Category : ミリタリー
米海軍が海水から燃料を作る研究をしている。
"Navy eyes turning sea water into jet fuel"※ によると、米海軍は海水中に溶存している水素と二酸化炭素を抜き出して、燃料に合成するつもりらしい。合成に要するエネルギーについては、原子炉を頼りにするというもの。
石油の払底を見越して、改質油や合成燃料やバイオ燃料が作られている。米軍はその点に熱心であり、それらの代替燃料で艦艇や航空機を動かす実用実験をしている。代替燃料は、製造にも消費にも実用上に極端な問題はない。
これらの代替燃料は、プラントがあれば需要先に作っても良い。今のところは、天然ガス・重質油・石炭といった原料の扱いや、反応塔や改質設備の共用から、供給元に都合の良い石油化学工業地帯に置かれている。しかし、原料やプロセスを適切なものとすれば、設置場所は選ばない。
艦隊にプラントを持たせれば、前線への燃料輸送を減らせる。米海軍はそのような発想を得て、空母にプラントをもたせるアイデアについて研究を始めたということだ。原料については、本質的な問題はない。燃料合成での主流であるFT法では、一酸化炭素と水素を合成して燃料を作っている。天然ガス、重質油、石炭、エタノール等の原料は、一酸化炭素と水素を作るための材料に過ぎない。必要なのは、炭化水素をつくるための炭素と水素と酸素である。別に化石燃料やバイオマスの形で持っていかなくとも、大気中にも海水中にもいくらでもある。
米海軍の着目点は、一酸化炭素の代わりに二酸化炭素を使用できれば、洋上燃料合成はヨリ容易になるというものだ。一酸化炭素は自然界にほとんど存在しないが、二酸化炭素はいくらでもある。水素はそれなりに存在しているし、別に電気分解で作っても良い。米海軍は原子炉をもっているため、合成反応に必要なエネルギーは確保できる。米海軍のアイデアはそのようなものだ。
米海軍は、二酸化炭素と水素から燃料を作り出すプロセスについては具体的に説明していない。しかし、それなり研究もあるので、見通しが暗いわけではない。別に非効率でも二酸化炭素から炭素を取り出して一酸化炭素を作ってもよい。原子炉があれば、エネルギー効率は相当に無視できる。
このアイデアが実現すれば、空母機動部隊は食料と弾薬ある限り戦闘を続けることができる。米空母打撃群にあるアキレス腱は、大量消費する航空燃料と弾薬にある。それらを消費することで戦闘継続能力を失い、洋上あるいは寄港しての補給を強要される。だが、航空燃料だけでも自前で作れれば、戦闘継続能力は飛躍的に向上する。弾薬も、航空燃料用スペースを転用すれば相当数積み増しできるからだ。また、航空燃料は艦艇燃料に転用可能なので、護衛する水上戦闘艦の燃料としても使える。
計画では、空母にプラントをはめ込む構想である。プラント船から洋上給油の手間を省くことを考えれば、合理的な発想である。しかし、プラントのサイズや、既存艦への対応を考えれば、当座は原子炉を搭載した専用補給艦の類に取り付けることになるだろう。
実現するにしても、5年10年の話ではない。その間に紆余曲折もある。そもそもうまくいくかどうかは、全くわからない。だが、将来の燃料枯渇を見据え、新しい技術で解決しようと研究するところは、米国のエライところであるだろう。まあ、計画遅延による打ち切りを恐れた技術者が「この通りでございます」と、CNOの目の前で海水と燃料を掏り替えるようなエピソードとかも欲しいけどね。
あとは、効率次第だが、日本では海自より新日鉄よりの技術かもしれない。製鉄業は2酸化炭素があり、昔は水素富化とかやっていて水素生産も容易である。熱も余っている。排出権分コストが高くなっても、二酸化炭素のごく一部でも液体燃料化できれば助かるだろうよ。
※ "Navy eyes turning sea water into jet fuel","NAVY TIMES"(2012.10.13)http://www.navytimes.com/article/20121013/NEWS/210130317/Navy-eyes-turning-sea-water-into-jet-fuel
"Navy eyes turning sea water into jet fuel"※ によると、米海軍は海水中に溶存している水素と二酸化炭素を抜き出して、燃料に合成するつもりらしい。合成に要するエネルギーについては、原子炉を頼りにするというもの。
石油の払底を見越して、改質油や合成燃料やバイオ燃料が作られている。米軍はその点に熱心であり、それらの代替燃料で艦艇や航空機を動かす実用実験をしている。代替燃料は、製造にも消費にも実用上に極端な問題はない。
これらの代替燃料は、プラントがあれば需要先に作っても良い。今のところは、天然ガス・重質油・石炭といった原料の扱いや、反応塔や改質設備の共用から、供給元に都合の良い石油化学工業地帯に置かれている。しかし、原料やプロセスを適切なものとすれば、設置場所は選ばない。
艦隊にプラントを持たせれば、前線への燃料輸送を減らせる。米海軍はそのような発想を得て、空母にプラントをもたせるアイデアについて研究を始めたということだ。原料については、本質的な問題はない。燃料合成での主流であるFT法では、一酸化炭素と水素を合成して燃料を作っている。天然ガス、重質油、石炭、エタノール等の原料は、一酸化炭素と水素を作るための材料に過ぎない。必要なのは、炭化水素をつくるための炭素と水素と酸素である。別に化石燃料やバイオマスの形で持っていかなくとも、大気中にも海水中にもいくらでもある。
米海軍の着目点は、一酸化炭素の代わりに二酸化炭素を使用できれば、洋上燃料合成はヨリ容易になるというものだ。一酸化炭素は自然界にほとんど存在しないが、二酸化炭素はいくらでもある。水素はそれなりに存在しているし、別に電気分解で作っても良い。米海軍は原子炉をもっているため、合成反応に必要なエネルギーは確保できる。米海軍のアイデアはそのようなものだ。
米海軍は、二酸化炭素と水素から燃料を作り出すプロセスについては具体的に説明していない。しかし、それなり研究もあるので、見通しが暗いわけではない。別に非効率でも二酸化炭素から炭素を取り出して一酸化炭素を作ってもよい。原子炉があれば、エネルギー効率は相当に無視できる。
このアイデアが実現すれば、空母機動部隊は食料と弾薬ある限り戦闘を続けることができる。米空母打撃群にあるアキレス腱は、大量消費する航空燃料と弾薬にある。それらを消費することで戦闘継続能力を失い、洋上あるいは寄港しての補給を強要される。だが、航空燃料だけでも自前で作れれば、戦闘継続能力は飛躍的に向上する。弾薬も、航空燃料用スペースを転用すれば相当数積み増しできるからだ。また、航空燃料は艦艇燃料に転用可能なので、護衛する水上戦闘艦の燃料としても使える。
計画では、空母にプラントをはめ込む構想である。プラント船から洋上給油の手間を省くことを考えれば、合理的な発想である。しかし、プラントのサイズや、既存艦への対応を考えれば、当座は原子炉を搭載した専用補給艦の類に取り付けることになるだろう。
実現するにしても、5年10年の話ではない。その間に紆余曲折もある。そもそもうまくいくかどうかは、全くわからない。だが、将来の燃料枯渇を見据え、新しい技術で解決しようと研究するところは、米国のエライところであるだろう。まあ、計画遅延による打ち切りを恐れた技術者が「この通りでございます」と、CNOの目の前で海水と燃料を掏り替えるようなエピソードとかも欲しいけどね。
あとは、効率次第だが、日本では海自より新日鉄よりの技術かもしれない。製鉄業は2酸化炭素があり、昔は水素富化とかやっていて水素生産も容易である。熱も余っている。排出権分コストが高くなっても、二酸化炭素のごく一部でも液体燃料化できれば助かるだろうよ。
※ "Navy eyes turning sea water into jet fuel","NAVY TIMES"(2012.10.13)http://www.navytimes.com/article/20121013/NEWS/210130317/Navy-eyes-turning-sea-water-into-jet-fuel
スポンサーサイト