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オーストラリアが日本の潜水艦技術を買うかもしれないという話がある。例えば、「豪、日本の潜水艦技術求める アジア海域緊張の中で防衛協力」といった記事がある。あの国は前の戦争でやったように、南シナ海での海洋拒否を考慮している。それをやるには脚の長い潜水艦でなければ都合が悪い。それで大型の日本の潜水艦をという話をしている。
もともと、オーストラリアは白人国家としての孤立感がある。白豪主義は捨てているものの、やはり近所で信用できる国は白人国家のニュージラントしかない。
また、アジアに対して漠然とした危機感を抱いている。オーストラリアには、巨大な人口を持ち、価値観が異なるアジア人が攻めてくるのではないかといった、あまり根拠の無い恐怖がある。戦前なら日本、戦後なら中国、あるいは国民国家となったインドネシアがそれだ。だから、白豪主義の間には、どうしても白人人口が欲しいと自分で判断できない年端もいかない孤児まで無理やり連れてきて移民にさせている。
だから、遠くの白人国家であるカナダ、アメリカ、ヨーロッパとの連携を重視する。かつてはインドと南アフリカも重視していたが、今は白人植民地ではないので連携する話は出てこない。
オーストラリアには、カナダ、アメリカ、欧州との政治的、軍事的連携や、通商路確保を重視する姿勢がある。オセアニアに散らばる島嶼国家への、一種保護国的な行動も、アメリカとの連絡線確保の部分もある。海軍でも、比較的大型の水上艦で、これら通商線保護や離島国家でのプレゼンスを行っている。
また、アジアからの防衛も重視する。アジア人によるオーストラリア侵略を防ぐため、最低限でもスマトラ-ジャワ-チモール-ニューギニア-ソロモンの線、できればその向こう、今なら南シナ海での防衛を考えている。こちらは、潜水艦が主力となる。
だから、オーストリア海軍の潜水艦にも多大な航続距離が要求される。南シナ海に至近の潜水艦基地、西南岸にあるパースにあるフリーマントルからインドネシアにある諸海峡を経由してシンガポール沖まで行くにしても、片道で5000km以上ある。具体的に確海峡で示すとスンダ(片道4700km)・ロンボク(4700km)・サペ(5100km)・オンバイ(6000km)となる。これは、戦争中にもフリーマントル問題(The Freemantle Problem)と言われている。
実際に、対中で潜水艦を活用するなら、さらに南シナ海中部から北部まで足を伸ばさないといけない。中国潜水艦を軍港出てすぐのところで襲う、あるいはバシーやスールーといった航路収束部で中国艦艇を襲うなら、潜水艦哨区はさらに1000-3000km先となるだろう。
つまり、オーストラリア潜水艦は1.2-1.8万km+の航続距離が求められる。南シナ海中北部まで、6000-9000万kmまで出て、そこで2-4週間の活動をして、同じ距離を戻らなければならないということだ。
これは、最低限のスマトラ-ジャワ-チモール-ニューギニア-ソロモン線にある海峡突破阻止でも変わらない。哨区まで片道3000km、往復6000kmは必要になる。
本来なら、米国のように原潜が望ましい。だが、高い上に自国整備できないといった問題があるので、通常潜を使わざるを得ない。その通常戦も、欧州系は長距離向けではないので、あまり具合がよくない。だから、同じように通常潜を長距離運用している日本製を検討しているという話である。
ただし、本当に日本製を買うかは分からない。最初に揚げた記事ではドイツ潜水艦の採用も検討されているとある。他にも、今ある潜水艦を改修して寿命を伸ばし、決定を先延ばしする計画もある。
だが、どこの国から買っても所詮は通常潜水艦なので、不満は解消しない。本来なら、オーストラリア北部に潜水艦基地を作るとか、旧英連邦のシンガポールやマレーシアの基地を使うといった解決法をとるべきである。だが、前者にはロクな都市もないので潜水艦整備するほどの拠点は作れない問題があり、後者には中国とオーストラリアが戦争になった時、どちらもそれほど中国に対立したくないのであてにならない問題がある。仕方ないから大型潜水艦を使い続けるのだろう。
まあ、なんにしても、某さんの「オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つ理由ワケ」と題した説明はないと思うけどね。アメリカは通常潜水艦を作れないとか、EEZをが広いからとか言っているのは、相当にピント外れだと思うよ。アメリカは最近通常潜水艦作った実績ないから、通常潜水艦は作れないというのはへんな話。潜水艦としてのキモは、船殻と開口部と艤装品であって、それは原潜でも通常潜でも変わらないので作れないわけじゃない。電池とエンジンも輸入すればいい。EEZの広さが世界第二位だから大型潜水艦がほしいというのは噴飯で、「それで漁業取締でもやるのかね」という話になるのだけれどもね。
※ Taylor,Rob「豪、日本の潜水艦技術求める アジア海域緊張の中で防衛協力」『The Wall Street Journal 日本版』( ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン,2014.6.12)http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304826804579619071990549580
※※ オーストラリアなら、通常潜水艦にしても昔懐かしい水上航行型のほうがいいんじゃないのかとも思うけどね。戦争中の潜水艦みたいに、水上艦型の船首を持つタイプで、アレで水上を20kt以上でスッとばして、哨区近くまでトランジットしたほうがいいと思うよ。太陽にも当たれるし。
もともと、オーストラリアは白人国家としての孤立感がある。白豪主義は捨てているものの、やはり近所で信用できる国は白人国家のニュージラントしかない。
また、アジアに対して漠然とした危機感を抱いている。オーストラリアには、巨大な人口を持ち、価値観が異なるアジア人が攻めてくるのではないかといった、あまり根拠の無い恐怖がある。戦前なら日本、戦後なら中国、あるいは国民国家となったインドネシアがそれだ。だから、白豪主義の間には、どうしても白人人口が欲しいと自分で判断できない年端もいかない孤児まで無理やり連れてきて移民にさせている。
だから、遠くの白人国家であるカナダ、アメリカ、ヨーロッパとの連携を重視する。かつてはインドと南アフリカも重視していたが、今は白人植民地ではないので連携する話は出てこない。
オーストラリアには、カナダ、アメリカ、欧州との政治的、軍事的連携や、通商路確保を重視する姿勢がある。オセアニアに散らばる島嶼国家への、一種保護国的な行動も、アメリカとの連絡線確保の部分もある。海軍でも、比較的大型の水上艦で、これら通商線保護や離島国家でのプレゼンスを行っている。
また、アジアからの防衛も重視する。アジア人によるオーストラリア侵略を防ぐため、最低限でもスマトラ-ジャワ-チモール-ニューギニア-ソロモンの線、できればその向こう、今なら南シナ海での防衛を考えている。こちらは、潜水艦が主力となる。
だから、オーストリア海軍の潜水艦にも多大な航続距離が要求される。南シナ海に至近の潜水艦基地、西南岸にあるパースにあるフリーマントルからインドネシアにある諸海峡を経由してシンガポール沖まで行くにしても、片道で5000km以上ある。具体的に確海峡で示すとスンダ(片道4700km)・ロンボク(4700km)・サペ(5100km)・オンバイ(6000km)となる。これは、戦争中にもフリーマントル問題(The Freemantle Problem)と言われている。
実際に、対中で潜水艦を活用するなら、さらに南シナ海中部から北部まで足を伸ばさないといけない。中国潜水艦を軍港出てすぐのところで襲う、あるいはバシーやスールーといった航路収束部で中国艦艇を襲うなら、潜水艦哨区はさらに1000-3000km先となるだろう。
つまり、オーストラリア潜水艦は1.2-1.8万km+の航続距離が求められる。南シナ海中北部まで、6000-9000万kmまで出て、そこで2-4週間の活動をして、同じ距離を戻らなければならないということだ。
これは、最低限のスマトラ-ジャワ-チモール-ニューギニア-ソロモン線にある海峡突破阻止でも変わらない。哨区まで片道3000km、往復6000kmは必要になる。
本来なら、米国のように原潜が望ましい。だが、高い上に自国整備できないといった問題があるので、通常潜を使わざるを得ない。その通常戦も、欧州系は長距離向けではないので、あまり具合がよくない。だから、同じように通常潜を長距離運用している日本製を検討しているという話である。
ただし、本当に日本製を買うかは分からない。最初に揚げた記事ではドイツ潜水艦の採用も検討されているとある。他にも、今ある潜水艦を改修して寿命を伸ばし、決定を先延ばしする計画もある。
だが、どこの国から買っても所詮は通常潜水艦なので、不満は解消しない。本来なら、オーストラリア北部に潜水艦基地を作るとか、旧英連邦のシンガポールやマレーシアの基地を使うといった解決法をとるべきである。だが、前者にはロクな都市もないので潜水艦整備するほどの拠点は作れない問題があり、後者には中国とオーストラリアが戦争になった時、どちらもそれほど中国に対立したくないのであてにならない問題がある。仕方ないから大型潜水艦を使い続けるのだろう。
まあ、なんにしても、某さんの「オーストラリアが日本の潜水艦に関心を持つ理由ワケ」と題した説明はないと思うけどね。アメリカは通常潜水艦を作れないとか、EEZをが広いからとか言っているのは、相当にピント外れだと思うよ。アメリカは最近通常潜水艦作った実績ないから、通常潜水艦は作れないというのはへんな話。潜水艦としてのキモは、船殻と開口部と艤装品であって、それは原潜でも通常潜でも変わらないので作れないわけじゃない。電池とエンジンも輸入すればいい。EEZの広さが世界第二位だから大型潜水艦がほしいというのは噴飯で、「それで漁業取締でもやるのかね」という話になるのだけれどもね。
※ Taylor,Rob「豪、日本の潜水艦技術求める アジア海域緊張の中で防衛協力」『The Wall Street Journal 日本版』( ウォール・ストリート・ジャーナル・ジャパン,2014.6.12)http://jp.wsj.com/news/articles/SB10001424052702304826804579619071990549580
※※ オーストラリアなら、通常潜水艦にしても昔懐かしい水上航行型のほうがいいんじゃないのかとも思うけどね。戦争中の潜水艦みたいに、水上艦型の船首を持つタイプで、アレで水上を20kt以上でスッとばして、哨区近くまでトランジットしたほうがいいと思うよ。太陽にも当たれるし。
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