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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.11
26
CM:4
TB:0
12:55
Category : 未分類
 産経新聞で、内閣法制局を論難する記事が掲載されている。「首相に逆らう法の番人『憲法守って国滅ぶ』」だが、それほど法制局を憎む必要があるのだろうか?

 法制局も、反対できる範囲でしか反対できない。法制局も役所に過ぎない。自分が持つ権限については、必死に守ろうとする。しかし、所詮は役所なので、時流や世論の流れには抵抗できない。

 記事で例示された駆けつけ警護は、今のところはどうでもいい話である。確かに時流はその方向にあるが、今日明日に必要な話ではない。世論もどうでもいいと思っている。それほど緊急性も、優先順位も高くはない。法制局にしても、安心して役人論理で政治に抵抗しても構わない案件である。

 政治にしても、緊急性も優先順位も高くないと判断したので、先送りしている。
 [2012年]7月12日の衆院予算委員会で、当時の首相、野田佳彦はこう明言した。

 「駆けつけ警護(を可能にすること)も含めて政府内で最終調整している」

 「駆けつけ警護」は国際的には常識的な任務であり、首相自らが発言した意味も重い。ところがわずか13日後、政府・民主三役会議は法案提出見送りを確認した。法制局の徹底的な抵抗で断念したのだ。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/131126/plc13112608490006-n2.htm
裏返してみれば、法制局の抵抗程度で先送りしてもいい内容だったということだ。

 しかし、法制局の抵抗にも限度がある。所詮は役所にすぎない。こと時流や世論の流れがあれば、それに抵抗することはできない。実際に、駆けつけ警護が必要な事態が生まれれば、世論が必要だと判断し、議会でも各会派が納得する事態になれば、法制局は抵抗できない。法制局の役人も、字句程度にこだわる程度の抵抗しかできない。

 真に必要があれば、法規などはどうでもいい問題である。憲法でもそうであることについては、自衛隊の存在や日米安保、海外派遣といった例から明らかである。これは内閣法制局どころではない。裁判所ですら統治行為論として、真の必要性と憲法の矛盾については辻褄を合わせている。

 逆に言えば、駆けつけ警護や、今の集団的自衛権の行使についての解釈改憲も、法制局が動かせない程度の切迫性も必要性もないということだ。特に集団的自衛権云々については、特定秘密保護法案に隠れてしまっている。産経としては、集団的自衛権にしても、無理矢理に押し切れないフラストレーションがあるのかもしれない。だが、その原因を法制局だけに帰して「法制局はサヨク」とでもいうように論難しても仕方がない話である。
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2013.11
26
CM:1
TB:0
12:00
Category : 未分類
 週刊ポスト由来の記事であるのだが。「韓国軍に自衛隊の協力なければ北の砲撃でソウル火の海の懸念」という記事を見つけた。だが、内容的には全くうなづけるものではない。

 井上和彦さんによると『韓国の安全保障は事実上、在日米軍が担っているので、自国を守るためには自衛隊との円滑な連携が必要』とのことである。

 しかし「韓国の安全保障は事実上、在日米軍が担っている」ことと、「[韓国]を守るためには自衛隊との円滑な連携が必要」ということには、飛躍がある。

 井上さんの主張はよくわからない。井上さんは『空軍は嘉手納基地から、海軍は横須賀、佐世保から、海兵隊は沖縄、岩国から韓国に向かうことになります。』と述べているが、これには別段、自衛隊との連携が必要なわけではない。しかも、いつものことだが、在日米軍は必要に応じて、日本の了承なしに勝手にどこかに行ってしまう。どこに自衛隊が関係するのだろうか?

 そして、自衛隊の協力がなくとも、韓国は負けることもない点を無視している。もちろん、韓国が北朝鮮とガチンコで内戦を再開するなら、自衛隊の協力は欲しいだろう。だが、自衛隊の協力がなければ北朝鮮との内戦はできないわけでもない。いまの戦力差では、韓国は負けるものでもない。記事にある「韓国が日本頼みというのは経済面だけではない。軍事面でも同じだ。」は、成り立つものでもない。

 また、韓国経済についての識者とされる三橋貴明さんの意見も怪しい。『韓国経済の生殺与奪権を握っているのは日本経済であり、本来、韓国は日本に逆らってはいけない国。』と述べている。だが、これも30年前の発想である。たしかに80年代では、韓国経済は日本に隷属していた。米国がくしゃみをすれば日本は風邪を引き、韓国は肺炎になるといわれていた。しかし、90年代後半からは状況は変わっている。韓国は直接世界経済に連結している。日本が風邪をひいても韓国は肺炎になる状態でもない。

 週刊誌の記事なので、扇情的な内容であることは仕方がない話である。日本は韓国よりも上にあるという自己満足を想起させるだけの内容についても、商業上仕方のないことだろう。しかし、識者の意見がピント外れでロジックがつながらなかったり、願望の表出に過ぎない内容に留まっている点については、編集側で工夫のしようもあるのではないかと思う。



※ 「韓国軍に自衛隊の協力なければ北の砲撃でソウル火の海の懸念」『NEWSポストセブン』(小学館,2013.11.24)http://www.news-postseven.com/archives/20131124_227658.html