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『怒りの葡萄』の対義語が「笑顔のみかん」なら『新宿鮫』の対義語は『目黒のさんま』となるだろう。
『バーナード嬢曰く』各話には特段の物語はない。作画も原作絵柄をリファインしたものの極端に力は入っていない。動画もあまり割っていない。背景も簡単に済ませている。
そもそも1話3分半、正味3分である。そこに無理やり会話を、セリフを詰め込んでいる。相当の説明セリフもある。
だが、見逃すことはできない。なぜなら視聴者自身の物語だからだ。
真の主人公は神林しおりであり、しおりは視聴者そのものだ。「彼女はオレだ」といった心情から視聴者は没入する。
そして、しおりが救済される物語でもある。しおりは町田さわ子に救済される。しおりの鬱屈はかつての我々の鬱屈である。自分が捜索している世界の価値。それを肯定する存在だからだ。さわ子はしおりを否定しない。その読書を、世界探索を認めている。
最後にしおりはさわ子を認める。最終話のしおりは1話のしおりではなく、さわ子も1話のさわ子でもない。笑顔のみかんは12話36分のドラマツルギーのカタルシスである。
これは凡百のアニメよりも優れる。危機を作為する上でその強度に頼らない。これは優れたものだ。身体的危険や怪力乱神を強調して危機をつくるよりも、日常生活で出来する不安のほうがリアリティは高い。
そのように語らえることはないが、2016年のTVアニメで最高水準の一つである。
もちろんその作画、ドラマは今年最高の『甘々と稲妻』に劣る。だが、原作の力を借りずにドラマを作ったことは『甘々と稲妻』を凌ぐ。甘々は原作あってアニメがある。もし原作が劣っていればアニメも劣る。
もちろん『バーナード嬢曰く』は構造や作劇以外にも惹かれる部分はある。
なぜ本好きは本を酷使できないか。「雨宿り」でしおりは『カラマーゾフの娘』のノドを心配した。開いた本に頭を落としたさわ子を一喝した。本を痛めることを苦世話とし別に一冊買おうとするのは、本への畏敬である。
ただ、しおりには不覚悟もある。なぜ書皮をつけないかだ。
物語上、書名書影を示さなければならないと言うなら、それはリアルを欠くものだ。なぜグラシンに包まないのかを責めるものだ。
なによりも神回をアニメ化しなかったのは残念だった。なぜ吹奏楽部を蹂躙しないのか、全く不徹底である。
感動ポルノで頭の弱い吹奏楽部に常々意地悪される図書室の面々。作画と動画と背景しかない連中。口も汚ければ心も汚いユーフォーの京女どもは、さわ子が抱いていた音楽教師への密かな想いを暴露し嘲笑う。
さわ子の涙についに爆発。しおり、さわ子、すみか、遠藤の四人が納屋に走る、隠したタンクで復讐する。しおりが怒ればタンクが走る!書痴の涙が怒りとなって爆発する!
大人の御仕着せ吹奏楽に諾々とし、ラッパごときの勝負に浮かれる低偏差値を読書階級が踏み潰す。あの原作神回をスキップしたのは残念だった。
BD特典となれば、お涙頂戴の感動ポルノ、ユーフォー女の言うがままに感動したと言い放つ安い視聴者ごと踏み潰す。そのシーンは読書階級の喝采を引き起こすだろう。
2016冬コミのあとがきです
『バーナード嬢曰く』各話には特段の物語はない。作画も原作絵柄をリファインしたものの極端に力は入っていない。動画もあまり割っていない。背景も簡単に済ませている。
そもそも1話3分半、正味3分である。そこに無理やり会話を、セリフを詰め込んでいる。相当の説明セリフもある。
だが、見逃すことはできない。なぜなら視聴者自身の物語だからだ。
真の主人公は神林しおりであり、しおりは視聴者そのものだ。「彼女はオレだ」といった心情から視聴者は没入する。
そして、しおりが救済される物語でもある。しおりは町田さわ子に救済される。しおりの鬱屈はかつての我々の鬱屈である。自分が捜索している世界の価値。それを肯定する存在だからだ。さわ子はしおりを否定しない。その読書を、世界探索を認めている。
最後にしおりはさわ子を認める。最終話のしおりは1話のしおりではなく、さわ子も1話のさわ子でもない。笑顔のみかんは12話36分のドラマツルギーのカタルシスである。
これは凡百のアニメよりも優れる。危機を作為する上でその強度に頼らない。これは優れたものだ。身体的危険や怪力乱神を強調して危機をつくるよりも、日常生活で出来する不安のほうがリアリティは高い。
そのように語らえることはないが、2016年のTVアニメで最高水準の一つである。
もちろんその作画、ドラマは今年最高の『甘々と稲妻』に劣る。だが、原作の力を借りずにドラマを作ったことは『甘々と稲妻』を凌ぐ。甘々は原作あってアニメがある。もし原作が劣っていればアニメも劣る。
もちろん『バーナード嬢曰く』は構造や作劇以外にも惹かれる部分はある。
なぜ本好きは本を酷使できないか。「雨宿り」でしおりは『カラマーゾフの娘』のノドを心配した。開いた本に頭を落としたさわ子を一喝した。本を痛めることを苦世話とし別に一冊買おうとするのは、本への畏敬である。
ただ、しおりには不覚悟もある。なぜ書皮をつけないかだ。
物語上、書名書影を示さなければならないと言うなら、それはリアルを欠くものだ。なぜグラシンに包まないのかを責めるものだ。
なによりも神回をアニメ化しなかったのは残念だった。なぜ吹奏楽部を蹂躙しないのか、全く不徹底である。
感動ポルノで頭の弱い吹奏楽部に常々意地悪される図書室の面々。作画と動画と背景しかない連中。口も汚ければ心も汚いユーフォーの京女どもは、さわ子が抱いていた音楽教師への密かな想いを暴露し嘲笑う。
さわ子の涙についに爆発。しおり、さわ子、すみか、遠藤の四人が納屋に走る、隠したタンクで復讐する。しおりが怒ればタンクが走る!書痴の涙が怒りとなって爆発する!
大人の御仕着せ吹奏楽に諾々とし、ラッパごときの勝負に浮かれる低偏差値を読書階級が踏み潰す。あの原作神回をスキップしたのは残念だった。
BD特典となれば、お涙頂戴の感動ポルノ、ユーフォー女の言うがままに感動したと言い放つ安い視聴者ごと踏み潰す。そのシーンは読書階級の喝采を引き起こすだろう。
2016冬コミのあとがきです
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