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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.06
17
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Category : 未分類
 ビーチングできる輸送艦は必要なのではないか。

 海自輸送艦は「おおすみ」だけになっている。約9000t、22ktと大型で高速だが、ビーチングができない。ビーチングとは、砂浜に乗り上げ、艦首部を開放して船倉から直接上陸する方法である。離島で使う小さなフェリーを想像すればよい。「おおすみ」は、このビーチングができない。輸送手段はLCAC、ヘリでの輸送、あるいは岸壁につけての揚陸搭載使用に限定されている。


LST-742,1950;1016074201
http://en.wikipedia.org/wiki/File:LST-742,1950;1016074201.jpgから。オリジナルUS National Archives photo # 80-G-421526の米海軍写真であり、利用可能であるため転載した


 ビーチングができないと、生地への大量輸送に苦労する。生地への大量輸送では、ビーチングが一番世話はない。荷物を載せ替える手間がないからだ。対して、LCACやヘリは高速であるものの、荷物の積み下ろしで時間を取られてしまう。LCACやヘリは、荷物が少量であれば沖合から一気に運べて便利だが、大量輸送となるとビーチングに負ける。

 実際に、硫黄島輸送ではビーチングの方が便利だった。旧式輸送艦によるビーチングでは半日かからず揚陸できた物資量が、「おおすみ」型ではもてあました。積み込み・積み下ろしを繰り返すLCACでの輸送は量がさばけない。1日で終わらず残業をしてどうにかまで伸びてしまった。

 今、海自でビーチングできるのは、500tに満たない輸送艇1号と輸送艇2号しかない。去年までは約600tの「ゆら」「のと」、8年前までは1500tの「ねむろ」があった。それ以前は、1500-2000t級のLSTがあった。しかし「おおすみ」以降には、ビーチングできる艦艇は建造されていない。残るのは、天候を見ながら伊豆諸島あたりをまでしか出られない輸送艇1号型だけとなっている。この1号型も、5年10年のうちには退役する。

 災害派遣を考慮すると、ビーチングできる輸送艦も整備しておいたほうがよいのではないか。今のところ、生地輸送は硫黄島程度しかない。しかし、津波で港湾が使えなくなるような災害派遣を考慮すれば、生地への大量輸送手段は持っておいたほうが良い。東日本大震災では、岸壁復旧をまって、官民艦船で輸送した。だが、ビーチング輸送できる輸送艦があれば、岸壁復旧前、あるいは岸壁のないところへの輸送に活躍しただろう。あるいは、問題となったガソリン輸送も可能だったかもしれない。

 海自も、10年ほど前には1900tタイプを計画していた。「輸送艦(1900トン型LSU)」http://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/13/jizen/youshi/05.pdfがそれだ。しかし、予算化できないままに終わっている。それ以降、ビーチングできる輸送艦への予算要求の話は聞かない。潜水艦や護衛艦、哨戒ヘリや哨戒機も重要かもしれない。だが、支援艦艇としてビーチングできる輸送艦も、安いもので十分※ なので、作っておいたほうが良い。



※   高度な艦艇でもないので、別に日本の造船所で作る必要もない。日本の建造所で値段ケチると、水中処分母船の上構のように、今時、水漏れとか、とんでもないことになるので、極端な話、中国や韓国で建造したほうがいいだろう。エンジンや舵機、艤装品を支給して、通信設備や武装(機関砲程度だけど)日本で後付すれば、中国で建造してもなんの問題もない。
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