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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2016.06
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Category : 未分類
 電力需要は伸びないのに老朽原発動かしてどうするのだろうか?

 規制委員会はロートル原発の寿命延長を認可した。これは朝日新聞「40年超の高浜原発、初の運転延長認可 例外が続く恐れ」のとおりである。

 だが、それまでして原子力発電をする必要はない。

 なぜなら電力需要は伸びず、安価な石炭火力や太陽光シフトが進むためだ。


■ 電力需要は伸びない

 今後、日本は電力需要が伸びる見込みはない。人口減と第二次産業から第三次産業へのシフトといった構造がある。人口が減れば住居用の電力は増えないし、産業構造も製造業からサービス業への変化が続いており、動力用電力も増えない。

 この構造からすれば、熱源の電力化が多少すすんだ所で電力はそれほど必要はなくなる。

 さらに、それでもなお大電力を必要とする事業所は自前で発電をする。電力会社から買う電気は価格が高いためだ。これは今までも相当に進んではいるが、石炭や石油、ガス価格の低下もあったため今後も進むだろう。

 そして現状で電力は充分に足りている。無理をして老朽原発を整備し、発電させる必要はない。


■ 石炭とガスと太陽光に負ける

 必要な電力を造る上でも原発は必要はない。より安価に電力を作れる石炭、天然ガス、太陽光で発電が賄われてしまうためだ。

 原子力以外の発電所は目下増強中である。カロリーベースで最も安価な石炭については、新規の発電所1.9gwが建設中であり、28gwが提案中である。同様に天然ガスは5.3gw建設中、14.9gwが提案中にある。太陽光も14年の段階で33gwであり、15年中に10gw分が追加されている。

 これらの投入により、今後日本の発電能力は純増となる。26年までの10年で老朽石炭火力は10.6gw退役するとされているが、そこに30gwが追加されるためだ。これに天然ガス、太陽光、あまりあてにはならないが風力や地熱が加わる。

 そこで価格競争力のない原発は出番はない。さらに効率や稼働率が悪い老朽原発は全く出番はない。


■ エネルギー安全保障の必要はない

 エネルギー安全保障の面でも、もはや原発は必要がなくなっている。

 輸送容易な石炭については、資源量に不安はなく輸入先は分散している。中東等に戦争があっても輸入に困ることはない。

 天然ガスも似たようなものだ。液化とLNG蒸発損があるといった性質上、スポット購入と輸送は難しいが、価格は安く資源量そのものは多く輸入先もそれなりに分散している。さらにオーストラリアの海底ガス田や米国のシェールガスといった安定供給が見込める国も加わろうとしている。

 太陽光ほかの再生エネルギーは燃料を必要としない。この点で、安全保障上最も都合はよいものだ。それで昼間の電力を賄えれば、夜間はその時だけ動かすガスに任せるといった使い方もできる。

 むしろ、原子力発電はウランの供給や価格でエネルギー安全保障として不利にある。国内再処理で何回も燃料化できるといった主張もあるかもしれないが、再処理や廃棄関連のコストからすれば石炭やガスにはかなわないためだ。


■ 経営判断を疑う

 これら点からすれば、原発そのものは要らない。

 さらに老朽原発は直して使って割に合うかどうかもわからない。要は蒸気タービンであり、蒸気配管と補機のオバケである。40年経過した蒸気タービンを今後も動かすというのは相当に厳しい。軍艦でいうFRAMの手間やその価格、今後の稼働率といった面からすれば、割に合うものでもない。

 そもそも、今後、原発が動かせるかどうかもわからない。原発の運転には政治的・司法的リスクがある。今後、状況が変われば、まずは老朽原発の運転からできなくなる。それに金を突っ込むのも、経営の判断を疑うものだ。



 まあ、電力会社の経営には知能はいらないけどね。経営に失敗しても「電力料金を値上げすればいい」といった頭だから。
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