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もう20年近く前の話なのだが。遠泳をやらされた。
幹部候補生学校から一術校スロープまで移動して入水というか泛水。定年寸前のヘリパイ学校長を先頭に、江田内に泳ぎだし、津久茂瀬戸を抜けて大須方向に抜けて方向転換、もういちど津久茂瀬戸を通過して江田内を反時計回りに回って同じスベリまで帰ってくる。8マイルだから大体15kmほど。時間にして8時間程度だったと思う。
沈むと危険なので、警戒船が出る。潜水員を載せた動力船が何隻か出て全般警戒をする。各分隊は櫓で漕ぐ伝馬船がつく。伝馬船は分隊長と、あまり顔を合わせない分隊士、あとは櫓を扱える海曹士が乗っている。確か先任伍長の山本曹長が漕ぎてだったと思う。
泳ぎだと、平均1kt出るかどうか。誰が計画を立てたか知らないが、潮汐が最悪で、津久茂の瀬戸が行きも帰りも向かい潮。だいたい1kt程度あるので、全く進まない。往路で覚えているのは、津久茂の岸寄りを必至に泳いだときの電柱のこと。息継ぎのたびに道路際にある電柱を見るのだが、位置が全然変わらない。結局全員クロールとなる。帰路も似たよなものだが、さらに能美行フェリー(昔は低速のフェリーがあった)に追いかけられる。応援してくれるのはいいのだが、引き波に揺さぶられてたまったものではない。
そもそも、己は平泳ぎが苦手だった。足掻きがどうしても悪く、クロールなら50mを32秒位で泳げたが、平泳ぎは60秒もかかった。そのため、比較的早い段階で、分隊長にオマエはクロールで泳げといわれた。
広島湾から江田内に戻ると休憩昼食となる。一応、竹の筏状のものに掴まれる予定になっていた。しかし、痩せ身のスポーツマンタイプ数人がモウ限界で、竹を占有していた。己達、肥満児タイプは掴ませてくれない。
彼らには脱落してもらったほうが有難かった。実際に、ガリガリの女の子2人と、口先だけ威勢の良かった男2人も限界とかで伝馬船に引き上げで、脱落していた。しかし、プライドの高いスポーツマン何人か(たしか3人位)は、まだ泳ぐと言っている。分隊長はいたく感動しているのだが、そいつらの休憩のために割を食わされる肥満児組は溜まったものではない。
休憩といっても、己達には全然休憩ではない。浮きになるものもあるでなし、結局はその時間中泳ぎ続けた。あまり離れたところにも行けないので、水中で用も足せない。休憩中なので無駄口叩いていると怒られた。昼休みは労働時間に含まれない非拘束の時間のはずだが、間抜けな馬鹿話とか、今晩外で何を食うかみたいなやる気に掛ける言動は感動を損なうものだったのだろう。
昼飯も、肥満児組は乾パンは手渡しされなかった。海に投げ入れた乾パンを食べろと言われる始末。多分、おにぎりがあったはずなのだが、それも食べられない。空腹に不味いものなしで、海水吸って柔らかくなった乾パンを争って奪い口にしたが、分隊長は鯉の餌やりのようだと笑って言っていた。水は支給されたかどうか覚えていない。あってもチェリオかサンガリアの安飲料だったはず。
その後、遠泳が再開される。完全にへばったスポーツマンに合わせた護送船団方式で効率が悪い。この頃になると分隊長以下は飽きるし、遅れがちで沈みかけない連中しか見ていない。己達は背泳ぎとか横泳ぎとか、のしとか好き勝手にやって体力温存。
たしか午後4時頃に1術校の滑りから揚った。ビーチサンダルというか、江南にあったホームセンターで買ったヘップを履いて、どこかのグランド、芝土になっているところで、保険屋のオバちゃんが作った飴湯を何杯か飲んだ。スポーツマンタイプは完全にダメで、当座は腰が上がらず、飴湯も飲めないほど弱っていた。
その日は確か水曜日か金曜日で、5時半に「上陸員上陸用意」が掛かったのだが、焼き肉食いに行こうと勇んで並んだのは肥満児タイプだけ。スポーツマンタイプは全滅で寝ている。服装容儀点検をやる普段は小煩い同期の室長も、外に出る元気もなく、適当に見るから勝手に出ろと言っていた。
だいたい体力勝負になると、スポーツマンタイプからへばる。彼らは瞬発力とか短期的な体力はあるのだが、半日を越える重労働の類も、ヘンに真面目にやって手を抜かないので最初に潰れた。後に特警隊の小隊長が二人でたが、どちらも遠泳でへばり、陸戦のあとの原村演習地からの行軍でもへばっていた。己達、肥満児組は、やる気の問題もあって、普段は競技の足手まといと散々言われている割には、遠泳の時の休憩や、行軍の時の荷物持ちで負担を掛けられたものだった。
まあ、分隊の肥満児組といっても、防大でアメフトやっていたKと、阪大で漕艇やっていたSもいた。痩身だが隠れ肥満の農大出、ブータン帰りのS’も同じ扱いだったが、遠泳も行軍も特に大過なく終わり、さっさと外に出て焼き肉を食いに行っていた。
多分、太っていて脂肪があるほうが、丈夫なのだろう。大戦中に戦地で病気になって、戦病死するしないの差異も、案外単純に脂身の差だったのかもしれない。
幹部候補生学校から一術校スロープまで移動して入水というか泛水。定年寸前のヘリパイ学校長を先頭に、江田内に泳ぎだし、津久茂瀬戸を抜けて大須方向に抜けて方向転換、もういちど津久茂瀬戸を通過して江田内を反時計回りに回って同じスベリまで帰ってくる。8マイルだから大体15kmほど。時間にして8時間程度だったと思う。
沈むと危険なので、警戒船が出る。潜水員を載せた動力船が何隻か出て全般警戒をする。各分隊は櫓で漕ぐ伝馬船がつく。伝馬船は分隊長と、あまり顔を合わせない分隊士、あとは櫓を扱える海曹士が乗っている。確か先任伍長の山本曹長が漕ぎてだったと思う。
泳ぎだと、平均1kt出るかどうか。誰が計画を立てたか知らないが、潮汐が最悪で、津久茂の瀬戸が行きも帰りも向かい潮。だいたい1kt程度あるので、全く進まない。往路で覚えているのは、津久茂の岸寄りを必至に泳いだときの電柱のこと。息継ぎのたびに道路際にある電柱を見るのだが、位置が全然変わらない。結局全員クロールとなる。帰路も似たよなものだが、さらに能美行フェリー(昔は低速のフェリーがあった)に追いかけられる。応援してくれるのはいいのだが、引き波に揺さぶられてたまったものではない。
そもそも、己は平泳ぎが苦手だった。足掻きがどうしても悪く、クロールなら50mを32秒位で泳げたが、平泳ぎは60秒もかかった。そのため、比較的早い段階で、分隊長にオマエはクロールで泳げといわれた。
広島湾から江田内に戻ると休憩昼食となる。一応、竹の筏状のものに掴まれる予定になっていた。しかし、痩せ身のスポーツマンタイプ数人がモウ限界で、竹を占有していた。己達、肥満児タイプは掴ませてくれない。
彼らには脱落してもらったほうが有難かった。実際に、ガリガリの女の子2人と、口先だけ威勢の良かった男2人も限界とかで伝馬船に引き上げで、脱落していた。しかし、プライドの高いスポーツマン何人か(たしか3人位)は、まだ泳ぐと言っている。分隊長はいたく感動しているのだが、そいつらの休憩のために割を食わされる肥満児組は溜まったものではない。
休憩といっても、己達には全然休憩ではない。浮きになるものもあるでなし、結局はその時間中泳ぎ続けた。あまり離れたところにも行けないので、水中で用も足せない。休憩中なので無駄口叩いていると怒られた。昼休みは労働時間に含まれない非拘束の時間のはずだが、間抜けな馬鹿話とか、今晩外で何を食うかみたいなやる気に掛ける言動は感動を損なうものだったのだろう。
昼飯も、肥満児組は乾パンは手渡しされなかった。海に投げ入れた乾パンを食べろと言われる始末。多分、おにぎりがあったはずなのだが、それも食べられない。空腹に不味いものなしで、海水吸って柔らかくなった乾パンを争って奪い口にしたが、分隊長は鯉の餌やりのようだと笑って言っていた。水は支給されたかどうか覚えていない。あってもチェリオかサンガリアの安飲料だったはず。
その後、遠泳が再開される。完全にへばったスポーツマンに合わせた護送船団方式で効率が悪い。この頃になると分隊長以下は飽きるし、遅れがちで沈みかけない連中しか見ていない。己達は背泳ぎとか横泳ぎとか、のしとか好き勝手にやって体力温存。
たしか午後4時頃に1術校の滑りから揚った。ビーチサンダルというか、江南にあったホームセンターで買ったヘップを履いて、どこかのグランド、芝土になっているところで、保険屋のオバちゃんが作った飴湯を何杯か飲んだ。スポーツマンタイプは完全にダメで、当座は腰が上がらず、飴湯も飲めないほど弱っていた。
その日は確か水曜日か金曜日で、5時半に「上陸員上陸用意」が掛かったのだが、焼き肉食いに行こうと勇んで並んだのは肥満児タイプだけ。スポーツマンタイプは全滅で寝ている。服装容儀点検をやる普段は小煩い同期の室長も、外に出る元気もなく、適当に見るから勝手に出ろと言っていた。
だいたい体力勝負になると、スポーツマンタイプからへばる。彼らは瞬発力とか短期的な体力はあるのだが、半日を越える重労働の類も、ヘンに真面目にやって手を抜かないので最初に潰れた。後に特警隊の小隊長が二人でたが、どちらも遠泳でへばり、陸戦のあとの原村演習地からの行軍でもへばっていた。己達、肥満児組は、やる気の問題もあって、普段は競技の足手まといと散々言われている割には、遠泳の時の休憩や、行軍の時の荷物持ちで負担を掛けられたものだった。
まあ、分隊の肥満児組といっても、防大でアメフトやっていたKと、阪大で漕艇やっていたSもいた。痩身だが隠れ肥満の農大出、ブータン帰りのS’も同じ扱いだったが、遠泳も行軍も特に大過なく終わり、さっさと外に出て焼き肉を食いに行っていた。
多分、太っていて脂肪があるほうが、丈夫なのだろう。大戦中に戦地で病気になって、戦病死するしないの差異も、案外単純に脂身の差だったのかもしれない。
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