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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2014.06
20
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12:34
Category : 未分類
 中国は、台湾を武力回収する場合には機雷を活用すると言われている。台湾海峡の南北端を閉鎖し、あるいは基隆や高雄を封鎖することも可能だろう。

 だが、米軍の接近経路を機雷敷設で阻止するとか、海自は容易に機雷除去できるとかというのは、ありそうにない話に見える。

 北村淳さんの「中国が最も嫌がる集団的自衛権発動のシナリオ -海上自衛隊掃海部隊が米軍を窮地から救う」では、中国が機雷戦により、台湾に米軍が連絡・接近できなくなるが、その機雷原は容易に日本が啓開できるとしている。

 しかし、台湾へのアクセスを阻止できるほどの機雷原を作ることは難しい。

 北村さんは次のように述べている
当然、先陣をきって出動するアメリカ艦隊は横須賀や佐世保を母港とする艦艇で編成されるため、それらの軍港周辺海域や、より幅広く日本周辺海域にも機雷原を設置してアメリカ艦艇の行動を阻止しようとするであろう。実際に、中国海軍は海軍民兵によって機雷を敷設する訓練も実施している。そのため、漁船や貨物船などにより日本領海に接近して(あるいは侵入して)機雷を設置する能力を保有していることは間違いない。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40980?page=3
しかし、佐世保や横須賀は中国から艦船で敷設するには遠すぎる。まず、台湾海峡や基隆、高雄、中国軍港での防御的機雷原を作ることが優先されるので、日本本土周辺で米艦隊を阻止できるほとの機雷原を作る余裕はない。

 また、横須賀、佐世保のその航路収束部は、日本領海どころか内水にある。領海際にとも述べているが、佐世保のあたりは、日本領海は九州西岸から100km以上先にある。横須賀からも、領海を出られるまでの最短距離60kmを超える。両港を阻止できるような機雷原を作れる場所は、領海のさらに内側、基線内部の内水である。そんなところに機雷を敷設すると、相手にしなくてよい日本への参戦を招く可能性が高い。

 そもそも、米軍が日本から台湾にアクセスしなければならない理由はない。米本土からも台湾には海上輸送でアクセスできる。仮に、基隆‐高雄間の台湾海峡を実質的に封鎖しても、台湾東岸へのアクセスは阻止できない。大水深であり、開けた海面であり、台湾側戦力によって防護されているためである。台東・花蓮の港湾を狙うにしても、航空機による港湾内への沈底機雷敷設は難しいし、潜水艦等で機雷敷設するにしても、港口から離れた場所に感応繋維機雷を入れるのがせいぜいである。繋維機雷なら、機械掃海で簡単に掃海できる。

 また、機雷原を海自が簡単に啓開できるとする見方も、楽観的である。北村さんは
中国海軍の機雷戦にとって、佐世保を本拠地にする4隻のアメリカ海軍掃海艦はそれほどの障碍にならない。しかしながら、日本が台湾とアメリカ海軍防衛のために集団的自衛権を発動して海自掃海部隊を繰り出してきた場合、中国のA2/AD戦略に大きな障壁が立ちはだかることになる。
 すなわち、海自掃海部隊が機雷原に航路帯を開削することで、米艦隊が無傷で接近してきてしまい、中国の目論見の1つが崩れ去ってしまうのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40980?page=4
と述べている。

 だが、仮に米艦隊が無傷で接近できないような濃密な機雷原を作ったとすれば、海自が出て行っても、そう簡単には処理できない。

 機雷処理はすぐにできるものではない。まず、機雷原の位置極限をして、そこで最低限必要な航路を設定してからそこで機雷処理を始める。そして最後に機雷の取り残しがないかを確認し、初めてアクセス経路が完成する。この作業は昼間しかできず、小規模な機雷原であっても1日はかかる。さらに機雷原が濃密で広大なら、機雷処理にも時間がかかる。

 仮に中国機雷の9割が旧式単純タイプであり、従来の掃海で効率的に対応できても、1割でも新型、あるいは高度なロジックを持つ機雷を敷設されると、それは取り残される。その手の機雷が少数でも残っていれば、結局は掃討をしなければならない。その手間はバカにならない。

 そもそも、相手の機雷原の場所がわからなければ啓開もできない。相手の機雷原を積極的に探すには、対機雷戦部隊を使わなければならない。他にも、すでに啓開した航路にも、新しく機雷が入れられないかをチェックするためにも、掃海掃討艇は1隻は置いておかなければならない。このため、海自部隊を投入しても、全力で機雷元を啓開できるわけではない。

 日本の対機雷戦部隊が投入されても、そう簡単には必要分の航路も啓開できるわけではないということだ。

 北村さんの主張は、中国が台湾回収で行う機雷戦について、その主目的を取り違えたものにも見える。中国が積極的に機雷戦をやるとしても、それは台湾海峡の安全確保であり、米艦隊の接近を阻止するものではないし、阻止できるものでもない。台湾全土が機雷封鎖されるわけでもないので、別に海自対機雷戦部隊が死活的な役割を果たすわけでもないのである。
 北村さんは最後に
そしてなにより、世界屈指の海上自衛隊掃海部隊がアメリカ艦隊に協力することは中国人民解放軍が最も嫌がるシナリオなのである。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40980?page=4
と述べているが、これも海自への過剰評価や過剰な期待である。中国機雷戦も、結局は「日本の防衛力大事、超大事」と主張するための主張ではないか。



※ 北村淳「中国が最も嫌がる集団的自衛権発動のシナリオ -海上自衛隊掃海部隊が米軍を窮地から救う」『JBpress』(日本ビジネスプレス,2014.6.19)http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40980

※※ だいたい、中国が台湾回収を行うなら、平和裏の回収を目指すし、武力回収となっても、日米が出てこないように最新の注意を払うだろう。

※※※ まー、台湾独立とか言われるのは、日米中にとって一番迷惑だよねえ。台湾にとっても、事実上独立しているんだから、現実的には何の利益もない。台湾の政府も独立派を抑えこんでくれないと、自分たちだけではなく近所迷惑でもある。
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