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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.05
16
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Category : ミリタリー
 自動車教習は民間委託すべきではないか?

 自衛隊には自動車教習所がある。これは陸海空それぞれ持っている。だが、別にやることは民間と変わらない。むしろ効率は相当に悪い。ある専門課程なんかは、最初の実習をわざと外出日翌日の朝一番にもってきて「昨晩酒のんだヤツ」とか挙手させて「酒の影響があるのに運転なんかできるか」とやっていた。断熱性抜群の銀色の服、まあ宇宙服みたいなやつを着せて、1時間ほど教習場を走らせていた。アレはいつか事故を起こすだろうよ。

 曹士だと、厳しいのと面倒を避けて外の自動車教習所に行く奴も出てくる。なんせ、入校扱いになるので面倒極まりない。学生隊舎に放り込まれて外出はできない。夜もは、どうしようもない自動車運転の自習もさせられる。体力練成と称して課程や分隊対抗で走らされる。修業時には所感文を書かせられる。所感といっても検閲付、班長のチェック、分隊士・分隊長のチェック、教育科によるチェックもある。それなら、20万程度払って外で取ったほうがいいと考える奴も出てくる。

 逆に身内なら大甘になる。自教を持っている部隊で、関係する幹部なら闇でもとれた。己はその員数外で取った。一応、時間は乗るが、すざまじく融通が効く。当時の民間よりも丁寧な口調になる。

 面白い例だと、陸海の幕間協力というものがある。隣接する陸自教習所に、海自が教習指導員を添えて学生を派出するものだ。教官を出すので引け目もない上に、自動車教習所の闇整備も海が請け負っていたので、まずどうとでもなった。旧海軍でいう設営隊そのものが絡んでいるので、舗装が傷んだら全舗装、縁石も全部やり直し、できないはずの待機所の電気工事も、資格者を斡旋してやっていた。陸自の貴重品、買取だったコピー機の廃品や紙も相当に持ち込んだみたいだった。

 だから、陸の自動車教習所の所長は海には頭が上がらない。階級も己の方が上なのでなおさら。だから、司令や副長までも放り込んだ。名目は再就職支援だが、「事業用大型航空機(4発)20t以上」や「事業用回転翼操縦士」を持っている1佐2佐が、大型や大特を取ってどうするのかねとみんなで笑っていた。教習も、やりたいときにやる。なんせ教官は部下の2曹から曹長なので、これほど御大名な免許取得もない。

 ただ、教習指導員を確保するのも面倒だった。資格は相当に面倒くさい。一般命令を切ったが、講習だかなんだかにそれなりの期間を放り込む。中には難しい実技が合格するのだが、どうやっても学科が合格しない2曹とかもいた。「あと少しなんだからまた行け」というと「班長アレだけは勘弁してくれ」と泣きつかれたよ。もっと難しいはずの測量士は大丈夫だったんだけどね。

 確保した指導員を転勤させられないのも面倒。だから、同じ基地で命令系統が全く別の旧海軍設営隊相当と人事のキャッチボールをしていた。予算関連職員は2-3年で転勤させなければいけないのだが、その部隊と3年毎に行ったり来たりすることになる。何回か目に硫黄島か総監部か地本に放り込むが、その後も2つの部隊を行ったり来たりする。結果として人事が硬直してしまう問題が生まれた。人事硬直は、自衛隊の学校にくっついている教習所も同じである。

 自動車教習所は人員を吸い込み、人事の自由度を低下させる。一ヶ所で、教習指導員は50人からいる。車両も多く、その整備は車両班の荷重ともなっている。多少減らしたとはいえ陸自50ヶ所、海空自で2ヶ所づつある。教習指導員だけで陸で3000人程度、海空で100人づつは、民間と同じ事をしている教習所に拘束されている。この人数は有効利用できるのではないか。

 民間に投げてもいいんじゃないのかね。いくらでもやりようはある。基地近くの自動車教習所と単価契約させてもいい。「好きなところで取ってこい」と、標準日数と標準価格を決めて各個人に、足でた分は自分で払えと好きな所でとらせてもいい。金夜や土日に取りたいやつには、課業時間外にとらせてもいい。やることは自衛隊の教習所と変わらない。教習車も大差もない。民間の車を運転できれば自衛隊の車も運転できる。

 費用的にも高くなるとも思えない。外では20万もあれば大型は取れる。隊内であれば、教習指導員一人で1ヶ月に3人程度養成している。だが、指導員の人的コストは、20万円×3人分の60万円よりも高い。指導員の給料だけを見れば、30万-50万寸前程度であるが、自衛隊は社会保障ほか福利厚生、教育訓練費ほかで相当に支払っている。コストでみれば、部外に投げたほうがよい。

 実際に、アウトソーシングの話もあったのだが、教習所を持っている職域と関連職域が必死になって反対した。また、中級幹部以上であれば、うまい汁もなくもないので、その話はなくなった。

 しかしねえ、防衛省自衛隊が人間の数で困っているという。それなら、教習所は最初に民間に投げるべきだと思うのだけれどもね。
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