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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.10
16
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Category : 有職故実
 ソ連による内外発表を、外務省が纏めた『ソ連月報』という本があった。その月報の、80年初頭を読むと、対外プロパガンダも多数掲載されている。

 だが、そのプロパガンダの中に、本当の気持ちが吐露されている。対外強硬的な強がりであっても、その中にソ連の弱味を乱すことができる。

 例えば「日本の軍国主義者は、北海道に精鋭の4個師団を配備し、ソ連への侵攻を窺っている」(大意)とある。当時の日本人からすれば、逆にソ連が日本に攻めこむつもりだろうと反発しただろう。だが、それはソ連人※ も同じである。

 これは、ソ連にとって、4ヶ師団は相当に脅威であるとする心情を素直に表したものである。

 ソ連人が日本の侵攻を危惧することも、不思議ではない。ソ連極東部は、今ほどでないにせよ、昔からスカスカである。対日正面はサハリンに2ヶ師団があるだけ。日本の軍備増強に対しては、70年代末から戦力をかき集めて、北方領土に全滅予定部隊を1ヶ師団規模置くのが限界だった。

 北方領土返還を要求する日本が、戦力を強化するのはソ連にとって脅威であった。特に、強硬に返還要求をしている北方領土から目鼻の先にある、北海道の陸上戦力強化は脅威以外の何物でもない。日本は、ソ連の脆弱な下腹、オホーツク海に貫入している北海道の、その正面の4個師団プラスを重点的に近代化を始めたのである。

 また、キエフ級軽空母に対する批判への反発も同じである。当時、ソ連が空母を入手したことに、中国を含む西側はソ連軍事力増強の象徴であると非難していた。ソ連はそれに対抗して「アメリカは大型空母15隻を保有しているのに何の非難もされない。だが、ソ連がキエフ級を整備しただけでは『平和の敵』と非難されるのは理不尽 」(大意)と反発している。

 これも、LPH相当の能力しかないキエフ級を理由にして、西側海軍力の増強を始められるのは、割にあわないので勘弁してくれといった内面を見て取ることができる。

 ソ連海軍からすれば、キエフ級は玩具であることを承知している。

 そのキエフ級を理由に、西側が海軍力を強化するのは、酷いイジメである。海軍力格差はむしろ広がるといった絶望があるのだろう。特に、キエフ級のイメージは、西側海軍力強化にいいように使われている。アメリカの600隻海軍を後押しする要素になっているし、日本の海空自衛隊強化をするための、理屈付けにも使われていた。

 ソ連だけではないが、対外プロパガンダには、強硬な物言いに見えるものの、そこには内面の弱味も観察できるものだ。今の中国や、最近、急に下品になった日本の対外主張にも、強気であるように見えながら、その内実は弱味を隠しているものは見つけられるだろう。



※ 今となっては「ソ連人」はお笑い種だが、当時はソ連人と纏めて見られていた。ソ連国内の、アジア系少数民族やイスラムとの距離感は知られていたが、スラブ系諸民族の間の軋轢、例えばウクライナ人は自分たちは抑圧されていると感じているといった話は、軽視されていた。
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