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Category : 未分類
松尾芳郎 さんの 「空自次期戦闘機『F-3』、2025年の初飛行なるか」*1は不思議な記事だ。記事は国産戦闘機開発の実現可能性を論じている。それでいながらコスト検討がどこにも書いていないためだ。
それは「まとめ」に尽きている。
「予定通りに進捗している」(松尾)と実現の見込みを強調しながら、必須の要素であるコストに関しては「これまでにも増して大変な努力と資金が必要となる。」(松尾)だけしかない。
つまりはコストも勘案すれば実現可能性は低い。それを秘した記事だということである。
もちろん仕方がない部分がある。商業記事としての要求から「国産機に見込みがあるよ」と書かざるを得なければそうするしかない。
その点で「これまでにも増して大変な努力と資金が必要となる。」(松尾)とは「本気にするなよ」ということだ。
■ 「コスト面の検討がない」ことを見抜けない人々
だが、その含意を理解できない人々がいる。自称軍クラのみなさんだ。
例えば、次の発言である。
一言でいえば無邪気だ。「事実を基に書けば」(木曽路のエトランゼ)と書いているが、コスト面について何も事実を書いていない不思議に気づかないのは不思議なものだ。また「偏向的な書き方になっていないのは好感。というより本来偏向的になってはいけないような。」(Yuuno)もそうだ。記事は国産戦闘機が大好きな子に特化した糖衣錠記事である。その点で偏向大差ないことに気づいていない。
■ 「この誉エンジンさえ完成すれば」
その上でいえば、松尾さんの記事は全てが順調に行く前提に立っている。そこに開発上のつまづきや遅延が発生するリスクは触れていない。まずは「名古屋リニアは2027年に完成する」「2050年までに核融合発電は実用化される」と同じ体裁をとっている。
特にエンジンがコケたら計画は全部コケる。国産戦闘機の話は全部国産エンジンを前提として話されている。それがコケればオシマイだ。特に戦闘機開発開始後は目も当てれない話となる。
あるいは腹痛エンジンとなっても同じだ。性能は出ないわ稼働率は低いわといった機体となるリスクを含有している。
しかし、それには触れていない。これも商業記事であるためだ。「国産機は可能である」と想定読者の国産機大好きっ子に夢見心地になってもらう上で邪魔だから触れていない。
だが、国産戦闘機をヨイショする連中はそれに気づいていない。実用エンジンが性能を達成すると信じ切っている。それでニヨニヨしている。
まずは昭和17年ころと同じである。「この誉エンジンはスリムかつハイパワーでありり2000馬力出る」「だから新型戦闘機は米軍戦闘機に匹敵する戦闘機になる」と有頂天だ。
だが、エンジン不調となるとどうしようもない。「地上で動かないF-3なんかよりもF-15の方がマシ」ということになる。
それを読み解けないあたりでも無邪気な子は気の毒なものだ。
■ 日本の技術はホントに「世界一」なのかね
(自称)軍クラの人たちは気づくべきとこをに気づいていない。
そのような部分は他にもある。その一つは松尾さんの記事中にある「世界一」を連発している部分であり、その含意である。
「世界一の素材技術」「世界一の半導体技術」「世界一の耐熱材料技術」とある。これは「技術研究本部(現在の防衛装備庁)が作成した「将来戦闘機の関する研究開発ビジョン〜将来の戦闘機に必要な技術〜」と題する報告」(松尾)から引いたとしている。
これも「防衛装備庁がそう言っている」といった逃げと見るべきだろう。素材も半導体も耐熱材料も世界一とは言い切れない立場にあるためだ。いずれも昔は生産技術は世界一を誇っていた。だが開発技術で世界一とはジャパンアズナンバラワンの時代も言っていなかった。
これも大きく見れば国産戦闘機を持ち上げる上での修飾である。「防衛当局がそう言っているから騙されてそう書いとくか」程度である。
だが、国産機が大好きなキッズたちはそれに気づいていない。そして「事実を基に書けば」(木曽路のエトランゼ)と事実認定している。いまだに本気でジャパン・アズ・ナンバーワンと信じているのだろう。
■ データベースなしでESMができるのだろうか?
そして、もう一つはEWについての紹介である。(自称)軍クラの皆さんはそこでも気づくべきところに気づいていない。
松尾さんの記事では「先進RF自己防御システム」として
もちろん、日本人でもそういったハードは作れるかもしれない。それは単なる電子技術だからだ。
だが、目標達成は困難である。「敵ミサイルの発射する電磁波を瞬時に受信・捕捉、直ちに対抗電磁波を発射、これを無力化」はまず無理だ。それにも気づかなければならない。
なぜならデータベースを必要とするからだ。記事では、おそらく意図してそれも言及してない。「敵ミサイルの発射する電磁波」を知らなければ「敵ミサイルの発射」は判断できないしどのような「対抗電磁波を発射」*2するかも決められない。
果たして、日本は主要な海外製ミサイルの電磁波スペクトラムを掌握しているのだろうか?
まずはロクなものはない。米製空対空ミサイルは承知しているだろうが欧州製は怪しい、さらにロシア製や中国製、将来的にはインド製のミサイルやレーダの輻射電磁波スペクトラムの把握は相当に甘い。
このあたりも記事はおそらく意図して既述していない。
だが、(自称)軍クラはそれに気づかず「全てが事実である。反映されていない事実はない」と信じている。そして「事実を基に書けばこういう記事ができるのになぁ…」(木曽路のエトランゼ)と感じ入るのはお気の毒なものだ。
*1 松尾芳郎「空自次期戦闘機『F-3』、2025年の初飛行なるか」『Tokyo Express』2018年11月24日(TOKYO EXPRESS,2018)
http://tokyoexpress.info/2018/11/24/空自次期戦闘機「f-3」、2025年の初飛行なるか/
*2 たぶん、受波した電磁波を時間軸とスペクトラムでオウム返しにするだけだ。だが、その方式は流行のパルスへのデジタルコード埋め込みに耐えるかは疑問だ。
それは「まとめ」に尽きている。
新戦闘機「F-3」に関わる要素技術は、ここに述べたようにほぼ予定通り進捗している。しかし実用機を完成し、量産態勢を軌道に乗せるまでには、これまでにも増して大変な努力と資金が必要となる。2019年から始まる「次期中期防」でどのような判断が下されるのか注目したい。
http://tokyoexpress.info/2018/11/24/空自次期戦闘機「f-3」、2025年の初飛行なるか/
「予定通りに進捗している」(松尾)と実現の見込みを強調しながら、必須の要素であるコストに関しては「これまでにも増して大変な努力と資金が必要となる。」(松尾)だけしかない。
つまりはコストも勘案すれば実現可能性は低い。それを秘した記事だということである。
もちろん仕方がない部分がある。商業記事としての要求から「国産機に見込みがあるよ」と書かざるを得なければそうするしかない。
その点で「これまでにも増して大変な努力と資金が必要となる。」(松尾)とは「本気にするなよ」ということだ。
■ 「コスト面の検討がない」ことを見抜けない人々
だが、その含意を理解できない人々がいる。自称軍クラのみなさんだ。
例えば、次の発言である。
木曽路のエトランゼ@トム猫教団の宣教師@fightin_dog
事実を基に書けばこういう記事ができるのになぁ…
空自次期戦闘機「F-3」、2025年の初飛行なるか
https://twitter.com/fightin_dog/status/1066232325816561665
Yuuno@C952日目西む30b@Yuuno_G4312
無料なのに綺麗にまとまっている良い記事ですねこれ。
何より偏向的な書き方になっていないのは好感。というより本来偏向的になってはいけないような。
空自次期戦闘機「F-3」、2025年の初飛行なるか
https://twitter.com/Yuuno_G4312/status/1066376016266854400
一言でいえば無邪気だ。「事実を基に書けば」(木曽路のエトランゼ)と書いているが、コスト面について何も事実を書いていない不思議に気づかないのは不思議なものだ。また「偏向的な書き方になっていないのは好感。というより本来偏向的になってはいけないような。」(Yuuno)もそうだ。記事は国産戦闘機が大好きな子に特化した糖衣錠記事である。その点で偏向大差ないことに気づいていない。
■ 「この誉エンジンさえ完成すれば」
その上でいえば、松尾さんの記事は全てが順調に行く前提に立っている。そこに開発上のつまづきや遅延が発生するリスクは触れていない。まずは「名古屋リニアは2027年に完成する」「2050年までに核融合発電は実用化される」と同じ体裁をとっている。
特にエンジンがコケたら計画は全部コケる。国産戦闘機の話は全部国産エンジンを前提として話されている。それがコケればオシマイだ。特に戦闘機開発開始後は目も当てれない話となる。
あるいは腹痛エンジンとなっても同じだ。性能は出ないわ稼働率は低いわといった機体となるリスクを含有している。
しかし、それには触れていない。これも商業記事であるためだ。「国産機は可能である」と想定読者の国産機大好きっ子に夢見心地になってもらう上で邪魔だから触れていない。
だが、国産戦闘機をヨイショする連中はそれに気づいていない。実用エンジンが性能を達成すると信じ切っている。それでニヨニヨしている。
まずは昭和17年ころと同じである。「この誉エンジンはスリムかつハイパワーでありり2000馬力出る」「だから新型戦闘機は米軍戦闘機に匹敵する戦闘機になる」と有頂天だ。
だが、エンジン不調となるとどうしようもない。「地上で動かないF-3なんかよりもF-15の方がマシ」ということになる。
それを読み解けないあたりでも無邪気な子は気の毒なものだ。
■ 日本の技術はホントに「世界一」なのかね
(自称)軍クラの人たちは気づくべきとこをに気づいていない。
そのような部分は他にもある。その一つは松尾さんの記事中にある「世界一」を連発している部分であり、その含意である。
③ 世界一の素材技術を使い、高い電波吸収性を持つSi-Carbide繊維で機体構造を製作、高いステルス性設計、高い電波遮蔽性を持つプラズマTV用電磁シールドをキャノピーに採用する。
④ 世界一の半導体技術で、次世代型ハイパワー・レーダであるGaN半導体素子基盤を使うAESAレーダーを搭載する。これもすでにF-2戦闘機、“あきずき”、“ひゅうが”など以降の新造護衛艦に採用済みである。
⑤ 世界一の耐熱材料技術で次世代高出力スリム・エンジンを搭載する。IHI社開発の「XF9-1」試作1号が2018年に推力33,000 lbsの最大出力運転に成功、6月末に防衛省に納入されている。
「世界一の素材技術」「世界一の半導体技術」「世界一の耐熱材料技術」とある。これは「技術研究本部(現在の防衛装備庁)が作成した「将来戦闘機の関する研究開発ビジョン〜将来の戦闘機に必要な技術〜」と題する報告」(松尾)から引いたとしている。
これも「防衛装備庁がそう言っている」といった逃げと見るべきだろう。素材も半導体も耐熱材料も世界一とは言い切れない立場にあるためだ。いずれも昔は生産技術は世界一を誇っていた。だが開発技術で世界一とはジャパンアズナンバラワンの時代も言っていなかった。
これも大きく見れば国産戦闘機を持ち上げる上での修飾である。「防衛当局がそう言っているから騙されてそう書いとくか」程度である。
だが、国産機が大好きなキッズたちはそれに気づいていない。そして「事実を基に書けば」(木曽路のエトランゼ)と事実認定している。いまだに本気でジャパン・アズ・ナンバーワンと信じているのだろう。
■ データベースなしでESMができるのだろうか?
そして、もう一つはEWについての紹介である。(自称)軍クラの皆さんはそこでも気づくべきところに気づいていない。
松尾さんの記事では「先進RF自己防御システム」として
「敵ステルス機や敵ミサイルから自機を守る[中略]RFセンサー・システムである。機体表面のほぼ全周に張り巡らされたESM(electronic support measures)あるいはECM (electronic counter measures)アンテナを使い、敵ミサイルの発射する電磁波を瞬時に受信・捕捉、直ちに対抗電磁波を発射、これを無力化するシステム。主翼前縁、胴体表面などにESM/ECMアンテナを組込み一体化して、機体全球方位を監視、カバーする。
もちろん、日本人でもそういったハードは作れるかもしれない。それは単なる電子技術だからだ。
だが、目標達成は困難である。「敵ミサイルの発射する電磁波を瞬時に受信・捕捉、直ちに対抗電磁波を発射、これを無力化」はまず無理だ。それにも気づかなければならない。
なぜならデータベースを必要とするからだ。記事では、おそらく意図してそれも言及してない。「敵ミサイルの発射する電磁波」を知らなければ「敵ミサイルの発射」は判断できないしどのような「対抗電磁波を発射」*2するかも決められない。
果たして、日本は主要な海外製ミサイルの電磁波スペクトラムを掌握しているのだろうか?
まずはロクなものはない。米製空対空ミサイルは承知しているだろうが欧州製は怪しい、さらにロシア製や中国製、将来的にはインド製のミサイルやレーダの輻射電磁波スペクトラムの把握は相当に甘い。
このあたりも記事はおそらく意図して既述していない。
だが、(自称)軍クラはそれに気づかず「全てが事実である。反映されていない事実はない」と信じている。そして「事実を基に書けばこういう記事ができるのになぁ…」(木曽路のエトランゼ)と感じ入るのはお気の毒なものだ。
*1 松尾芳郎「空自次期戦闘機『F-3』、2025年の初飛行なるか」『Tokyo Express』2018年11月24日(TOKYO EXPRESS,2018)
http://tokyoexpress.info/2018/11/24/空自次期戦闘機「f-3」、2025年の初飛行なるか/
*2 たぶん、受波した電磁波を時間軸とスペクトラムでオウム返しにするだけだ。だが、その方式は流行のパルスへのデジタルコード埋め込みに耐えるかは疑問だ。
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