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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

→ サークルMS「隅田金属」
→ 新刊・既刊等はこちら

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2015.08
30
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06:49
Category : 未分類
 先に高名な軍事研究家と会った時なのだが。戦車モドキよりも対戦車ヘリの方が重要だろうねえといった話となったよ。

 陸は、まず対戦車ヘリを廃止する雰囲気にある。アパッチの調達中止とコブラの老朽化で放っておけば対戦車ヘリはいなくなる。それを解決しようといった話は、外にいる限りは見えてこない。

 まずは組織の力関係なのだろう。戦車や戦車モドキの調達は続けようとしているあたりをみると、まずは航空科が各職域に力負けした、逆に機甲科が押した結果の割を食った形にも見える。

 だが、離島防衛を考慮すれば対戦車ヘリの方が優先順位が高い。上陸戦での直協用に攻撃ヘリとして水上艦から運用できる対戦車ヘリが必要になるためだ。いつ上がってくるかわからない戦車や戦車モドキよりも、上陸第一波の援護やヘリボーン支援に必須の攻撃ヘリが必要になる。

 それを考えれば、コブラ系だろうがアパッチだろうが、タイガー、マングスタ、カモフ、リトルバードでもなんでもいいから買っとかないといけない。上陸戦で常に空自戦闘機のCASが期待できるわけでもないし、海自の艦砲射撃の火力も全然あてにならないためだ。

 だが、陸自には戦車モドキを調達しようとしても、対戦車ヘリ調達の努力はない。今更チェンタウロもどきを大量整備しようとする発想が不思議なものだ。大口径砲が欲しければ今の74式を修理してつかえばよいし、本土での緊急展開なら87式で足りる。どちらも直せば使用に問題はないし、本土防衛であればその程度で構わない。それよりも対戦車ヘリが優先されるよねえと話したもんだよ。
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2015.08
27
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20:31
Category : 未分類
 受付で、担当の広報幹部に「『新型艦は『かが』とフライングした報道がある』といわれて見たら、題名にダマされた」と笑って言われました。

 「紛らわしくてゴメンなさい、あれ題名は編集部なんですよ」と互いに呵々大笑。

 そこでもらったリリースに「かが」とあったので、投稿原稿の中から「かが」案* を準備し、現地でiPhoneで写真とって添付しておき、「『かが』と命名する」と同時にJAPAN In-depthの編集部に送りました。(「新型護衛艦『かが』進水、ヘリ空母2隻体制に」

 以下、別に持ってったGRで撮影した写真、RAWを現像、というか好みに合わせた風味付けしたものです。

かが
 でかすぎて距離も近すぎるので、換算28mmでも入りきらないもんです。ちなみに『世界の艦船』の記者さんによると手前から2つ目、艦橋前のスポンソンの裏側に貼りつているのが舷梯だそうです。
 あとは、上から紙を落として対水速力を図る(2秒間のメートルがノットになる、だいたい2kt以下でやる)とか、艦首から測鉛で水深を図るのは大変そう。やるのかどうかが気にかかるものです。

かが_錨
 正面から錨。ホースで洗うのも面倒そう。


くす玉
 くす玉の開放状況。この時4回位花火を上げた。

アイ_加賀
 ハルナンバーのところだけ金物(アイ)がついているのは、ペンキ塗りのためなんでしょうねえ。

 天気もよく、無事順調の進水式なので、まずは「かが」の将来も安泰。まあ、あと40年、己達がくたばり損ないになるまで、現役水上艦となるでしょう。


* 「かが」案と、「ながと」案、それ以外案(艦名と経歴を「ホニャララ」と書いた3つを用意)。まあ、旧軍軍艦名からすれば、まず加賀しかないんだけどね。
2015.08
26
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00:10
Category : 未分類
 世の中には外観だけで反感を覚えるものがある。建物であれば、神保町のこの居酒屋、「酔っ手羽」がそれだ。東京堂や内山書店に行く時に、いつも目に障る。

下品な居酒屋_調整

 神保町すずらん通りに出店する外観ではないし、周囲と調和しないこともこの上ない。

 前は「はるだんじ」という飲み屋?で、打ち放しで割りと落ち着いた外観だったのだが、売却?されて下品な外観となった。



 会社のHPをみてもまずは下品。経営理念には「全国どの地域でも愛されなくてはならないお店となることで社会の発展に寄与する」とあるのだが、その理念で周囲との調和を無視したこの外観にするものなのかね。

 もちろん、神保町で飲むことになっても絶対使わない。使うと言ったら翻意させる。それでも使うなら、その宴会には出ない。潰れろとは言わないが、さっさと撤退してほしいものだ。
2015.08
23
CM:3
TB:0
19:30
Category : 未分類
 岩波ホールで、初日の最終回を見てきました。



 面白く無いだろう映画を「面白くないだろう」と思ってみているので、面白く無いのは仕方がない。ですがねえ、ラクダ出す必要があったのか、なんでラクダなのかは全然ワカランチンでした。カンカンノウを躍らせるわけでもないのですがね。

 出来がいい部分は、ああいう厄介親爺はリアルにいる、映画を見ていて本当に腹が立つ。町中で役者本人見たら、演技との区別がつかず殴りかかりそうになるくらいです。

 ただ、なんで話にドイツ関係を入れ込んだか理解できない。親爺の友人が中途遊びに来て映画中の言語がいきなりドイツ語になったりする部分とか、それを子供も理解する所とか、字幕で全く触れないあたりは不親切です。また、ドイツからの少年矯正プログラム云々もそうでしょう。

 結果、この映画の舞台がどこであるかは混乱します。エトルリア人の墓所云々でイタリアの中部あたりかと思ったのですが、ドイツ語が出てくるところとか、ドイツ少年矯正プログラムからすれば、トリノ郊外なのかトリエステなのかと無駄に頭から?がでました。

■ つまらない映画を評するなら工夫は必要
 ちなみに、産経評は全然的外れ。「【シネマプレビュー】『夏をゆく人々』」です。

 「彼と、村を訪れたテレビ局の取材クルーの存在が一家を少しずつ変えていく…。」(産経)とありますが、一家は殆ど変わらないものです。

 また「描かれるのは、自然のままに生きる彼らが現代社会に追い詰められていく姿。」(産経)も全然的外れ。近所の百姓に「新しい除草剤使ったろう」と怒鳴りこむあたりでしょうが、アレも親爺の厄介さの表出以外の何物でもないものです。

 だいたい、面白い映画だと思うなよといったメッセージを示せないのは映画評としてダメです。「ロルバケル監督は、口笛で小鳥のように美しく歌うマルティンや屋外のベッドで眠る一家、洞窟の壁で遊ぶジェルソミーナとマルティンの影など、幻想的なイメージを多用し、夢の中のような奇妙なぬくもりに満ちた世界を作り出した。」(産経)も、褒めるところを必至に探したのでしょう。ただ、これだけだと、言外に「この映画ツマンナイよ」は通じないわけです。

 その点でも、産経はダメ。いろいろ工夫する他社の映画評に品下るものです。昭和40年の「血と砂」の産経評もひどかったけど、今回は手を抜き過ぎだろうといった按配です。

 ちなみに、入りは初日18時に切符買って整理券番号で14番。初日最終回で30人くらいですか。岩波ホールとしても少ない方です。

 まあ、次回作のチリ映画の予告編が良かったので満足しました。チリ現代史もの、ピノチェト政権の残したものと先住民族映画の2本立てです。
2015.08
21
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TB:0
19:04
Category : 未分類
 桜井よしこさんはEEZと領海の区別がついていない。

■ 謎の国際法、桜井ルール
 その桜井ルールによれば、他国のEEZは神聖不可侵なので中国は出入りも攻撃もできないらしい。米潜水艦や航空機が沖ノ鳥島の周辺から巡航ミサイルを発射されたら手出しできないので中国はEEZを認めないのだ主張している。
 
 これは「戦後70年、中国の大戦略に備えよ」※ で明言されている。
中国が沖ノ鳥島を島だと認めないのは、射程3000キロを誇る米軍の巡航ミサイルが北京を襲う可能性への恐れだと専門家は見る。米国との戦闘を想定すれば、中国は北京を起点に半径3000キロ以内の海を確保し、米軍の接近を許さないのがその戦略の基本となる。沖ノ鳥島周辺の日本のEEZを断じて許さないと主張するのは、周辺海域を逆に中国の支配下に置く意思であろう。
http://yoshiko-sakurai.jp/2015/08/20/6077


 そんなこと言っている「専門家」は誰で、何の専門家なのだろうか? 知るかぎりでは浜口和久さんしかいない。仔細は「沖ノ鳥島は、日本にとって死活的な利益ではないよね」で述べたとおりである。

 EEZは公海とほぼ同義である。沿岸国は漁業資源と海底資源の採掘権を主張できるだけに過ぎない。そこで水上艦隊が演習をしようが、潜水艦を潜らせようが、航空機で対潜戦をやろうが問題はない。それを知らないというのは、国家基本問題研究所とやらは相当に残念な中身ということだ。

■ ガス田に核兵器で危険が危ない
 だいたい「東シナ海ガス田のプラットホームが軍事転用されるとキューバ危機だから危険が危ない」も意味不明である。中国は核も弾道弾もSSBNも持っている。わざわざ日本に近く防護も弱い海洋プラットホームに核兵器を置く理由がない。
国家基本問題研究所副理事長、田久保忠衛氏は、これら[東シナ海ガス田の]海洋構築物が軍事転用されれば日本にとってのキューバ危機になると警告する。しかし、重大な意味を持つ中国の海洋開発を日本政府は国民に知らせずにきた。日本の安全保障政策を担う国家安全保障会議(NSC)局長の谷内正太郎氏の訪中後に、政府は初めて発表したが、政府の反応は総じて鈍い。
http://yoshiko-sakurai.jp/2015/08/20/6077


 今年、日本会議議長に就任した田久保忠衛さんが一生懸命に考えた「危険が危ない」なのだろう。だが、ここまで中身の無い話をされるのも困りものだ。

■ 品質そのものが低い
 なんにせよ、この記事は従来記事と比較しても際立って出来が悪い。草稿を書くライターの質を落とした結果、頭の悪いネトウヨを雇ったとしか思えない。代ゼミ偏差値で42くらいではあるまいか。

 「ウォルドロン氏は、いま日本人は13世紀の元寇以来、最も深刻な危機に直面していると警告する。」というが、今は昭和20年8月よりも「深刻な危機」であることを説明できるのだろうか? アメリカに本土侵攻されるなら深刻ではないが、中国が海洋プラットホームを作るのは「元寇以来、最も深刻な危機」だと言い出すなら、そのように発言した奴も、引っ張ってきた奴も、最終チェックした奴もどうかしている。

 他にも「孫子の兵法」やら「米国の戦略物資」(具体的言及なし)やら、アレな用語ばかりが出てくる。まあ、実際に当人に聞いても説明できないだろうがね。

 そして、文末SNSチェック欄でこれに言及している連中も、選り抜きのアレ精鋭である。フランシーヌの場合のように、あまりにもお◯◯さんとしか言いようがない。昔の我が国の保守派は頭が良かった※※ のだけどねえ、ゆとり教育の極致であることだよ。



※  桜井よしこ「戦後70年、中国の大戦略に備えよ」『桜井よしこオフィシャルサイト』http://yoshiko-sakurai.jp/2015/08/20/6077
   アレだ、ある事情から今後の註は*、アスタリスクに統一しようと思ったが、汚れるので※にしたよ。

※※ 岸信介は帝大出で高文を突破している。国賊と罵倒されても頭が悪いとバカにされたことはない。だが、その孫はじっちゃんの名にかけてと、解釈で憲法が変えようとするあたりで、ゆとり時代を先取りしている。
   まあ、昔は政策秘書に資格試験はなかった。晋太郎汁に由来するだけで秘書になれたわけだからねえ。
2015.08
19
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TB:0
17:54
Category : 未分類
 安全保障関係で、理由が思いつかない時に使える便利な言葉に地政学がある。たいていは使う御仁の頭は弱いと見て良い。本来であれば、相手が理解できるように理屈づけて説明すべきであるのに、それができない時に捨て台詞のように使う言葉のためだ。

 それを佐藤正久さんが使っている。択捉島について「安全保障でスゲー重要」といいたいのだろうが、それが説明できないのでがつかないので「地政学が~」と言っている。
佐藤正久‏@SatoMasahisa
【ハワイに一番近い日本、択捉島!】露首相のメドベージェフが再び択捉島訪問に意欲を燃やし軍の近代化も企図しているが、真珠湾攻撃に参加した空母機動部隊は択捉島から出撃。メルカトル図法では分かりにくいが、ハワイに一番近い日本は北方領土の択捉島で、艦隊を隠すにも好適地。地政学的にも重要 1:33 - 2015年8月15日
https://twitter.com/SatoMasahisa/status/632470146120986624


■ 軍事的な妥当性のない佐藤発言
 だが、佐藤さんの発言には何の妥当性もない。

 どこが「艦隊を隠すにも好適地」(佐藤)なのだろうか? 択捉島は太平洋に面しており、日米海空戦力行動圏に面している。艦隊を置いても日米哨戒機からも隠れられず、航空攻撃や潜水艦脅威に直面する島であり、しかも防空戦力が少ないために何もできない。

 さらに択捉島には良港がない。有名な単冠湾にしても、停泊施設はなく、外海からのうねりの打ち込みがあり、年に2-3回ほど大波がでるため停泊地としては不適である。

 また、ハワイ攻撃での距離の近さもそれほどではない。ロシアにはペトロハバロフスクがある。ここは良港であり、ある程度の港湾能力も防空戦力もある。択捉島に艦隊をおいてハワイを攻撃するくらいならこちらのほうがまだマシである。


■ 領土問題にイッチョ噛みしたいだけ
 結局は、佐藤正久さんは軍事的に理由をつけられないということだ。北方領土=択捉島の問題にイッチョ噛みし、支持層や保守にアピールしたい助平心なのだが、悲しいかな語れる話題が安全保障しか無い。

 だが安全保障では、日本にとって北方領土はあまり意味はない。

 そもそも、ロシアにもあまりない。ソ連であればオホーツク聖域化のために必要であった。日本がオホーツクに侵入し、潜水艦に拠る戦略原潜攻撃や、米海軍・海兵隊による沿岸部を襲撃する恐怖に対抗するために、国後水道の防備はそれなりに重要であったが、いまではない。

 今の問題は、ナショナリズムに絡む領土問題に過ぎない。北方領土は日本人が、ロシア人が自国領土だと思い込んだ結果、譲れないと考えているだけの話である。そこに軍事的な価値はないのである。

 だが、佐藤正久さんは、それがあると言わなければ自分の出る幕はない。だから必死になって地政学といっているのだろう。

 まあ、支持者は賢くないから騙せるかもしれないけどね。連中の頭の内容はリツイートを見ればわかるもんだ。



 ■ オマケ 
 「露首相のメドベージェフが[中略]軍の近代化も企図している」(佐藤)と書いているけど、その実現性について全く言及しないのも、佐藤さんの立ち位置を示している。それが考えられたのはバレル100ドルを超えていた時代であって、14年からの原油価格暴落で、原油とそれにリンクした価格体系の東アジア向け天然ガス収入が激減した今のロシアにその余力はない。でも、北海道の陸兵を維持する理由が怪しくなるのでそれは言えないわけだ。
2015.08
17
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TB:0
09:30
Category : 未分類
 ooi@n_mさんは、相手に応じて道徳を使い分けていらっしゃるようだ。

 今回、他人を呼び捨てにするなと道徳漢として、たしなめるような顔をしておられる。
OOI_呼び捨て
https://twitter.com/JDSDE214/status/632130204580708352

 だけどねえ以前は篠山半太さんについて、こうも発言されている。

OOI_パンダ
https://twitter.com/JDSDE214/status/612989414294224896
お仲間の身内で罵倒の限りを尽くしているときにはこんなものだ。敬称をつけろとか、呼び捨てにするなといったルールは柔軟に運用されるご様子である。

 ooi@n_m@JDSDE214さんは、道徳を使い分けているということだ。相手にマウンティングできる時には道徳を使う、相手に勝てない時には罵倒するという、実利的に使い分けをする工夫をしている。

 もちろん、これは珍しい話ではない。商売面と普段面を使い分けるのは生活の知恵であるからだ。例えば、死んでいる人間に優しく、生きている人に厳しいことをいう人がいる。死んだ人に優しくと言うと商売になるが、生きている人を同情しても金にならないからである。

 例えば、商業記事では殊勝なことを書く御仁がいらっしゃる。シベリア等に残った旧日本兵等の遺骨が113万人分あるとか、その解決には努力が必要だといった立派な記事を書かれてる。

 しかし、それが「わりかし言えます」の人と知ると、その立派な発言はことごとく脱構築される。なんでも相手の都合に合わせて主張されるのだろうないったようにみえるものだ。なんせ、原発事故で故郷を失った人たちに「いやー、産業の空洞化はさけるべきでしょ?だから原発、必要でしょ?」と「わりかし言え」る御仁だと、感想もヒトシオといったところだ。

 なんせ、今、生きている人に「わりかし言えます」の人が、70年前に死んだ人の遺骨で優しくなれるわけもないからねえ。
2015.08
15
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TB:0
09:54
Category : 未分類
 今年も8月15日。終戦の日が来ました。昨日にはTBSラジオで、録音ですが秋山ちえ子の『かわいそうなしゃち』の朗読が始まりました。今年は98歳におなりとなったということです。

 戦争中に起きた動物の出征。お国のために水族館から出征したシャチのおはなしは、昭和時代に小学校教育を受けた人ならみんな知っている内容です。毎年、あの暑い夏の一日の記念日に、秋山ちえ子は戦争を語り継ぐため、相模湾、江ノ島での悲劇を朗読をします。

 敵の潜水艦を沈めるために調教されたにシャチ。秘匿名称はオルカ金物。生物爆雷として潜行中の潜水艦に体当たりするように条件付けをされたシャチ、ジョーイのお話です。

 体当たり用の爆雷を取り付けられたジョーイですが、戦局が悪化し外地での運用が不可能になります。御役御免で除隊したはずのジョーイは、江ノ島にある水族館に戻り、毎日近くの海で遊んでは帰ってくるといったように、ノンビリ過ごしていました。

 ですが戦争は内地まで近づいてしまいました。すでに特攻隊は何遍も飛び立っていました。そして内地でも、水中でも、体当たりで敵を沈めようとする体当たりの潜水艇が準備されていたのです。

 ジョーイは、特攻隊の人の潜水艦を襲ってしまうかもしれません。だから、軍隊からシャチを殺しなさいという命令が出てしまったのです。

 水族館では、ジョーイに毒薬を注射しようとしますが針は海獣の厚い皮を通さずポキリと折れてしまいます。大好きな魚に毒の入れて与えようとしても、知能の高いジョーイはそれを見抜いてしまいます。

 飼育員のおじさんたちは、命令違反を承知でジョーイを外海に逃がそうとしますが、水族館で育ったジョーイは外海で生きていけず帰ってきてしまうのです。

 それでもジョーイは褒めてもらいたくて芸をします。飛び上がって回転したり、上半身を水上に突き出してみたり、逆立ちをして尻尾を立ててみたり。飼育員さんを鼻先に乗せようとしたりして、ほめてもらおうとするのです。それを見ていたみんなは、銃殺や干上げて殺すことはとてもできない。餓死させるしかないだろうと決めました。

 しかし、そんなことを知るジョーイではありません。よい芸を見せれば今まで育ててくれた人間が餌をくれるものと信じています。芸をすれば体力が奪われてしまうというのに。そして、ジョーイはどんどん弱っていってしまいました。流線型の体は脂肪が減って痩せ馬がでてしまいました。ほとんど衰弱して、ただ浮かぶだけになってしまいますが、飼育員の長谷川さんを見つけると芸をみせようとするのです。

 ジョーイを子供のように思う飼育員の長谷川さんは辛くなって、辛くなって、ついに食料のサバやイワシを、ジョーイに分けてしまいました。限られた燃料を使って、汚穢船を転用した支援船で網を引いて手に入れた皆の食べ物です。「ジョーイ、腹が減ったろう、おいしいか、おいしいか」と食べさせる長谷川さんに他の飼育員のおじさんたちは何もいえませんでした。所長も、大学の人も、配属された海軍の将校さんも何も言わずに、見守っていました。中には涙を流している人もいました。

 みんなその晩に話し合いをしました。「ジョーイを殺すことなんかできない」「心を鬼にしてプールからジョーイを追い出そう。銛でついてもいい、音でいじめてもいい、普通のシャチとは違う体になってしまったけれども、外に出れば、お腹が空けば魚を食べるだろう。」

 でも、海軍の人は申し訳なさそうに口を開きました。「ジョーイが三浦半島まで出てしまったら、水中特攻部隊の若い人を殺してしまうかもしれません」

 戦争は過酷でした。特攻隊は東京のすぐそば、相模湾の近くにある三浦半島でまで用意されいたのです。そして、毎日、敵の軍艦に体当りする訓練をしていたのです。

 そして、特攻隊の人の乗る、体当たりで敵を沈める潜水艇は、あまりにも小さすぎて、爆雷をつけていないジョーイであってもぶつかれば沈んでしまうかもしれないのというのです。

 飼育員のみんなも黙ってしまいました。実は戦争がどうなっているか、軍隊の方針がどうであるのかということは誰の頭にもありませんでした。でも、みんなは特攻隊の兵隊さんが、自分の子供のような年齢の兵隊さんの身の上を思うとなんともいえませんでした。特攻隊の兵隊さんたちは水族館の側に寄宿しており、上陸日にはジョーイの芸を楽しみに見に来ていたくらいですからなおさらです。

 学徒出陣してきた分隊士さんの中には、学生時代に研究で水族館に通っていた人もいました。若い下士官を連れた将校さんは、彼らをジョーイの鼻先に乗せてやれるように懇願しました。若い下士官も軍服を着ながらジョーイの鼻や背に乗って無邪気に喜んで、ジョーイに貴重品になった特別配給の飴を食べさせようとしたりしているのも見ていました。

 そして、その兵隊さんたちの潜水艇は安全なものではなく、ちょっとした不具合で沈んだままになってしまう。そのまま殉職してしまうことも知っていました。みんなは、もう若い人が、訓練で死ぬのはやりきれないです。

 長谷川さんが口を開きました。「もう、ジョーイには何の餌もやらない」みんなは、下をうつむいて何も離しませんでした。ただただ、長谷川さんを囲んで味のしない合成の理研酒をまわし飲むだけでした。

 それから3週間たった夏の暑い日、長崎に原爆が落ちた4日後、ジョーイはプールで沈み、窒息してしまいました。せめて綺麗な体で埋めてあげようと、一端引き上げて爆雷取付具や安全尖外しを取り除き、ガスが堪って膨れたお腹を開いたとき、本当は風呂桶のように大きなジョーイの胃袋は湯たんぽの大きさまでしぼんでいたそうです。

 いまでもジョーイが死んだ8月15日には、鎌倉建長寺で慰霊祭が行われるそうです。
 『かわいそうなしゃち』でした。
 それではみなさん、ごきげんよう。



2009年夏『瀛報』(ようほう)29号のまえがきから、一部修正。

参考
谷甲州「ジョーイ・オルカ」『星の墓標』(1987.7 早川書房)
秋山ちえ子 朗読 土家由岐雄「かわいそうなぞう」『大沢悠里のゆうゆうワイド』2015年8月14日(TBSラジオ、2015.8)
2015.08
13
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20:57
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夏コミ新刊2種出来

2015夏コミ_新刊出来

明日、金曜日の東ピ-13b 隅田金属です……眠いです、すごく
2015.08
12
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13:38
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最初の1冊です。
色調整があれなのは、光源がアレだから。自然光と蛍光灯が変に混じったところの暗いところで撮ったのです忙しいのでフォトショで彩度落し気味でね

2015_夏コミ_1st_shot

隅田金属は1日目 14(金) ピ13b(半濁音、○がつくほうのPiです)

……順調にできたらパンフも作ります。まあ会場切りになると思うけど
2015.08
10
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21:54
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 『軍事研究』の2015年9月号に「中国の疑心暗鬼を呼ぶ救難艦の出没」を掲載させていただきました

 タイトルは編集部におまかせですが、内容的にはそのような内容でドンピシャです。「南シナ海に救難艦を行動させれば、中国が疑心暗鬼させられて面白いだろ」「DSRVを空投できるようにしろ」とか書いています

 よろしければ、お買い上げください
2015.08
08
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22:42
Category : 未分類
 表紙の大体のイメージです。インデザインから直にJPGでだして、フォトショップでイジったのですが
 普段のインデザ→EPS→イラレ→PSD→フォトショ→JPGの方が綺麗にでますね。ちなみに写真は海自のHPから利用条件に従い使用してます

夏コミ表紙のウェブ用

 来週半ばには、完成して製本した奴の写真がでるでしょう、たぶん
2015.08
03
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00:58
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 頭を使わない記事を書いているJSFさんが、他人様を頭を使わないと批判しているのは微笑ましいものだ。
JSF‏@obiekt_JP JSFさんがリツイートしました
まぁ、「最新鋭兵器なんかいらない、従来兵器を改修して使えばよい」という主張は頭を使わなくていいので、マニアの間でも唱える人はちらほら居ますけどね… 敵の装備が新型に更新されている事を失念しているんじゃないかな。 https://twitter.com/SukiyakiSong/status/627311646130597888 …
2015年8月1日https://twitter.com/obiekt_JP/status/627658680360501249


 それは天に唾するようなものだ。海外動画を拾っただけの、何の主張も新発見もない記事を書くJSFさんも「頭を使わなくていい」といわれるためだ。例えば「アメリカ海兵隊F-35B戦闘機がIOC取得宣言」 なんかそれ。記事内容にはどこにも新発見はなく、動画についてのキャプション程度でしかない。

 PV稼がせるのはアレだからリンクしないが、JSFさんのヤフー記事も同様である。キャプション程度の英文を和文にする程度、横のものを縦にしただけの「頭を使わなくていい」記事内容だからラクなものだ。

 和訳にしても、"a very senior general"を「とても上級大将です」と理解するくらいだけどね。この点は「『とても上級大将です』(JSFさん)」 で書いたとおり。

 そもそも、JSFさんは最新兵器を持ち上げるだけで、本当に必要なのかを判断できていない。「10式にしないと国が滅びる」とか、実際にはF-16のバリエントにしかすぎないF-2をヨイショしていた。だが、その必要性については「ロシア軍が北海道に攻めてきたら」や「中国軍が九州に上陸してきたら」と現実には発生しない事態を取り上げる始末である。「敵の可能行動」という概念がないのだろう。

 そのJSFさんの身内が口にする「情報のアップデート」とやらも、スーパーカー・マニアや汽車ポッポ・マニアのような細部への偏執にすぎないけどね。実際に、アップデートに務めた成果はこの程度である。
JSF ‏@obiekt_JP 90式戦車は10式戦車のように後進全速で時速70kmも出せはしない・・・
2010年8月20日https://twitter.com/obiekt_JP/status/21683017590

「機動力が、瞬発力が、射撃後の離脱が」といいたいのだろうが、結局はミクロの話だ。

 これで「10式にしないと、北海道に上陸したロシアに、九州に上陸してきた中国に対抗できない、国が滅びる」と主張しているだから畏れ入る。上陸できる理屈がオカシイことに気づかない。制空制海権や海上輸送力、上陸戦のセオリーをぜんぶ無視した、JSF式のゆとり上陸作戦理論にのっとったものだ。

 「敵の装備が新型に更新」されているので危険が危ないと言い出すあたりも、相当に頭がよくない。本土防衛なんて現実味のないシチュエーションで「90式では性能が足りない、10式にしないと国が滅びる。ロシアは新型戦車を作って」とか言い出すのもね。敵の戦車が新型でも、別に90で撃破できるだろうし、90で撃破できないロシア戦車が出現すれば、10式でも撃破できないもんだがね。抽象化できないから「基本は同じ120ミリ戦車砲」と判断ができないわけだ。

 要は場違い太郎といったもの。会社の商用車をどうするかの会議で「古いスカイラインは290馬力しかでないが、新型にすると295馬力出る。同業他社のシャチョさんは新型のポルシェを買った、ウチの会社もスカイラインにしないと倒産する」といいだすのがJSFさんだ。ピントもロジックもズレまくった熱弁をふるってもねえ。
2015.08
01
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11:36
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 ビール券は通称B券とよばれる。 練習艦隊終わって、マークの扱いが艦艇幹部(だったか)の扱いのままで八戸に初任幹部で到着したとき一番最初にやった仕事が、部隊が業者からもらったB券を金券屋で換金すること。ちなみに業者からのB券は全盛期にはあった(00年代以降は現地部隊にはまずなくなった)もの。それを勤務時間中に私服でマネーロンタリングというわけだ。

 アレ、お中元に百貨店から客先まで実物を届けるのがバカバカしいから生まれたものらしい。 『麒麟麦酒の歴史 続戦後篇』(麒麟麦酒,1985.3.1)にはそうかいてあった。

 昭和44年、「アサヒビール本生ギフト券」が嚆矢であり、さらに銀行決済方式となって人口に膾炙したらしい。てっきりビール会社との取引で相殺したり、あるいは図書券のように割り引かれたりするもんだと思っていたけれども、酒屋さん(あるいは卸)は銀行に渡せばそのまま現金化できた様子。

 『麒麟麦酒の歴史』 他にも「P箱」も出ていた。瓶ビールを差し込むプラスチックのケース。あれは昭和40年12月から導入されたもの。当初は2ダース入りだったが、重いので20本入りが標準となった。塗装屋なんかだと、あれを屋上からブランコのようにぶら下げてボースンチェア(モンキーチェア)にして腰掛けて壁を塗装していたりする。労安法上どうなのかはしらない。

 このP箱輸送に最適化されたのが国鉄型のパレットだったと記憶しているが、その旨のメモも実物の本も見当たらないのでハッキリとはいい切れない。確か成山堂の『現代の鉄道貨物輸送』だったと思う。
2015.08
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書き忘れていましたが、隅田金属は1日目

14(金) ピ13b

半濁音、○がつくほうのPiです
たぶん、新刊はできると思います、たぶん