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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

連絡先:q_montagne@pop02.odn.ne.jp

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2017.07
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Category : 未分類
 トヨタと水素のヨイショ記事がある。風車で発電し、水素を作り、それで水素燃料電池のフォークを動かすというもの。日経と産経が取り上げている。

 日経「風力発電使い水素供給 トヨタなど神奈川で実証実験」(2017/7/12 18:09)
 産経「『水素社会』へトヨタ、東芝、岩谷などが実証事業」(2017.7.12 21:49)

 記事中ではC02が減らせるとある。日経は「[従来の]電動型に比べて86%」、産経は「通常の電動フォークリフトに比べ80%以上のCO2を削減できる」としている。


■ 水素ヨイショのための詐術

 だが、ここには詐術がある。水素を使わないほうがもっとC02は減り、効率が良くなることには言及していない点だ。記事に関しては従来の電動型と水素電池の2つを比較しているが、発電形式を加味すれば本来は3者を比較すべきだというものだ。

 つまり、本来なら
① 火力発電所 - 電力 - 電池式フォーク
② 風力発電所 - 電力 - 電池式フォーク
③ 風力発電所 - 電力 - 水素 - 水素運搬車 - 水素燃料フォーク
で比較すべきだ。

 だが、記事であつかうトヨタの発表は①と③しか比較していない。

 なぜなら②を入れれば、水素燃料電池の③がそれよりも劣ることが明らかになるからだ。

 記事では電力で水素を作るとしている。電気分解でもしているのだろうが変換効率は6-8割とよくない。その上圧縮や圧縮水素輸送のコストも掛かる。

 それならその電力を電池にいれたほうがよい。電池もあまり効率がよくはないが、少なくとも後工程の圧縮や輸送のコストはかからない。


■ 天然ガスで直接運転すれば終わり

 さらにいえば、「0」となる選択肢もあり得る。天然ガスで直接フォークを動かす方法だ。

 今は天然ガスを効率上限のある熱機関で電力に換え、それを変圧損を生じる電力網で送り、充放電ロスのある蓄電池にためている。それなら、天然ガスを都市ガス(天然ガスそのものだ)配管で運び、直接フォークに乗せて、それでエンジンを回せば良い。熱効率30%台でも発電所から蓄電池までのロスよりも優れるだろう。

「0」 天然ガス - 都市ガス - ガス運転動力フォーク

 ちなみにガソリンエンジンはガス運転に容易に転用できる。(ディーゼルは難しい) 燃料タンクからすればLPGのほうが楽だが、天然ガスを圧縮しても構わない。


■ なぜ水素を推すのか?

 つまり水素燃料電池の効率は悪い。これは記事で取り上げた③について、②や「0」と比較すればあきらからだ。

 実際には、その上に燃料電池の製造コストも掛かる。大量生産すれば価格はそこそこ低減するだろうが、枯れきった電池やフォーク程度のガソリンエンジンと競争できるかわからない。ちなみにリチウム電池も急激な価格下落が予想されている。原料のリチウムについて豪州産鉱石を中国で精錬すればいまの半分以下の低コストになるともいわれている。

 この点でなぜ無理矢理に水素を推すかは不思議なものだ。

 ただ、政府はそれを推し、トヨタもそれに乗っかっている。

 政府、経産省は水素社会をおしている。「独自の未来技術」に眼がくらんだものだ。そして、その技術を持つトヨタに補助金をくっつけている。公用車での水素燃料電池車補助はそれだ。

 そしてトヨタもそれに応じようとしている。経済性は到底見込める技術ではないのに不思議なものだ。とりあえずは補助金にあずかれるのでそれに乗っているようにみえるが、将来的に明るいものでもない。


■ 中国のEVに負けるかもね

 ただ、このままでは中国にまけるかもしれない。

 トヨタは水素にかまけている。PHVといった小細工はしているが、HV技術の先においているのは水素燃料電池だ。

 だが、コスト的には将来の中国製の高性能EVに勝てるかは厳しい。テスラはともかく、吉利や長城が安価なEVを持ってきたときに水素燃料電池は勝てるかどうか。ちなみに中国のEV技術はもともと高い。

 仮に10年後、何かの拍子にガソリン・ディーゼル車が禁止された時、トヨタの水素燃料電池は中国のEVに勝てるかどうかはわからない。場合によればトヨタのHVやPHV、さらには日産ホンダ以下のHVやPHVが駆逐される可能性もある。

 もちろんトヨタ以下にはブランドイメージとディーラー網の優位はある。

 だが、イノベーションの際にはそれが無価値となることもあり得る。これはライカの例をみればよい。「今、カメラでライカを買うやつがいるか?」ということだ。M6までは買おうかなと言うやつはいたが、デジカメ時代以降に、ことカメラに関してライカブランドは選択肢ではなくなっている。
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