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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2013.11
30
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12:00
Category : ミリタリー
 化学兵器を洋上処理しようとする話がある。「シリアの化学兵器 米が洋上処分を提案」でそのように報道されている。おそらく、これが一番いいアイデアだろう。

 シリアで使われた化学兵器については、他国で処理する話であった。だが、そんな評判が悪いものを受け入れる国はない。アルバニアが断ったという話から、ならば洋上に浮かべた船舶で処理をしようというもの。これは、地元対策そのほかの問題を回避するための妙手である。

 化学兵器処分については、それほど難しいものではない。弾殻をブッタギッて、中身を吸い出して、過熱蒸気なり炎と接触させれば無害になる。化学兵器はあまり安定した物質でもない。その程度でほぼ分解し、大抵は水と二酸化炭素になる。それ以外の物質も有害なものはまずない。リンや塩素の類は、通常化合物であれば人体や環境にたいした影響はない。砒素も活性炭等で容易に除去できる。

 米国には実例がある。米国は自国が保有していた化学兵器を、過熱蒸気を利用したプラントで処分している。閉鎖系であり、発生した物質を含む水も再利用されているので、処分段階で外に漏れる可能性は少ない。

 危険があるとすれば、弾殻を切るに爆発する程度である。切断工程は分厚い鋼材(厚さ2インチ=5cm位)で囲んであるが、破片を、それは防ぐだけでガスは防げない。その時にはガスは作業室に充満する。ただし、これも前室を広く取り密閉し、活性炭フィルター(2-3段もあればよいだろう)で処理すれば、それほど問題はない。あとは弾殻に過熱水を流し込み、中身をかき出したあとは、過熱蒸気で処理するだけである。

 これらの処分法については、日本でも検討されていた。それについての公表資料も存在する。しかし、そのプラントをどこに置くかで揉める。まず間違いなく安全であるが、それでも風評被害そのほかが怖いのでどこも受け入れには賛成しない。

 実際に、大湊での化学兵器処分でも、実処分をどうするかまでにはいかなかった。旧施設庁海上連絡官をやっていたとき、大湊での化学兵器ではほぼ最初から最後まで、2年ほどつきっきりで担当していた。その技術検討委員会も参加していたが、処分の処の字もでなかった。先行していた屈斜路湖や苅田港でも処分できなかったので、大湊では処分する話は最初からでなかった。

 ただし、洋上処理できるのならば、話は別である。処理量によるが、処理装置は極端に巨大なものではない。チマチマ処理するなら、適当な老朽船でも再生して作れば十分だろう。別に処理ユニットも、海上コンテナに組み込んで、どんな艦船にもつめるようにしてもいい。コンテナの所在が問題になれば、硫黄島にでもおいとけばよい。

 どうせ、旧軍化学兵器はこれからも出てくる。洋上処理船は日本も作ってもいいだろう。



※ 海自では珍しく、化学兵器との付き合いは、結構長かった。大湊での発見直後から問題解決までの2年半と、某所でのNBC防護(それ以外もあるけどね)を2年やったよ。
 そいや「航空基地警備での化学兵器防護」の提案とか、教科書作成だかの話も相談されたけど「警備要員だけが化学兵器防護されていて、ハンガーやショップが何もできないのもマヌケな話じゃなね?」といったら怖い顔をされたよ。
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