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日本軍の将兵は中国での乱暴狼藉ではまず裁かれない。
そもそも起訴されない。軍法会議は日本軍が日本軍人を裁く。日本軍内や日本軍人への犯罪は困るから一生懸命に裁く。でも、戦場となった中国で虐殺をしても強姦をしても強盗としても日本軍も日本人も困らない上、部隊や日本軍、日本の悪評になるから一切起訴しない。
仕組からして軍隊に甘い。軍法会議は軍内の法務士官が検事役となる。起訴するしないは日本軍の都合で決まる。さらにいえば検事が検事総長の指揮監督をうけるように法務士官は軍司令官の指揮監督を受ける。法務士官が起訴すると決めても司令官がNGをだせばオーバーライドされる。
裁判は不告不理である。検事が起訴しなければ裁判にはならない。またその犯罪で起訴しなければ裁判も対象としない。以上は軍法会議制度の常識だ。
だから日本軍の非行記録に占領地の乱暴狼藉は載らない。ネトウヨは日本軍が軍機厳粛だった証拠だと言い出すのはこのあたり全く無知だからだ。
そして、それは中国側にも指摘されている。彭程さんの『軍事歴史研究』の記事がそれである。*1
これは「掃討」に従事した日本軍非行記録の紹介である。58師団が新四軍と戦った際の記録を提示したあとの最後の余論として次のように既述している
■ 家屋全焼くらいもみ消せばいいのにね
まあ軍法会議制度を抜きに説明するとそうなるということだ。
そして、その記事の中を見るとまあ大したことはない。一等兵が酔っ払って中隊長をぶん殴ったとかお金ちょろまかしたといった話。前者は当たり前だが軍法会議は回避されていて訓戒で済んでいる。まあ自衛隊でもよくあるどうしようもない話。
厳しい話は自傷行為。映画の二百三高地で出てきた右手の指を飛ばすアレだ。あとは夜間交戦中にはぐれて彷徨ううちに部隊に帰る気力がなくなった兵隊。これらは軍法会議送り方である。読んでいて気の毒でしょうがない。
ただ、面白い話はあるもの。それは失火の罪なんだが、一等兵三人が仲良くお酒を飲んでいた。アルコール濃度が高い白酒4合だから業務用ストロングゼロどころの比ではない。泥酔してぶっ潰れる。そして灯油ランプの火を消すのを忘れて、それが木造紙張りの現地接収の建屋に引火し、都合悪いことに水源まで1kmあるので、おそらく全焼したといった話。
でも誰も死んでいない。このあたりで一種の笑い話だ。火災部署で在隊者は一味同心して物件を搬出。ガスマスク11ヶを除けば武器も無事、損害も300円程度でしかない。思想性もないし、喧嘩でもない、軍規への挑戦でもない。中国人民も死んでいないし、家屋接収はともかく非人道、非合法の行為の影響はうけていない。
でも3人は営倉7日。よほどアレでクソ真面目な指揮官が罰を与えたのだろう。本来はもみ消すべき案件だからだ。*2
そして、とばっちりは留守隊長の少尉さん。監督責任で営倉3日を貰っている。まあ責任といえば責任なんだが、耐燃性や防火用水が準備できないところでは搬出成功、人的被害なしでむしろ褒めてもよいはずである。
あるいはこの少尉さんが上級部隊にホントのことを言ったせいでもあるかもしれない。「新四軍の襲撃と判断して飛び起きたところランプが転がって引火」とでもいっておけば新四軍のせいにできただろうし、新四軍も日本軍の営舎を焼く戦果を挙げたことにできてWin-Winだと思うけどね。
*1 彭程「1942年日軍第五十八師団在与新四軍作戦期間士兵内部違反報告」『軍事歴史研究』135(国防大学国家安全学院,南京,2019)pp.114-124
*2 あるいは軍法会議を回避するための便法かもしれないが
そもそも起訴されない。軍法会議は日本軍が日本軍人を裁く。日本軍内や日本軍人への犯罪は困るから一生懸命に裁く。でも、戦場となった中国で虐殺をしても強姦をしても強盗としても日本軍も日本人も困らない上、部隊や日本軍、日本の悪評になるから一切起訴しない。
仕組からして軍隊に甘い。軍法会議は軍内の法務士官が検事役となる。起訴するしないは日本軍の都合で決まる。さらにいえば検事が検事総長の指揮監督をうけるように法務士官は軍司令官の指揮監督を受ける。法務士官が起訴すると決めても司令官がNGをだせばオーバーライドされる。
裁判は不告不理である。検事が起訴しなければ裁判にはならない。またその犯罪で起訴しなければ裁判も対象としない。以上は軍法会議制度の常識だ。
だから日本軍の非行記録に占領地の乱暴狼藉は載らない。ネトウヨは日本軍が軍機厳粛だった証拠だと言い出すのはこのあたり全く無知だからだ。
そして、それは中国側にも指摘されている。彭程さんの『軍事歴史研究』の記事がそれである。*1
これは「掃討」に従事した日本軍非行記録の紹介である。58師団が新四軍と戦った際の記録を提示したあとの最後の余論として次のように既述している
発現一个奇怪現象:日軍対其士兵常年在外(尤其是対当地居民)犯科的厳重罪行諸如焼殺搶掠等、進行記載並形成的報告極少[中略]日軍十分重視其対内的紀律建設、意在借此保持戦闘力、而極度忽視対外的紀律建設、甚至対他們来説、其士兵対中国人民犯罪、根本不是在”違反紀律”。
彭(2019)p.124
■ 家屋全焼くらいもみ消せばいいのにね
まあ軍法会議制度を抜きに説明するとそうなるということだ。
そして、その記事の中を見るとまあ大したことはない。一等兵が酔っ払って中隊長をぶん殴ったとかお金ちょろまかしたといった話。前者は当たり前だが軍法会議は回避されていて訓戒で済んでいる。まあ自衛隊でもよくあるどうしようもない話。
厳しい話は自傷行為。映画の二百三高地で出てきた右手の指を飛ばすアレだ。あとは夜間交戦中にはぐれて彷徨ううちに部隊に帰る気力がなくなった兵隊。これらは軍法会議送り方である。読んでいて気の毒でしょうがない。
ただ、面白い話はあるもの。それは失火の罪なんだが、一等兵三人が仲良くお酒を飲んでいた。アルコール濃度が高い白酒4合だから業務用ストロングゼロどころの比ではない。泥酔してぶっ潰れる。そして灯油ランプの火を消すのを忘れて、それが木造紙張りの現地接収の建屋に引火し、都合悪いことに水源まで1kmあるので、おそらく全焼したといった話。
でも誰も死んでいない。このあたりで一種の笑い話だ。火災部署で在隊者は一味同心して物件を搬出。ガスマスク11ヶを除けば武器も無事、損害も300円程度でしかない。思想性もないし、喧嘩でもない、軍規への挑戦でもない。中国人民も死んでいないし、家屋接収はともかく非人道、非合法の行為の影響はうけていない。
でも3人は営倉7日。よほどアレでクソ真面目な指揮官が罰を与えたのだろう。本来はもみ消すべき案件だからだ。*2
そして、とばっちりは留守隊長の少尉さん。監督責任で営倉3日を貰っている。まあ責任といえば責任なんだが、耐燃性や防火用水が準備できないところでは搬出成功、人的被害なしでむしろ褒めてもよいはずである。
あるいはこの少尉さんが上級部隊にホントのことを言ったせいでもあるかもしれない。「新四軍の襲撃と判断して飛び起きたところランプが転がって引火」とでもいっておけば新四軍のせいにできただろうし、新四軍も日本軍の営舎を焼く戦果を挙げたことにできてWin-Winだと思うけどね。
*1 彭程「1942年日軍第五十八師団在与新四軍作戦期間士兵内部違反報告」『軍事歴史研究』135(国防大学国家安全学院,南京,2019)pp.114-124
*2 あるいは軍法会議を回避するための便法かもしれないが
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須賀原洋行さんの主張は不思議だ。明石順平さんの「実質賃金が低下した」への反論として「名目賃金が上昇した」と述べているからだ。
■ 論理をなしていない反論
その反論は極めて難解である。須賀原さんが難しいことを言っているわけではない。まずは140字で一文であること。なにより、文内の文節同士のつながりが全く論理をなしていないことだ。
その筋悪は次のように中略をいれて縮小すれば明快となる「[中略]名目賃金、総雇用者所得が伸びたが[中略]実質賃金が下がっただけで、生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)
■ 実質賃金が下がればベアも賃上げもないもんだ
その上で述べれば誇る点も不思議である。須賀原さんは「ベアと賃上げを5年連続実現し、名目賃金、総雇用者所得が伸びた」と低能宰相のアレ経済を褒めるかのような記述をしているからだ。。
実質賃金が低下している状況下で名目賃金の上昇は成果となるだろうか?
ならない。賃下げでしかないからだ。1000%のインフレ下に200%の賃上げがあっても、それは給料4/5のカットである。それを給料を2倍にしたと誇るのは、まずはお気の毒としかいえない。
■ 名目賃金すら「(賃金は低め)」なのに「生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)
さらにいえば、被雇用者数の増加で対抗できると考えているフシも見受けられる。「[被]雇用者数激増によって定年後の再就職や若者の就職・主婦のパート職等(賃金は低め)が増え」(須賀原)の部分だ。
だが、それも「生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)の主張を支持する理由とはならない。
「定年後の再就職や若者の就職・主婦のパート職等(賃金は低め)が増え」(須賀原)は「定年後の老人や主婦がパートをしなければならなくなった」とも読める。
なによりもいずれの雇用も「(賃金は低め)」(須賀原)と述べている。名目賃金ですら低賃金で働かされることは果たして「生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)なのだろうか。
■ 「実質賃金が下がっても生活は苦しくなったとは言えない」(須賀原)
須賀原さんの独特な実質賃金感は次のツイートでも見られる。
このうちの「生活が良くなったか苦しくなったかは実質賃金の数値では計れない」(須賀原)の部分である。
つまり、実質賃金の低下は生活が苦しくなったことを示さないと述べているのである。
もちろん、生活が良くなったか苦しくなったかには多面的な評価軸がある。その要素は経済や経済以外でもいくらでもありうる。
だが、「実質賃金が下がった」ことは「生活が苦しくなる」一大要素である。また実質賃金が下がったことで生活がよくなることもない。
■ 団塊世代が労働市場から抜けたから新規就業者数が増えただけ
ちなみに、須賀原さんはここでも就業者数増加を持ち出している。これも明石さんの「アベノミクスの失敗」に対する反論のつもりなのだろう。「前政権ではこれが困難で、好転したのは確か。」(須賀原)の部分からそれは汲み取れる。
だが、それはアレ政権の功績ではない。新規就業者数増加やより細かく大学卒業時の内定率上昇は人口モデルで説明がつくからだ。夏の時期には気温があがるようなもので今の政権の成果ではない。
明石順平@junpeiakashi
アベノミクスの失敗は一つのグラフで簡単に説明できる。
つまり,
①増税と円安で物価(赤)が急に上がったが
②名目賃金(青)の伸びが物価の伸びを大きく下回ったので
③実質賃金(緑)が急落し
④消費(黄)が超冷えた
要するに,生活が苦しくなっただけです。
https://twitter.com/junpeiakashi/status/1122357569731694592
須賀原洋行@tebasakitoririをフォローします
ベアと賃上げを5年連続実現し、名目賃金、総雇用者所得が伸びたが、物価目標を設定したのと消費税増税で物価が上がったのと雇用者数激増によって定年後の再就職や若者の就職・主婦のパート職等(賃金は低め)が増え、消費者物価指数で割られる実質賃金が下がっただけで、生活は全体に良くなったと思う
https://twitter.com/tebasakitoriri/status/1122412100511338497
■ 論理をなしていない反論
その反論は極めて難解である。須賀原さんが難しいことを言っているわけではない。まずは140字で一文であること。なにより、文内の文節同士のつながりが全く論理をなしていないことだ。
その筋悪は次のように中略をいれて縮小すれば明快となる「[中略]名目賃金、総雇用者所得が伸びたが[中略]実質賃金が下がっただけで、生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)
■ 実質賃金が下がればベアも賃上げもないもんだ
その上で述べれば誇る点も不思議である。須賀原さんは「ベアと賃上げを5年連続実現し、名目賃金、総雇用者所得が伸びた」と低能宰相のアレ経済を褒めるかのような記述をしているからだ。。
実質賃金が低下している状況下で名目賃金の上昇は成果となるだろうか?
ならない。賃下げでしかないからだ。1000%のインフレ下に200%の賃上げがあっても、それは給料4/5のカットである。それを給料を2倍にしたと誇るのは、まずはお気の毒としかいえない。
■ 名目賃金すら「(賃金は低め)」なのに「生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)
さらにいえば、被雇用者数の増加で対抗できると考えているフシも見受けられる。「[被]雇用者数激増によって定年後の再就職や若者の就職・主婦のパート職等(賃金は低め)が増え」(須賀原)の部分だ。
だが、それも「生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)の主張を支持する理由とはならない。
「定年後の再就職や若者の就職・主婦のパート職等(賃金は低め)が増え」(須賀原)は「定年後の老人や主婦がパートをしなければならなくなった」とも読める。
なによりもいずれの雇用も「(賃金は低め)」(須賀原)と述べている。名目賃金ですら低賃金で働かされることは果たして「生活は全体に良くなったと思う」(須賀原)なのだろうか。
■ 「実質賃金が下がっても生活は苦しくなったとは言えない」(須賀原)
須賀原さんの独特な実質賃金感は次のツイートでも見られる。
須賀原洋行@tebasakitoriri
明石さんが提示する数値は正しいし、読み取り方も間違っていないと思うが、生活が良くなったか苦しくなったかは実質賃金の数値では計れないと思う。一番大きいのは新卒が売り手市場になり就職に困らなくなった事じゃないかな。あと、定年後にも職がある事。前政権ではこれが困難で、好転したのは確か。
https://twitter.com/tebasakitoriri/status/1122418255212077056
このうちの「生活が良くなったか苦しくなったかは実質賃金の数値では計れない」(須賀原)の部分である。
つまり、実質賃金の低下は生活が苦しくなったことを示さないと述べているのである。
もちろん、生活が良くなったか苦しくなったかには多面的な評価軸がある。その要素は経済や経済以外でもいくらでもありうる。
だが、「実質賃金が下がった」ことは「生活が苦しくなる」一大要素である。また実質賃金が下がったことで生活がよくなることもない。
■ 団塊世代が労働市場から抜けたから新規就業者数が増えただけ
ちなみに、須賀原さんはここでも就業者数増加を持ち出している。これも明石さんの「アベノミクスの失敗」に対する反論のつもりなのだろう。「前政権ではこれが困難で、好転したのは確か。」(須賀原)の部分からそれは汲み取れる。
だが、それはアレ政権の功績ではない。新規就業者数増加やより細かく大学卒業時の内定率上昇は人口モデルで説明がつくからだ。夏の時期には気温があがるようなもので今の政権の成果ではない。