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隅田金属日誌(墨田金属日誌)

隅田金属ぼるじひ社(コミケ:情報評論系/ミリタリ関係)の紹介用

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文谷数重

Author:文谷数重
 零細サークルの隅田金属です。メカミリっぽいけど、メカミリではない、でもまあミリタリー風味といったところでしょうか。
 ちなみに、コミケでは「情報評論系」です

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2014.07
07
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12:06
Category : 未分類
 野口裕之さんの署名記事だが、いろいろと違和感を感じる内容になっている。

 「中国を贔屓し日本を孤立させる新世界秩序 〝目覚めた獅子〟は本当に文明的か」(http://sankei.jp.msn.com/world/news/140704/chn14070411300002-n1.htm)について、結局は中国と米国への恨み節に終始している。1ページに付き2ヶ所はオカシイと言いたくなるところがある。

 中でも、中国大陸での権益は後暗いところのない正当な権利、それを認めない英米はけしからんというのは、何事だろうかね。

 野口さんは
《ワシントン会議/21~22年》では、第一次大戦で日本が獲得した中国内のドイツ租借地利権を、中国に肩入れした英米両国により、ほぼ全面的に放棄させられた。3年前の《パリ講和会議》では、日本が発議した《人種的差別撤廃提案》の取り下げを条件に英米も日本の利権を認めており、完全な裏切りだった。
http://sankei.jp.msn.com/world/news/140704/chn14070411300002-n2.htm
と述べている。まずは、対独参戦で占領したドイツ膠州湾租借地を、日本の租借地にできなかったことを恨んだものだ。

 膠州湾そのものは、中国に属する。そして中国は、第一次世界大戦に参戦しており、戦勝国としての地位を占めている。

 租借権引継については、どう贔屓目にみても中国は関係国であり、その同意が必要であった。

 だが、その手続きは相当に怪しいものである。無理やり飲ませた対華二十一ヶ条要求によるものであるためだ。

 対華二十一ヶ条要求は、火事場泥棒のようなものだ。欧州列強がヨーロッパの戦争に巻き込まれている間、日本は中国に二十一ヶ条の要求を突きつけている。その半分はフッカケであるが、力を背景に15条を認めさせた。

 その中に膠州湾租借地の件も含まれている。日本は、欧米が介入できない間に、ドイツから占領したと言う体で、膠州湾を自国租借地にしようとしたものといえる。

 戦時下において、敵国以外の国に力で強要する行為は正しいものだろうか。しかも中国は参戦国である。日本は火事場泥棒をしたと、英米ほか国際社会はそう考える。いわば力による現状変更であり、中国に利権を持つ各国としても認められない。

 この事情を前提に見ると、野口さんの主張は筋悪である。「第一次大戦で日本が獲得した中国内のドイツ租借地利権を、中国に肩入れした英米両国により、ほぼ全面的に放棄させられた。」(野口さん)とある。

 だが、そこでは日本に都合の悪いことを全部オミットしている。中国も連合国に参戦した戦勝国であること。世界大戦での日本の火事場泥棒的な行為。なんだかんだ言って、戦後に日本は膠州湾での権益を確保しており「ドイツ租借地利権を[略]全面的に放棄」したわけではないことがそれだ。

 そもそも、中国も抵抗するのは当たり前である。今の日本で言えば、米国が北方領土あるいは竹島からロシア、韓国を追い出したあとで、ここでの権益は米国が引き継ぐというようなものだ。しかも、対華二十一ヶ条要求では、どうみてもドイツ利権とは関係ない、製鉄所よこせといった漢冶萍煤鉄公司への要求も含まれている。

 そこで中国が英国ほかを頼ることも当たり前である。中国にも裁判的な意味で言う防御権はあり、それを攻めるもの妙な言い方である。

 野口さんの提示した日本の膠州湾租借地の引き渡し要求は「力による現状変更」であった。それを正当な権利として認めながら、記事後段(http://sankei.jp.msn.com/world/news/140704/chn14070411300002-n4.htm)で新中国による南シナ海での行動について、「力による現状変更」であることを示唆して非難するのは、矛盾するものだ。



※ 野口裕之「中国を贔屓し日本を孤立させる新世界秩序 〝目覚めた獅子〟は本当に文明的か」『MSN産経ニュース』(産経新聞,2014.7.6)http://sankei.jp.msn.com/world/news/140704/chn14070411300002-n1.htm
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Comment

非公開コメント

なるほど、清谷氏が書くような論説と結論が矛盾した内容になっている訳か、まああの人の場合、論説自体が恣意的もしくは偏見的であるのでおかしいが
ま、彼方のご一党にも見られる傾向だね

No title

21ヶ条要求は当時の外相加藤高明が主導したものだが、この加藤というのがとんでもない人物だったようだ。

日本の要求はどれもきついけど、一番の無理難題が第五号要求。
第五号では、恐るべきことに「中国政府は政治軍事経済顧問として日本人を雇う」「中国の重要地域の警察を日中共同管理とする。警察官僚に日本人を雇う」「武昌―九江―南昌間、南昌―杭州間、南昌―潮州間の鉄道敷設件」「福建省の鉄道、鉱山、港湾に外資導入で日本に優先権」「在中日本人に土地所有権と布教権」「日本製兵器を大量に買い入れるか、日中共同経営の兵器廠を設立」となっている。
どうみても属国並みの扱いですありがとうございました。
袁世凱が「この要求は中国を朝鮮化するものだ」と怒り狂ったのも当然の内容。

もちろんこんな強硬要求は日本国内でも支持を得られないのだが、加藤はなんと第五号要求を国内には伏せてしまったw
だが案の定ばれて元老から呼び出しを喰う。
そのときの加藤がまたろくでもない。
元老の松方正義に「中国が要求を呑まずに交渉決裂したらどうする」と詰め寄られると、加藤は「武力行使です。三ヶ月以内に支那は完全に征服できます」と放言する離れ業を演じてみせた。
松方は怒って「君は支那を知らない。三ヶ月どころか三年かかっても支那を屈服させるなど無理だ」と一喝。まるでいつかの昭和天皇と杉山元だ。
また、別の元老山県有朋も介入してきて「交渉紛糾の責任は外相にある。外相自ら交渉して解決せよ」と激怒する。
追い詰められた加藤は、ついに外相の権限で「最後通牒(拒否すれば戦争)」を出して問題解決しようとする(!)が、さすがに元老がブレーキをかけて第五号は削除された。

結局、更なる交渉で21ヶ条要求自体が大きく削られてそこそこ常識的な範囲におさまったが、最初に超強硬要求を吹っかけてきた日本に対する悪感情が治まることはなく、中国ナショナリズムの醸成に一役買ったのは間違いない。
一方で、日本では加藤の超強硬外交の反動で、幣原喜重郎外相が主導する「融和外交」が地位を得ていくのだが・・・。これはまた別の話。

No title

>21ヶ条要求
熱湯浴の方々は例のごとく、「21ヶ条要求は袁世凱が自身の権力基盤を盤石にするために作った捏造。第五号要求は孫文の日中盟約案にも書いてあったこと。」なんて戯言を言っていますが、連中の主張の中で特に笑えたのは、WW1を「膨大な収奪をしまくった先発組対収奪し始めたばかりの後発組のヨーロッパ白人同士での醜い争い」と語っておきながら、日本がどさくさに紛れて山東半島を奪取し、ついでに大陸侵略を行おうとしたことを無視or正当化していること。(ちなみに、そんな戯言を語った輩は食糧・エネルギー完全自給自足体制での完全鎖国を主張するクソドマヌケでもある。)

No title

対華二十一ヶ条要求は、戦前の河野談話ですよ。袁世凱にダマされて「要求」というカタチにしてもらわないと内部を説得できないと言われて、いざ作って発表したら日本の「侵略」だと対外宣伝に使われた。加藤高明はマヌケです。内容の大半は、それまでに結んだ条約の履行を求めてるだけで、大した事は書いてない。

No title

>マリンスノー氏
>対華二十一ヶ条要求は、戦前の河野談話ですよ。袁世凱にダマされて「要求」というカタチにしてもらわないと内部を説得できないと言われて、いざ作って発表したら日本の「侵略」だと対外宣伝に使われた。加藤高明はマヌケです。

それらの出所は、袁世凱の政敵である孫文と、21ヶ条要求で大ゴケした加藤高明本人。
孫文が袁世凱を貶めるのは当然だし、加藤が自己弁護にはしるのも当たり前。

21ヶ条の要求は「日本の既得権益を追認するだけ」なんていうおとなしいものじゃない。
比較的常識的な内容になったのは、中国や元老、そしてアメリカを怒らせた後の交渉でだよ。

No title

すいません、マリンスノー氏ではなくマリンロイヤル氏あてでした