fc2ブログ

RSS
Admin
Archives

隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

→ サークルMS「隅田金属」
→ 新刊・既刊等はこちら

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
Powered by fc2 blog  |  Designed by sebek
2017.06
12
CM:6
TB:0
00:01
Category : 未分類
 加藤AZUKIさんが「なぜか日本がカタール・イランと断行する」前提でオイルショックを語っている。それは原発大事、超大事といった主張につなげるためだ。そして、その補強のためにさらには原油が入らなくなると危ないを大袈裟にいっている。

 原料用の用途が満たせないといった発言、具体的には連続する次のツイートがそれだ
加藤AZUKI@「忌」怖い話香典怪談? @azukiglg
原油(精製前)は、燃油としての価値だけでなく、樹脂原料その他の「材料に加工する前の原料」としての用途が割とあって、リーマンショックのとき、それと原油精製基地が被災した東日本大震災とき何が不足したかというと、「包装フィルム、納豆のパック、ペットボトルのフタ、印刷物のインク」などなど
https://twitter.com/azukiglg/status/873828110915031041

加藤AZUKI@「忌」怖い話香典怪談? @azukiglg
およそ「燃料としての石油」の片鱗も想像つかないようなものの値段が軒並み高騰し、「価格を抑える」ために数量を減らす、という対策に出た。結果、100g入の菓子や食品が80g入で値段据え置きになったりしてたけど、あれも原油数量の影響なんだよなあ。
https://twitter.com/azukiglg/status/873828497281744896



■ エチレンモノマーに対する不理解

 だが、その中身はおかしい。

 まずは、原材料用所要については、輸入原油石油からしか満たせないといった点が間違っている。「樹脂原料その他の「材料に加工する前の原料」としての用途が割とあって[中略]「包装フィルム、納豆のパック、ペットボトルのフタ、印刷物のインク」などなど」(加藤AZUKI)を挙げているが、その原料としての「「原油(精製前)」の所要が燃料と並ぶほど重要といったものだ。

 だが、樹脂等の原料となるモノマーは石油以外からも作れる。石炭でも、木材でも極端な話では二酸化炭素からでもメタンやエタンは作る出すことができ、そこからエチレンモノマーを作りだすことできる。

 特に最近では価格が低下した天然ガスからの生産が増えている。ガスと石油のその価格差からすれば、今後は石油から得られるナフサはモノマーにするよりも重合させて燃料する方向となるだろう。

 また、樹脂原料等は日本国内で作る必要もない。エチレンモノマーを合成して対象樹脂を作るが、最初はペレットの形となる。それを買ってくれば良いからだ。実際に輸入化が進んでいる。そんな作業は地代が安く、安価な天然ガスが入手できる中国やアメリカでやったほうがいいからだ。

 つまり、加藤AZUKIさんは現状に合わない発言をしているということだ。これは昔の常識「樹脂原料は原油由来のナフサからできる」「日本の消費分は日本で作っている」といった発想に引きづられたものだろう。


■ 原油不足は原因ではない

 また、因果関係の理解も間違っている。

 石油不足から高分子製品不足となったとする理解がそれである。「リーマンショックのとき、それと原油精製基地が被災した東日本大震災とき何が不足したかというと、「包装フィルム、納豆のパック、ペットボトルのフタ、印刷物のインク」などなど」(加藤AZUKI)といったものだ

 だが、まずはリーマンショックで物資不足は起きていない。むしろ原料も製品も余った。原油価格は暴落し、製品在庫は積み増しされた。リーマンショックつまり不景気が売買の停滞であることからすればあたりまえのことだ。

 おそらくその前の原油価格高騰をいいたいのだろう。

 だが、原油価格と原油消費量に大差はない。これは全世界の原油生産量をみれば理解は容易い。1980年以降は一定規模で成長しており、価格と全く関係がないことが明らかである。

 さらに、東日本大震での物資不足も間違いだ。

 加藤さんは次のように述べている。「原油精製基地が被災した東日本大震災とき何が不足したかというと、「包装フィルム、納豆のパック、ペットボトルのフタ、印刷物のインク」などなど」(加藤AZUKI)と述べている。

 だが、石油精製基地が被災と原料不足は関係がない。地震のあった2011年のエチレン例生産量は10年とも12年ともほぼ変わらない。世界シェアを中国や米国に押されてもともと生産能力が余っていたのだから当たり前の話だ。

 「「包装フィルム、納豆のパック、ペットボトルのフタ、印刷物のインク」などなど」(加藤AZUKI)が一時的に不足したのは工場や物流や倉庫の混乱によるものだ。そもそも原料の樹脂ペレット等の不足が問題ではない。


■ ポテチ減量と袋代は関係しない

 最後の間違いとして示すのは、石油輸入の数的不足によりポテチが減ったとする主張である。

 これは「原油数量の影響」により「100g入の菓子や食品が80g入で値段据え置きになった」(加藤AZUKI)というものだ。

 この主張は原油価格と入手量の問題を混同していることはさておく。

 だが、樹脂原料不足でポテチの中身を減らすといったアプローチそのものに違和感を感じないことが不思議である。樹脂原料でお菓子コストが圧迫されるなら、袋を小さくするあるいは、紙等の別材料を使う方向にシフトするはずだからだ。あるいは袋面積あたりの中身量を増やすため、値段を挙げて袋を大きくする方向に動く。

 また、袋価格でお菓子の値段が影響をうけるといった発想も誤っている。

 ざっと調べると袋一つ3gである。20ミクロンのアルミ蒸着ポチエチレンであり重量150g/平米程度からすれば、ポテチ用袋の袋重量は3gでしかない。

 その価格が0.5円から0.6円に上がったからといって中身を減らすだろうか。2000年以降、樹脂原料の価格はだいたいトン15万であり、価格ピークでも1トン20万円でしかない。つまりは0.5円が0.6円に上がる程度でしかない。

 それをもって「100g入の菓子や食品が80g入で値段据え置きになったりしてたけど、あれも原油数量の影響なんだよなあ」(加藤AZUKI)とはいえないということだ。

 石油不足ではなく価格高騰としても袋単価は問題とならない。なるのは製造工程熱源としての重油や天然ガス価格の上昇や、燃料コスト増加による物流コスト上昇を反映したもの。普通はそう考えるだろう。

 加藤AZUKIさんの樹脂原料に関する主張は、すべての面で現実と合致していないということだ。
スポンサーサイト