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国防は、どうしても金食い虫であり、不採算な投資ではないか。
ロナルド・モースさんは、国防支出を増やせば経済も好調になる、イスラエルを見ろと言っている。※ 具体的には
しかし、国防支出を増やして経済構造が改善するといった話はおかしい。実例もない。例として挙げたイスラエルの経済は繁栄しているとはいえない。
イスラエルの経済は好調ではない。イスラエル経済はそれほど大きくもなく、GDPも高いわけでもなく、好調でもない。イスラエルの経済規模は、フィンランドやアイルランドと同程度しかない。そして、一人あたりGDPは、フィンランドやアイルランドの6割程度でしかなく、生産性が高くないと、南欧病と言われたスペインやイタリアと同程度しかない。経済成長も鈍化している。その成長率にしても、アメリカからの30億ドルの供与と30億ドルの借款の点滴効果がある。また移民による人口ボーナス効果に底上げされてもいるだろう。
また、イスラエル経済は、安全保障・防衛関係での投資で維持されているわけではない。輸出を見ても、安保・防衛投資の影響はそれほどのものではない。いまだにダイヤ研磨が輸出の花型であり、あまり安保や防衛とは関係のない化学工業がそれに並ぶ。安保・防衛技術に基づく輸出も、例えば精密機器といった分野に含まれているだろうが、それほど大きくもない。電子関連は、安保・防衛で作られたというよりも、インテルのラインに依存しており、安保・防衛の投資とは関係ない。
また、モースさんが別に挙げた国も、国防支出で経済が好転しているわけではない。モースさんは「本格的な防衛産業戦略を持っている」として「韓国、台湾、中国、ロシア
」を挙げている。だが、これらの国の経済は、国防支出で好転していない。韓国、台湾、中国は「世界の工場」として経済を拡大し、成長させている。軍事関連産業による経済効果は、その陰で完全に無視される程度である。ロシアは未だに石油や天然ガス、木材といった一次産品精算に頼っている。むしろ国防支出に四苦八苦している状況にある。
逆に、世界には少ない国防支出で成功している国も多い。香港、シンガポール、ノルウェー、ベネルクス、アイスランドなど幾らでも挙げられる。明らかに巨大な国防支出に圧迫されていないことは利点である。
これらの点からすると、モースさんのいう「防衛費を増額させよ」は悪手である。国防支出を増やしても経済は強くならない。むしろ、国防支出により、圧迫された経済は悪影響を受けるだろう。
このモースさんの主張には、理解に苦しむ点が多い。人名事典からモースさんの項目を見つけたが、その職歴部分は
あるいは、日本の事情に詳しいために、媒体に迎合したのかもしれない。国家基本問題研究所は、保守シンクタンクを自称しているが、まずは神がかり右派の集まりである。国基研を保守系シンクタンクと呼べば、真面目にやっている日本財団その他に失礼である。その神がかり右派に依頼されたので、モースさんは、国基研の方針である「安保大事、防衛費増やせ、米共和党と関係者をヨイショしろ」を纏めてヤッツケ仕事をしたのかも知れない。
国基研も、仲良しサークルなのでそのまま掲載したのだろう。シンクタンクを名乗るならリジェクトしても良さそうな水準だが、それも厄介なのだろう。専従がいるかどうかは知らないが、職員としてもソッチの方が面倒はない。代表の櫻井よし子さんにしても、今どき
※ モース,ロナルド「アベノミクスに欠落する軍事研究開発」(国家基本問題研究所,2013.8.5)http://jinf.jp/weekly/archives/11089
※※ 「ロナルド・モース」『人名事典』http://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%A5%ED%A5%CA%A5%EB%A5%C9%A1%A6%A5%E2%A1%BC%A5%B9
※※※ 櫻井よし子「科学と理性に基づく原発政策を」(国家基本問題研究所,2013.9.24)http://jinf.jp/weekly/archives/11362
ロナルド・モースさんは、国防支出を増やせば経済も好調になる、イスラエルを見ろと言っている。※ 具体的には
安全保障・防衛関係に多くを投資する国は、相対的に強く、経済も繁栄することを歴史は示している。今日、その最たる例はイスラエルである。イスラエルの成功企業の90%は軍事的な研究開発の副産物である。と述べている。
モース,ロナルド「アベノミクスに欠落する軍事研究開発」(国家基本問題研究所,2013.8.5)http://jinf.jp/weekly/archives/11089
しかし、国防支出を増やして経済構造が改善するといった話はおかしい。実例もない。例として挙げたイスラエルの経済は繁栄しているとはいえない。
イスラエルの経済は好調ではない。イスラエル経済はそれほど大きくもなく、GDPも高いわけでもなく、好調でもない。イスラエルの経済規模は、フィンランドやアイルランドと同程度しかない。そして、一人あたりGDPは、フィンランドやアイルランドの6割程度でしかなく、生産性が高くないと、南欧病と言われたスペインやイタリアと同程度しかない。経済成長も鈍化している。その成長率にしても、アメリカからの30億ドルの供与と30億ドルの借款の点滴効果がある。また移民による人口ボーナス効果に底上げされてもいるだろう。
また、イスラエル経済は、安全保障・防衛関係での投資で維持されているわけではない。輸出を見ても、安保・防衛投資の影響はそれほどのものではない。いまだにダイヤ研磨が輸出の花型であり、あまり安保や防衛とは関係のない化学工業がそれに並ぶ。安保・防衛技術に基づく輸出も、例えば精密機器といった分野に含まれているだろうが、それほど大きくもない。電子関連は、安保・防衛で作られたというよりも、インテルのラインに依存しており、安保・防衛の投資とは関係ない。
また、モースさんが別に挙げた国も、国防支出で経済が好転しているわけではない。モースさんは「本格的な防衛産業戦略を持っている」として「韓国、台湾、中国、ロシア
」を挙げている。だが、これらの国の経済は、国防支出で好転していない。韓国、台湾、中国は「世界の工場」として経済を拡大し、成長させている。軍事関連産業による経済効果は、その陰で完全に無視される程度である。ロシアは未だに石油や天然ガス、木材といった一次産品精算に頼っている。むしろ国防支出に四苦八苦している状況にある。
逆に、世界には少ない国防支出で成功している国も多い。香港、シンガポール、ノルウェー、ベネルクス、アイスランドなど幾らでも挙げられる。明らかに巨大な国防支出に圧迫されていないことは利点である。
これらの点からすると、モースさんのいう「防衛費を増額させよ」は悪手である。国防支出を増やしても経済は強くならない。むしろ、国防支出により、圧迫された経済は悪影響を受けるだろう。
このモースさんの主張には、理解に苦しむ点が多い。人名事典からモースさんの項目を見つけたが、その職歴部分は
国防総省戦略貿易チーム主任研究員、経済戦略研究所副理事長、メリーランド大学国際プロジェクト部長などを歴任。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)教授、麗澤大学国際経済学部教授と立派なものである。だが、博士号は柳田国男と民俗学とされている。日本語や日本の事情、日本の国民性には詳しいだろうことは窺える。だが「国防支出で経済が強くなる」という主張や、その実例としてイスラエルを挙げる点で、日本、あるいは東アジア以外の事情や、安全保障・防衛関係、各国経済についての知見に、ある種の予断を持ってしまう。
「ロナルド・モース」『人名事典』http://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%A5%ED%A5%CA%A5%EB%A5%C9%A1%A6%A5%E2%A1%BC%A5%B9
あるいは、日本の事情に詳しいために、媒体に迎合したのかもしれない。国家基本問題研究所は、保守シンクタンクを自称しているが、まずは神がかり右派の集まりである。国基研を保守系シンクタンクと呼べば、真面目にやっている日本財団その他に失礼である。その神がかり右派に依頼されたので、モースさんは、国基研の方針である「安保大事、防衛費増やせ、米共和党と関係者をヨイショしろ」を纏めてヤッツケ仕事をしたのかも知れない。
国基研も、仲良しサークルなのでそのまま掲載したのだろう。シンクタンクを名乗るならリジェクトしても良さそうな水準だが、それも厄介なのだろう。専従がいるかどうかは知らないが、職員としてもソッチの方が面倒はない。代表の櫻井よし子さんにしても、今どき
1000年に1度の大地震と大津波を乗り切った5号機と6号機は、福島第2原発及び東北電力の女川原発などと共に、日本の優れた原発技術を象徴しており、むしろ誇ってよいものだ。と発言している。そのような話が続いているので、国基研としては、モースさんの主張やその論拠にしても、それほどの違和感は感じないのだろう。
櫻井よし子「科学と理性に基づく原発政策を」(国家基本問題研究所,2013.9.24)http://jinf.jp/weekly/archives/11362
※ モース,ロナルド「アベノミクスに欠落する軍事研究開発」(国家基本問題研究所,2013.8.5)http://jinf.jp/weekly/archives/11089
※※ 「ロナルド・モース」『人名事典』http://www.php.co.jp/fun/people/person.php?name=%A5%ED%A5%CA%A5%EB%A5%C9%A1%A6%A5%E2%A1%BC%A5%B9
※※※ 櫻井よし子「科学と理性に基づく原発政策を」(国家基本問題研究所,2013.9.24)http://jinf.jp/weekly/archives/11362
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