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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2014.03
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Category : 未分類
 渡辺の「辺」の字と、斉藤の「斉」の字は、社会的なコストも考えれば全部「辺」と「斉」にしてしまったほうがいいのではないか。

 笹原宏之さんの「漢字の異体字の攻防」では、人名で使う渡辺の「辺」(磯辺の「辺」でもいいけど)は100種類を越えるという。斉藤の「斉」の字も同じであるともいう。

 もともと、辺も邉も邊…も全部同じ文字である。島と嶋と〓(山の下に鳥)と同じ伝で、書き方の差に過ぎない。

 江戸期の人に聞けば、渡辺も渡邊も渡邉も同じだと答えるだろう。当時はパソコンもワープロもない。手書きで書く上、メンドイから適当に省略したり書き癖がでる。もともと活字の辞書もないので、字も今ひとつ統一されない。邉や邊のような画数の多い文字はあやふやであり、人によって違う。

 本人にしても、違う書き方をする例がある。下手をすると自分の名前について、渡辺と渡邊と渡邉が混在しても不思議はない。新選組始末かなにかだったか、新選組と新撰組どちらが正しいのかという説明で、新撰組が正しいとありながら、我々新選組では……といった表記もあったという。

 笹原さんによると、渡辺が100通りの書きぶりになった理由は、書きぐせと転載時の誤記としている。最初に戸籍を作ってから、その戸籍の文字を正しいと考えて、自分は渡辺である、渡邊である、渡邉……と認識するようになった。さらに、戸籍係の書癖や、書き間違いもあり、康煕字典にないような邊や邉のバリエーションが生まれた。さらに、転出転入等でその文字を写すときに、さらに文字を間違えてバリエーションは増えた。そう述べている。

 結局、大した理由でもないということだ。

 だが、その大した理由でもないのに怒る人もいる。渡辺と斉藤は、発音すればみんな同じなのだが、ガミガミいうやつも多く、中には怒りだす奴がいる。

 だが、もともとは同じ文字の書きぐせである。この辺り、メンドイから法律で統一してもいいのではないか。渡辺斉藤法(正確に言えば斉藤の斉は意味も違うのがあるが、姓で使う分には同じようなものだ)とかついでに吉田統一法とかね。佐藤斉藤内藤遠藤の藤の字も、始終出てくる度に手書きするのは面倒だから「草冠に乃」でいいんじゃないかと思うけどね。

 あと、この笹原さん記事だと、「さいたま市」の「さ」の字についての分化もなかなか面白い。「ち」を裏返した2画の「さ」と、3画の「±」のような「さ」について、分化しているという話。住所で「さいたま市」と書くときには、漢字欄に2画の「さ」、ふりがな欄に3画の「さ」で使い分ける例があるという話である。

 小学校の県庁所在地の試験で3画の「さ」を使うとバツを付けられたという話もある。笹原さんは大学院の時の先生なのだが、その手の話を集めていて、前には「薩摩の『薩』の字で、『文』にするか『立』にするかで正誤答にされた話もあるよ」と話していた。その手の例の2つ目なのだろう。



※ 笹原宏之「漢字の異体字の攻防」『日本語学』(明治書院,2014.2)pp.60-77.
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