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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.09
03
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12:00
Category : ミリタリー
 カナダの駆逐艦と補給艦が衝突したニュースがある。たとえば"Canadian warships collide during manoeuvres in Pacific"と報じられている。シアトル対岸にある加領ビクトリア、エスクィモルト(ピュージェット・サウンドから100kmも離れていない)から、ハワイにいく中途、訓練中にぶつかったという。
※がそれである。

 訓練は、曳き船・曳かれ船というもの。互いが互いを曳航する作業で、片方が曳航船となり、残りが被曳航船となる。自動車で言えば、エンスト車牽引のお稽古のようなもの。

 曳航は相当に難しい。海自でも、艦艇の技量を見るには、曳き船・曳かれ船をやらせるのが一番良いという話もある。

 まず、曳き出す過程が難しい。曳航側、引っ張るほうが曳航索を準備するのだが、最初から全部を繰り出すものではない。いきなり張り合わせると、索に溜まる張力が悪さをする。曳航索はゴム紐のようなもので、曳かれる方の船を近づけてブツけるとか、索が切れて暴れだし両艦艇作業甲板上にいる人間を殺傷する可能性がある。平時訓練で時間があれば、相当に準備する。後甲板に板を敷き、曳航索を蛇行させ、そこに一種パワーヒューズとして、索に10センチ間隔で細紐をつけて板と結束する。曳航を始めてテンションが掛かりだすとき、細紐を斧で傷つけて張力を少しずつ逃す。航洋曳船や海保の巡視船には、張力を調整する曳航装置があるが、軍艦にはない。


 曳っぱりだしたあとも面倒くさい。自動車ならば、牽引される方にハンドルもブレーキもある。しかし、艦船にはそんな便利なものはない。ハンドルに相当する舵は、効き出すまで時間がかかる上に、曲がれる範囲も相当に制限される。ブレーキに相当するのは、機械が生きていれば、有効なのはスクリュー逆転程度で、あとは気休め程度にスクリューの遊転/固定設定と、可変ピッチプロペラのピッチ変換があるだけである。同じ速度で真っ直ぐ進むにしても、外力や固有振動周期で多少は暴れる。変速や変針でどういう挙動をするのか分かったものではない。

 なにより止めるのが難しい。機関や舵が生きている艦艇なら、後進や舵を活用すればどうにかなる。しかし、本来はどちらもダメになった艦船を想定しての訓練になっている。常に安全側には振れるものではない。

 だから、軍艦による曳航訓練で事故がでるのは、仕方がない部分もある。特に実戦的な曳航訓練、準備を省略しての曳航開始や、比較的高速での曳航をすれば、事故は起きやすい。しかし、実戦的な曳航訓練をしていないと、戦闘状況ほかで上手に曳航できない可能性が高く、艦船を喪うことになる。

 便宜上海軍と呼ぶが、カナダ海軍は正当な英連邦海軍である。英連邦海軍は実戦経験を重視する。厳密に安全性を確保するより、実戦や実遭難での対応力確保を重視していたのかもしれない。事故を起こしたことは不手際であるが、事故を恐れるあまりに実戦的な訓練ができないとか、そもそも曳き船・曳かれ船ができない海軍よりはよほど立派で、頼もしい。

 そのカナダ海軍に、中国とのゲームに多少であれ参加したほうがよくないかという話※※ もある。キチンとした海軍力が日米側に積み上がれば、中国によるキャッチアップは相当困難なものとなるだろう。



※ "Canadian warships collide during manoeuvres in Pacific""The Star.com CANADA"(Toronto Star Newspapers,2013.9.2)http://www.thestar.com/news/canada/2013/08/31/two_canadian_warships_collide_during_exercise_manoeuvres_en_route_to_hawaii.html

※※ O’Neil,Peter"Navy should shift warships to West Coast in response to China’s aggressive military buildup, defence analysts say""National POST"(National Post,2013.8.11)http://news.nationalpost.com/2013/08/11/navy-should-shift-warships-to-west-coast-in-response-to-chinas-aggressive-military-buildup-defence-analysts-say/
2013.09
02
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12:00
Category : 雑誌読み
 マルミミゾウの象牙はあらかじめ抜けないものか? 可能であれば象牙のないゾウとなる。そうすれば密猟はなくなるのではないか。

 岩波『科学』の今月号に、マルミミゾウについての記事があった。西原智昭さんの「森のゾウが消える -マルミミゾウの頭数激減と象牙需要」※ がそれである。

 マルミミゾウはアフリカに住むゾウであるが、サバンナで暮らすアフリカゾウとはことなり、密林に生息する別種とされている。ジャングルで果実を食べ、遠くでタネを含む糞をする。糞はタネの発芽や成長を助ける。ジャングルの生物多様性を保つ鍵であるとされている。また、水浴びをするためか穴を掘ることによって、ジャングルが極相に至ることが防止されるともいう。動植物がジャングル内を移動する際にも、マルミミゾウがつくったゾウ道、ケモノ道が必須であるともいう。

 そのマルミミゾウが絶滅に瀕しているという。アフリカゾウは数が増えた話があるが、マルミミゾウは増えていない。マルミミゾウはむしろ密猟圧によって数を減じているという。

 密猟の目的は、象牙である。象牙を抜くためだけに、ゾウが殺されているという。

 ならば、あらかじめ象牙を抜くか、切ってしまうという方法はないものだろうか?

 この方法は、既にサイで行われている。密猟者が狙うサイの角をあらかじめ切除することで、密猟を防ぐというものだ。ゾウにも同じ方法が使えるのではないか。

 もちろん、密林に住むマルミミゾウについて、悉皆あつめて象牙を抜くことは難しい。しかし、国際機関や信頼できる政府機関による公然作業は、密猟よりも容易であるはずだ。密猟者よりも先に象牙を抜く、あるいは切除することにより、マルミミゾウを保護できるのではないか。

 また、三味線のバチについて、象牙を使わないことを業界で申し合わせることも有効ではないか?

 ちなみに、象牙需要の多くは日本と中国(と華僑圏)であるという。そして日本の象牙需要のうち、少なくない部分が三味線のバチに使われている。しかも在庫ではなく新品が求められていることが、西原さんの記事には示唆されている。

 三味線のバチは大型材からしかとれない。バチを取り出すには、20kgを越える大型な象牙が必要と述べている。象牙1本からは、バチは1本しかとれない。この点で、余剰材で作れる印鑑材とは異なっている。規制以前の象牙のストックが何トンあっても根本がなければダメである。つまり、三味線のバチの需要があるかぎり新規の大型材への需要もあるということだ。

 この伝でいえば、マルミミゾウを保護する(アフリカゾウもアジアゾウも同じだが)ためには、三味線業界が象牙を使わないという取り決めも効果があるように見える。象牙を使わないと音が弱くなる云々の話も、三味線奏者がみんなで仲良く音が弱くなればさしたる問題もないだろう。別に象牙なしでも三味線は鳴らせる。象牙バチとマルミミゾウとどちらが大事であるかとすれば、間違いなく後者である。

 地球環境の変化といった話ならばともかく、象牙狙いでゾウが密猟され、絶滅するのはマヌケな話である。象牙が儲かるから問題なのであり、各種手段で象牙の価値を無くせば密猟は大きく減少する。保護啓発活動や法的規制も重要だとは思うが、同時に経済性を喪失させる手段を講じた方が良いだろう。
2013.09
01
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12:00
Category : ミリタリー
 横須賀不祥事で副長官が叱りに来たときに、号令官と司会めいたことをやらされたことがある。総監部には、甲板士官に相当する若手A幹部はあまりいない。そこでたまたま居た己がやらされた。

 己はお面が宜しくなく、体型もアレなので、めでたい席の号令官や儀仗隊はやったことがない。しかし、声がデカイので、不祥事の時や顔の見えない儀仗隊指揮官はよくやっていた。飛行場地区でやると、己の号令は1km程度は届くらしい。その伝で、総監部でも不祥事や声だけ聞こえれば充分の時には、号令官や儀仗隊はやった。

 そこで、浜田靖一副長官、ハマコーJrが横須賀に喝いれに来るときには、総監部総務課長に頼まれて、裏方の号令官ほかをやらされた。たしか、通信隊おクスリ事件や、うみぎり放火事件が不祥事だったと憶えている。総監部にある体育館に、総監部やその隷下部隊だけでなく、自衛艦隊や地区所在機関、在泊艦艇乗員が集められる。ヘリで副長官が来る30分(くらい前だったか)には、とりあえず己が号令掛けて整列完了。

大きな地図で見る

 しかし、それから30分が長い。海自なので、並べるには2分は掛からない。総務課長から「ラクに休ませ」を指示されて令する。とはいえ、ラクに休めは余りラクでもない。だから課長は「相当、時間があるのでヘダラに休んでいいよ」と直接令する。適当に私語をしても構わない雰囲気なので、小さい声で駄話が始まる。

 それでも時間は更に余る。なんといっても変化がないことが耐え難いもの。ヘリが防衛庁を出たとか、今総監公室に入ったとか、そういう状況があれば伝えられればいいのだけれども、情報から放置されると参集した連中も飽きてくる。

 そこで、マイクテストをやれと言われる。もちろん、マイクテストなんか集まる前にとっくに終わっている。なにもやることがないから、やっておけというもの。その際には、所属部の部長や課長が、なんか適当なギャグを入れろという顔をしている。少なくとも己にはそう見えた。

 しょうがないから「テストのマイクを行う」「ただいまテストのマイク中、ただいまテストのマイク中」「テストのマイク終わり」とやった。気づく奴は気づいて笑ったが、気づかないのも半分くらいいた。二佐以上の高級幹部には「不祥事で集まっているのに余計な事言いやがって」と不機嫌な顔をしているのもいたよ。

 ただ、しばらく経って「副長官(が総監部庁舎から)でられました」の電話が入る。そうなると、私語は一斉に止まる。そこは海自で勝手に整列しなおし始める。

 その時には、フネあたりから出てきた正規の号令官に交代したか、そのまま己がやったか覚えていないが、確認のために「きをつけ」と「右にならえ」を号令して、「直れ」と「安め」を令しただろう。ちなみに己がやったとすれば「つけぃ」と「ぎえ、らえ」「ぉれ」「すめ」としか発音しない。

 あとは「副長官はいります」で「つけ」と「頭の敬礼」を令すれば仕事は半分終わり。話を始める前に副長官「休ませて下さい」で総務課長「休ませ」で「整列休め」を令する。その後に、政治家は「もっとラクに」というのが通例で、総務課長「ラクに休ませ」を令し「休め」を掛ける。何があっても「ラクに休め」は掛けない。

 政治家だけあって、ハマコーJrの話は、結構飽きさせないものだった。叱責は最初の2-3分で、あとは「ボクは盲導犬を寄付しているんですよ」みたいな支持者向け風の話だった。親爺がアレだと、息子は清く生きようとするのだろうかね。あまりキレイなお金でもないが、そのお金はきっちりキレイに使っている印象だったよ。

 あとは「以上です」をもらって、間髪入れずに「気をつけ」と、一呼吸置いて「頭の敬礼」。余計な話だが、海自の頭の敬礼は、下士官兵しかやらない。准尉以上はそれに合わせて挙手の敬礼をする。あとはJrが出て行くのを待つだけ。出て行ったら「別れ」を令する。あの体育館は出入り口が狭いので「詰まるから海曹士はしばらく待って」位は言うはず。この時には、人によっては命令口調であり、あるいは懇願口調、これは階級高低はあんまり関係しない。一佐クラスでもパッと管制して、「海曹士はチョットまってね」という人もいる。

 それで総監部庁舎に戻るのだが、ハマコーJrの話が良かったせいか、己の「テストのマイク中」は別段怒られなかった。いつもは小煩い防衛部N-4x(数字が入る)、同職域のの三佐も何も言わない。まあ、やったあとでも部長はニヨニヨしていたから何ということもないのだけれどもね。