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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2017.03
27
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Category : 未分類
 太田文雄さんの「学術会議は中国に協力し自衛隊に協力しないのか」はなかなか興味深いものだ。旧軍からの因果因縁、高度技術は軍事技術と言った思い込み、日本技術への夜郎自大がみえるものだからだ。


■ 因果因縁を重視できない

 その第一は、日本学術会議は自衛隊に協力せず、中国に利敵行為をしていると述べている点だ。
 学術会議がこうした[日本国内に中国人留学生が研究している]事実に目をつぶり、防衛省への科学技術協力を「軍事研究」と称して行わないのは、自国の自衛隊への協力は拒否しても人民解放軍への協力は積極的に行っていることに他ならない。
http://jinf.jp/weekly/archives/20196


 日本の研究者が軍事研究に協力しないことには理由がある。前の戦争で碌でもないことに散々協力させたといったものだ。中には自ら望んでロクデモナイことをしたやつもいる。九大生体解剖事件はまったくそれだ。

 その理由を斟酌せず、留学生を入れているだけで中国の利敵行為、売国奴というのは了見が狭い。

 経歴を拝見すると太田さんは防大出の艦艇幹部である。やはり兵書ばかり読んでいてそのあたりにはご存じなく、因果因縁を重視する世間の論理にも疎いのだろう。既述のとおり学術会議には軍事研究を嫌い、忌避する理由があり、世間もそれを諒としているからだ。

 さらにいえば、自衛官も国内留学で研究室に入っている。その点からすれば片方に肩入れとするのも極端な見方である。


■ レーザ技術は軍事九割か?

 さらにいえば、「レーザー技術のほぼ9割が軍事利用されることは世界的な常識である。」(大田)も怪しい。測距用のレーザは既に一般技術であるし、軍事でイメージするような大出力レーザは、普通は産業用をイメージするものだからだ。

 これは軽く検索するだけで出て来る。例えば、デイビッド・A・ベルフォルテ「産業用レーザ市場のレビューと予測 驚くべき回復」『Industrial Laser Solutions Japan April』(2011.4)がそれだ。

 中では「レーザの用途別売上高」がある。それを見ると金属加工、マーキング・エングレービング(多分、看板の切り抜きの類)、半導体と細密加工の順となっている。そこに軍用はない。もちろん、艦船航空機の金属加工器材もそこに含まれるだろうが、それは民生機でしかない。

 おそらく、太田さんは高度技術は全て軍用と思い込んでいるのだ。

 だが、今日では必ずしもそうではない。民生が先に出ている分野も多い。例えば、八〇年代の複合材技術としてもてはやされた炭素繊維は釣り竿が先行したものだ。電子光学(EO)も今では民需によって引っ張られている。そしてレーザも同じである。


■ 日本に原子力技術があるか?

 そして、日本に原子力技術があると思いこんでいる点も興味深い。

 「[中国人研究者が関連した]研究成果は即、人民解放軍に軍事利用されることは疑いがない。レーザー技術のみならず原子力技術に関しても、日中友好という美名の下、中国に日本の国立大学技術者が協力している事実がある。」(大田)と述べている。

 だが、日本にそのような原子力技術があるだろうか?

 日本の実用原子力技術は基本的に全て借り物、研究技術も役に立つ見込みもない。そもそも「もんじゅ」をみればマネッコかつ低水準は明らかである。

 しかし太田さんはあると思い込んでいる。おそらく、ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代を引きずっているのだろう。

 お気の毒だが、実際に日本の技術は大したものでもない。特に兵器技術はそれが顕著だ。大抵はマネッコであり、諸外国が作った後に後追いで作る。できた頃には時代遅れとなっている。一〇式戦車、F-2戦闘機をみればその模倣の習性は明瞭だ。

 英米仏のようにゼロから作っていない。諸外国にあるもの、成功したものを「成功する」と確認したアトで作っているだけだ。F-2はその例だ。空力的に問題がないことを承知して同じレイアウトで作っている。一部を軽く作っただけで日本製は高性能とは恐れ入ったものだ。

 その伝でいえば、日本の技術は鼻くその役にも立たない。原子力技術は自力で核や原潜を作った中国の参考になる者でもない。ロケットやドローンも負けている。

 そのような技術レベルで「国内で[中国人研究者に研究させる]反日的活動を許すことは国の安全保障を危うくする」とは、不能犯に近いものだ。


■ 危険が危ないといえばいいと思いこんでいる

 そこから見えてくるのは、安全保障は「危険が危ない」といえばいいといった安直な姿勢だ。

 だいたい、安全保障セクターはどの程度、危険かを示せない。ただ、中国に有利になる点を拾って危ないを繰り返すだけである。

 その上、他の分野との整合もとれない。軍事、安全保障だけが政治ではない。軍事と経済等との釣り合いがあり、安全保障も社会保障その他とのバランスもある。それを総合して国の方針・政策は決まるが、安全保障セクターだけは自分の殻の中に閉じこもる。

 結局は、兵隊ぐらしの延長であり、組織内だけの正解探しをやっている。そのようにしかみえないものだ。







 まー、あれよ。普通はやんわりと風穴開けようとするものだ。「学術会議さんや大学の自治のおっしゃることもごもっとも、ただ、防衛省も技術がほしい、だからそちらの監督下での活動を許してほしい」くらいの言い分でロボット技術やら画像認識あたりの研究者に予算を貢げばいいものだ。

 なんで安全保障セクターは「軍隊に協力しないとはけしからん」と、「黙れ」の佐藤賢了みたいな間抜けなことをするのか不思議なものだよ。辺野古普天間問題とか、厚木の騒音とかもそうだけど、そういえば余計な反発食らうのはわかっているはずなんだけどね。
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