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日経「川重、新型哨戒機『P1』でボーイングと一騎打ち」では、国際兵器市場でP-1はP-8と戦えると主張している。例えば
しかし、P-1がP-8に伍して、国際市場で売れる見込みはない。なぜなら、実際に売れるのはP-3Cであるため。それ以上の機体が欲しい国でも、機体に信頼性のあるP-8を選ぶため。P-1の優位であるとする対潜機能も、キラーコンテンツとならないためである。
■ 売れ筋は中古P-3C
そもそも、実際に国際市場で売れるのはP-3Cである。P-1でもなければP-8でもない。日米以外にとっては、P-1/P-8は過剰性能であり、あまりにも高価である。実際に売れるのは性能も価格も充分なP-3C中古機である。
記事中で、ベトナムやフィリピンにP-1が売れるようなことを言っている。
■ 熟成度が高いP-8
高性能哨戒機が欲しい国でも、信頼性や部品調達面からP-1はP-8には勝てない。
機体の実績でP-1はP-8に及ばない。P-8は傑作機ボーイング737の転用であり、機体、エンジンとも熟成されており、致命的なトラブルが発生する可能性はない。対して、ノウハウに乏しい日本が、ゼロベースで作ったP-1には機体やエンジンレベルで潜在的なトラブルが疑われるためである。
実際に、P-1では国産エンジンにトラブルが発生している。制御ソフトウェア改修で問題は解決済みとしているが、もともとエンジンの素性がわるいものを、姑息的に直したものに過ぎない。
哨戒機として高性能でも、原始的なトラブルで使えなくなる話はいくらでも考えつく。例えば、脚周りについて、かつてのボンバルディア機のようなトラブルが発生したら目もあてられないことになるだろう。日本製の場合、そのようなトラブルがないとは言えないのである
また、部品の調達面でもP-1はP-8に大きく劣る。P-1はC-2と部品共用を進めた結果、保守品等のストックが容易になったかもしれないが、B-737と部品が共用できる点でP-8にはかなわない。P-8は、B-737との共用部分であれば世界どこでも部品調達が可能であり、最悪、近くにある民間機から部品を剥ぎ取ることでも整備は可能である。この点で、P-1はP-8に大差が付けられている。
■ 対潜能力での優位も意味はない
対潜戦能力の高さを示しても、P-1がP-8に対して国際市場でアドバンテージを得られることはない。
まず、対潜戦能力を求める国はそれほどはない。哨戒機の任務については、かつてのような敵原潜捜索や艦隊前方の対潜バリアーといったものの比重は低下している。今、各国が欲しがっているのは海洋監視能力である。この点で、対潜戦に比重を置いたP-1の優位性はあまり活きるものではない。
また、P-1を輸出できても、対潜戦パッケージは輸出できない可能性もある。対潜戦システムのキモは、音響シグネチュアのデータベースにある。日本にとっては門外不出であり、しかも米海軍が絡んだデータとなると、輸出品への搭載は難しくなる。データベースがなければ、高性能なソノブイや機上解析機器も、ただの音響測定器具に成り下がってしまうのである。
■ ニムロッドやアトランティックを輸出しようとするようなもの
P-1は、国際市場で売れるような代物ではないのである。それができると主張し、輸出仕様と努力をしても、かつてのニムロッドやアトランティックのようなもので、旧植民地にも売れないシロモノで終わる。
特に、時事問題と絡めて「南シナ海周辺国に売れるのではないか」と記事で述べるのは、事実を見ない願望としかいいようもないだろう。既に述べたように、彼らが買えるのはP-3Cがせいぜいであるためだ。
それが出来ると主張する点で、日経記事は日本航空産業への提灯記事に留まるものなのである。
※ 「川重、新型哨戒機『P1』でボーイングと一騎打ち 」『日本経済新聞』(日本経済新聞,2014.7.20)http://www.nikkei.com/article/DGXBZO74435040Y4A710C1000000/?dg=1
哨戒機は艦艇の監視に加え「ソナーブイ」と呼ばれる音響探知機器を海中に投下。センサーが潜水艦を探知する。ボーイングのP8は哨戒機で世界の先頭を飛ぶが、日本の防衛装備品の輸出緩和で思わぬライバルが登場した。川崎重工と防衛省が開発した哨戒機P1だ。
P3CからP1へ。ロッキードの手を離れた川重だが、防衛装備移転三原則が決まった4月からは、世界の受注競争でボーイングと激突する。欧州最大の軍用機メーカー英BAEシステムズは哨戒機の開発を断念、西側諸国で生産できるのはボーイングと川重だけなのだ。と言った部分がそれだ。
しかし、P-1がP-8に伍して、国際市場で売れる見込みはない。なぜなら、実際に売れるのはP-3Cであるため。それ以上の機体が欲しい国でも、機体に信頼性のあるP-8を選ぶため。P-1の優位であるとする対潜機能も、キラーコンテンツとならないためである。
■ 売れ筋は中古P-3C
そもそも、実際に国際市場で売れるのはP-3Cである。P-1でもなければP-8でもない。日米以外にとっては、P-1/P-8は過剰性能であり、あまりにも高価である。実際に売れるのは性能も価格も充分なP-3C中古機である。
記事中で、ベトナムやフィリピンにP-1が売れるようなことを言っている。
東南アジアでは南シナ海の領有権争いがくすぶる。当事者のフィリピンやベトナムは中国の覇権主義に対抗するため、防衛装備品の輸出緩和を決めた日本のP1に「高い関心を示す」(防衛省幹部)。だが、ベトナムが実際に狙っているのは中古P-3Cである。フィリピンには高度な哨戒機を買う余裕も、運用する能力もない。民間機転用の海洋観測機がいいところだ。
■ 熟成度が高いP-8
高性能哨戒機が欲しい国でも、信頼性や部品調達面からP-1はP-8には勝てない。
機体の実績でP-1はP-8に及ばない。P-8は傑作機ボーイング737の転用であり、機体、エンジンとも熟成されており、致命的なトラブルが発生する可能性はない。対して、ノウハウに乏しい日本が、ゼロベースで作ったP-1には機体やエンジンレベルで潜在的なトラブルが疑われるためである。
実際に、P-1では国産エンジンにトラブルが発生している。制御ソフトウェア改修で問題は解決済みとしているが、もともとエンジンの素性がわるいものを、姑息的に直したものに過ぎない。
哨戒機として高性能でも、原始的なトラブルで使えなくなる話はいくらでも考えつく。例えば、脚周りについて、かつてのボンバルディア機のようなトラブルが発生したら目もあてられないことになるだろう。日本製の場合、そのようなトラブルがないとは言えないのである
また、部品の調達面でもP-1はP-8に大きく劣る。P-1はC-2と部品共用を進めた結果、保守品等のストックが容易になったかもしれないが、B-737と部品が共用できる点でP-8にはかなわない。P-8は、B-737との共用部分であれば世界どこでも部品調達が可能であり、最悪、近くにある民間機から部品を剥ぎ取ることでも整備は可能である。この点で、P-1はP-8に大差が付けられている。
■ 対潜能力での優位も意味はない
対潜戦能力の高さを示しても、P-1がP-8に対して国際市場でアドバンテージを得られることはない。
まず、対潜戦能力を求める国はそれほどはない。哨戒機の任務については、かつてのような敵原潜捜索や艦隊前方の対潜バリアーといったものの比重は低下している。今、各国が欲しがっているのは海洋監視能力である。この点で、対潜戦に比重を置いたP-1の優位性はあまり活きるものではない。
また、P-1を輸出できても、対潜戦パッケージは輸出できない可能性もある。対潜戦システムのキモは、音響シグネチュアのデータベースにある。日本にとっては門外不出であり、しかも米海軍が絡んだデータとなると、輸出品への搭載は難しくなる。データベースがなければ、高性能なソノブイや機上解析機器も、ただの音響測定器具に成り下がってしまうのである。
■ ニムロッドやアトランティックを輸出しようとするようなもの
P-1は、国際市場で売れるような代物ではないのである。それができると主張し、輸出仕様と努力をしても、かつてのニムロッドやアトランティックのようなもので、旧植民地にも売れないシロモノで終わる。
特に、時事問題と絡めて「南シナ海周辺国に売れるのではないか」と記事で述べるのは、事実を見ない願望としかいいようもないだろう。既に述べたように、彼らが買えるのはP-3Cがせいぜいであるためだ。
それが出来ると主張する点で、日経記事は日本航空産業への提灯記事に留まるものなのである。
※ 「川重、新型哨戒機『P1』でボーイングと一騎打ち 」『日本経済新聞』(日本経済新聞,2014.7.20)http://www.nikkei.com/article/DGXBZO74435040Y4A710C1000000/?dg=1
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