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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

プロフィール

文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2017.06
13
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12:05
Category : 未分類
 MAST ASIAに行ってきたのだが。その基調講演での装備庁長官の講演がどうしようもなかった。

 装備行政そのものではなく、スピーチとしてどうかといったもの。

 まずあるべき立場の説明がない。「装備庁は/防衛省はホニャララのためにホニャララするがない。役所の役人が施策を説明する立場なのだから最初はそこから始まるべきだがそれがない。


■ 組織の目標が示せていない

 中途からの「技術的優越の確保」がそれにあたるのだろう。だが、その抽象性から具体的な手法への橋渡しもない。技術要素としての無人化、スマート化、高出力エネルギーをあげ、この三者を重点項目としているが、それは研究対象にすぎない。本来ならそこに金をつぎ込む体制を作る、そこに絞って金をつぎ込むといったような行政としてのやり方があるはずだ。

 しかも無人化、スマート化、高出力エネルギーもいずれも周回おくれにある。無人化とスマート化は軍事分野では米国とイスラエルが図抜けており、民間分野もそれに欧州や中国を足した民間セクターに遅れをといっている。高出力エネルギーは米国以外にできる国もない。

 いまさら後追いして「技術的優越の確保」はできるのだろうか?

 できるわけはない。本来ならその先に来るのが何かを探して投資研究すべきだが、それすら探せない状態にあるからだ。本来ならSMESと呼ばれる中小企業の、アニマルスピリッツに基づくようなイノベーションの芽のある研究に金を突っ込むべきだ。

 もちろんそれができるなら今の体たらくはない。防衛が音頭を取った大企業カルテル体制でモノマネ兵器しか作らない日本防衛産業にそれは見込めない。


■ メモを読むだけ

 さらにどうしようもないのはメモを読むだけの姿勢。目は常に机の上の原稿を追っている。聴衆の反応を見ていない。

 つまり、聴衆にあわせた説明の追加もできない。英米豪と目される白人連のほかに、南アジア系、おそらくインド人も多かった。それはそれで目論見どおりなのだが、彼らの反応にあわせた展開や追加説明ができない。ちなみに事前要旨もないので齟齬が起きていたらそれっきりとなる。

 完全台本を読んでいるだけとすればそれもできない。組織の規範から一部の重点説明もし難いのだろう。

 結果、クソつまらない内容となる。今やっていることの横断列挙でしかないからだ。

 もちろん、長官の見識は高いはずだ。理系採用の技本生え抜きだからだ。「自分はこうする」といった意見はある。それが技術か、あるいは技術行政の方向性であるかはともかく、野望もある。

 だが、組織の規範から一部の重点説明もし難くなる。減点法的な扱いを恐れるからだ。それをやると技本での立場や防衛省内での立場が悪くなる。あるいは企業等の関連団体との関係が悪くなるといったものだ。

 ちなみに、プロジェクタで国産装備の動画をループさせていた。これは話の筋とは一切関係ないものだ。普通はそんな馬鹿なことはしない。みんながそっちをみて話を聞かなくなるからだ。もちろん、逆に意味のない話をして誤魔化す上なら、動画に意識を逸らせることは正解なのだが。


■ 質疑に出てこない

 最後が質疑に出てこないことだ。

 外人どもが質問したいのは誰だろうか? ということだ。森本元防衛省でもなく、金田海将(提督と将軍はRETをつけない)でもない。装備庁の親分の話だ。

 だが、原稿を読み上げた後はドロン。質疑の席にも座らない。

 これは開催国として不誠実ではないか。インド人は「具体的にインドと何かするの?」やフランス人は「フランスと技術情報共有しない?」、豪州人は「相互にほしい武器を供給しない?」と言った話をしたい。技術的には無人機の焦点はUAV、USV、UUV、UGVといったものでもよい。

 残った森本さんや金田さんに何が言えるか? 太平洋・インド洋諸国で仲良くしましょうね程度しかない。当然ながら技術協力の話なんか深化しない。ぶっちゃけ技術の話ができないから相互協力としてのHA/DRの話とかしていた。



 まー、金田さんも金田さんだったけどね。いまさら中国コンテインメントの話をしたりとか。外人でも相手が安全保障屋ならそれで頷いてくれるのだろうけど、安全保障屋以外なら夢見心地とおもわれたのではないかね。

 あと、今の政権のヨイショもね。棺桶に片足突っ込んでいる安倍首相がおっしゃるとか稲田防衛大臣のご発言ではといったあたり、特に日本人側からすれば、その言いかたは不思議だよねと。日本の施策としては勇み足に類される部分で、実際にその方向に進められるかといったもの。まずはご商売の構造、その中で立たなければならないスタンスを感じるものだった。養殖物ではなく天然モノなら、むしろ「ウーン」度はあがるけどね。





■ オマケ:このUUVに未来はない

UUV.jpg

 展示についても全肯定できるわけではないけどね。

 まず海外勢が売る気がない。そりゃ日本は買うものは買ってる、あとは買う気はないからしょうがない。インド海軍やらイラン?海軍もいたけど、どっちも日本同様に良い商売相手ではない。アクロバッティック契約解釈の商売でしかも日本同様に国産バイアスの強いインドは敬遠したいし、同様にまだ西側はイランに武器を売れる段階ではない。

 国内勢もお付き合い感を強く感じるものだ。

 マニア連はMESに注目しているが、アレは「こんなフネ作れますよ」のポンチ絵でしかない。飛行甲板型にせよアントニオ風にせよ揚陸艦なんて商船と大差ないものだ。船体やら機関やらにさほどの工夫はいらない。あとはドックやランプやエレベータやクレーンと言った部材の配置、取り合い、細工、あとはフロア配置といったもので運用側の要望を設計に落とし込めるかで終わる。ちなみに、その肝腎の自衛隊側の運用要求がキレがないどころか曖昧、おそらく本人たちもよくわかってない状況だろう。

 三井の本人たちも「大した展示じゃない」ことに気づいている。ポンチ絵を書いてみてもも「ウチの会社の提案です、これスゲーです」といった長所がない。「安い」でもいいのだが、「他にできないことができる」ことがないので謙虚になっている。

 逆にそれをヨイショするマニアは残酷に見える。知らない故に三井を困らせている、ホメゴロシをしているようなものだからだ。

 一生懸命なのは三菱と装備庁だけだ。

 だが、両者の中身はろくなもんじゃない。展示には陽気なしゃぎっぷりがあるのだが、で「ホントに何ができるの?」がないところがそれだ。よく考えれば両者に世界の武器シェアを圧倒するような発想があるかどうかを考えてもらえば良い。生産技術だのデュアル・ユースといってるあたりは、武器としてスゲー商品が作れるようには見えないものだ。装備庁・三菱に限らないが、やってることは世界のマネッコだからだ。「ドラえもん」が流行ったアトで「うまい棒」のデザインをみるようなものか。

 行政組織なので否定しやすい装備庁についてはUUVね。搬入しやすいからと持ってきたけどまったくアレ。特徴で水中通信でUSV連接(IHIに投げたやつね)とかいってるけど、電波と比較すると通信に使える帯域幅は狭すぎるし減衰も甚だしいでまあ駄目なことが歴然と。

 その後継で燃料電池タイプ作るといってる。

 目的は長期運用云々なのだが、ディーゼル・電池併用でいいんじゃないかなとなるが、それだと「ボーイングのボイジャーでいーじゃん」になるからできないのだろう。C-2作ったときと同じ、本来は国産不必要な武器を作るために要求性能弄るアレの親戚のようなものだ。

 行政事業レビューで叩かれんじゃないかな。燃料電池技術は民生先行なので、必要になってからそれにあわせて作ればいーじゃんとか、水中からの常時接続なんて運用めんどくさくないみたいな。


■ オマケのオマケ(北杜夫ふうに)

 んー、UUVつくるよりも、REMUS他の各国UUVにアドオンできる特殊サイドスキャンソーナー作ったほうがいいと思う。その点でSEAの「対係維機雷三次元イメージングソナー」は、方向性的に正解。繋維機雷捜索としてみると疑問で、上空から肉眼なりブルーレーザで透視(マイン・スポティング)したほうが早道だ。でも、

 SEA路線は商業的な発展方向でも、技術に対する需要でも方向性も優先順位も正しい。ヘンテコ国産UUVと心中しなくてもいいし、従来のREMUSユーザに売りつけられるし、1パスによる海底状況の立体イメージの取得は別にも使えるからだ。
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