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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.10
28
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12:00
Category : ミリタリー
 尖閣諸島そのものには何の価値もない。尖閣問題を重要だとするために、そこに軍事的な価値があると主張するのは、本末が転倒している。

 日本安全保障・危機管理学会の『安全保障と危機管理』がそれだ。「尖閣諸島の魚釣島」とした表紙に「3500mの滑走路を有する空軍基地が建設可能」と、軍事価値があるかのようにキャプションをつけている。

魚釣島
※ 『安全保障と危機管理』より

 だが、魚釣島に航空基地を作ることは現実的ではない。航空基地を作るためには、膨大な労力が必要である。

 まず航空基地を作るに足る平面部がない。魚釣島はほぼ円錐状の島で、頂部は海面から300mもつきだしている。離島で、岩盤ベースの山を削平して滑走路を作る手間は尋常ではない。埋め立ても、土砂を持ってくる元がない。しかも周辺は急に深くなる海である。岩盤ベースの島を削っても、いくらにもならない。航空基地には、基地施設も必要だが、その面積を確保するために削平・埋立するのは容易なことではない。

 仮に航空基地を作っても、維持に多額の費用を要する。水の確保は硫黄島より厳しい。硫黄島はまず天水に便り、駄目なら海水から真水を作っている。魚釣島には、その天水を集め、貯める地積もない。水については南鳥島並か、それ以下である。飛行後に航空機についた塩を流す真水も足りない上、維持できる隊員数も50-100人が限界だろう。燃料補給も困る。なんせ港がない。硫黄島式に逐一フローティング・ホースで引き入れるのでは手間がかかって仕方もない。

 その上、地積も狭い。本格的な戦争に耐えるほど、施設も器材も分散できない。警戒用レーダや防空兵器、整備格納庫や各種ショップ、倉庫、弾薬庫、隊舎、庁舎、通信局舎を分散する地積がない。日中どちらが航空基地を作っても、日中有事に際しては地上にあるものはあらかた破壊され、地下構造も判明次第に破壊されてしまう次第しまう。

 尖閣は、軍事活用をする余地もない。あっても洋上や上空監視だが、レーダを置くにしても、維持を考えれば哨戒機やAWACSを飛ばしたほうがよい。それ以外の用途は全くペイしない。

 要は、この学会が危険が危ないと言いたいだけの話だ。この日本安全保障・危機管理学会は、中国の脅威が危ない、防衛費はドンドン増やせというものだ。ちなみに、危機管理学会やセキュリティマネジメント学会とは全く関係はない。一応は学会の組織をとっているが、紀要の中身を見ても水準は低い。実際には、政治的結社に相当ちかい存在である。その点は、役員名簿をみれば明快である。名誉会長の安倍晋三、顧問には佐藤正久、山谷えり子と自民党に居る、一種機械じかけの右派がならんでいる。

 魚釣島に航空基地云々は、結局は、軍事的な重要性があるから中国が狙っていると言いたいわけだ。しかし、その実は逆だろう。頭のなかでは、まず中国が敵で、その中国との領土問題である尖閣問題は重要な問題であるといった、本末転倒の発想がある。それから尖閣が重要な理由を考えようとして思いついたのが、航空基地だということだ。

 ちなみに、航空基地云々は表紙のキャプションにそうあるだけで、本の中身には何も書いていない。表紙は中身の要約である。そう主張する内容が中身にないというものもなかなか他にみないものである。



※ 『安全保障と危機管理』23(日本安全保障・危機管理学会,2013.03)表紙より。カラーの表紙を白黒コピーを取ったため、3500m云々は薄く読みにくいため、文谷がフォトショップでマスクを作って強調した。カラーの表紙については、http://www.jssc.gr.jp/kikanshi.htmlにある。
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