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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2017.05
09
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Category : 未分類
 「この記事は空中楼閣ではないか?」と疑う記事がある。

 産経WEST「中国共産党の根拠なき持論『沖縄はもともと中国だった』」はそのような中身となっている。中国共産党員、元自衛隊幹部、米研究者、日本政府関係者が出て来るが、どの職位にあるかを示唆もせず、発言としてヘンテコな内容に溢れた記事となっているからだ。

■ 「一人がそういった」から「中国共産党の公式見解」

 まずは、記事中で取り上げた中国共産党員について、誰の発言であるかを全く述べない点は奇妙なものだ。普通は発言者がだれかを明示する。それができなくとも、組織の中での立ち位置は示すからだ。
「沖縄はもともと中国だった」。中国共産党員の1人は、中国が沖縄県石垣市の尖閣諸島に対する領有権を主張し公船派遣を強める前、こう言い放った。
 中国共産党にとって、沖縄は歴史的に“中国のもの”だったという主張は、[中略]軍事衝突をも恐れない野望が隠されている。


 だが、それがない以上、本当にそのような発言をしたのかも疑わしい。

 さらにいえば、末端の一人の発言をもって全体の発言とするロジックも対外だ。中国には1億人近い共産党員がいるが、そのトップが言ったのか末端が言ったのかを示さず、共産党の持論とするのはそのようなものだ。

 このあたり、無署名記事なので遠慮なくいえば、相当の馬鹿が書いた記事だ。産経は「組織の一人がそう発言した以上、組織の持論となる」といった理屈を振りまいているからだ。

 そこからすれば産経は何を言われても受け入れなければならないことになる。産経社員の誰かがカルト発言をすれば、産経の公式スタンスはカルト思想ですといわれても反論できないからだ。社員やバイトの一人が教祖様の主張を口にすれば産経の公式見解はカルトと同じですと言われても何も言えないだろう。(実際にカルトは多そうだが)


■ 「元自衛隊幹部」は陸海空のどれか、あるいはシビルか

 さらにいえば、元自衛隊幹部とやらの証言も怪訝だ。
元自衛隊幹部はこう指摘する。
 「中国が尖閣諸島を手に入れれば、潜水艦や空母、航空機を次々と太平洋に進出させ、日本や在日米軍への攻撃力を一機に高めることになる」


 「中国が尖閣諸島を手に入れれば、潜水艦や空母、航空機を次々と太平洋に進出させ」られると思っているあたり相当にトンチキな発言だ。あの島はそれには何の訳にも立たないからだ。あの島を手に入れてどうやって「潜水艦や空母、航空機を次々と太平洋に進出させ」るのかを聞いてみたいものだ。

 さらに不思議なことは「元自衛隊幹部」といった書き方だ。元海自幹部あるいは元海自将官とならない点も奇妙である。陸自あたりの神がかり幹部の発言なのではないかと疑うものだ。


■ 米研究者も誰かを言わない

 最後が米研究者だ。
「九段線」は、米研究者から「中国から遠く離れ、誰がどうみても中国のものとは思えない」と指摘される。


 元自衛隊幹部もそうだが、米研究者の名前を明かさないのは何故だろうか? それを憚る理由はない。それを秘しているあたり、どっちも相当にトンチキな御仁であることを伺わせるものである。

 さらに、その理屈もおかしい。

 まず、9段線の問題は中国から離れていることではないことに反するからだ。一般的には海を囲い込んで領土に似た主張をする点がオカシイとされている。

 また、自国から「遠く離れ」たところに領土があることを問題視する点もヘンテコである。その研究者先生にフォークランドがイギリスの領土であることは認められないのか? 太平洋にフランス海外県があることに疑義があるのかを尋ねた場合にどう答えるのか。さらには「グアムが米領なのはおかしくありませんか?」と質問してみるとよい。


■ 空中楼閣記事を否定できない中身

 つまりは、誰が言ったのかがアテにならず、記事として全然信頼性がないということだ。他にも「日本政府関係者」とやらもでてくるが、これも存在は怪しげである。

 厳しくいえば、この記事は空中楼閣であることを疑われても仕方がないものだ。面倒だから中国共産党員と元自衛隊幹部と日本政府関係者と米研究者に話を聞いたことにして作文したとしても不思議はないほどヘンテコな中身だからだ。当然だが、無署名記事であることも追い打ちをかけるものだ。

 さらにいえば前科もある。産経は以前に系列の夕刊フジの胡散臭い情報筋記事を転載したことがある。一介のライターが「筆者が親しい人民解放軍関係者によれば、米情報機関関係者によれば、防衛省幹部によれば、警察関係者によれば、日本政府関係者によれば」と連発する記事だ。

 その点で、違った意味でのフェイクニュースであっても不思議はない。関西のアレな産経読者が喜ぶ内容を適当に作ったようにも見える内容である。

 「そのような記事を編集委員が通すのか」は産経では問題とはならない。編集委員兼論説委員が名誉毀損で負け続けているあたり、そのあたりはザルでしかないことがうかがえるからだ。
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