってこいだと思った。

 その話をすると、海はいまどき高射砲を使っているのかという話になった。いや、3インチも5インチも、対空射撃もする。方位盤が高精度高性能なので、3000m先を漂う風船にブラ下げた1m四方の的に初弾直撃とか、昔の人力砲でも標的機直撃・撃墜が結構あったという話になった。

 そこからSAMの話になった。付幹部は経歴上、長く短SAMの部隊にいたという話をする。己も陸上用短SAMとVADSを持っている部隊にいたことがあるという話から、細かい話になったのだけどね。陸曹長と空曹(この人も上曹)も混じって、いろいろな悪口とかの話になった。

 そこで曹長さんが、陸がペトリ買っていたら悲惨なことになったという話をした。米陸軍の装備には、野戦展開で使うトレーラーハウスみたいな居住用のユニットがついている。しかし、陸自が買うときには、少額の金をケチって、それを買わない。防空部隊は長時間活動するのに、野戦展開で幕営なんかしたら、疲れてすぐに能力が下がる云々。いや、空が買って正解といった内容。

 曹長さんも生徒出身で、外国とか結構行っていた。イラクにも連絡将校付かなにかで行って、コンテナの中に寝泊まりした云々の人なんだがね。その話でも居住性が悪いとすぐに能力は低下するよが持論だった。

 まあ、北朝鮮が弾道弾を発射するという話があって、隣の部屋が発射の誤報を出して、それがNHKに流れてしまったその晩の話なんだがね。臨時で運動場にペトリが展開しているのだが、ああいう状態では陸自なら長期間は持たない、空自が買って正解だったという話になったよ。



※ 海で短SAMというとスパロー/シー・スパローを指す。陸用とか、陸自用(空自も使っているけど)とか言わないと紛らわしい。
2013.05
08
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Category : 有職故実
 領海侵入という言葉はあるのだろうか?

 読売新聞※ によると、中国艦艇が与那国島と西表島の間を通過した、その際に日本の接続水域に入ったという。

 別に大した話でもない。接続水域は、この場合は公海と同じ扱いになる。通る上で何の支障もない。防空識別圏に入った云々の話と同じで、国際法上に何の問題もない。天下の往来であるので、中国も憚る必要もないし、日本も何か言える立場でもない。

 それよりも気になったのが、読売新聞の「領海侵入」という言葉である。「中国軍の艦艇がこの海域を通過するのは3回目。領海侵入はなかった。」(読売新聞)とあるが、この中国軍艦が領海に入っても「侵入」という言葉には値しない。

 中国軍艦は、無害通航であれば、日本領海内を航行できる。領海に入ることは、領空侵犯のように無条件に非難されるものではない。無害通航であれば、何の問題もない。ちなみに無害通航は軍艦であっても、商船であっても認められている。

 「領海侵入」とは、おそらくは領空侵犯からの連想だろう。だが、実際のところ船舶が他国の領海に入ること事態は、犯罪行為でも何でもない。

 念のため、防衛省発表※※を確認したが、当然のことだが「領海侵入」云々の表現はなかった。

 ただ、大新聞が「領海侵犯」と書いてしまったように、国家の領域や通行に関する法規といったものはあまり知られていない。そのあたりを知らずに、勝手にハッスルしてしまう人々は結構いる。スクランブルの発表を聞いて、防空識別圏と領空の区別をつけずに「日本の領空が侵犯された」とか騒ぐ人たちはいる。(たとえばコレ

 中国軍艦が日本領海で無害通航をしても、彼らは勝手に発火するだろう。これは全く無い話でもない。例えば大隅海峡を抜けて青島に向かう場合、日本領海を通り抜けるのが最短経路になる。あのあたりは、直線基線であるため、九州島西岸から最大70km程度までを領海として宣言している。そして艦船が最短経路を通航するのは、合理的な行動であり、一種の権利となっている。今のところは聞かないだけの話に過ぎない。

 今回の接続水域の話にしても、防空識別圏の話にしても、日本陸岸の目鼻の先を軍隊が通ることに違和感を覚える※※※ のだろう。だが、それはお互い様なのであまり騒ぐことではない。浅間丸事件のように騒ぐことで無知を晒す結果になってしまうのではないか。



※ 「与那国島の接続水域に中国フリゲート艦2隻」『YOMIURI ONLINE』(読売新聞,2013.5.7)http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20130507-OYT1T00897.htm?from=ylist

※※ 統幕発表http://www.mod.go.jp/js/Press/press2013/press_pdf/p20130507.pdf
また、こちらでは島の間を通り抜けた云々はない。日経による報道他から見ても、実際に通り抜けているのだろうが、その部分は、記者の取材による部分なのだろう。

※※※ 南氷洋の日本調査捕鯨も似た様な問題である。日本防空識別圏への進入で怒る人は、概ね「南氷洋公海上での捕鯨は国際法で認められている。オーストラリアやニュージーランドの非難は失礼極まりない」と間逆なことを言いだすことが興味ふかい。
2013.05
07
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Category : ミリタリー
 選挙の時、政治的中立性疑うような訓示があった。統合部隊で、陸海空で言えば陸の人なんだが、選挙の時に「誰に入れるべきか、誰が国防のために有益であるか、自衛隊にとって有益であるかをよく考えて」云々をした人がいたのには驚いた。定年前の2佐なんだが、自衛隊に愛されていない割には自衛隊への愛に溢れていると思った。

 己と総務と経理が海幹部だったが、終わった後「親方スゴイ事言うね」とか互いに言い合ってたよ。他人のことは知らないが、3人ともアレって顔をしたらしい。「だからそのあと口ごもったんじゃないの」という話になった。

 その選挙後に、訓示ではないが、選挙結果の話で勝手に悲憤慷慨されたのには困ったもんだ。よほどその前の政党が好きで、選挙で勝った政党が嫌いらしい。でも、それは職場で勤務中にしていい話じゃないだろと思ったね。

 そういえば、その時には面倒ごとも回ってきた。それは隊本部からなのだが、「選挙に行ったかどうか」を調べろというアレね。下らないことをする隊本部と、それを馬鹿正直に調べようとするアレ直近上司が一番困った。

 自分の休みに、自分がどうしようかなんて自衛隊が知る必要はない。それは、選挙に行ったか行かないかも同じ。だいたい、それを調べなければならない切実な理由もない。

 だいたい、こんな質問をすると、ちょっとした後難を恐れて、みんな「選挙に行った」という。所詮は兵隊で、触らぬ神にたたりなしでね。普通はメンドイから、部隊100人中、周囲の20人にでも聞いて、サンプル数を100になるようにふくらませて(数字は少し散らす)出したりするもんだ。

 だが、アレ直近上司は本気で全部調べるマヌケだった。いい歳こいてやり過ごしができず、言われたことを全部やろうとする。その場にいない夜直明けの人間にもメールして尋ねていやがる。

 あまりにもマヌケなんで「行ったか行かないかなんて個人の勝手なんで、己は答えない、覚えていないな」というと、上司は命令だのなんだの言ってくる阿呆ぶり。面白いので「投票への参加の可否を拒否したら命令違反になるんですかね」みたいなこといって馬鹿にした覚えがある。

 第一、そんなの調べてどうするのか? だって「仕事上の理由で選挙に行くのが大変だったですか」なんて調べているわけじゃない。勤務体制に資するためではない。単に投票に行ったかどうかを調べているだけ。こんな下らない事を聴かれたのは、江田島の幹部候補生の時だけだよと思ったよ。

 まあ、選挙とか政治に関しては、オフィシャルな場所では何も言わないべきなんだがね。ある程度エラクなると箍が外れる人がいる。

 その箍が外れたときに、アチャーということを言い出す人がいる。マトモだと思っていたのだけどねえとね。

 ある隊の司令なんだが、田母神さんの後輩で崇拝者の1空佐がいた。そのキャプテン殿、更迭の次の日がたまたま司令交代行事だったのだがね。交代して出ていく挨拶が「田母神さんが間違っていない」「今の日本が間違えている」で驚いた事があった。マトモな人だと思っていたのだけれどもね。防大以降、技術教育ばかりやって、世間の雰囲気との差異に鈍感になったせいなのかねえ。

 田母神さんといえば、1海佐でも、マトモな人だと思っていた上司が崇拝者だったことがあった。部隊にいる時は、比較的大人しい退職待ちのオトッツァンだと思っていたのだが、その次の定年配置の時に田母神さんの手足になったらしい。一昨年か、たまたま図書館で読んだ『正論』にその人の投稿があって、その主張の激しさには中てられたことがあった。

 お二人とも、田母神さんとは防大時代あたりからの親分子分の関係なんだろう。防大卒は防大クラスで思考停止する。だいたい金銭が絡む件の不正や専横も見逃すからね。このあたりも、いずれ何かの問題を引き起こすだろうと思ったよ。
2013.05
06
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Category : ミリタリー
 仮装巡洋艦でも、それなりの役には立つのではないか?

 仮装巡洋艦は、高速商船に武装を施したものを指す。仮設巡洋艦と表記されることもある。大きく見れば特設軍艦ということになるが、その中でも水上戦を志向した高速艦である。日本で言えば、日本海海戦で索敵を行った信濃丸、太平洋戦争でインド洋通商破壊を行った愛国丸・報国丸が特に名前を知られている。

 ただし、仮装巡洋艦は本格的な戦闘に堪える艦船ではない。基本は商船であるため、船体構造、武装、速力に劣る。

 船体は商船そのものであり、商船構造を称した戦闘用艦艇よりも脆弱になる。

 武装も案外に搭載箇所が少なく、砲を支持する構造も丈夫ではない。弾薬庫や揚弾設備も最適とはならない。

 速力も、機関出力と船型からどうしても軍艦よりも遅い。蒸気タービン登場以降、水上戦闘のため、戦闘艦が最高速力20kt後半から40kt寸前までを発揮するようになった。しかし、商船は蒸気タービンを採用しても、機関サイズや船倉といった経済条件から、出しても25kt前後であった。

 これらの限界により、大戦では仮装巡洋艦は主として通商破壊、マーシャント・レイダー程度の価値しか果たせなかった。

 しかし、当時に較べれば、仮装巡洋艦を取り巻く条件は有利に変化している。

 まず、当節は軍艦の基準が下がっている。直接防御力は重視されなくなっている。主砲取付面の高精度は必要だが、砲はかつてよりも軽くなり、価値も下がっている。速力も、かつてほどの高速性は要求されていない。

 また、搭載艦艇に依存しない兵装が主流になった。仮装巡洋艦でも、それなりの有力な兵装を装備できる可能性が増えたのである。具体的には、対艦ミサイルと哨戒ヘリである。また、ファランクスのように船体構造に依存しないCIWSや、甲板上に置くだけのチャフ/フレア、無理に砲塔構造なしでも運用できるオットーの76ミリ速射砲である。システム連接の問題はあるが、これらの兵器はシステムなしでもどうにかなるものである。

 仮装巡洋艦は、極端に高くない脅威下であれば、それなりに使えるのではないか。チャフ/フレア、CIWS、簡易な対空ミサイルがあれば、水上艦や航空機からの対艦ミサイルのにも、ある程度は対抗できる。潜水艦の脅威に対しては、それなりの高速力である程度は対抗できる。

 もちろん、限界もある。個艦での対潜戦は難しい。ソナーを装備することは現実的には無理で、今日的なコバート戦に参加するには静粛性にも問題がある。対潜戦にはヘリ母艦として使える程度である。※  被弾時には、容易に戦闘能力を喪失してしまうだろう。

 しかし、能力的には水上哨戒や対水上戦、船団護衛であれば仮装巡洋艦は実用可能である。第一線の戦力としては使えないが、第二線的な水上戦闘艦としては運用できる。小国海軍であれば主力艦代替として、大国であれば緊張の低い正面での哨戒艦として実用に足りる存在である。



※ 仮装巡洋艦ではないが、ヘリ母艦として特設軍艦を利用した例はある。フォークランド紛争時のアトランティック・コンベアや、現今のアーガスがそれである。他にも、米海軍もアラバホ計画で転用を検討している。また、商船転用ではないが、中国のShi-Changも似たようなものだ。
2013.05
06
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12:59
Category : 未分類
 なぜか頭に浮かんだのは『ブルネイ、開戦前夜』というタイトル。多分、続刊は

『仮設巡洋艦 ボー・グエン・ザップ』
『ネグロス戦闘団』
『ジョホール水道19』
『潜水艦 チュラロンコーン』
『雷撃距離12000』
『自動防空艦 マジャパイト』
『星港、戒厳令』

 じゃないの。多分、ASEANが人民解放軍と戦うことになるのではないかと。

 仮設巡洋艦ボー・グエン・ザップは海戦初頭に台湾海峡をダッシュすると思う。で、蘭嶼の漁民に化けて寧波舟山港にある中国の石油ストックを襲ったフィリピン人部隊を回収して帰ってくるみたいな内容なんだろう。

 潜水艦チュランロンコーン・襲撃距離1万2000は、思いもしない距離から魚雷で中国船団を襲うのだけれども、中国も中国で○○犯ほかの脳みそ使った、無人潜水艦で反撃するとかそういう話だろう。

 マジャパイトは、マレーシア、インドネシア、シンガポールの共同開発共同生産だけれども。実際には全部シンガポールで作っているというオチで、しかも鋼材や鋳造品、舵の類を中国に頼っていたので1隻しか作れないとか。

 戦争全体だと、日和るのはカンボジアとかラオス、シンガポール、ブルネイではないかね。特に親中国のシンガポールは、戦犯出さないため、開発中の『金融兵器ネメシス』だか『サイバー兵器ネメシス』を差し出すんじゃないかね。