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犀角独歩は仏教固有ではない。
馬場紀寿『初期仏教』で驚いた中身だ。コミケ後も忙しくてなかなか神保町に出られなかった。だがようやく一段落して東方書店に納品した際に東京堂と高岡書店と明倫館と文房堂に行ってきた。その際に東京堂で買った岩波新書の新刊にそうあった。
馬場によれば「おそらく当時のインド社会に広まっていたものが仏教に取り込まれ」(p.74)たとしている。『至彼岸』『犀角』といった韻文仏典は仏教オリジンではない。他の研究者も主張するように苦行者文学から取り入れた中身である。例えば仏教特有の語句がない。またマハーバーラタやジャイナ教とも共通している。また、当初は結集仏典としての権威はないこともその証拠としている。
そして中村元のアプローチについての誤りを指摘している。中村は散文仏典の元は犀角のような韻文仏典である。そのように考えて韻文に仏教の基本的な姿を求めた。だが、馬場は上のような論拠を挙げ誤りを指摘した。
岩波文庫の中村元を賞翫していた身とすればショックである。生きる指針とは大げさだが、その内容に感銘を受けていた。またブッダもそう言っているというのは一種自身につながったからだ。
もちろん、だからといって『犀角』の価値が下がるわけでもない。『犀角』を読んでよい話と感銘を受けたことも、それが正しい道であると考えたことも別段損なわれるわけでもないからだ。
ただ、疑い部角はなった。ショックを受けた上でサーリプッタとモッガラーナの回心の部分の記述を読むと、今まで言われていたことを勝手に疑う心持ちになる。
この部分、なんとなくだが「ブッダは彼らが自らの弟子の中で賢者の双璧となることを予言する」と伝えたヤツはサーリプッタとモッガラーナの弟子ではないかと。自分の結脈の優位性を誇るために「ブッダはそういった」と後世に主張したのではないかとね。
犀角独歩の件は、『乱』を見たあとで「流石は黒沢明、ドラマツルギースゲー」と思ったあとで、『リア王』を知るようなものかねえ。ただ、高校生のときに買った新潮のリア王は読みにくくて最後まで読まなかった、読んでもあんま感銘を受けなかったと思う。30年前の記憶でも道化師のモノローグの部分がどうもぶった切られる感じがした。同時期の佐藤春夫訳のちくま文庫の『千夜一夜』は何回も読んだのだが。
馬場紀寿『初期仏教』で驚いた中身だ。コミケ後も忙しくてなかなか神保町に出られなかった。だがようやく一段落して東方書店に納品した際に東京堂と高岡書店と明倫館と文房堂に行ってきた。その際に東京堂で買った岩波新書の新刊にそうあった。
馬場によれば「おそらく当時のインド社会に広まっていたものが仏教に取り込まれ」(p.74)たとしている。『至彼岸』『犀角』といった韻文仏典は仏教オリジンではない。他の研究者も主張するように苦行者文学から取り入れた中身である。例えば仏教特有の語句がない。またマハーバーラタやジャイナ教とも共通している。また、当初は結集仏典としての権威はないこともその証拠としている。
そして中村元のアプローチについての誤りを指摘している。中村は散文仏典の元は犀角のような韻文仏典である。そのように考えて韻文に仏教の基本的な姿を求めた。だが、馬場は上のような論拠を挙げ誤りを指摘した。
かつて中村元らの仏教学者が想定していた、韻文仏教から散文仏教(三蔵)へ発展したという単線的な図式が成り立たないことを意味する。韻文仏典に散文仏典(三蔵)の起源を見出すことには、方法論的な問題があるのである。
馬場紀寿『初期仏教』(岩波書店,2018)p.71
岩波文庫の中村元を賞翫していた身とすればショックである。生きる指針とは大げさだが、その内容に感銘を受けていた。またブッダもそう言っているというのは一種自身につながったからだ。
もちろん、だからといって『犀角』の価値が下がるわけでもない。『犀角』を読んでよい話と感銘を受けたことも、それが正しい道であると考えたことも別段損なわれるわけでもないからだ。
ただ、疑い部角はなった。ショックを受けた上でサーリプッタとモッガラーナの回心の部分の記述を読むと、今まで言われていたことを勝手に疑う心持ちになる。
サーリプッタとモッガラーナは二五〇人を伴ってブッダの下へやってきて、弟子となった。二人は解脱し、ブッダは彼らが自らの弟子の中で賢者の双璧となることを予言する
馬場(2018)p.94
この部分、なんとなくだが「ブッダは彼らが自らの弟子の中で賢者の双璧となることを予言する」と伝えたヤツはサーリプッタとモッガラーナの弟子ではないかと。自分の結脈の優位性を誇るために「ブッダはそういった」と後世に主張したのではないかとね。
犀角独歩の件は、『乱』を見たあとで「流石は黒沢明、ドラマツルギースゲー」と思ったあとで、『リア王』を知るようなものかねえ。ただ、高校生のときに買った新潮のリア王は読みにくくて最後まで読まなかった、読んでもあんま感銘を受けなかったと思う。30年前の記憶でも道化師のモノローグの部分がどうもぶった切られる感じがした。同時期の佐藤春夫訳のちくま文庫の『千夜一夜』は何回も読んだのだが。
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神保町の東方書店に委託をお願いしました。旧刊含めてお願いしております。

『週間中国ニュース』、『人民日報海外版』、『人民中国』の並びの棚です。
通販書店でも取り扱っています
メロンブックス(題名でリンク貼ってます)
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
とらのあな
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦

『週間中国ニュース』、『人民日報海外版』、『人民中国』の並びの棚です。
通販書店でも取り扱っています
メロンブックス(題名でリンク貼ってます)
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
とらのあな
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
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用田さんがいまどき陸自重要論を主張している。JPPRESSに海空重視論への反論と行った形の記事を載せている。「陸上自衛隊を恐れる中国軍、最も頼りにする米軍 -陸自削減論をほくそ笑む中国、日本独自の革新的装備で日本を守れ」がそれだ。
主張の骨子は中国との対峙で重要であるといった中身だ。内容的には防衛費をもっと増やせ論と陸自重要論が混じっていてわかりにくいがそのような中身になっている。
だが、その主張で陸自は擁護されているのだろうか?
できていない。用田さんの論拠と陸自の重要性は全くリンクしないからだ。陸上配置SSMとイージス・アショアと南西諸島防衛が重要であると述べているだけだ。仮に、SSMとアショアと南西防衛が重要だったとしても、だから陸自は重要とはならない。SSMとアショアと南西防衛をやれば終わりだからだ。
端的に言えば、陸自強化どころか現状規模の必要性もなくなる。アショアの操作を負担させ、SSM発射機を南西線に集中し、余っている陸上戦力の一部を沖縄方面に転用すれば終わるだけの話だ。
その点で全く陸自を擁護できていない。擁護したつもりなのだがそういった残念な結果になっている。
逆に、陸自重視論者の水準を示した点でむしろ陸自からすれば害悪な主張だということだ。
まー、なんつーかね、「アメリカからやってきた新しい戦略はすごいザマス」舶来信仰なのはいいけど、コロコロ変わる米戦略構想を持ってきて「陸自は必要」というと、来年の新しい米戦略で「陸自は不要」となったらどうするのかみたいな見通しがないよね。
論拠の一つにもしてるコレね。
「アメリカからやって来たまったく新しい概念」の胡散臭さしかない。NO-JINBOUやSilent-disみたいな
主張の骨子は中国との対峙で重要であるといった中身だ。内容的には防衛費をもっと増やせ論と陸自重要論が混じっていてわかりにくいがそのような中身になっている。
だが、その主張で陸自は擁護されているのだろうか?
できていない。用田さんの論拠と陸自の重要性は全くリンクしないからだ。陸上配置SSMとイージス・アショアと南西諸島防衛が重要であると述べているだけだ。仮に、SSMとアショアと南西防衛が重要だったとしても、だから陸自は重要とはならない。SSMとアショアと南西防衛をやれば終わりだからだ。
端的に言えば、陸自強化どころか現状規模の必要性もなくなる。アショアの操作を負担させ、SSM発射機を南西線に集中し、余っている陸上戦力の一部を沖縄方面に転用すれば終わるだけの話だ。
その点で全く陸自を擁護できていない。擁護したつもりなのだがそういった残念な結果になっている。
逆に、陸自重視論者の水準を示した点でむしろ陸自からすれば害悪な主張だということだ。
まー、なんつーかね、「アメリカからやってきた新しい戦略はすごいザマス」舶来信仰なのはいいけど、コロコロ変わる米戦略構想を持ってきて「陸自は必要」というと、来年の新しい米戦略で「陸自は不要」となったらどうするのかみたいな見通しがないよね。
論拠の一つにもしてるコレね。
今最も進んでいる米国の中心的な戦略・戦術は、CSBAが構想する改良ASBと、これと一体となったOSSである。
「アメリカからやって来たまったく新しい概念」の胡散臭さしかない。NO-JINBOUやSilent-disみたいな
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今年も8月15日。終戦の日が来ます。土曜日にはTBSラジオで亡くなられた秋山ちえ子の『かわいそうなしゃち』の朗読が始まりました。
昭和時代に小学校教育を受けた人ならみんな知っている内容です。毎年、あの暑い夏の一日の記念日に、秋山ちえ子は戦争を語り継ぐため、相模湾、江ノ島での悲劇を朗読をします。
戦争中に起きたライオンやぞうやひょうの動物の出征のお話はご存知でしょう。ジョージもそのような動物の一匹です。
軍隊はアメリカの潜水艦を沈めるためにシャチをつかおうとしました。秘匿名称はオルカ金物です。ジョーイは生物爆雷として潜行中の潜水艦に体当たりするように条件付けをされたのです。
体当たり用の爆雷を取り付けられたジョーイですが、戦局が悪化し南方外洋での運用が不可能になります。役立たずになったジョーイは江ノ島にある生育った水族館に留め置かれました。そして毎日近くの海で遊んでは帰ってくるといったように、ノンビリ過ごしていました。
ですが戦争は内地まで近づいてしまいました。すでに特攻隊は何遍も飛び立っていました。そして内地でも空襲が始まっていました。
食べ物も足りなくなっていました。みんなが食べるものもなく、それで体を壊してしまいしんでしまう人もでてきました。
それではジョーイを生かし続けることは出来ません。シャチは1日に10貫目20貫目の魚を食べてしまうのです。
軍隊はジョーイをを殺しなさい。という命令が出てしまったのです。
水族館では、ジョーイに毒薬を注射しようとしますが針は海獣の厚い皮を通さずポキリと折れてしまいます。大好きな魚に毒の入れて与えようとしても、知能の高いジョーイはそれを見抜いてしまいます。
飼育員のおじさんたちは、命令違反を承知でジョーイを塩釜の沖まで送りました。北の海まで逃がそうとします。でも水族館で育ったジョーイは外海で生きていけません。賢いジョーイは遠い海を辿って帰ってきてしまうのです。
生まれ育ったプールに戻して欲しいジョーイは水族館の前で芸をします。飛び上がって回転したり、上半身を水上に突き出してみたり、逆立ちをして尻尾を立ててみたり。飼育員さんを鼻先に乗せようとしたりして、ほめてもらおうとするのです。それを見ていたみんなは、銃殺や干上げて殺すことはとてもできない。プールで餓死させるしかないだろうと決めました。
しかし、そんなことを知るジョーイではありません。よい芸を見せれば今まで育ててくれた人間が餌をくれるものと信じています。芸をすれば体力が奪われてしまうというのに。そして、ジョーイはどんどん弱っていってしまいました。流線型の体は脂肪が減って痩せ馬がでてしまいました。ほとんど衰弱して、ただ浮かぶだけになってしまいますが、飼育員の長谷川さんを見つけるとあの小さな眼の澄んだ瞳で見つめて、餌を貰おうと芸をみせようとするのです。
ジョーイを子供のように思う飼育員の長谷川さんは辛くなって、辛くなって、ついに食料のサバやイワシを、ジョーイに分けてしまいました。限られた燃料を使って、汚穢船を転用した支援船で網を引いて手に入れた皆の食べ物です。「ジョーイ、腹が減ったろう、おいしいか、おいしいか」と食べさせる長谷川さんに他の飼育員のおじさんたちは何もいえませんでした。所長も、大学の人も、配属された海軍の将校さんも何も言わずに、見守っていました。中には涙を流している人もいました。
みんなその晩に話し合いをしました。「ジョーイを殺すことなんかできない」「心を鬼にしてプールからジョーイを追い出そう。銛でついてもいい、音でいじめてもいい、普通のシャチとは違う体になってしまったけれども、外に出れば、お腹が空けば魚を食べるだろう。」
でも、海軍の人は申し訳なさそうに口を開きました。「ジョーイが三浦半島に住み着いてしまったら、特攻隊の若い人を殺してしまうかもしれません」
戦争は過酷でした。特攻隊は東京のすぐそば、相模湾の近くにある三浦半島でまで用意されていたのです。そして、毎日、敵の軍艦に体当りする訓練をしていたのです。
そして、特攻隊の人の乗る、体当たりで敵を沈める潜水艇は、とっても小さく作っていました。条件づけされたジョーイがぶつかるだけでひっくり返ってしまい二度と浮かび上がらなくなってしまうかもしれないのです。
飼育員のみんなも黙ってしまいました。実は戦争がどうなっているか、軍隊の方針がどうであるのかということは誰の頭にもありませんでした。でも、みんなは特攻隊の兵隊さんが、自分の子供のような年齢の兵隊さんの身の上を思うとなんともいえませんでした。特攻隊の兵隊さんたちは水族館の近くの横須賀や辻堂に住んでいます。そして上陸日には鎌倉や江ノ島に遊びにきていました。ジョーイの芸を楽しみに見に来ていたくらいですからなおさらです。
学徒出陣してきた分隊士さんの中には、学生時代に水産経済学の研究で水族館に通っていた人もいました。若い下士官を連れた将校さんは、彼らをジョーイの鼻先に乗せてやれるように懇願しました。若い下士官も軍服を着ながらジョーイの鼻や背に乗って無邪気に喜んで、貴重品になった特別配給の飴をジョーイに食べさせようとしたりしているのも見ていました。
そして、その兵隊さんたちの潜水艇は安全なものではなく、ちょっとした不具合で沈んだままになってしまう。そのまま殉職してしまうことも知っていました。みんなは、もう若い人が、訓練で死ぬのはやりきれないです。
長谷川さんが口を開きました。「もう、ジョーイには何の餌もやらない」みんなは、下をうつむいて何も離しませんでした。ただただ、長谷川さんを囲んで味のしない合成の理研酒をまわし飲むだけでした。
それから3週間たった夏の暑い日、長崎に原爆が落ちてからしばらくたったある暑い日の午前中、ジョーイは死にました。プールに沈み、窒息してしまいました。せめて綺麗な体で埋めてあげようと、一端引き上げて爆雷取付具や安全尖外しを取り除き、ガスが堪って膨れたお腹を開いたとき、本当は風呂桶のように大きなジョーイの胃袋は湯たんぽの大きさまでしぼんでいたそうです。
その日は8月15日でした。いまでもジョーイの命日では鎌倉建長寺で慰霊祭が行われるそうです。
『かわいそうなしゃち』でした。
それではみなさん、ごきげんよう。
2009年夏『瀛報』(ようほう)29号のまえがきから、一部修正。
参考
谷甲州「ジョーイ・オルカ」『星の墓標』(1987.7 早川書房)
秋山ちえ子 朗読 土家由岐雄「かわいそうなぞう」『大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版』2018年8月12日(TBSラジオ、2017.8)
2002年8月朗読・録音
昭和時代に小学校教育を受けた人ならみんな知っている内容です。毎年、あの暑い夏の一日の記念日に、秋山ちえ子は戦争を語り継ぐため、相模湾、江ノ島での悲劇を朗読をします。
戦争中に起きたライオンやぞうやひょうの動物の出征のお話はご存知でしょう。ジョージもそのような動物の一匹です。
軍隊はアメリカの潜水艦を沈めるためにシャチをつかおうとしました。秘匿名称はオルカ金物です。ジョーイは生物爆雷として潜行中の潜水艦に体当たりするように条件付けをされたのです。
体当たり用の爆雷を取り付けられたジョーイですが、戦局が悪化し南方外洋での運用が不可能になります。役立たずになったジョーイは江ノ島にある生育った水族館に留め置かれました。そして毎日近くの海で遊んでは帰ってくるといったように、ノンビリ過ごしていました。
ですが戦争は内地まで近づいてしまいました。すでに特攻隊は何遍も飛び立っていました。そして内地でも空襲が始まっていました。
食べ物も足りなくなっていました。みんなが食べるものもなく、それで体を壊してしまいしんでしまう人もでてきました。
それではジョーイを生かし続けることは出来ません。シャチは1日に10貫目20貫目の魚を食べてしまうのです。
軍隊はジョーイをを殺しなさい。という命令が出てしまったのです。
水族館では、ジョーイに毒薬を注射しようとしますが針は海獣の厚い皮を通さずポキリと折れてしまいます。大好きな魚に毒の入れて与えようとしても、知能の高いジョーイはそれを見抜いてしまいます。
飼育員のおじさんたちは、命令違反を承知でジョーイを塩釜の沖まで送りました。北の海まで逃がそうとします。でも水族館で育ったジョーイは外海で生きていけません。賢いジョーイは遠い海を辿って帰ってきてしまうのです。
生まれ育ったプールに戻して欲しいジョーイは水族館の前で芸をします。飛び上がって回転したり、上半身を水上に突き出してみたり、逆立ちをして尻尾を立ててみたり。飼育員さんを鼻先に乗せようとしたりして、ほめてもらおうとするのです。それを見ていたみんなは、銃殺や干上げて殺すことはとてもできない。プールで餓死させるしかないだろうと決めました。
しかし、そんなことを知るジョーイではありません。よい芸を見せれば今まで育ててくれた人間が餌をくれるものと信じています。芸をすれば体力が奪われてしまうというのに。そして、ジョーイはどんどん弱っていってしまいました。流線型の体は脂肪が減って痩せ馬がでてしまいました。ほとんど衰弱して、ただ浮かぶだけになってしまいますが、飼育員の長谷川さんを見つけるとあの小さな眼の澄んだ瞳で見つめて、餌を貰おうと芸をみせようとするのです。
ジョーイを子供のように思う飼育員の長谷川さんは辛くなって、辛くなって、ついに食料のサバやイワシを、ジョーイに分けてしまいました。限られた燃料を使って、汚穢船を転用した支援船で網を引いて手に入れた皆の食べ物です。「ジョーイ、腹が減ったろう、おいしいか、おいしいか」と食べさせる長谷川さんに他の飼育員のおじさんたちは何もいえませんでした。所長も、大学の人も、配属された海軍の将校さんも何も言わずに、見守っていました。中には涙を流している人もいました。
みんなその晩に話し合いをしました。「ジョーイを殺すことなんかできない」「心を鬼にしてプールからジョーイを追い出そう。銛でついてもいい、音でいじめてもいい、普通のシャチとは違う体になってしまったけれども、外に出れば、お腹が空けば魚を食べるだろう。」
でも、海軍の人は申し訳なさそうに口を開きました。「ジョーイが三浦半島に住み着いてしまったら、特攻隊の若い人を殺してしまうかもしれません」
戦争は過酷でした。特攻隊は東京のすぐそば、相模湾の近くにある三浦半島でまで用意されていたのです。そして、毎日、敵の軍艦に体当りする訓練をしていたのです。
そして、特攻隊の人の乗る、体当たりで敵を沈める潜水艇は、とっても小さく作っていました。条件づけされたジョーイがぶつかるだけでひっくり返ってしまい二度と浮かび上がらなくなってしまうかもしれないのです。
飼育員のみんなも黙ってしまいました。実は戦争がどうなっているか、軍隊の方針がどうであるのかということは誰の頭にもありませんでした。でも、みんなは特攻隊の兵隊さんが、自分の子供のような年齢の兵隊さんの身の上を思うとなんともいえませんでした。特攻隊の兵隊さんたちは水族館の近くの横須賀や辻堂に住んでいます。そして上陸日には鎌倉や江ノ島に遊びにきていました。ジョーイの芸を楽しみに見に来ていたくらいですからなおさらです。
学徒出陣してきた分隊士さんの中には、学生時代に水産経済学の研究で水族館に通っていた人もいました。若い下士官を連れた将校さんは、彼らをジョーイの鼻先に乗せてやれるように懇願しました。若い下士官も軍服を着ながらジョーイの鼻や背に乗って無邪気に喜んで、貴重品になった特別配給の飴をジョーイに食べさせようとしたりしているのも見ていました。
そして、その兵隊さんたちの潜水艇は安全なものではなく、ちょっとした不具合で沈んだままになってしまう。そのまま殉職してしまうことも知っていました。みんなは、もう若い人が、訓練で死ぬのはやりきれないです。
長谷川さんが口を開きました。「もう、ジョーイには何の餌もやらない」みんなは、下をうつむいて何も離しませんでした。ただただ、長谷川さんを囲んで味のしない合成の理研酒をまわし飲むだけでした。
それから3週間たった夏の暑い日、長崎に原爆が落ちてからしばらくたったある暑い日の午前中、ジョーイは死にました。プールに沈み、窒息してしまいました。せめて綺麗な体で埋めてあげようと、一端引き上げて爆雷取付具や安全尖外しを取り除き、ガスが堪って膨れたお腹を開いたとき、本当は風呂桶のように大きなジョーイの胃袋は湯たんぽの大きさまでしぼんでいたそうです。
その日は8月15日でした。いまでもジョーイの命日では鎌倉建長寺で慰霊祭が行われるそうです。
『かわいそうなしゃち』でした。
それではみなさん、ごきげんよう。
2009年夏『瀛報』(ようほう)29号のまえがきから、一部修正。
参考
谷甲州「ジョーイ・オルカ」『星の墓標』(1987.7 早川書房)
秋山ちえ子 朗読 土家由岐雄「かわいそうなぞう」『大沢悠里のゆうゆうワイド土曜日版』2018年8月12日(TBSラジオ、2017.8)
2002年8月朗読・録音
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夏コミ、蒸れて死にそうでした
これよりも暑いコミケはありましたが、湿気のあるコミケはまあ30年でもなかったのではないかと
新刊4種類

他にも旧刊4種類も並べました

うち、オフセ版は委託だしてます、50音順に
とらのあな(題名でリンク貼ってます)
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
メロンブックス
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
東方書店はお盆あけあたりに持って行こうと考えてます
パンフの「キャプター機雷はなぜ廃れたのか」「新戦闘機は安価な低性能機がよい」「イージス・アショアは好事家の琴線に響くんだろうね」は必要あればアマゾンギフト券と交換します、もし欲しい方がいればメールで連絡ください
これよりも暑いコミケはありましたが、湿気のあるコミケはまあ30年でもなかったのではないかと
新刊4種類

他にも旧刊4種類も並べました

うち、オフセ版は委託だしてます、50音順に
とらのあな(題名でリンク貼ってます)
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
メロンブックス
・ 国共内戦 七戦七捷から淮海決戦まで
・ F-35Bは正規空母を滅ぼす
・ 駝峰航空輸送戦
東方書店はお盆あけあたりに持って行こうと考えてます
パンフの「キャプター機雷はなぜ廃れたのか」「新戦闘機は安価な低性能機がよい」「イージス・アショアは好事家の琴線に響くんだろうね」は必要あればアマゾンギフト券と交換します、もし欲しい方がいればメールで連絡ください
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コミケは8月12日 日-東ピ12b 隅田金属 です
新刊は本誌1種、パンフ2種、突発1種を予定しています。
進捗は新刊刷り上がり、またパンフの1種ができました。もう一種、「世界標準の戦闘機も作れないミジメな日本人よ分をわきまえて低性能戦闘機を作れ」(仮題)は本文推敲中です。時間があれば突発本を作ります

本誌はとらのあな、メロンブックスでも予約受付中です。

今後は順番を逆に
メロンブックス
https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=392498
とらのあな
https://ec.toranoana.shop/tora/ec/item/040030656528
また、神保町の東方書店にもお願いする予定です
新刊は本誌1種、パンフ2種、突発1種を予定しています。
進捗は新刊刷り上がり、またパンフの1種ができました。もう一種、「世界標準の戦闘機も作れないミジメな日本人よ分をわきまえて低性能戦闘機を作れ」(仮題)は本文推敲中です。時間があれば突発本を作ります

本誌はとらのあな、メロンブックスでも予約受付中です。

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また、神保町の東方書店にもお願いする予定です
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夏コミ新刊、同人書店で口座が立ちました。五十音順に
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■ 登場人物を正直にいれてみた
登場人物の欄に、粟裕、陳毅、毛沢東、蒋介石といれたらそのまま通りました。順番を逆に
メロン

とら

コミケは8月12日 日-東ピ12b 隅田金属 です
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